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デラシネ魂

ジャンルよろずな二次小説サイトです。
ネタバレ満載、ご注意を。

陰陽大戦記小説 / 分岐点

2008-09-23 | 陰陽大戦記小説
小説の数も増えてきましたので、ちょっと分けて分岐点を設けました。
クリックで各々のお品書きに飛べます。

「連載」
傾向:リクがとにかく酷い目に遭ったり、暗かったりしますのでご注意。明るいのもちらほら…?
(ただいまの連載は連載中なものが「万年微熱(全10話完結予定)2話までUP/更新停滞」「この花を君に(全5話完結予定)1話UP/更新停滞」のふたつ。*途中まででもいいわ!という心の広い方向き。未完になる可能性大です*
完結済のものが「迷宮螺旋・全10話完結」と「空が泣く 君が微笑う・全6話完結」のふたつです。「月やあらぬ」は予告のみ。そして凍結中)

「気まぐれ陰陽大戦記感想」
傾向:意味不明な小話付き。長いし意味わからないもの多し。ご注意。
(1話感想UP) 

「未来予想話とか本編補完話とか」  
傾向:とにかく思いついたものを気の向くまま萌えの向くまま。
(9/16/19/20/23/24/28/30/31/33/38/39/41/44/46/最終話)

「パラレルなもの」  
傾向:ほのぼのを目指している…つもり。
(みんなに愛されてるけど気づかない天然リクの太刀花荘物語と太白神社で事務をしているリクの太白神社物語があります。とんでも未来その1、とんでも未来その2「終わらない物語」もここです)

「CPもの」
傾向:とにかくリクのお相手は色々。たまにリク受け以外も。
(コゲリク13/マサリク7/ヤクリク8/ユマリク1/ヨウリク2/ウツリク1/リューリク3/ソマリク3/モンアカ2/ヤクモン2/ガシヨウ2/マサヤク4/ツクヤク3/規格外1)

「企画もの」
傾向:期間限定フリー小説。アンケート結果の小説。
(バレンタイン/ホワイトデー/子供の日があります。今は持ち帰り可なものはありません。真夏の夜の夢企画のありえない話もここです)

「裏もの」
傾向:甘々だったり、無理やりだったり、痛かったり。
(コゲンタ5/コゲンタ&ヤクモ1/ヤクモ3/ヤクモVSマサオミ1/マサオミ3/ウツホ(職種)1/ミカヅチ&地流闘神士1/ウツホ&ヨウメイ1)

コゲリク30の御題。(クリア済)
傾向:ほのぼの半分、痛いの半分。捏造率高し。

ヤクリクで50音順セリフ2(未クリア)
傾向:どちらかといえば暗め?パラレルもあります。

ほ. 捕獲準備は上々だよ。

2008-09-23 | 陰陽大戦記小説
◇これは第二次陰陽大戦から?年後、な設定の未来捏造話、とんでも未来その2「終わらない物語」のお話です。
コゲンタとは契約を満了してます。オリジナルキャラが出て来ますのでご注意。

今までのお話はこちらから。

それではどうぞ。


昔から、この日には雨が降ったことはない。

「はれたー!」

昨日とはうってかわって、すっきりと晴れた青い空を指差して、こどもが笑う。
きゅ、と握られた指に、思わず笑みが零れた。
この子が本当に楽しみにしている『お出かけ』がある時は、けっして空は涙を流さない。

「風羽は晴れ女だからね」
「うん!」

そう言えば、まるで太陽のように眩い笑みを浮かべ。
愛しい、娘は。しきりに抱っこをねだってくる。

求められるままに抱き上げてやれば、ふわりと鼻を掠めるのは。
ちいさなきんいろのはな、の。

それは、秋の香。

夏の暑さは身を潜め。
感じるのはただ、心地良く体を包む風と。
彼の者が去った後に手にした、泣きたくなるようなあたたかさ。

「おかーしゃん?」

父親譲りの、艶やかな黒髪を揺らしながら。
不思議そうな顔で首を傾げる娘の、その紫色の瞳に映る、自分の顔は。

「あいつがリクをみすみす濡らすようなこと、するはずないだろう?」

ぽん、と頭に置かれた手。がしがしとかき回される、髪。
そのぞんざいな扱いは常のヤクモからは考えられないことで。
まるで、昔に、戻ったようで――。

「そう…ですね」

見つからないと承知で、リクは青い空を見上げた。
流れていく、雲は。
まるで、自分の手からすり抜けていった、彼の者を思わせて。

少しだけ、胸の奥が痛かった。


太刀花の家は、その場所も、主も、昔と変わらぬあたたかさで自分達を迎えた。
昔リクが勉強していた文机も、部屋も、そのままに。

「やくも」

くい、と袖を引っ張られる感覚に、そっと振り返る。
見れば、風羽がどこか思いつめたような顔で、こちらをじっと見つめていた。
おや、この子が自分から話しかけてくるなんて、めずらしいこともあるものだ。

「あいつって、だれ?おかーしゃんの、だいじ?」

リクが離れるのを待っていたのだろう。
いつもはよく通る声を押さえもせず喋るこの子の耳打ちに、なんだか年がいもなく、くすぐったい気持ちになった。

「式神だよ。風羽とおとうさんの次に大事な、ね」
「しきがみ」

初めてきく単語に、紫色の瞳がぱちぱちと瞬く。
が流石は闘神士の子、今はその存在がいないことはわかるのか、うーん?と首を傾げた後に風羽はぽつりと呟いた。

「おかーしゃん、よろこぶ?」

目的語のない、問いかけ。
それでもヤクモには娘の考えてることが、手に取るようにわかった。

「ああ、きっと」
「ふーん…」

その存在を、知ろうはずもないのに。
神操器の安置された神社の方向を見やる紫色の瞳に映るのは。
確かな、決意。

「あ、おかーしゃん!」

それでも。
お茶菓子の準備が出来た、と自分達を呼びに来たリクの、その胸に飛び込んでいく時には、もうすっかりただのこどもの顔をしている娘に血は争えないな、とふっと思う。

「捕獲準備は上々だよ。…その時は、観念するんだな」
「…?なにか、言いましたか?」
「かー?」

不思議そうに首を傾げる親子に向かって、いやなんでもないと伝説の闘神士は静かに微笑んだ。

つかみどころのないしろが、再び下界に引き摺り下ろされるまで。
あと少し、ほんの、すこし。


◇秋分の日ということで、久々の陰陽。本当は連載の続き書きたかったんですが…うう。風羽はこの時点では式神や闘神士について何も知りません、ということでひとつ。

それではここまで読んで下さってありがとうございました。
いいかげん連載を終わらせろや!という方、下の白猫さんをぽち押しして是非激を入れて下さいませv

一家の謎を解くため頑張ります!ありがとうございましたv

ふ. 不可抗力だよ。

2007-04-03 | 陰陽大戦記小説
◇これは第二次陰陽大戦から?年後、な設定の未来捏造話、とんでも未来その2「終わらない物語」のお話です。。
コゲンタとは契約を満了してます。オリジナルキャラが出て来ますのでご注意。

今までのお話はこちらから。

それではどうぞ。

ヤクモの娘と契約して、太白神社へとやって来たコゲンタを待っていたのは。
「でね、コゲンタ、これが風羽が5歳の時の写真!」
「あー…」
紫の瞳をきらきらさせて、風羽のことを語るリクの。
かつての契約者のモンジュを上回る、親ばかっぷりだった。

「この時ね、初めて乳歯が抜けたんだよ。エイプリルフールだったから『え、嘘?』って言ったら『うそじゃないよ、ほんとだよ?』って風羽が言ってて…ね、ヤクモさん?」
「ああ『もう風羽も大人なんだから!パパはひとりで眠ってよね!いこ、ママv』とかほざいてたなあ…懐かしい懐かしい」
リクの淹れた緑茶をず、とすすりながら、前々契約者はうんうんと頷いた。
こんな幼い時から伝説の天流最凶闘神士を相手に頑張ってたのかと思うと、そのいじらしさに式神の目にも涙、である。
「風羽はね、今も時々『一緒に寝て?』って言うんだよ?僕だって男なのにね」
おかしいよねー?とにこにこと笑っている前契約者は、ヤクモと風羽がライバル関係にあることをまったく理解してないし。
「風羽は優しいなあ…あの子はもうひとりで眠れるけど、リクはひとりじゃ眠れないだろ?だからじゃないか?」
「え!は、はい…」
「でも、リクは…、じゃ、ないと…」
恥ずかしそうに俯くリクの、その耳元にヤクモが何事かを囁く。
すると昔より深みを増した紫の瞳が、ゆるゆると閉じられ…。
まずい。
これはただのないしょ話、というには少々色っぽい雰囲気だ。

「なあ、ヤクモ…」
一応、契約者に守護を頼まれている身としては、見過ごすわけにもいかないが。
「不可抗力だよ」
抗う気もないけど。
そう、にっこりと微笑み闘神符をちらつかせる最凶闘神士サマにかなうはずもなく。
それに何より。
「ヤクモ、さん…」
まるで陽だまりの中の猫のように、幸せそうに笑うリクを見てしまったら。
「…ほどほどにしとけよ」
引き下がるしか、ないではないか。

そして今日も風羽のやつあたりの盾になってもらうべく、モンジュに泣きつく白き式神の姿があったとか。
どっとはらい。


◇とんでも未来その1を書いたら何故かその2も書きたく…(笑)さらりと読み流して頂ければ幸いです。

誕生日おめでとうメッセージを下さった方々、ありがとうございました!
エイプリルフールが誕生日だと、この日は色んなサイトさんが色んな趣向でびっくりさせてくれる日なので、なんだか得した気分になりますです(笑)

そしてすみません、拍手返信と私信はまた後ほど…とりあえず寝ます。おやすみなさいー。

て. 手でも繋ぐ?

2007-04-01 | 陰陽大戦記小説
◇この話はパラレルです。詳しくはこちらの下の方にあります◇とんでも未来その1◇を参照下さいませ。

それではどうぞ。


『明日…もう、今日ですね…、晴れ、みたいです』
受話口の向こうから聞こえるそれは。
6年前よりもほんの少しだけ大人びた、こえ。
『そう。じゃ、傘はいらないかな?』
天気予報とは真逆のことを言う愛し子に、ヤクモはふわりと微笑んだ。

東京の大学に受かったリクは、天神町を離れ、ひとり暮らしをすることになった。
コゲンタがついてるから、大丈夫だろうとは思ったが、それとこれとは話が別。
今すぐに『道』を繋げたい気持ちを必死で押さえ込んで、電車を乗り継いでヤクモはその地にやって来た。
「ごめんなさい…天気予報、外れちゃったみたいです」
モノレールの駅で待っていたリクは、大きな傘を抱き締めて。
僕の家、これしか傘がないんです、とぎこちない笑みを浮かべた。

いくつも、いくつも重ねられたそれは。
嘘というには、とてもささやかな。

「いいさ。それじゃあまっすぐリクの家に行こうか?」
「あ、傘持ちますよ」
出会った頃には優に頭ふたつ分はあった背の差は、今では大分縮まって。
けれどまっすぐ向けられるその、紫の瞳に浮かぶ無垢な光は、変わらずに。
「大きく、なったなあ…」
「僕だってもう、大学生ですからね…あ」
ぱしゃん、と。
かなり深い水たまりに足を踏み入れてしまったリクは、ばつの悪そうな顔で固まった。
「そういうとこ、父さんそっくりだよな」
ぽんぽん、と鳶色の髪を撫でるのも久し振りで、ついつい口元に笑みが浮かんでしまった。
6年前は当たり前だった、それ。
「そう、ですか…?」
小さく呟いたリクは、どこか哀しそうにその瞳をそっと伏せた。

リクと父さんとコゲンタと。
大切な人たちに囲まれたやさしい日常を壊したのは、他ならぬ未熟な自分。
ウツホに操られ、天流地流を滅ぼそうと彼らに牙を剥いたこの身を。
封じの天流、その宗家にふさわしい力で、リクは紫水晶にとじこめた。

『もう、これで貴方は誰も傷つけない…誰も貴方を傷つけられない』

こんな自分を護ろうと、自らを犠牲にして、戦い抜いて。
あとほんの少しでも大戦の終結が遅れていたら、その命はなかったと。

「そうだよ」
紫の瞳に涙をいっぱいにためて、ただ謝り続けたリクの。
その胸元に輝いていた紫水晶が今はどこにあるのか、ヤクモは知らない。
けれど。
「さ、行こうか」
自分の持つ欠片は今もこの手の中に、ある。

そして今日は。
6年前に交わした、約束の。

「…?」
地図は見てきたから大丈夫、というヤクモについて歩いていたリクは、その足がアパートとは逆方向に向かってるのにようやく気づいた。
どうして、という視線をかわすように微笑むヤクモは車の多い大通りから、小道へと歩を進める。
「ほら、リク」
いつの間にかたたまれた傘が、綺麗な弧を描いて。
その先には。

雪の中の、桜。

千年前の過去から飛ばされてきた自分。
自分を取り巻くすべてが、そして。
自分自身を『嘘』を思った時も、確かに、あったけれど。

「誕生日、おめでとう」

あの日もらった、紫水晶だけは。
いつも、いつまでも曇らずに。
自分の胸元に、在ったから。

「待ってて、くれたんですね…」

ひらひらと舞うのは雪か、桜の花びらか。
すべてが白い、世界の、その向こうで。
貴方は、すべてを受け入れて、笑うんだ。

「太刀花リクさん、もう一度迎えに来ました。もし俺の本当の家族になってくれるなら、これを…」
「…はい」

その手に乗せられた欠片にそっと手を重ね。
幸せそうに微笑んだリクは、ひとつ、確かに頷いた。

「えーっと、このまま、手でも繋ぐ?」
「はい!」

こうやってずっとずっと一緒に歩いていきたいと。
ちいさく呟いたリクの手を、ヤクモは包み込むようにやさしく、握った。

「そ.それが答え?」に続いているような、続いてないような。


◇陰陽、久々に思いつき書いたらヤクリクでした。誕生日ですし、甘いのを目指したんですけど、はてさて。とんでも未来その1のふたりが一緒に住み始めるまで?喫茶店を立ち上げるのはこの後らしいです。そして勝手にリクの誕生日エイプリルフールにしてますけど、天神町の社に飛ばされて来た日ということでひとつ。

硝子片を拾う指

2007-01-04 | 陰陽大戦記小説
大人になるのは、嬉しいよ?
だけど、それは君といられる時間が少なくなるんだって、そう思うと。
すこし…、うん、ほんの少しだけ、辛いんだ。

だから、僕は。

「あけましておめでとうございます」
「ああ、おめでとう」
そんな形通りの挨拶を交わして、御節を食べて。
元旦の日は、みんなでのんびりと過ごすのが、この家のいつものスタイルで。
それが。
「…」
むっつりと黙り込んだコゲンタが見つめているのは、つい先ほどまで現契約者が座っていた座布団。
「しょうがないだろ。『初詣に行こう!』って大学の友達に呼び出されたんだから」

だから、なんだというのだ。
約束をしていたのは、こちらが、先だというのに。

「ふーん、リクには自分を選んで欲しかったって?」
じろりと前契約者を睨みつけるも涼しい顔でそっぽを向かれ。
「リクだって好きであんなことしたわけじゃないよ」
にこにこと前々契約者に笑顔で諭され、コゲンタはますます不機嫌になった。

『コゲンタは留守番しててね』
メンバーに自分が『視』える人間がいるから、と。
出会った時より格段に大人びたリクに、やんわりと同行を断られた。
確かに、自分を連れずとも。
今の彼の者なら、例え敵に出会ったとしても、大丈夫だろう。
『待っててね。絶対に、戻って来るからね』
なんども、何度も振り返りながら、石段の向こうに消えていったリクには。
もう、自分の支えなど----。

「意地張らないで、素直に言っておけば良かったのに」
言えるものか。
置いていかれたみたいで、寂しいなどと。
「…」
無言で御節の黒豆に手を伸ばすコゲンタを、モンジュはとめなかった。
「それは、リクが作ったんだよ」
柚子をくりぬいた器の中のそれは、とても優しい味がして。
やりきれない想いにぎゅっと目を瞑る式神を、ヤクモはじっと見つめていた。

約束をした。
リクが20歳になるこの年の始めに、ふたりで酒を酌み交わそうと。
約束を、した。
『やくそく、だよ…ずっと、ずっと、そばにいてね』
それだけが縋れるものだというように、何度も何度もその言葉を呟くかつての紫の瞳には、自分しか映っていなかった。
けれど時が経つにつれて、リクの世界はひろがっていって。
それと共に自分の存在意義は希薄になっていくような、気がしていた。

もう、リクにとって。
自分は、特別では、ないのだろうか。

あの約束も、本当は。

からから…。
「帰って来た、かな…?」
控えめに開かれた戸の音を聞きつけ、ヤクモが呟く。
コゲンタは無言で立ち上がると、早足で玄関へと向かった。
「ただいま、コゲンタ」
そこには、いつものように、ふわりと微笑むリクがいて。
けれど。

「変わっちまったな…お前」

その身から香るのは。
ふたりで飲もうと約束していた、あの。

「何が?」

ごまかすことすらせずに。
真っ直ぐに自分を見据えてくるその紫の瞳が。
胸に、痛い。

「…僕は、変わってないよ」

ふっと、視線を外すと。
どこか寂しげな顔で、リクはぽつりと呟いた。

ずっとずっと君と一緒にいたいって。
その気持ちだけで、生きている。

「変わったとすればね、手段を選ばなくなったことくらいかな」

ね、見て。
差し出された手の中のものに、コゲンタはわずかに眉を寄せた。
それは今の時期にはないはずの、重陽の菊の被綿(きせわた)で。
「…リク」
まさか、これを、手に入れるために?
「そうだよ。あの子とお酒を飲んだのは、このため。君との約束を破っても、どうしても手に入れたかったんだ…。だって…」
どうしてお前はそんなにしてまで、不老と若返りを求めるんだ。
問いかけの言葉は、けれど声にはならなかった。

「僕は君を置いていきたくない」

それは、叶わぬ願いと。
わかっては、いるけれど。

「ね、コゲンタ…。やくそく、だよ…ずっと、ずっと、そばにいてね」
「…ああ」

ぎゅ、と抱きついてくる契約者の背をぽんぽんと叩いてやる。
小刻みに震える体は、自分と離れるのはこわい、こわいと訴えているようで。

良かった。
リクは、変わってなどいなかった。

こんなのはいけないと、心のどこかで思いながらも。
不変をこわれたこどもを抱き締める腕を緩めることなど、もう出来なかった。


◇「迷宮螺旋」完結記念企画、ゆうぴぃさまより/コゲリクかリク総受け。お酒ネタとコゲンタの”やきもち”が入ったお話。…です。いかがでしたでしょうか。なんだか妙に暗く、さらにわかりにくい話ですみません…。

お題はAir./冴空柚木さまよりお借りしました。

29.君とならば(カタヤマトモハさまリク)

2005-12-15 | 陰陽大戦記小説
風の音に、コゲンタはふっと目を覚ました。
「…リク?」
眠る前は確かにこの腕の中にあった温もりが消えている。
慌てて起き上がろうとして…。
「うぉっ?」
こたつにもぐっていたのをすっかり失念していたコゲンタは、上にあったお茶菓子をひっくり返しつつやっとのことでそこから這い出る。
後片付けは後でいいよな?と誰にともなく呟くと。
きょろきょろと辺りを見渡した後、コゲンタはそっと隣に続く襖を開けた。

探し人は。
縁側で膝を抱え、光り輝く庭をぼんやりと見つめていた。
「リク」
後ろからそっと抱き締めれば、驚きもせずに。
ゆっくりと振り返ると、リクはふわり、と微笑みを浮かべる。
「あ、起きたんだ」
そして、やっぱり猫はおこたが好きなんだね、としみじみと呟いた。
常ならば猫じゃねぇ!と怒るところだが。
「コゲンタ…?」
「ああ、まぁな。けど…」
反論しない白虎を、リクは不思議そうな顔で見上げた。
にやり、と意味ありげな笑みを浮かべると。
「半纏着てる奴はもっと好きだけどな…?」
首筋に唇を寄せてくるコゲンタに、くすぐったそうに身を捩ると。
リクはその紫の瞳を、そっと伏せた。

月明かりが雪のしろを優しく照らす。
誰にも踏み荒らされていないそれは、白くて、綺麗。
でも。
「寂しい、ね…」
ぽつり、と零された呟きに。
コゲンタは知らずその体を抱く手に力をこめた。
「違うんだ、そうじゃなくて…」
けれど振り返ったリクの紫の瞳に灯るのは。
予想に反したつよい、光で。
「なんかね、君に出会う前の僕みたいだなって…」
ふわりと微笑む気配と共に。
そっとコゲンタの手を解くと、リクは縁側から庭におりる。
さく、と雪の鳴る音。
綺麗なまっしろなその場所には、ひとつのあしあとがついた。
「変わるのが、怖かった」
自分が何者なのかわからなくて、でも知りたいとも思わなくて。
目を閉じて、耳を塞いで。
どんなに寂しくても、それでもいいと、あの時は本当にそう思っていたけれど。
「でもね、今の僕はこの景色をずっと壊さずにいようとは思わないんだ」
それは確かに綺麗だけど。
捨て置かれた真っ白なキャンバスのように、どこまでも変わらない。
ただ、そこに在るだけの。
「君がいたから、いてくれたから、気づけたんだよ」
明日になれば、きっとみんながやって来て雪だるまを作ったり、雪ウサギを作ったり…雪合戦をしたりして。
きっとこの庭は溶けた雪と土とでぐちゃぐちゃになるんだろう。
「変わることは怖くないって…楽しい、ことなんだって」
自分のことを知ろうとすればするほど。
きっとこの心は、絵の具を塗りたくったキャンバスのように汚れていくのだろうけど。
「コゲンタ」
「…何だ?」

それでも。
君とならば。

「隙あり!」
何の前触れもなく飛んで来た雪玉を顔面で受け止め、コゲンタは見事に引っくり返った。
「みんなが来る前に…しよ?」
自分の手を掴み、いたずらっぽく微笑む契約者の『お誘い』に。
「泣いてもやめてやらねぇからな?」
式神はゆっくりと起き上がり、寒さで真っ赤になったその頬に、そっと触れるだけのキスを落とした。

君とならば、きっといつか見た夢に辿り着ける。
だからそれまで、この手を離さないで。


◇ついにウチの近くのTSU○AYAでも陰陽をレンタルし始めたそうで、そのお祝いも兼ねて(笑)
クリスマス企画、カタヤマトモハさまよりのリクエスト/陰陽のコゲリク。コゲンタとリクの2人っきりで、家の庭から月明かりに照らされた雪を眺めている。イメージソングはED曲「君に届くまで…」…です。いかがでしたでしょうか。
というかクリスマス関係ない…ような…、はは。
 
これにて「コゲリク30の御題。」コンプリートです。約7ヶ月のお付き合い、どうもありがとうございました!(カテゴリにあったクリア経過は陰陽大戦記小説お品書きに移動しました)

ところで今日はテイルズジアビスの発売日なわけですが…「テイルズオブファンダム外伝DVD」があまりにゼロロイだったのと、久々にリクの声(カイル役なのです)が聞けたのと、OPで髪切ったルークがどこまでも可愛らしいのとで色々楽しかったです。さて頑張って進めよう…。

おいおい、ちょっと待て

2005-11-26 | 陰陽大戦記小説
◇この話はスペシャルサウンドトラック龍の巻のネタバレを含んでいます。
知りたくない方は自力で回避をお願い致します。

それではどうぞ。

「あったかい…」
温泉に浸かったリクは気持ち良さそうに瞳を細めた。
「今日はいやに早起きなんだな」
「うーん、昨日間違ってお酒飲んじゃったでしょ?それで早く寝ちゃったからだと思う…」
「ああ、まぁな」
その後で先生と生徒が入り乱れた大宴会になったことは、リクは知らない。そのすさまじさも。
今頃ボート部の奴らは部屋でぐっすり眠っていることだろう。
「ったく、あいつら何しに来たんだか」
親交を深めるため、と銘打ってはいるが、どう考えても担任の我侭だろう。
「まあ、いいじゃない。たまにはのんびりするのも」
お前は始終のんびりしてるだろーが!というお小言を、コゲンタはすんでのところで飲み込んだ。
まあ確かにこの頃のリクは頑張っているのだし…。
「…気は抜くなよ。いつ敵が襲ってくるかわかんねぇんだからな」
「うん」
にこりと微笑むリクからコゲンタは慌てて目を逸らす。
「カバティカバテイカバティ…(以下エンドレス)」
「え?」
「誰だ!」
すると彼らの目の前にマントを羽織った青年が現れた。
「ヤクモさん…でしたっけ?」
「…」
目の前に立つのは、伏魔殿で自分のことを助けてくれた人だ。
けれどそのあまりの反応のなさに、リクは首を傾げる。
「…?」
朝日に照らされたその顔は確かにそうなのだが、何か雰囲気が違うような…。
それにマントの裾から覗く脚はどうみても素足である。
ということは…。
「もしかして、あの下何も着てないんじゃ…」
リクがおそるおそるコゲンタを見ると同時に。
ナイスタイミングで、ざ、と風がわきおこりマントがはためいた。
「…」
「コゲンタ…」
「…何も言うな、リク」
「でもあれふんど…」
「違う。あれはクラシックパンツだ」
「すごいコゲンタ、ハイカラな言い方知ってるんだねー」
のほほんと笑うリクにがっくりと肩を落としつつ、コゲンタは『敵』と向き合った。
「お前の力が見たい…」
は?
そう思った時には、コゲンタはひょいっと投げ飛ばされていた。
ざっぱーん!
ものすごい水飛沫を上げてその体が湯に沈む。
「コゲンタ!コゲンタ!コゲンタァ!」
後を追って飛び込もうとするリクを抱きとめると。
「太刀花リク、お前に真実を見抜く力があるかどうか、試させてもらう」
符を水面に投げつけると、ふわりとコゲンタが姿を現した。
けれども。
「え…?」
「あなたが落としたのはどの白虎ですか?」
水面に浮かんだのは3体の式神。
そのどれもがコゲンタの姿をしていて…どれもが違う。
「…」
紫の瞳をひとつ、瞬いて。
「コゲンタ」
リクがす、と手を差し伸べたのは。
「…正解、だ。どうしてわかった?」
「え、一番しまりのない顔だったし…って言うのは冗談で」
まっすぐに、その目を見て。
「コゲンタは、コゲンタですから」
にこりと不敵に笑うリクに、ヤクモはこくりと頷いた。

「はぁ…」
気づけば喉はからからで。そういえば頬も熱い気がする。
「喉が渇いただろう?これを飲むといい」
「あ、ありがとうございます…」
紙パックのジュースらしいそれにストローをさしこんで。
一気にごくごくと飲んだリクは…。
「リ、リクー?」
それはそれは気持ち良いくらいに見事にぶっ倒れた。
「彼にはよしかわ郷はまだ早過ぎたか…」
「ったりめぇだ!未成年にポン酒なんざ飲ますな!」
「さらばだ…」
「二度と来んなーっ!」
招かれざる来訪者の背中越しに見えた朝日は、嫌味なくらいに眩しかったとか。

後にその時のことでヤクモに食って掛かったコゲンタは。
「ああ、それ『白虎演舞』の俺だよ」
と意味不明の答えを返され、ますますキレたらしい。
どっとはらい。


◇龍の巻聴きました!陰陽はやっぱりいいですね…コゲンタとリクでほろりとしたり、地流宗家で笑ったり、マサオミとヤクモの会話が多くてびっくりしたりと楽しい一枚でした!しかしそれに触発されて書いた話が何故こうなったのかは永遠の謎です、はい。

終わらない物語(其の参)

2005-11-21 | 陰陽大戦記小説
◇この話は最終回後のパラレルです。さらに太白神社物語の番外編みたいなものでとんでも未来その2です。オリジナルキャラが出て来ますので、そういうのが苦手な方は自力で回避をお願い致します。
「26.帰り道」 と 「「終わらない物語(其の壱)」 と 「「終わらない物語(其の弐)」 を未読の方はそちらから読んだ方が宜しいかと思われます。

長々とすみません、それではどうぞ。

「あ」
食後のお茶を淹れていたヤクモは、何かに気づいてにこりと笑った。
「とうさん、ほら、茶柱」
当然のようにそれを自分に差し出す息子に、モンジュはありがとうと言ってそれを受け取る。
「静かだな…」
リクも、風羽もいない家は久し振りで。
いつもの明るい声が聞こえないだけで、こんなにも。
「…今日はきっといいことあるよ」
寂しげな表情を見逃さず、声をかけてくるヤクモに、モンジュのはしばみ色の瞳がぱちり、と瞬いた。
「まったく、どこでそういうのを覚えてくるんだろうな?」
どこか呆れたような視線に肩を竦め、ヤクモはず、とお茶をすすった。
「とうさんとリクは俺の護りたい人だから」
「風羽はどうなんだ?」
「んー」
琥珀の瞳をいたずらっぽく輝かせ。
ヤクモは事も無げに呟いた。
「風羽は同志、かな」
おそらく彼女は。
自分に何かがあった時、ふたりを託せる唯一の存在。
きっとあの子なら、彼の式神と----。
じゃあそろそろ、とヤクモは腰を浮かせた。
「まとめて迎えに行って来るよ、とうさん」

迷子の迷子の子猫ちゃん、あなたのおうちはどこですか?

肩で切りそろえられた真っ直ぐな黒髪。
きゅ、と引き結ばれた唇。
何より、その纏う空気。
「…何よ」
懐かしげに自分を見るコゲンタに、風羽の顔が険しくなる。
そして式神はその言葉を口にした。
それが契約者の逆鱗に触れるものとは知らずに。
「いや、お前見れば見るほどヤクモに似て…んぎゃっ?」
ぎりぎりぎり、と尻尾を引き絞られ、そのあまりの痛みにコゲンタが悶絶する。
「誰が、誰に似てるって…?」
きっとこちらを睨んでくるその瞳の、いろ、は。

自分の、よく知る----。

「よっ…と」
「ふぎゃっ?」
背中にのしかかられ、べしゃっとコゲンタが地に伏す。
「おー、ちゃんと契約出来たんだ?」
頭上から聞こえてくるのは前々契約者…いや、いまは前々々契約者か、の楽しげな声。
「くぉらヤクモ、とっとと…ふぎゅっ?」
退きやがれ、と怒鳴る前に背中にどかどかと乗って来たのは風羽で。
姿は見えずとも、ふたりの間にはばちばちと火花が散っているようだった。
「当たり前でしょ?これでもうヤクモの好きにはさせないんだからね!」
「ああ、それは、楽しみだなあ」
「今朝もおかあさんにセクハラしたんでしょ?」
「人聞きの悪い。まあ、抱っこして頬すりすりはしたけど、愛情表現、愛情表現」
「それがセクハラだって言うのよ、このエロ親父----っ!」
父と娘の心温まる会話を、ふたりの下敷きになっているコゲンタはのんびり聞いているわけにもいかず。
「お前ら、とりあえずどけっての!」
キレた式神に跳ね飛ばされたふたりは、体勢を崩すことなく地に降り立った。
「ああ、コゲンタ、久し振り」
ひらひら、と手を振るヤクモは憎らしいほどに爽やかな笑みを浮かべている。
文句の一言でも言ってやろうと口を開きかけた、その時。

「コゲンタァ!」

懐かしい声が、自分を、呼んだ。


◇秋分からかなり日が経ってしまいましたが(汗)ようやくふたりが再会しました。今年中に終わるといいなあ…。

20.契約満了

2005-10-27 | 陰陽大戦記小説
初めて、出会ってから。
まっすぐに自分を見る紫色の瞳に、何度はっとさせられただろう。
ふたりで過ごした日々は、その絆を強め、そして。
それ故の別れを。

「コゲンタ」

式神との絆を極めしもの。
その力は、そのままこの世に留めておくのは危険で。
だから。

「天流宗家として…白虎の闘神士であったことを誇りに思います」

太刀花リクとしてではなく。
天流宗家として。
この言葉を、紡ぐ。

「リク」

それでも。
自分の名を呼ぶ白虎の、あまりにも優しい瞳のいろに。
伸ばしそうになる手を必死で押し留めて。

笑おうと、していたのに。

「お前の式神でいられて…俺は…」

式神界に帰る彼の者が、奏でた、おと、は。

「…うん、僕も…」

そんな自分の意地も、なにもかもとっぱらってしまった。

死ぬまで、死んでも。
この想いだけは決して消さない、消えない。
魂に刻んで。

そしていつかまた僕は君に言うんだ。
今度こそ、最後まで笑って。

出会えて、幸せだった。
そしていまも。

しあわせだよ、と。


◇なんだか暗くてすみません…。天地宗家の契約満了にけちをつけるつもりはないんですけど、ちょっと思ったもので。はやいもので御題もあとひとつです。けんかしたままのおふたりさんを仲直りさせないと…(笑)

15.猫

2005-10-26 | 陰陽大戦記小説
この時期になると、どこもかしこもかぼちゃのディスプレイが並ぶ。
ハロウィンという外国のイベントがどういう経緯で日本に居ついたのか、コゲンタには知る術もないが。
我が契約者はそういうのには疎いし(なにせオータムジャンボの日付の方が気になる一般市民であるから)このまま何事もなくその日は過ぎていくのだと思っていた。
しかしコゲンタは失念していたのだ。
本人に、その気がなくとも、
…その周りにはおせっかいなお祭り好きがそろっているのだということを。

「どう?」
目の前でぱっと手を広げて見せる契約者に、ああ、と生返事をすると。
「似合わない、かな…」
途端にリクはしゅんとしてしまった。
「そんなことないよ、リク」
狼の扮装をした前契約者がにっこりと微笑む。
『お前は存在自体がおおか…』と言いかけたコゲンタの口にグレープフルーツを突っ込んで。
「あ、ありがとうございます…っと、大丈夫?コゲンタ」
はは、と引きつった笑いを浮かべつつ、こちらに駆け寄ってくるリクの。
けれどその手はコゲンタに触れることはなく。
「のーぷろぶれむ!良く似合ってるぜ、リク。しっかし、俺の黒いマントに良く映えるなー」
こちらは吸血鬼の扮装をしたマサオミが、その小さな体をにこにこと笑いながらマントで包んでいた。
「あ、あの…」
困った顔をしながらも、普段の餌付けがきいてるのか、リクは自分から離してくれとは言えない。
「ったく…」
「え?」
呆れた声とともに首根っこを掴まれたかと思うと、ふわりと自分の体が宙に浮く。
するとその首につけられた鈴とコゲンタのそれが、からん、と共鳴した。

「猫は猫同士、仲良くやっからよ…」

白い式神が言い放った言葉に、紫色の瞳が見開かれる。
あれほど、猫と言われるのを嫌がるコゲンタが、自分から…。
くすり、と笑うと。
リクはその首に抱きつき、猫が甘えるように頭を擦り付けた。
「吸血鬼さんは日の光が苦手だし、狼さんは月が出てないと…」
ぽつりと零されたその呟きに。
コゲンタはにやり、と勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「ね、屋根で日向ぼっこしよ?」
猫は猫同士、ふたりっきりで。
白いふわふわの猫耳と尻尾をつけたリクの誘いに、乗らぬはずもなく。
「ま、そういうわけだからよ」
当然の権利とばかりにひょい、とコゲンタはその身を抱えた。


◇続きそうで続かないコゲンタがひとり勝ちなハロウィン話。リクの白い猫さんコスはかわいいと思う…。でもちょっと小悪魔系かも。