皆様、遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
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前回の記事で、よく考えると
「0で割ってはいけない理由」については何も述べていなかったので補足。
数学の世界では、「加減乗除」のうち割り算を除いた
「加減乗」のみの演算(&分配法則などの基本的な性質)
を許す「環」という代数系を扱うことのほうが多い。
例えば、「整数環」などが例である。
環においては0に何を掛けても0になることが証明できる:
0・x=0・x+0・x-0・x=(0+0)x-0・x=0・x-0・x=0
では、割り算とは何か。
数学の世界では「乗法逆元が存在すること」というふうに
言い換えて定義されている。
環の要素bに対してその乗法逆元1/bは
b×(1/b)=1を満たす要素である。
a÷bはa×(1/b)というふうに解釈するのである。
では、1/0を許容するとどうなるか。
そうすると、その環の任意の要素aに対して
a=1×a=0×(1/0)×a=0
となる。要するに、その環は0だけを要素に持つ環になる。
この環を零環という。
この環自体は単純極まりなく、調べる対象にならないが、
圏論的には環の圏の終対象という非常に重要な役割を担う。
まとめると。
実は0で割っても良いのである。
ただし、その場合には(他の演算法則を守る限りは)
零環という自明なものを扱うことになってしまうので、
数学的に有用なものが何も出て来なくなってしまう。
だから、割り算を考えるときはほとんどの場合、
0で割ることは考えない。
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0以外の任意の要素で割ることができる環を体という。
有理数体、実数体などが例である。
実はこの「0以外の」という条件が曲者で、
圏論的には微妙な波紋を投げかけている。
体の圏には始対象が存在しないのである。
(対照的に、環の圏には始対象として有理整数環Zがある。
言い方を変えると、任意の環Rに対して
ZからRへの環準同型が一意的に存在する)
とある先生は、この始対象が作れれば
リーマン予想が解けると仰っているのだが、はてさて。
(注:これはものすごく荒っぽい言い方なので、
数学の素養のある方は突っ込まないように)