3月1日、1000人以上の区民が、近藤区長を相手取り原告になった戸籍の外部委託裁判の判決が出ました!判決そのものは「原告の請求を棄却する」というものでしたが、
内容に踏み込んだ判断がされ、「偽装請負があった」と、
外部委託が労働者派遣法に反することを初めて裁判所が断じた画期的な判決です!
4年間、住民のみなさんとともに闘ってきました。
被告(近藤区長側)は、入り口論で「各支出命令について適法な住民監査請求を経ていないため不適法」
と、門前払いをする主張をしていましたが、これを退ける判断を司法が下し、内容に踏み込んだことも重要であり、今後の住民訴訟に生きるものです。
私は、記者会見にも出席し、報告集会でも発言しました。
舞台裏はあわただしかったです。午後3時に30秒にも満たない判決が下され閉廷。それから判決文を受け取りに行って、全56ページにわたる文章を分析。4時からの記者会見にむけて、時間に追われながらの作業でした。大慌てで判決文の重要な点を抜き出し、文章を作成。4時半からの報告集会に向けて、声明をコピー。そして報告集会を迎えました。
近藤区長は「区の主張が認められた。今後も適正に戸籍の外部委託を実施していく」と言っていますが、労働者派遣法違反の判断を厳密に受け止めるべきです。
以下は、弁護団が作成した文章です
住民運動と裁判の意義
東京法務局や東京労働局による是正指導や裁判闘争により、当初の本件委託業務の範囲は変更・縮小され、直営に戻った業務がいくつかありました。具体的には、戸籍異動や入力・移記入力等の業務、戸籍の移動に伴う住民異動の受付・入力作業の業務の一部、委任状による証明書等の発行申請や第三者請求の場合の受付、入力、発行、照合業務、不交付の場合の案内については委託業務から外れて、区の職員が行う直営にもどりました。このように、重要な業務が直営に戻ったことの事実が、戸籍等の民間委託が失敗に終わったことの証であるといえます。
また、いったんは不開示とされた月次報告書も、その主要部分が開示されるに至り、民間委託によるミスやトラブルを住民が監視する途を開きました。
理由(特徴的な判断)
労働者派遣法の趣旨(50p)
本件委託契約(51~52p)
「本件委託契約において、判断基準書及び業務手順書に定められていない事項等が発生した場合には、参加人の従業員から足立区の職員へのエスカレーション(疑義照会)を行うことが想定されていたものと認められる」
「実際の運用をみても、足立区と参加人との間で、、平成25年11月29日に行われた打合せにおいて、届書の補記方法について、足立区の職員からの指示で参加人の従業員が原本に補記を行うことや、戸籍の訂正の種別について、足立
区の職員が参加人の従業員に指示することなどが確認されているほか、足立区と参加人との間で、どのようなケースでエスカレーション対応をするかの協議が行われ、円滑なエスカレーション体制構築のため、参加人側にサブリーダーを選定することなどが決められている。・・このようなエスカレーションの実態について、東京労働局は、平成26年4月30日に現地調査を行い、同年7月15日付けで、あらかじめ判断基準書及び業務手順書で定められてない事項については、足立区に対してエスカレーションと称した行為により疑義照会することが定められており、足立区が参加人の業務に関与することが想定された内容になっていること、足立区と参加人の間で行うエスカレーションは、責任者間で行う調整行為とは評価することはできず、事実上の指揮命令になっていること等から、労働者派遣法24条の2に違反するとして、足立区に対して是正指導を行っていることが認められる。」
「以上の通り、本件委託契約において予定され、現に実施されていた参加人から足立区に対して行うエスカレーション(疑義照会)は、参加人の責任者と足立区の間で行われているとはいえず、足立区の職員が参加人の従業員に対し、直接指揮監督を行っていたものと認められるところ、これを区分基準に照らしてみると、参加人は、業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものとはいえず、請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものともいえないため、本件委託契約は、足立区が、厚生労働大臣から労働者派遣事業の許可を受けているとは認めない参加人から労働者派遣の役務の提供を受けることを内容とする労働者派遣法24条の2に違反する契約であったと認められる」
「本件委託契約は、・・労働者派遣法24条の2に違反する違法なものであったといえるが、・・私法上無効であるとまではいえない」(54p)
第1 事件の概要
1 平成25年3月25日、足立区は、戸籍窓口等の窓口業務を富士ゼロックスシステム株式会社(以下「富士ゼロックス」といいます)との間で外部委託契約(以下「本件委託契約」といいます)を締結しました。
そして、平成26年1月1日から、本件委託契約に基づき、足立区役所の窓口業務(以下「本件委託業務」といいます)が開始されました。
当時、足立区長の近藤区長は、本件委託により、「サービス向上、コスト削減」と説明していました。
しかし、さらに、本件委託には、以下のような問題がありました。
(1)プライバシー侵害の危険
戸籍には、個人の出生・死亡、婚姻等の重要な親族法上の身分関係の個人情報が記載されており、本件委託により、外部の受託業者(本件では富士ゼロックス)に流出する危険があるものでした。
(2)地方自治法第2条14項、15項違反
地方自治法第2条では14項で「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規定され、同条15項では「地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。」とされています。
本件委託により、待ち時間の増加などにより、サービスは低下しました。
これは、上記地方自治法に違反する疑いのあるものでした。
(3)戸籍法違反
委託業務開始後の、平成26年2月1日、東京法務局から本件委託業務について、調査する旨の通知があり、同年2月25日、東京法務局の調査が行われました。
上記調査のなかで、受理決定の処分決定について権限のある区の職員による審査前に、受託業者が受理決定の入力を行っていたこと、窓口において受託業者による受理しないで、区民を帰させる行為が行われていたこと、補正・付箋処理についても何ら権限のない受託業者がおこなっていたことが判明しました。
(4)労働者派遣法違反24条の2違反の是正指導
さらに、同年4月30日、東京労働局による調査が行われ、以下の問題が判明しました。
本件委託業務では、「エスカレーション」と称した行為により、疑義照会をすることが定められており、足立区が富士ゼロックスの業務に関与することがあらかじめ想定された内容になっていたことがわかりました。つまりこれは、本件委託契約が、請負契約であるのに関わらず、注文主(足立区)が請負人(富士ゼロックス)に指揮・命令することになっていたのです。これにより、同年7月15日、労働者派遣法24条の2に違反すると是正指導が東京労働局から足立区に対して行われました。
第2 裁判の概要
1 提訴の経緯
このように、本件委託契約は、上記のような違法事由がある内容のものでした。
2014年11月7日、足立区民は、住民監査請求を行いましたが、同年12月25日住民監査請求は、棄却されました。
そこで、2015年1月21日、足立区の住民は、違法な契約に基づいて足立区が富士ゼロックスに本件委託契約に基づいて、委託料を支払ったことは、違法・無効な公金支出であると考えて、近藤区長に対して、本件委託契約に基づいて支出された委託料の返還(平成25年7月から平成27年9月までの委託料、総額2億3500万4500円)を求める住民訴訟を、東京地方裁判所に提起しました。
内容に踏み込んだ判断がされ、「偽装請負があった」と、
外部委託が労働者派遣法に反することを初めて裁判所が断じた画期的な判決です!
4年間、住民のみなさんとともに闘ってきました。
被告(近藤区長側)は、入り口論で「各支出命令について適法な住民監査請求を経ていないため不適法」
と、門前払いをする主張をしていましたが、これを退ける判断を司法が下し、内容に踏み込んだことも重要であり、今後の住民訴訟に生きるものです。
私は、記者会見にも出席し、報告集会でも発言しました。
舞台裏はあわただしかったです。午後3時に30秒にも満たない判決が下され閉廷。それから判決文を受け取りに行って、全56ページにわたる文章を分析。4時からの記者会見にむけて、時間に追われながらの作業でした。大慌てで判決文の重要な点を抜き出し、文章を作成。4時半からの報告集会に向けて、声明をコピー。そして報告集会を迎えました。
近藤区長は「区の主張が認められた。今後も適正に戸籍の外部委託を実施していく」と言っていますが、労働者派遣法違反の判断を厳密に受け止めるべきです。
以下は、弁護団が作成した文章です
住民運動と裁判の意義
東京法務局や東京労働局による是正指導や裁判闘争により、当初の本件委託業務の範囲は変更・縮小され、直営に戻った業務がいくつかありました。具体的には、戸籍異動や入力・移記入力等の業務、戸籍の移動に伴う住民異動の受付・入力作業の業務の一部、委任状による証明書等の発行申請や第三者請求の場合の受付、入力、発行、照合業務、不交付の場合の案内については委託業務から外れて、区の職員が行う直営にもどりました。このように、重要な業務が直営に戻ったことの事実が、戸籍等の民間委託が失敗に終わったことの証であるといえます。
また、いったんは不開示とされた月次報告書も、その主要部分が開示されるに至り、民間委託によるミスやトラブルを住民が監視する途を開きました。
理由(特徴的な判断)
労働者派遣法の趣旨(50p)
本件委託契約(51~52p)
「本件委託契約において、判断基準書及び業務手順書に定められていない事項等が発生した場合には、参加人の従業員から足立区の職員へのエスカレーション(疑義照会)を行うことが想定されていたものと認められる」
「実際の運用をみても、足立区と参加人との間で、、平成25年11月29日に行われた打合せにおいて、届書の補記方法について、足立区の職員からの指示で参加人の従業員が原本に補記を行うことや、戸籍の訂正の種別について、足立
区の職員が参加人の従業員に指示することなどが確認されているほか、足立区と参加人との間で、どのようなケースでエスカレーション対応をするかの協議が行われ、円滑なエスカレーション体制構築のため、参加人側にサブリーダーを選定することなどが決められている。・・このようなエスカレーションの実態について、東京労働局は、平成26年4月30日に現地調査を行い、同年7月15日付けで、あらかじめ判断基準書及び業務手順書で定められてない事項については、足立区に対してエスカレーションと称した行為により疑義照会することが定められており、足立区が参加人の業務に関与することが想定された内容になっていること、足立区と参加人の間で行うエスカレーションは、責任者間で行う調整行為とは評価することはできず、事実上の指揮命令になっていること等から、労働者派遣法24条の2に違反するとして、足立区に対して是正指導を行っていることが認められる。」
「以上の通り、本件委託契約において予定され、現に実施されていた参加人から足立区に対して行うエスカレーション(疑義照会)は、参加人の責任者と足立区の間で行われているとはいえず、足立区の職員が参加人の従業員に対し、直接指揮監督を行っていたものと認められるところ、これを区分基準に照らしてみると、参加人は、業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものとはいえず、請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものともいえないため、本件委託契約は、足立区が、厚生労働大臣から労働者派遣事業の許可を受けているとは認めない参加人から労働者派遣の役務の提供を受けることを内容とする労働者派遣法24条の2に違反する契約であったと認められる」
「本件委託契約は、・・労働者派遣法24条の2に違反する違法なものであったといえるが、・・私法上無効であるとまではいえない」(54p)
第1 事件の概要
1 平成25年3月25日、足立区は、戸籍窓口等の窓口業務を富士ゼロックスシステム株式会社(以下「富士ゼロックス」といいます)との間で外部委託契約(以下「本件委託契約」といいます)を締結しました。
そして、平成26年1月1日から、本件委託契約に基づき、足立区役所の窓口業務(以下「本件委託業務」といいます)が開始されました。
当時、足立区長の近藤区長は、本件委託により、「サービス向上、コスト削減」と説明していました。
しかし、さらに、本件委託には、以下のような問題がありました。
(1)プライバシー侵害の危険
戸籍には、個人の出生・死亡、婚姻等の重要な親族法上の身分関係の個人情報が記載されており、本件委託により、外部の受託業者(本件では富士ゼロックス)に流出する危険があるものでした。
(2)地方自治法第2条14項、15項違反
地方自治法第2条では14項で「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規定され、同条15項では「地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。」とされています。
本件委託により、待ち時間の増加などにより、サービスは低下しました。
これは、上記地方自治法に違反する疑いのあるものでした。
(3)戸籍法違反
委託業務開始後の、平成26年2月1日、東京法務局から本件委託業務について、調査する旨の通知があり、同年2月25日、東京法務局の調査が行われました。
上記調査のなかで、受理決定の処分決定について権限のある区の職員による審査前に、受託業者が受理決定の入力を行っていたこと、窓口において受託業者による受理しないで、区民を帰させる行為が行われていたこと、補正・付箋処理についても何ら権限のない受託業者がおこなっていたことが判明しました。
(4)労働者派遣法違反24条の2違反の是正指導
さらに、同年4月30日、東京労働局による調査が行われ、以下の問題が判明しました。
本件委託業務では、「エスカレーション」と称した行為により、疑義照会をすることが定められており、足立区が富士ゼロックスの業務に関与することがあらかじめ想定された内容になっていたことがわかりました。つまりこれは、本件委託契約が、請負契約であるのに関わらず、注文主(足立区)が請負人(富士ゼロックス)に指揮・命令することになっていたのです。これにより、同年7月15日、労働者派遣法24条の2に違反すると是正指導が東京労働局から足立区に対して行われました。
第2 裁判の概要
1 提訴の経緯
このように、本件委託契約は、上記のような違法事由がある内容のものでした。
2014年11月7日、足立区民は、住民監査請求を行いましたが、同年12月25日住民監査請求は、棄却されました。
そこで、2015年1月21日、足立区の住民は、違法な契約に基づいて足立区が富士ゼロックスに本件委託契約に基づいて、委託料を支払ったことは、違法・無効な公金支出であると考えて、近藤区長に対して、本件委託契約に基づいて支出された委託料の返還(平成25年7月から平成27年9月までの委託料、総額2億3500万4500円)を求める住民訴訟を、東京地方裁判所に提起しました。