◇最終回ネタバレしまくりなので、観てない方は閲覧にはご注意を!
そのあたたかい手があれば。
例え光差さぬ暗闇の中でも、歩いていけるから。
私は決して忘れない。
あの時、密かに背に回された息子の手が震えていたことを。
『みんな…ありがとう…!元気でな…!』
荒廃したXゾーンには確かに翔の力が必要だ。
けれど、本当にこれで良かったのだろうか。
翔は送還の光の消えた後も、じっとその場に立ち尽くしていたが。
ぐい、と涙を拭うと、こちらを振り返り、笑顔で自分の手を取り、駆け出した。
『さ、行こうぜ!父さん』
本当は、わかっているのだ。
この子がここに残ったのは、私をまもるためだということを。
操られていたとはいえ、ふたつの世界を崩壊寸前まで追い詰めた罪は重い。
投獄もされず、無罪放免で復興に携わることが出来ることなど、稀有なことなのだ。
大神官の口添えだけでは苦しかったことだろう。
しかし、この世を救った英雄がその力をXゾーンのために使う、と言ったとしたら。
『…父さん?』
すまない、そうと知りながらまだお前と共にいられることに喜びを感じてしまう私を許して欲しい。
そう、言葉には出来ないけれど。
『いいんだ、俺が決めたことなんだから…父さんはなにも気にしなくて、いい』
ふわりと微笑むその顔は、記憶にないもの。
きずついても、傷ついても、それでもこの子は『父親』を取り戻すことを諦めなかった。
だから今、私はここにいる。ここに、いられる。
迷いながらも、ここに残ることを選んでくれた翔のために。
私には何が、出来るだろう?
そしてそれからしばらくの時が経ち。
翔がXゾーンの復興に色々な街を飛び回る中、私はインペリアルXの研究に勤しんでいた。
一刻もはやくエネルギーの流れを安定させ、翔を元の世界に返してやりたい。
それだけが今の私のすべてだった。
「父さん、これ…」
私の焦りを知ってか知らずか、復興の手伝いの合間を縫って顔を出す翔は、今にも閉じそうな瞼を擦りながら資料を差し出してくる。
自分も世界を駆け回って疲れているだろうに、いくら先に寝ろと言ってもきかない。
まったく、そういうところは幼い頃から変わらないな。
「少し休んでいなさい。後は結果待ちだ」
「んー、そうする…」
それでも素直に頷くあたりに成長がうかがえるというものだ。
仮眠用に備え付けられたソファに横になるのを見届けて、私は計器に視線を戻した。
程なくしてきこえてきた健やかな寝息に、自然と笑みが浮かぶ。
まだだ、まだ足りない。
今までかなしませた分も、自分はもっと頑張らなければ。
「大分、煮詰まっとるようじゃの」
その時。
目の覚めるようなしろが目の前をよぎった。
「…大神官!」
呪いの力でふくろうに変えられた親友は、ずっと翔と共にあったという。
ならば、自分が敵になった時のあの子のことも知っているのだろうか。
「翔を元の世界に返してやりたい気持ちもわかるが…お前さんが倒れては元も子もないと思うがのー」
「…聞きたい、ことがある」
ちらり、と翔の様子を伺えば、やはり疲れていたのかぐっすりと眠っているようだった。
「ん?なんじゃ?」
「翔は…」
言いかけたものの、しかし怖くて、私はその後の言葉がつげなかった。
あれだけその心を傷つけてしまったのだ、恨み言のひとつやふたつ覚悟していたのに。
翔は、私の息子は、あまりに綺麗に笑うから、不安になる。
言いたいことを飲み込んでしまっているのではないかと。
無理を、させてしまっているのではないかと。
「ふむ…」
黙り込んでしまった私の気持ちを察したのだろうか。
白い梟は、厳かに語り出した。
「翔の寝相はの、最初は最悪じゃった」
「は…?」
「こう、大の字に寝そべっての。周りの雑魚寝している連中をなぎ倒して眠るんじゃ」
そんなことは知っている。
幼い時から、そして今も、このこどもが実に気持ちよさそうに眠るということは。
誰よりも、よく。
「それが」
口を開きかけた私を制するように、相手の声が途端に鋭くなった。
どこか責めるような響きを帯びていたのは、気のせいではないだろう。
「お前さんが敵になってからは、きちんと行儀良く眠るようになった…こう、体を丸めての、寝返りもうたずに眠るんじゃよ。隣で眠ってるあゆむに泣き声を聞かれたくなかったんじゃろうて」
そうして泣き声を殺して、戦いたくないという心を押し殺して。
翔は、ふたつの世界を救い、そしてずっとずっと会いたかった父親を取り戻した。
「翔…」
離れたくない、と言っていた。
もう二度と会えないのは嫌だと。
それが翔の本心なら。
「今は、どうじゃろうな?」
ばさりと白い翼をひろげ、飛び去る親友を私は呆然と見つめていた。
それは確かめろ、ということか。
「ん…」
情けないほどに震える足を叱咤して、やっとのことで辿り着いたソファでは。
大の字になり、今にもずり落ちそうにも関わらず、なんとも気持ち良さそうに眠っていた。
「ありがとう…」
ゆるされていたのだ。
一番ゆるして欲しかった存在に、自分は。
「とう…さん…」
気配を感じたのか、空を彷徨った手をそっと握ると、いまだ夢の中の息子はふにゃと笑った。
それはちいさくて、それはあたたかくて。
泣きたいほどに、自分を幸せにしてくれる、手。
もう二度と、離したくない。
そのあたたかい手があれば。
例え光差さぬ暗闇の中でも、歩いていけるから。
◇どこを見てもパパしょだった最終回を観ての走り書き。
元に戻った猛に抱きつくのはまあわかりますが、その後のみんなを元の世界に送るシーンでの密着度はただごとじゃないと思う。互いの背中に手をあて…というかほとんど抱き合ってますし(笑)!というかお母さんが立派な方でTOSのアンナさんを思い出しました。そう考えると猛と翔ってクラトスとロイドの関係に似てないこともないかも。「父さんはまだ向こうの世界にいるけど、みんな心配してるだろうから戻ってやれってさ」ってパパ偉そう!(笑)しかしこの翔の表情はかざるの目にはのろけてる風にしか見えないです…いやほんとに。
しかし某方も日記で書いてらっしゃいますが、本当に残るとは思いませんでしたよ。しつこいようですがTOSのクラトスとロイドもこういう選択をしてくれればよかっ(以下略・ご存知でない方にはなにがなんだかなネタ振りでごめんなさい)
ところで翔ってXゾーンにいる間にどれくらい年取ったんだろう…謎。
ぱちぱち(拍手)はこちらになります。書く原動力となりますので、気に入った方はよろしければぽちっと押してやって下さい。→翔がXゾーンに残ったのはパパと離れたくなかったからに一票!
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そのあたたかい手があれば。
例え光差さぬ暗闇の中でも、歩いていけるから。
私は決して忘れない。
あの時、密かに背に回された息子の手が震えていたことを。
『みんな…ありがとう…!元気でな…!』
荒廃したXゾーンには確かに翔の力が必要だ。
けれど、本当にこれで良かったのだろうか。
翔は送還の光の消えた後も、じっとその場に立ち尽くしていたが。
ぐい、と涙を拭うと、こちらを振り返り、笑顔で自分の手を取り、駆け出した。
『さ、行こうぜ!父さん』
本当は、わかっているのだ。
この子がここに残ったのは、私をまもるためだということを。
操られていたとはいえ、ふたつの世界を崩壊寸前まで追い詰めた罪は重い。
投獄もされず、無罪放免で復興に携わることが出来ることなど、稀有なことなのだ。
大神官の口添えだけでは苦しかったことだろう。
しかし、この世を救った英雄がその力をXゾーンのために使う、と言ったとしたら。
『…父さん?』
すまない、そうと知りながらまだお前と共にいられることに喜びを感じてしまう私を許して欲しい。
そう、言葉には出来ないけれど。
『いいんだ、俺が決めたことなんだから…父さんはなにも気にしなくて、いい』
ふわりと微笑むその顔は、記憶にないもの。
きずついても、傷ついても、それでもこの子は『父親』を取り戻すことを諦めなかった。
だから今、私はここにいる。ここに、いられる。
迷いながらも、ここに残ることを選んでくれた翔のために。
私には何が、出来るだろう?
そしてそれからしばらくの時が経ち。
翔がXゾーンの復興に色々な街を飛び回る中、私はインペリアルXの研究に勤しんでいた。
一刻もはやくエネルギーの流れを安定させ、翔を元の世界に返してやりたい。
それだけが今の私のすべてだった。
「父さん、これ…」
私の焦りを知ってか知らずか、復興の手伝いの合間を縫って顔を出す翔は、今にも閉じそうな瞼を擦りながら資料を差し出してくる。
自分も世界を駆け回って疲れているだろうに、いくら先に寝ろと言ってもきかない。
まったく、そういうところは幼い頃から変わらないな。
「少し休んでいなさい。後は結果待ちだ」
「んー、そうする…」
それでも素直に頷くあたりに成長がうかがえるというものだ。
仮眠用に備え付けられたソファに横になるのを見届けて、私は計器に視線を戻した。
程なくしてきこえてきた健やかな寝息に、自然と笑みが浮かぶ。
まだだ、まだ足りない。
今までかなしませた分も、自分はもっと頑張らなければ。
「大分、煮詰まっとるようじゃの」
その時。
目の覚めるようなしろが目の前をよぎった。
「…大神官!」
呪いの力でふくろうに変えられた親友は、ずっと翔と共にあったという。
ならば、自分が敵になった時のあの子のことも知っているのだろうか。
「翔を元の世界に返してやりたい気持ちもわかるが…お前さんが倒れては元も子もないと思うがのー」
「…聞きたい、ことがある」
ちらり、と翔の様子を伺えば、やはり疲れていたのかぐっすりと眠っているようだった。
「ん?なんじゃ?」
「翔は…」
言いかけたものの、しかし怖くて、私はその後の言葉がつげなかった。
あれだけその心を傷つけてしまったのだ、恨み言のひとつやふたつ覚悟していたのに。
翔は、私の息子は、あまりに綺麗に笑うから、不安になる。
言いたいことを飲み込んでしまっているのではないかと。
無理を、させてしまっているのではないかと。
「ふむ…」
黙り込んでしまった私の気持ちを察したのだろうか。
白い梟は、厳かに語り出した。
「翔の寝相はの、最初は最悪じゃった」
「は…?」
「こう、大の字に寝そべっての。周りの雑魚寝している連中をなぎ倒して眠るんじゃ」
そんなことは知っている。
幼い時から、そして今も、このこどもが実に気持ちよさそうに眠るということは。
誰よりも、よく。
「それが」
口を開きかけた私を制するように、相手の声が途端に鋭くなった。
どこか責めるような響きを帯びていたのは、気のせいではないだろう。
「お前さんが敵になってからは、きちんと行儀良く眠るようになった…こう、体を丸めての、寝返りもうたずに眠るんじゃよ。隣で眠ってるあゆむに泣き声を聞かれたくなかったんじゃろうて」
そうして泣き声を殺して、戦いたくないという心を押し殺して。
翔は、ふたつの世界を救い、そしてずっとずっと会いたかった父親を取り戻した。
「翔…」
離れたくない、と言っていた。
もう二度と会えないのは嫌だと。
それが翔の本心なら。
「今は、どうじゃろうな?」
ばさりと白い翼をひろげ、飛び去る親友を私は呆然と見つめていた。
それは確かめろ、ということか。
「ん…」
情けないほどに震える足を叱咤して、やっとのことで辿り着いたソファでは。
大の字になり、今にもずり落ちそうにも関わらず、なんとも気持ち良さそうに眠っていた。
「ありがとう…」
ゆるされていたのだ。
一番ゆるして欲しかった存在に、自分は。
「とう…さん…」
気配を感じたのか、空を彷徨った手をそっと握ると、いまだ夢の中の息子はふにゃと笑った。
それはちいさくて、それはあたたかくて。
泣きたいほどに、自分を幸せにしてくれる、手。
もう二度と、離したくない。
そのあたたかい手があれば。
例え光差さぬ暗闇の中でも、歩いていけるから。
◇どこを見てもパパしょだった最終回を観ての走り書き。
元に戻った猛に抱きつくのはまあわかりますが、その後のみんなを元の世界に送るシーンでの密着度はただごとじゃないと思う。互いの背中に手をあて…というかほとんど抱き合ってますし(笑)!というかお母さんが立派な方でTOSのアンナさんを思い出しました。そう考えると猛と翔ってクラトスとロイドの関係に似てないこともないかも。「父さんはまだ向こうの世界にいるけど、みんな心配してるだろうから戻ってやれってさ」ってパパ偉そう!(笑)しかしこの翔の表情はかざるの目にはのろけてる風にしか見えないです…いやほんとに。
しかし某方も日記で書いてらっしゃいますが、本当に残るとは思いませんでしたよ。しつこいようですがTOSのクラトスとロイドもこういう選択をしてくれればよかっ(以下略・ご存知でない方にはなにがなんだかなネタ振りでごめんなさい)
ところで翔ってXゾーンにいる間にどれくらい年取ったんだろう…謎。
ぱちぱち(拍手)はこちらになります。書く原動力となりますので、気に入った方はよろしければぽちっと押してやって下さい。→翔がXゾーンに残ったのはパパと離れたくなかったからに一票!
ただいまの拍手御礼文は、スパラダのイグハンお試し版「もらいものにはご用心」1種のみです。今回激しく女性向なので、ご注意を。
拍手して下さった方、ありがとうございました!とっても励みになりますv
(コメント下さる方は、コメントが複数に分かれる場合は1>~2>~のように番号を振って頂くか、何か共通のマークをいれて頂けるとありがたいです。)
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