レトロ

忘れてはいけない物は レトロな色合いで僕たちをみつめている

音のない世界

2015年01月29日 | ひとり言
あれから幾日か経った
すべてが真っ白で音のない世界にある 丸い椅子の形をしたものに腰掛けてみる
湖であろうそのスケートリンクにも誰もいない
ただ黙ってその湖面を見つめていた
夏にはキャンプで賑わうだろう筈の避暑地
徐ろにその雑然と置いてあるコンロに銀のコーヒーカップを置いた
ジッポのライターで持ってきた雑誌に火をつけてインスタントを作る
ふと それまでは気にもしなかった寒さを感じてくる
「なんにもしなければ なんにも生まれない」
「なにかを求めれば その波紋は起こる」
火をつけなければ寒さを感じなかった事に気付く
分かっていそうで 理解していないこと
急がす心が一番大切なものを見落としてしまう
何を焦っていたのか その時気づいた気がして
右のポケットから指輪の箱を取り出して 湖面の遠くへ投げた
音のない世界に箱の滑っていく音だけが響いた
「もう一度 始めから ・・・」
まだ温いコーヒーを降り積もった雪に振りまいて
音のない世界から腰を上げた