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そこはかとなくかきつくれば

日々のとりとめのない気付きを結晶に

グリッド構造について補足

2011-09-17 | 数学

先日、街並みのグリッド構造について述べたが、

数学的には気になる点が一つある。

「(長方形分割の)グリッド型都市は本当に効率がよいのか?」

 

ここでは話を極力単純化して、川や山などの障害物は一切ない

平面上に都市を作ることを考えよう。

道路を敷いて区画を分けていくことを考えるのであるが、

(0)都市構造はできるだけ単純にしたい(規則性、周期性がある)。

(1)目的地に着く最短経路が直線距離と比べてあまり大きくならないようにしたい。

という条件を課すことにする。

 

(0)を、例えば「各区画が全て合同な図形(正多角形)」という条件だと解釈すると、

それでも正方形以外に正三角形と正六角形という候補がある。

(これ以外の正多角形では平面を敷き詰めることはできない)

さらに各交差点は各区画の頂点がくっついてできているものとする。

 

正三角形の区画で都市を造ると、最短経路は直線距離と比べてたかだか1.154…倍で収まる。

これは正方形グリッドの場合の値(1.414…)よりかなりよい。

ただ、この場合は

・一つの区画面積が道路敷設距離に対して小さくなる。

(正方形グリッドと比べ効率が0.577…)

・3本の道路が交わる交差点での交通整理が大変。

という欠点が生じる。

 

正六角形の区画で都市を造ると、最短経路と直線距離の比は最大で1.5倍になる。

正方形と比べてやや悪い。一方で、メリットは

・区画面積が広くなる(正方形グリッドと比べ1.732…)

・交差点は全て三叉路になる。

 

正方形グリッドの場合は、右折車が交差点で待機時間が長くなり

イライラするのは皆さんも経験があると思う。事故の危険性も高い。

一方、三叉路は、3周期信号になる。

左折できる時間が右折の2倍になる。

 

正方形型のように、直線道路を車で飛ばすという運転はできなくなるが、

実際は直線道路でも信号にひっかかるのだから、

正六角形でも効率がさほど悪くなるわけではないと思う。

 

というわけで、正六角形をベースとした都市計画は個人的には

なかなか楽しそうなのだが、いかがだろう。

 

ちなみにパリに行った人なら分かるのだが、この街はグリッド構造から程遠く、

交差点では道路が5本も6本も斜めに交差している。

信号システムなどが複雑そうだが、それでも向こうの人はそれなりに生活している。


高校で教えない高校数学3:楕円

2011-09-05 | 数学

円周の長さや、円の面積は小学校の時点ですでに習う。

半径をrとすると、それぞれ2πr、πr^2で与えられる。

 

楕円は数IIICで習うのだろうか。

楕円の面積は、積分の感覚が身についていれば、

高校生でも自力で導出できるだろう:

長径と短径をそれぞれa,bとすれば面積は

πabで与えられる。

 

では、楕円の周長はどうなるか。

実はこれは難しい。

突き詰めると楕円積分から楕円関数へと連なる、

奥深い大学以降の数学の一端に足を踏み入れることになる。

 

そもそも、曲線の長さというものが本質的に難しいのだ。

円周の長さが求まることがむしろ例外的である。

 

長さが定まらない曲線だってある。

複雑な海岸線などがそうである。

海岸線の長さは、拡大して精密に測ろうとすればするほど、

長さがどんどん増大していく。

だから、長さは定まらない。

 

wikipediaとかに海岸線の長さが書いてあるって?

あれはどの尺度で測定したか付記しておかなければ意味がない値なのである。

そうでなければ、人によって測りとった長さが変わってくる。


高校で教えない高校数学2:期待値

2011-08-29 | 数学

期待値の問題の典型は、次のような問題である:

「1本100円の宝くじがあり、

この宝くじは200万本に一本1億円のあたりが入っている(残りは外れ)。

この宝くじを買うことは得か、損か。」

 

こういう問題では、宝くじ一本当たりの期待値を計算し、

宝くじの値段と比較することになっている:

(解答例) 期待値は1×100,000,000/2,000,000=50(円/本)、

これは宝くじ1本の値段100円より安いので損である。

 

ちなみに、教育上の配慮なのか、期待値を計算した結果

宝くじの値段より高くなる問題は見たことがない。

 

さて、こういう問題に胡散臭さを感じるのは私だけだろうか。

期待値だけで安易に買うことの是非を判定していいのだろうか。

 

対照的に次の「貧乏くじ」の問題を考えよう:

「1本100円の貧乏くじがある。

この貧乏くじは200億本に一本、『100億円の借金』という貧乏くじがあり、

残りは101円のあたりである。この貧乏くじを買うことは得か、損か」

 

この場合、期待値を計算してみるとだいたい100.5円くらいになり、

単価100円より大きいので買うのは「得」ということになる。

 

しかし、現実にこんなくじが存在したとして、あなたは買う気になるだろうか。

あなたが十分に資産を持ち合わせている場合、

確実に得する方法は全てのくじを買い占めることである。

しかし、普通の人は何億も持ち合わせていないからこれは無理である。

まして、貧乏くじを引いて100億円の借金を背負った時点で人生が終わる。

 

この場合のリスクはどう評価したらいいのだろうか?

となると、この問題は数学的に面白くなってくる。

最初の持ち金、および「人生が終わる」の評価をどうするか、に依存してくるのである。

 

この貧乏くじの問題の系統は、非現実的だといってバカにしてはいけない。

運というのは、大抵災害や事故など、不幸の形で影響をおよぼすからである。

保険会社などは、こうした「不運」を金額的に評価して商売をしているのである。

宝くじの問題よりもよほど現実社会に応用がある。

 

ちなみに上で、「人生が終わる」を「それ以降くじを買えなくなる」という風に解釈をして

所持金があるうちはくじを買うということにした場合、

最初の持ち金100円でも期待値は実はプラスになる(100.25円くらい)。

かといって、私はこのくじは買いたくはならないのだが。


百ます計算

2011-08-25 | 数学

実は、私は九九の歌を知らない。

じゃあ九九を憶えるのはどうしたか。

 

全て最初は足し算していた。

3×5なら5を3回足す、といった具合である。

何べんもやっていると、若い脳は嫌でも憶える。

 

憶える、といっても、九九の表の規則性をつかめば

憶えないといけない数はそんなに多くない。

まず、対角線に関して対称的だから81マスのうち

憶えるのが必要なのは45個に減る。

1の段は憶える必要がない。

9の段も1の位が降順、10の位が昇順であることがわかるから簡単。

5の段も簡単。

これらを除外すると残りの升目は21個。

2の倍数の段は2を掛ける前の段の数字同士を足し合わせていた。

(例:4×3=2×3+2×3)

となると結局憶えないといけないのは

3×3、3×7、7×7だけということになる。

3の段や7の段は規則性が分かりにくいが、

それでも1の位を見ると

1~9の数字が一つずつ現れていることなどは気づいていた。

おおげさにいうと、私にとって九九は憶えるものではなく、

規則性を掘り出す宝探しの場だった。

 

百ます計算というものが一時期話題になっていた。

今でも教育現場などで活用している人はいると思う。

単純計算は、高級な数学でも決して侮れないものであるし、

それを鍛えるという意味で百ます計算は悪くないと思う。

 

ただ、私は九九の表の整然とした規則性にも憧憬の念を憶えるので、

それを無闇に順番を並べ替えて規則性を崩すのはなんとなく

抵抗を覚えたりするのである。


高校で教えない高校数学1:実数

2011-08-21 | 数学

随分前にも実数の記事を書いたが、読むに値しない

(あの頃は一般公開していなかったということもある)

のでもう一度書くことにする。

 

高校数学I・Aで実数という単語が出てくる。

後々の微分積分につながるので、重要な概念なのであるが、

さて「実数とは何か」をどう教えたものか。

 

実数の定義、というより提示で多いのは

(1)無限小数で表せる数、あるいは

(2)実直線上の点に対応する数

 

…あたりか。ただしこれで分かったのかといわれると

そういうわけではない。致命的なのは、この『定義』では

「加減乗除がきちんとできるかどうかわからない」のである。

 

無限小数同士の掛け算ができるかどうか、試しにやってみてほしい。

例えば2の平方根√2=1.41421356…同士を掛け合わせてみて欲しい。

2になるだろうか。

工夫すれば不可能ではない。

でもその計算方法で結合法則 (a×b)×c=a×(b×c)

や分配法則 (a+b)×c=a×c+b×c が成り立っていることは示せるだろうか?

もしそれがきちんと示せているのなら、

あなたは既に「誤差論」をマスターしていることになる。

実数はその本質から「無限小の誤差」の概念と不可分なのである。

 

実数の定義は、本当に難しい。

昔からなんとなく使われてきたものの、

現代数学での使用に耐えうる厳密な定義が確立したのは

19世紀末以降だと思われる。

 

実際にはこの「誤差」の話を真面目に扱おうとすると

理系の(ちゃんとした大学の)大学生でも音をあげる難しさになるので、

高校の授業で教員は「大丈夫。実数でも加減乗除はできる」

とだけ言ってさっと飛ばすのである。

 

最後に。

実数は有理数(分数)と違って、「誤差」の概念を本質的に含む、

ということを理解していれば、

各種実験・統計の場面において計算値を分数でなく小数で書くのも

理解してもらえると思う。