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そこはかとなくかきつくれば

日々のとりとめのない気付きを結晶に

高校で教えない高校数学0:序文

2011-08-17 | 数学

数学を専門に学んでいる身であるにも関わらず、

数学の記事が全然増えないのは我ながらどうかと思う。

 

数学の記事を避けている理由の一つとしては、以前述べたとおり

数式をうまく出力する方法を知らない

ということもあるが、もう一つはこのブログの読者の皆様が

数学の知識をどれだけ備えているか

あるいはどれだけ数学に興味があるか

分からないということもある。

(ちなみに、現在平均して毎日25人くらいの方が

このブログをご覧になっております。感謝)

 

読者のことを気にせずに自分の書きたいことを書けばよい、

という考え方もあるが、それこそ専門用語の垂れ流しで

ただの自己満足に終わってしまうだろう。

 

このブログに数学関連の記事を書く意義を見出すとすれば、

「数式を用いない」

「非専門家にもある程度分かる話題をする」

というルールの下に、如何に数学を伝えるか工夫することだろう。

「上のルールの下では数学の話なんかできるわけがない」

と切り捨てるのは、やはり専門家にありがちな一種の逃避行動とも思う。

これは数学に携わる人たちがおろそかにしてきた部分であり、

私自身も色々反省し工夫していかなければならない。

 

というわけで、次回からぼちぼち

「高校で教えない高校数学」というお題で書いていこうと思う。

うまくいくかどうか分からないが…。


存在しないもの

2011-07-28 | 数学

「存在しないものを研究することに何の価値があるのか」

という人もいるだろう。

しかし、Fermat予想(注)はFrey曲線という「存在しないもの」

を研究することによって証明されたという事実は忘れてはいけない。

 

注:Fermat予想(1670年頃?)とは、3以上の自然数nに対して、

x^n+y^n=z^n

(x^nはxのn乗を表す)を満たす非自明な整数x,y,zが存在しないという予想。

(対照的に、n=2の場合は、上記の等式を満たす互いに素なx,y,zの組

(ピタゴラス三角形)が無数に存在する。)

 

この予想はA. J. Wilesによって1993-1994年に証明が与えられた。


木を見て森を見ず

2011-07-13 | 数学

「宝くじを買うのは損だ」

「いや、宝くじで1等があたる人もいる。

だから宝くじを買うことは損とも得とも言えない」

 

「女性は男性よりも筋力がない」

「いや、女性でもウェイトリフティングをしている人などは

一般男性よりはるかに重いものを持ち上げる。

だから女性の筋力は男性より弱いとは言えない」

 

(確率)分布の概念を理解していなければ、

上のように少数の例外を挙げることで

日常のほとんどの命題を否定することができてしまう。

 

上の反論が空疎であることが分かる程度までに、

そしてそれに対し論理的に反駁できる程度までに

数学を理解しておかなくては、

ほとんどの議論が互いの揚げ足取りに終始してしまう。


「当たり前」?

2011-07-11 | 数学

論文を書く立場になると痛感するのだが、

証明を書く際に「当たり前」と思って議論を端折った部分に

一番間違いが生じやすい。

 

「当たり前」は便利な言葉だが、

人に説明する際にこの言葉しか使うことができないときは、

自分の思考が浅いことを自覚しておかなければならない。