もう1年も前のことだろうか、ニュージーランドのTPP交渉担当者から面白い話を聞いたことがある。ニュージーランド・ワインが今のように一大輸出産業として成長したのは、ニュージーランドが農業政策を転換させ、農業助成を大幅に削減したことがきっかけだったというのだ。農家の底力を過小評価してはならない、という趣旨である。日本側も、牛肉輸入自由化でブランド牛がうまれ、アメリカンチェリーの輸入が自由化されてから佐藤錦が生まれた、日本の農家だって負けてはいませんぜ、はっはっは、と応じた。
あたしは「本当にそう信じてるなら日本のTPP参加に反対するなよ」と思って、その日本人のおっさんを「このタヌキめ」と睨んでやった。最近とあることがきっかけで、このニュージーランドの話できすぎじゃん?本当だろうか?と思い、ちょっとググってみた。で、結果から言うと、その話は本当だった。
もともとニュージーランドは、旧宗主国のイギリスが主要な農産物輸出相手国だった。が、そのイギリスが1973年にEECに加盟し、欧州の加盟国内で生産される農産品がイギリスに無関税で流入することとなり、価格競争力が激減し最大の貿易相手国を失う羽目に陥った。運悪く、当時は世界的に農産品の価格が低迷しており、ダブルパンチの大打撃を受けた。おまけに当時の労働党政権は規制緩和を推し進めており、農業分野も聖域扱いしなかった。小さな政府を目指していた政府は、農業補助も徐々に削減・廃止していった。
その結果、いまや農家に対する所得補償のようなものはほぼゼロ、農業関係で政府が出しているお金は病害虫対策や洪水対策・土壌保全という分野にとどまる。
2004年から2006年の統計とやや古いものの、農家の総収入に占める農業助成金の割合ではニュージーランドはOECD加盟国の中で最も低い10%未満。ちなみに日本は50%をゆうに超え、加盟国中上から数えたほうが早い状態。それでも、ニュージーランド農家の所得は同国の全産業の所得平均値より上、手厚い保護を受けてなお生活が苦しいという日本の農家とは偉い違いの状況なのである。
なぜか?
ワインを例に取ると、なかなか面白いことが分かる。そもそもニュージーランドは比較的低品質なワインを大量生産しており、過剰生産を憂慮した政府が、1985年に減反令を出しブドウの木を25%伐採した。ある意味英国市場を失った状態に等しいショック療法だったわけだ。そこで農家は考えた。収入確保のために高品質ワインを作ろう、と。そのがんばりは国際コンテストで頻繁に賞を獲るようなワインとなり、わずか5年で低品位ワインを作っていたがために減反されたブドウ畑と同じ広さの、高品質ワインづくりのためのブドウ畑の開拓という結果を生んだ。
今のニュージーランドのワイン産業は、原産地統制呼称法(フランスのAOCが有名、域内で生産された指定品種の条件を満たしたワインしかその生産地を名乗れないという品質管理基準)を1996年に成立させ、亜硫酸無添加ワイン造り、スクリューキャップのいち早い導入・定着など、旧世界ワインと対極的な魅力で世界中にその名を知らしめるまでに至っている。その結果(そして大干ばつに見舞われたという理由も大きいとは思うけど)ワイン生産地としては一歩も二歩も先を行っていたはずのオーストラリアのワインメーカーからみれば、都落ちともとれるニュージーランド・ワイナリーへの「転職」もあるそうで、外的・内的ショックに耐えて頑張ったブドウ栽培者・ワイン醸造者の底力が、現在の国際的に消費者のみならず生産者からも高い評価を受けるニュージーランドのワイン産業へとつながり、今なお成長を続けている、というわけ。
ワイン醸造だけじゃなくて数年前から出回り始めたゴールデンキウィのような、新商品開発などでも示される競争力強化のためのたゆまぬ自助努力は、多分日本の農家と変わらないと思う。実際芸術品とも言えるような果物、あんなものが普通に手に入る国は世界広しといえどもそうそう存在しない。成田空港のJAのお店で、驚いている外国人をなんども目撃した。やりすぎじゃん?って思える時もあるけど、「これができる」と示すことも重要ではあるだろう。
が、時代に合わない伝統や慣行にとらわれない発想、それらを後押しする業界団体や農業政策、という側面はどうだろうか?ニュージーランドの農業行政には、同じ島国の日本が学べることいろいろあるような気がする。だいたい諸外国にやたら「センセイ」たちが視察と称する観光をするわりには、諸外国から学ぶということが極端に少ないよね日本って。それが「欧米先進国」の概念に入っていないニュージーランドとなると、なおさら学ぼうってぇ態度じゃない気がする。そんなのダメだぜ。
TPPという外的ショックに日本の農家はどう反応するのか?あるいはどういう反応を可能にするような法整備・環境整備をするのか?永田町のセンセイ達には国民そっちのけの政局ばかりやってないで、もうちょっと日本の将来のことを考えてほしいと思うkeba。食べることは生きることだし、あたしゃ食いしん坊だからね、農業は大事なのである。
あたしは「本当にそう信じてるなら日本のTPP参加に反対するなよ」と思って、その日本人のおっさんを「このタヌキめ」と睨んでやった。最近とあることがきっかけで、このニュージーランドの話できすぎじゃん?本当だろうか?と思い、ちょっとググってみた。で、結果から言うと、その話は本当だった。
もともとニュージーランドは、旧宗主国のイギリスが主要な農産物輸出相手国だった。が、そのイギリスが1973年にEECに加盟し、欧州の加盟国内で生産される農産品がイギリスに無関税で流入することとなり、価格競争力が激減し最大の貿易相手国を失う羽目に陥った。運悪く、当時は世界的に農産品の価格が低迷しており、ダブルパンチの大打撃を受けた。おまけに当時の労働党政権は規制緩和を推し進めており、農業分野も聖域扱いしなかった。小さな政府を目指していた政府は、農業補助も徐々に削減・廃止していった。
その結果、いまや農家に対する所得補償のようなものはほぼゼロ、農業関係で政府が出しているお金は病害虫対策や洪水対策・土壌保全という分野にとどまる。
2004年から2006年の統計とやや古いものの、農家の総収入に占める農業助成金の割合ではニュージーランドはOECD加盟国の中で最も低い10%未満。ちなみに日本は50%をゆうに超え、加盟国中上から数えたほうが早い状態。それでも、ニュージーランド農家の所得は同国の全産業の所得平均値より上、手厚い保護を受けてなお生活が苦しいという日本の農家とは偉い違いの状況なのである。
なぜか?
ワインを例に取ると、なかなか面白いことが分かる。そもそもニュージーランドは比較的低品質なワインを大量生産しており、過剰生産を憂慮した政府が、1985年に減反令を出しブドウの木を25%伐採した。ある意味英国市場を失った状態に等しいショック療法だったわけだ。そこで農家は考えた。収入確保のために高品質ワインを作ろう、と。そのがんばりは国際コンテストで頻繁に賞を獲るようなワインとなり、わずか5年で低品位ワインを作っていたがために減反されたブドウ畑と同じ広さの、高品質ワインづくりのためのブドウ畑の開拓という結果を生んだ。
今のニュージーランドのワイン産業は、原産地統制呼称法(フランスのAOCが有名、域内で生産された指定品種の条件を満たしたワインしかその生産地を名乗れないという品質管理基準)を1996年に成立させ、亜硫酸無添加ワイン造り、スクリューキャップのいち早い導入・定着など、旧世界ワインと対極的な魅力で世界中にその名を知らしめるまでに至っている。その結果(そして大干ばつに見舞われたという理由も大きいとは思うけど)ワイン生産地としては一歩も二歩も先を行っていたはずのオーストラリアのワインメーカーからみれば、都落ちともとれるニュージーランド・ワイナリーへの「転職」もあるそうで、外的・内的ショックに耐えて頑張ったブドウ栽培者・ワイン醸造者の底力が、現在の国際的に消費者のみならず生産者からも高い評価を受けるニュージーランドのワイン産業へとつながり、今なお成長を続けている、というわけ。
ワイン醸造だけじゃなくて数年前から出回り始めたゴールデンキウィのような、新商品開発などでも示される競争力強化のためのたゆまぬ自助努力は、多分日本の農家と変わらないと思う。実際芸術品とも言えるような果物、あんなものが普通に手に入る国は世界広しといえどもそうそう存在しない。成田空港のJAのお店で、驚いている外国人をなんども目撃した。やりすぎじゃん?って思える時もあるけど、「これができる」と示すことも重要ではあるだろう。
が、時代に合わない伝統や慣行にとらわれない発想、それらを後押しする業界団体や農業政策、という側面はどうだろうか?ニュージーランドの農業行政には、同じ島国の日本が学べることいろいろあるような気がする。だいたい諸外国にやたら「センセイ」たちが視察と称する観光をするわりには、諸外国から学ぶということが極端に少ないよね日本って。それが「欧米先進国」の概念に入っていないニュージーランドとなると、なおさら学ぼうってぇ態度じゃない気がする。そんなのダメだぜ。
TPPという外的ショックに日本の農家はどう反応するのか?あるいはどういう反応を可能にするような法整備・環境整備をするのか?永田町のセンセイ達には国民そっちのけの政局ばかりやってないで、もうちょっと日本の将来のことを考えてほしいと思うkeba。食べることは生きることだし、あたしゃ食いしん坊だからね、農業は大事なのである。
所得向上とならない。
やっぱり日本の農業行政が良くないのかしら。
フランスのAOCって、何でもかんでも『シャンパン』と、呼べない。というあれですね。
少なくとも、真面目に農業をしようとしている人とそうじゃない人をきちんと「仕分け」して、
一生懸命農業をしている人が、古い法律や制度に邪魔されることなく事業拡大ができる法規制と、
集票マシーンの農協ではなく、額に汗している農家に
メリットが及ぶような農業政策が、
最も求められているのではないかと思います。
正直者がばかを見るような、そういう日本じゃ早晩立ち行かなくなります。
シャンパン、そうです、そうです。
ニュージーランドのワインの話は初めて聞きましたが、なかなか示唆に富んでいますね。でも、こんな荒療治をしたら日本では大反発を買うでしょう。
はて、どうしたものか。ノウキョウをどげんかせんといかん、て古いですが。
でも、あたしは荒療治に立ち向かえる人が農業従事者として残って
そうじゃない人が手放す農地も耕作してくれれば
日本の農業はもっと良くなると思います。。。
反発を買うから何もしない、ノウキョウを敵に回したくない
そういう政策ではもう立ちゆかないところにまで来ていると思います。
これだけ保護・助成しても農業人口は増えないし
過去10年で従事者の平均年齢は10歳上がってるんですもの。
去年のあたしのエントリーもご参考まで
http://blog.goo.ne.jp/kebaneco/e/603e4238541c626a74ca587faddbf085