オッチ君とピースケ (家での実際にあった話 )
「ねえ、ママ、きてよ。たいへんだよ。 チャボが三羽 殺されているよ。」とオッチ君が、大声でどなってる。「えっ」といそいでかいだんを降りていくと、縁側に、三羽のメスのチャボが、よこたわっていた。猫にやられたらしい。ピースケは、どうしたかなと、あたりを見ると、うえきのかげに、一本足で立っている。
「おうい、オッチ君、ピースケ生きているよ。」とママの声でも、オッチ君は、信じない。
「椋鳩十さんの本にオスはメスをまもって、闘うって」書いてあったもの、ピースケは、いとこのけんぼうが、春休み、仙川の露店で買ってくれたひよこです。「おまけだよ。メスだよ。はい、三羽」3年生のオッチ君は、どんなに嬉しかったか、毎日、エサを口に入れてあげ、空き箱に、古着を敷き、寝床もつくりました。部屋中、ピーピーなくからピースケと名前をつけました。追いかけっこをしたりで、四才の妹の のんちゃんは、大喜びです。でも、寒い朝、二羽が、つめたくなっていたのです。妹の のんちゃんが、
「お兄ちゃん、ひよこどうしたの、三つが、ひとつになってるよ。」ママが、
「あの木の下でねむっているよ。」というと、
柿の木に行って さがそうとするのです。
「だめ。」オッチ君はこわい顔でおこりました。泣きながらちり紙につつみ土にうめたのです。のこった一羽のピースケを、必ず大きく育てると決心したのです。
ピースケはいつもオッチ君の後を追い ついていきます。「ピースケ」とよぶと、嬉しそうに、オッチ君のそばに行き、箱の中から出て、部屋中を歩きまわっていました。ピースケのうんこも、ちり紙で取って、弟のように可愛がりました。
四月 新学期がはじまります。
オッチ君は、毎日、ピースケを小さな箱に入れて、雨の日は、ポッケットに入れて、学校にいきました。だって、エサを何回もあげなくては ならなっかったのです。机の下の箱に入れて、休み時間に世話をしたのです。ママは、学校の先生です。今日は、オッチ君の学校の父母会です。「オッチ君のママ、大変だよ。いつもオッチ君 宿題やってこないよ。」と、クラスの友達が知らせてくれたのです。ママは、真っ赤な顔をしていました。隣にいたO君のママは、「えらいわよ。オッチ君、うちの子は、ひよこよりも宿題やるって
いつも ひよこを 忘れないなんて。今に大ものになるわよ。」と慰めてくれたのです。
ピースケが大きくなると、にわに、パパと小屋を作って留守番をさせました。だんだんピースケは大きくなり、鶏冠もでてきました。
「コケコッコウ」となくようになり、庭で遊んでいても、オッチ君が、口笛を吹くと二階まで飛んでいって、オッチ君の口をつっついたりします。ママは、一羽では、かわいそうと、チャボをもらってきたのです。ピースケとチャボは、結婚して卵を産むようになりました。五月の連休のころ、チャボの羽の下から、きいろいものがみえてきます。かわいいひよこの羽がみえたのです。「ママ、チャボってえらいね、じっと座って温めているんだもの。ぼくにはできないよ。」と、オッチ君は感心しています。二十一日間も、天気のいい日に、ちょっと 小屋から出て、たくさんうんこをして、すぐに小屋に帰り温めるからです。ピアノの先生が来る日、すっかり忘れて遊んじゃうオッチ君の驚きでした。
そのチャボがふえて四羽、そのうち三羽が、殺されたのです。オッチ君は、たしかめに二階からかけていきました。ピースケは、一本足で、羽のつけねから血が流れ、骨が見えています。
「ママ、医者に連れて行こうよ。」と、オッチ君はつけねを布で押さえているのです。ママがオッチ君と近所の獣医さんにピースケをつれていきましたが獣医さんは、傷口をぬい、「入院」と言ったのです。なかなか退院できないので、ママは心配です。だって保険がきかないので、お金がかかるからです。でもね、ピースケのように、メスを守る勇気をオッチ君が 身につけてくれればと思ったのです。
七日目、オッチ君が病院に迎えに行くと「コケッコッコー」とないて、こと切れたそうです。オッチ君の懐に抱かれたピースケは、こぶしの木の下にうめられました。あと一羽のチャボは、猫に追われてどこに行ったのでしょうか?
近所の子ども達とオッチ君は、探しに行きました。一週間位たって、五百メートル離れた家のニワトリを、オッチ君たちは、見にいったのです。「猫に追われて行方ふめいのチャボさがしです。」と話すとえさもくれて返してくれたのです。
ピースケがいなくなって、困ったことが、おこりました。いつも、庭に放し飼いにしているチャボたちも、夕方になると、ピースケが、四羽をひきつれて小屋にかえっていたのです。でも、チャボは小屋に行きません。オッチ君が、夕方 ピースケのかわりに小屋にいれるのです。ピースケって、偉かったのですね。朝早く、ピースケは、二階の屋根の上で、ときの声を上げてます。カラスだってきません。でも、隣の家から、「うるさい。もし、つつかれたらこまる」と放し飼いを やめて欲しいと 言われたのです。オッチ君に話すと「ママ、ママだって、一日中小屋の中だったらいやでしょ。かわいそう。」と、「あのね、タマゴを持って行ってあげたら。」と、のんちゃんの意見です。でも タマゴを持っていくと「おばちゃん、タマゴでなくて、ひよこ ちょうだい。」と言われたのです。ひよこを持っていくと、「メスならいるけど、オスならいらない。」ってそれからは、たまにしか放し飼いはできませんでした。
ピースケのいない静かなとり小屋です。また春が来て、チャボは、ピースケがいないのにタマゴをあたためています。オッチ君はかわいそうになりました。
毎日 すわってあたためても、タマゴはかえらないのに チャボはわからないのでしょうか?オッチ君は、近所のつがいでかっている家に行って、タマゴをとりかえて、チャボの羽の下にそっとおきました。二一日目の五月晴れの日、チャボの羽の下から、黄色い小さな羽根が見えた時、オッチ君も妹ののんちゃんも大喜びです。
(今、近くの学校に行っても 動物もいません。動物とのふれあいから学ぶものが多いのに 生徒を連れて養鶏場に見学に行った時 そこは「卵工場」でした。餌はベルトコンベヤで運ばれてきます。エサが飛ばないように嘴を切ってあるそうです。こやは狭く仕切られ卵が取り出し易いように床が坂になっています。餌の中には、病気予防の抗生物質の薬品も入っているそうです。そして、早く春が来るようにと小屋に赤いビニールを被って春に見せかけるそうです。なんだか鶏の団地みたいです。また学校の給食を思い出しました。ベルとコンベヤに追われている学校 家の鶏のように2階まで飛ぶ自由もない管理された鶏 鶏だって生きてる間はもっとおおらかにと、効率一辺倒で安値の卵だけでいいのかとも、安全性も)