kebaneco日記

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ネガティブキャンペーンが始まる

2018年12月26日 | 折々の話題
日本がIWC脱退を発表した今日、BBCは最初短くそれを伝えただけだった。けれど徐々にIWC脱退通告に割かれる時間が増えていった。

26日はイギリスではボクシングデーという祝日。郵便配達人に贈り物をするなど、日頃お世話になっている人にねぎらいの気持ちを表す日。祝日ということは政府は反応できない、メディアはいきおい環境保護団体やアニマルライツの団体に意見を聞くことになり、IWCに残るように日本を説得する余地を残したい各国の環境省や外務省とは違ったトーンの意見が先行することになった。

まったく、最低の意思決定を最悪のタイミングで発信してしまった。現政権の、国際性のなさや多様性に対する許容度のなさを露呈した格好。理由に意見の多様性が認められない組織だから脱退する的くだりがあるけど、あんたもね、って感じ。

IWCに対しては穏やかに無視してればよかったのに、こんな形で寝た子を起こさないで欲しかった。なぜそう思うかというと、一つには、中国当局に拘束された約三百人の弁護士のうち、1200日も未決拘禁状態にあった国家政権転覆罪に問われている人権派弁護士の、初公判がまさに今日あったから。

日本のIWC脱退通告の次にこれが報道され、中国も(ゴーン容疑者を未だに拘束している)日本も同じ、という印象を残したから。もう一つは・・・

日本の「ミュージアム」の「2〜3歩歩くことが精一杯の小さな檻」で12年間暮らしたブラウンベアー(エゾヒグマ)「2頭」がイギリスのバークシャーの動物園に「救出」され、4ヶ月経って自然に近い環境での生活にも慣れ、「コメしか与えられなかった」去年までは「触ったことのなかった草や土に触り」、今までとは全く異なる食事をもらってハッピーに暮らしている、メリー・クリスマス、と耳を疑うようなニュースを伝えていたから。

IWC脱退を想定した、周到に準備されたネガティブキャンペーンだと思った。今後の袋叩きを想起させて恐ろしい、とゾッとさせられた、だから言わんこっちゃないって。


こっちがビフォーで



こっちがアフター、ってことらしい


「ミュージアム」という言葉に違和感があったので、調べてみたらどうやら2018年3月31日に閉館したアイヌ民族博物館のことようだ。ここは「ミュージアム」ではあるけれど、エゾヒグマが展示されていたのは「屋外ミュージアム」エリア。「屋外」の一言を入れるか入れないかで、テレビを見ている人の印象は大きく変わる。でも「屋外」の一言には言及なし。知ってたはずだけど。

さらには、不自然に小さな檻に入れられた映像が流れ、生まれた時からそういう状態で飼育・展示されていたという印象を与えるナレーションがなんども繰り返された。いかに自然に近い形で展示するか、に腐心している最近の動物園で、そんな展示をしてたらいくら日本でも問題になるだろうと思われるような小ささ&汚さ。


閉鎖されたアイヌ民族博物館のウェブに残ってた館内案内図。BBCが流した映像では一頭ずつ小さい檻に入れられていたけれど、飼育員がちゃんとついている営業時にはもっと大きな檻で飼育されていたことがわかる。っていうことは、閉館後引取先を待っている時の檻だったのではないだろうか、言及はなかったけど。素人が疑問に思ってちょっとググればわかるようなことも調査もせず、BBCが野生動物保護を訴える団体の言い分を鵜呑みに番組構成をしているとしか思えない。

この博物館はクマを神の使いと思っていたアイヌ文化を伝える場所なので、コメしか与えてなかったのかについてもマジ疑問。営業中にどうだったのか、と、閉館後引取先を探している間にどうだったのか、をきちんとわけて報道すべきではと思った。そもそも「閉館した」「野外」ミュージアム、という言及は皆無で、最初から悪意がある。

おまけに当時の新聞記事を読むと「4頭」「救出」してイギリスに到着たはずなのに、番組では「2頭」としか報道してないのはど〜ゆ〜こと?気候が合わなくて死んじゃったか?飼育方法知らなくて殺しちゃったのか?都合の悪いことは綺麗さっぱり無視、である。まさに極端な動物保護団体のインパクトありきのアプローチそのもの。

ある種「すごぉ〜いですね」系の愛国心くすぐり番組の英国版とも言える。テディーベアやパディントンベアの母国の、クマ大好き国民。EU離脱で外国企業が地域統括本部を大陸に移し始めた現状では、かわいそうなクマちゃんを救ったおれっちすげ〜っ、ていうことで自尊心を維持したいのかもしらんけど、BBCの名が泣くぞってくらいのリサーチ不足(あるいは偏向報道)。

クマに関してはこの程度だけど、捕鯨に関してはもっと大々的にネガティブ報道がされると思う。その中ではBBCなんてまだマシなほう。各国のタブロイド紙が一体どんな報道をするか、想像するだけで恐ろしい。

今日のBBCはオーストラリアの大学の先生をつかまえて、「日本人は1960年代には年間20万トンも鯨肉を消費していたが、商業捕鯨禁止のおかげで(!)今は年間5千トン。IWC脱退で捕鯨量はこれから拡大する」とまで言わせている。無理だよ、だれが海の汚いものを一番蓄積してるうえに美味しくない鯨の肉なんて食べるんだよ、戦後のタンパク質源がない時代だって20万トンだったのに、なんていっても、「伝統」といいながらも「商業」捕鯨船団で大きな鯨を取って甲板が血で染まる様子をなんども流されたら、日本人の言うことはだれも信じないでしょ。

「多様な意見が受け入れられない」「サイエンスより感情が支配している」のはIWCだけじゃない。日本人の中に外国人労働者に対する偏見があるように、世界は偏見と差別に満ちている。それを前提にどうやったら少しでもよくなるかを考えるのが人間なんじゃないの?って思うし、そんななかで英語での発信力が絶対的に欠如している日本が、念入りに練ったPR戦略もなく、不意打ちのようにボクシングデーに、起こさなくてもいい寝た子を起こすことがどれだけ愚かか、ちょっと考えりゃわかることじゃん、と呆れるばかり。今以上捕鯨しても消費量は増えないと思うし、商業的には捕鯨が立ち行かないことを実証するだけにおわり、赤っ恥かくんじゃないだろうか。

あたしは海の生態系の頂点に君臨する鯨だけを守ることで、食害などで水産資源に悪影響があろうから、サイエンスに基づかない鯨類の保護には反対。だからこそ、どんなにフラストレーションがたまってもIWCに踏みとどまって欲しかったと思っている。

来年はG20もラグビーW杯もあり、再来年は東京オリンピックがある。イギリスですでに始まった対日ネガティブキャンペーン、年明けから本格化したらどういう影響があるか、ちょっと怖い。政府は各国に「丁寧に説明」するんだと。安倍首相のお得意な(苦笑)。

来年以降の大きなイベントをボイコットされないように、あるいは動物保護団体が破壊行為をしないように、こんな日本のオウンゴールで中国が国際的に優位に立ったりしないように、初詣でお願いした方がいいと思うし、神様に願いを聞いてもらうためには今までの行いを悔い改めた方がいいと思いますよぉ〜(永田町のほう向いて叫んでますぜ)。

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