ある日の午後、帰社するとスタッフの女性が困った顔をしていました。
「どうしたんだ?」
「変な電話が、有ったんですがなんて答えればいいか分らなくて困っているんです」
「変な電話って、どんな内容なんだ?」
「自殺したら火葬と散骨と遺品整理を頼めるかって言うんです、それと費用はいくらくらいかかるかって・・」
「なんやて?それでどうしたんや」
「公衆電話だったようで、途中で切れました」
「なんか訳のわからない電話やな」
そんな話をしていた時また電話が鳴ったのです。
「もしもし、はい、しばらくお待ち下さい」「またかかってきました!!」
「よし俺が出るから代わってくれ」
「はい」
私は、電話を取りました。
「もしもし、お待たせいたしました」
「さっきかけた者ですが、電話が切れたのでまたかけたのですがいいですか?」
「はい、どうぞ私が承りますのでお話下さい」
「実は、私はもう世の中が嫌になったので自殺しようと思うんだが、葬儀はせんでもいいんだが、火葬してもらわないといけないし遺品整理もしてもらわんといけないのでおたくに頼んでおきたいんだよ」
「なぜ死にたいんですか?まだお若そうですし悪い事ばかりではないと思いますが」
「そんな事はない、わしは去年株式で大儲けをしたんだが、あれは結局、儲けさせないようになっているんや、今年になって儲けどころか殆ど取られてしまったんですよ、もうそうなったら人生は終わりでしょ?」
「いえ、そんな事はないと思いますよ、それに株式って言うものはそういうリスクもあるのは初めから分っているんじゃないですか?」
「いやあれは酷いよ、だから死んだほうがいいんだ、とにかく頼んでおきたいんだ、おたくだった受けてくれるんじゃないのか?」
「そんな受付は出来ませんよ、当社は遺品整理の相談しか受けられません」
「そんな事、言わないで受けてくれよ」
「無理ですよそんな相談、とにかく当社の仕事でないので」
「じゃあ何処に頼んだらいいんですか?」
「知りませんよ!そんな申し込受けてくれるところなんてあるわけないでしょ!」
「こまったなぁ・・、何とかならんかね?」
「ご家族は、いないのですか?」
「あんな奴らはダメだよ、わしの事を嫌っているから」
「まあ、そうかも知れませんが、とにかく”自分は死ぬから後は宜しくって”言われて”わかりました”って言う人が居るわけないでしょう!?」
「そうか?」
「もういい加減にしてください、とにかく当社は死の相談や受付をしている会社では有りませんから!」
「だったら何処に相談したらいいんだ?」
「だから・・・さっきも言ったでしょ、どうしてもって言うんだったら警察か病院に聞いてみたらどうですか?」
「わかった、じゃあそうするよ」「でもおたくじゃダメか?」
「ダメです!それより、そんな事考えるのはやめて仕事をしたらどうですか?」
「東京は、若い人しか働けないようになっているから、わしのような58歳の爺が仕事を探しても無理なようになっているからダメだよ、清掃の仕事もしたくはないしそんな仕事をするくらいなら死んだほうがましだと思うでしょ」
「だから思いませんって言っているでしょ」「清掃の仕事も大切な仕事ですよ!みんな嫌な事も我慢して頑張って働いているんじゃないですか?」
「わしは、そんな我慢できないよ」
「じゃぁ、勝手にしたらどうですか!私は知りませんよ」
「あんたは、冷たい事いうねぇ」
「あのねぇ・・・・」
その他になんだかんだと、話しが終わるまでにしばらくかかりました。
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本当に、怒りはしませんでしたがある程度は強く否定をしないと、このような方はどんどん無茶を言い出してくるのです。
結局、結論なんて出ませんでしたし、ふざけたような話をしているように思えますが、本人は真面目に話していて全くふざけていなかったのです。
しかし話の中では、確かに中年層の現実の問題も多く含まれていました。
皆さんも”変なおじさんで変わった人だなぁ”と思うでしょうが、これからはこのような方が増えてくる可能性がとても高いのです。
認知症でもなく、病気でもないこのような方に不足しているのは、やはり人間関係なのです。
日本人は、人間関係を保つ事にもっと重要性を感じる必用がありますよね。
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家族や親族がいるのに、こういった悩み事を話すのは恥ずかしいと思う年代なのかな?と考えたりもしました。
もし自分だったら、株で失敗して働きたくないと思った時点で死を選ぶのかな・・・・
まあ、普通に働きますね☆
管理人様の辛抱強さに感心します。
自分なら、そんな事言われた時点でぶち切れます。
あなた、いったい何の会社に電話かけてるかお分かりですか!!!って言ってやりたいですね。
突っ込みどころ満載の電話ですが、現場作業はもちろんの事、電話応対(だけではないと思いますが)をなさっているスタッフの方も大変ですね。
遺品整理、というお仕事の性質上、電話を通しても色々と気を使われることが多いと思います。
管理人様、キーパーズの皆様、応援しています。
>「だから・・・さっきも言ったでしょ、どうしてもって言うんだったら警察か病院に聞いてみたらどうですか?」
この場合は、
「近くのお寺に(orお坊さんに)相談してみたら如何ですか?お墓が増えるのでキット喜びますよ。それに何しろ悟りを開いた人なので、ヒョットして死ななくても済むよい方法を教えてくれるかもしれませんし」というアドバイス的ご返事はどうでしょうかね。
私も体の障害に起因するいじめを小学生から8年間受け、不登校や家庭内暴力に走り、自殺したいと何回もいろんな方法を試しました。それを克服して社会人になってまもなく、上司に仕事上の失敗を着せられて会社を辞めるはめになってショックでまた自殺に走りました。
しかし、死ねないのです。家族や友人、私とつながりのある多くの人々の事を思うと。あの人がいるからもう少し生きてみようという考えを延長しつつ、今ここに生きています。
人は人とつながっているゆえに強くなれるし、困難を乗り越えられる。人間関係の希薄な人ほど、悩みをひとりで抱え、暴走する。
私はこの人に言いたい。人生それほど悪いもんじゃないですよと。明日は明日の風が吹く。いいことも沢山あるはずです。誰かにつながりを求めては如何ですか。
きっと寂しいのでしょうね。
でも、「クリスマス・キャロル」みたいに、
すべての原因を作ったのは自分だと自覚しなければ、
ずっと孤独なのでしょう。。。
それにしても、
つくづくキーパーズさんのお仕事ぶりには、
頭が下がります。
菩薩行だなあ。。。