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デラシネ魂

ジャンルよろずな二次小説サイトです。
ネタバレ満載、ご注意を。

少年陰陽師お品書き

2007-01-01 | 他ジャンル小説
◇基本的に紅昌です。全体的にちょっと、暗めかも。

「願いをこめて」(2006-11-20)
昌浩が清明の名を呼ばない理由は。
   「…じい様の名前だけは、呼ばないからな」

「唯一無二の」(2006-11-21)
原作の天狐編の辺り。たったひとり残される怖さに、気づいてしまった。
   「ずっと、俺は、自分の…、俺だけの、ために」

「酒と風呂は百薬の長 」(2006-11-26)
貴船でのハプニング。酔っ払いにはかないません。
   「だってまだ全然体があったまんないもん…なんか、ぬるいし…あ、そうだ」

「想い埋め」(2006-12-01)
9話の補完というか、もっくんの「嘘だ!」に対する自分的解釈。
   「今、ここで連れ帰ったら、今よりもっともっと辛い目に遭わせるの、わかってるんだ」

「我侭を言ってごめんね、赦してくれとは言わないから 」(2006-12-08)
10話から派生。自分の無力を知った昌浩は、あたたかさを拒絶した物の怪のことを思う。
   「彰子…冬に入内するんだってさ」

「明けた夜に願う」(2007-01-01)
新年を前に、もっくんと出会った時のことを思い出す昌浩の話。
   「今年最初の笑顔は、お前にあげる」

明けた夜に願う

2007-01-01 | 他ジャンル小説
正直、もう諦めていたのだ。
自分が何を言おうが何をしようが、晴明の孫であることは変わらない。
それなら、ただ、我慢していようと。

じい様に手を引かれてた時には聞こえなかった、人々の呟き。
京の都を歩くのは、本当は怖くて、嫌で嫌でたまらなくて。
だけど。
優しい父上や母上を心配させたく、なくて。
だから、家に閉じこもることなんて、出来なかった。

最初は見えていた青い空も、段々と、見えなくなった。
見えるものといえば、ただただ、黒いだけの道。
じっと俯いて、声を封じて、自分を殺して。

いつか。
いつかこの暗い道に、誰かが灯りを燈してくれないかと。
そう、願っていた。

「おい、いいのか?」
「何が?」

ゆらゆらと揺れる白い尻尾。
気遣わしげに向けられる、赤い、瞳。

わかってるよ。
新しい年を迎える、今日、この日に。
どうしてこんな何でもない道端に座り込んでるのかって、そう言いたいんでしょう。

「…もうすぐ、日が昇るな」

肩の重みが、ふっと消える。
身軽に木を駆け上がった物の怪は、しっかりと前を見据えていて。

ああ。
あの時も、お前はそうやって待っててくれたのかな。
真っ暗な道をよたよた歩いてる俺は、その目にどう映ってたんだろう。

「…うん」

見える。
ただ黒いだけだった道に、淡い光が差した。

ここは新しい『昌浩』が生まれたところ。
諦めが良くて、言いたいこともやりたいことも飲み込んで、ずっとずっと我慢していた自分が、終わった、ところ。

「もっくんやーい」

あの時。
真っ白い物の怪が…もっくんが、頭の上に落ちてきた、時から。
俺、やっと、本当に笑えるように、なったんだよ。

「今年最初の笑顔は、お前にあげる」

だから。
だからね。

「あけましておめでとう。今年もよろしく、もっくん」

これからも、ずっと。
お前の笑顔を、俺に頂戴?


◇昨年中は大変お世話になりました!
今年はのんびりゆるゆる稼動になりそうな万葉庵ですが、気が向いた時に立ち寄って頂ければ幸いです。

そして、あけましておめでとうございます!
この年がみなさまにとって良い年であるように、ネットの片隅から祈っております。

遅ればせながら、お知らせに関する拍手、またメールを下さった方々、本当にありがとうございました。
遅くなるかもしれませんが、返信は是非させて下さいませー。

お題はAir./冴空柚木さまよりお借りしました。

我侭を言ってごめんね、赦してくれとは言わないから

2006-12-08 | 他ジャンル小説
知らなかった。
護れないって、こんなに辛いことだったんだ。

「昌浩、どうした?」
「ああ…もっくん」

なんて心配そうな顔でこっちを見るんだろう。
うん、早めに座り込んで正解だったな。

「彰子…冬に入内するんだってさ」

来年の夏に貴船に蛍を見に行こうと、約束した、その矢先に。
瘴気に蝕まれてなお、泣きながら謝っていた彰子の涙が、その、声が。
今も頭から離れない。

護るって、言ったのに。
俺が、必ず、護るって。

「もっくん、窮奇を探そう」

まもれなかった、護れなかった。
思い出すのは、自分を責めていた彼の者の叫び。
寒くて、暗くて、寂しい場所に、ひとりその身を沈めて。

あの時の自分は知らなかった。
信頼してくれる、ひとを。護れないということが、どれだけ辛いことか。
だから、連れ戻した。
項垂れる物の怪に笑いかけて、そばにいてくれと、心の声で、告げて。
そうすることで、紅蓮が泣かずにすむって、信じてた。
ああ、でも。

責められた方が、詰られた方が。
楽な時も、あるんだね。

あのまま俺が死んでたら。
紅蓮は、きっと壊れちゃったのかもしれないね。

だって、この胸が。
こんなにも、痛い。

「ああ、どこかに隠れている異邦の妖異どもを、絶対に倒してやろう」

でも、彰子は生きてるから。
こんな俺でもまだ、出来ることがあるから。
だから。

『じい様、お願いがあります』

我侭を言ってごめんね、赦してくれとは言わないから


◇10話の時点で、初めて昌浩は護れなかった、その重みを知った気がしたので。この時点で紅蓮のやるせなさというか、あんな場所にずっと身を沈めようとする想いの片鱗を知るのかなと。

10話になってきりがいいので、なんとなく箇条書き感想でも。
というわけで「淡き願いに応えの声を」感想です。

・「前回までの少年陰陽師は…!」すみません、この編集ではちょっとわかりません(汗)
・「ほぉ、一目で見抜くとは、流石は十二神将だな」わからいでか!あんな白髪(銀髪?)に蒼瞳になってりゃ誰でも気づくわ!つか憑依された方が男っぽいってどうよ?
・昌浩を抱きとめた後の体勢がね、こう…「じい様は見た!」みたいな(意味不明)いや見る人が見たらなんだかなあと(笑)
・紅蓮の腕枕でくかーくかー眠ってる昌浩は可愛いなあと。
・もっくんの二足歩行は衝撃の一言でした…!つか指差しとか腰に手を当てーとか、ギャグにしか見えん(笑)
・「やあ、これはこれは」行成さんは結構いいとこの貴族様だった気がするのですが、徒歩ですか?つかこの人の昌浩を見る目は陰陽のマサオミさんばりに怪しいです(ナンダッテー)「私は君に期待しているんだよ」クルーゼ隊長…!(違う)
・道の真ん中で頭抱えてる昌浩さんは傍から見るとただの変なひ(以下略)
・若本御大の声は、いつも絶好調ですね。
・前回のことがあるからか、女房がいる時は彰子に敬語を使うおすまし昌浩。
・「いいから聞け」(両肩掴み)な険しい表情と口調から「今度なにかあったらすぐに知らせるんだ、わかったな」この時のお兄ちゃん口調というか、表情というか…飴と鞭の使い方をよく知ってるな、と。
・貴船に蛍を見に行こう、な約束が…(泣)
・めずらしくもっくんと紅蓮が強いよ…!
・昌浩を責める道長さんからさりげにまもってくれるじい様が素敵です。「恐れながら道長様…」ウチの孫は悪くないんじゃ、てめぇの娘のせいじゃボケが(意訳)すごいなじい様!
・「ごめん、俺、彰子を護るって言ったのに」
・首に下げてる匂い袋の紐を引きちぎるのがいいなあと。
・昌浩のあのなんでもない淡々とした言い方がたまらんです…切ないのう…。

ところであのEDは紅蓮→昌浩でいいのかな?とか。

お題は「護りたかった君へ長文10題」(Arcadia./ 満月あくあさま)からお借りしました。

年末総決算アンケート、投票、またコメント下さる方ありがとうございます!かざるにはもったいないくらいのお言葉を頂き、本当に嬉しいです!とっても励みになりますv一応これはクリスマスまで置いておくつもりですので、個々のコメント返しはその時にまとめてお返しさせて頂きますー。

12月末に陰陽大戦記サーチさんが閉鎖されるとのことで、それとあわせて出来れば1年ちょっと前に話してた陰陽大戦記の迷宮螺旋のノベルゲームもどきを期間限定でUPしてみたいな、とか考えております。きっとまたアドレスは請求となってしまうと思うのですが、見てみたい方いらっしゃいますか?UPしてひとりも請求がないのは流石にかなしいので、請求でもいい、見てみたい!という方はコメントや拍手コメントで意思表示をお願い致します。3人以上いればクリスマスUP目指して頑張りたいと思いますので、はい。

拍手文リクエストもお気軽にどうぞv

想い埋め

2006-12-01 | 他ジャンル小説
晴明の末孫にして、唯一の後継の、あのこどもは。
日の光の下で、いつも幸せそうに笑っていた。

れぇん、と舌足らずな声に、唯一無二の至宝を、呼ばれる度に。
そのきらきらと輝く茶色の瞳が、ぎこちなく笑う自分を映す度に。
感じていたのは、この上ない至福と、恐怖。

騰蛇は本来、封じられるべき、もの。
この冷たい炎はいつか、愛しいこどもを焼き尽くすかもしれない。
けれど一度手にした光を手放すことなど、自分には出来なくて。

だから。
晴明によって、昌浩の見鬼の力を封じられたことに安堵したのだ。
これでいい。
もとより太陽の下で笑う子供の、その傍に。
自分は、寄り添っていい存在では、ないのだから。

『れぇん…』

昌浩は、幼い。
例え今は泣いていても、すぐにこの存在を忘れてしまうだろう。
その方が、いい。

それから、しばらくあの場所にいた。
冷たく、暗く、寂しい場所に、ひとりで…ひとり、きりで。

『見ーつけた、もっくん』

そして、今。
貴船の山に置き去りにされて、暗闇の中、泣いていたこどもが、穏やかに笑う。
自分を胸に抱いて、帰るのだ、という。
そして騰蛇である自分を、あたたかいと。嬉しそうに、愛おしそうに、呟くのだ。
でも。

「嘘だ!」

ああ、自分は拒絶、しなければならない。
護れなかった自分を罵ればいいのに、こいつはあの時、笑ったのだから。
胸にひろがっていく、鮮やかなあかにも構わず。

お前のせいじゃないよ。
大丈夫だから。
そばにいて。

違うんだ、昌浩。
それはきっとお前の本当の意思じゃない。
信じていた晴明に裏切られて、怖くて、哀しくて、悔しくて。
誰かに縋りたかったお前の心に、俺は卑怯にもつけこんだ。

ありがとうな。
でも、もういいんだ。

「騰蛇は、冷たい、恐ろしい存在だ。ひとりきりでいるのが、一番いい…」

せめて最後に、その笑顔を見られたから。
もう、それだけでいい。
太陽の下でないのが、少し、ほんの少しだけ、残念だけど。

「ごめんね」

…え?
ぽたり、ぽたりと、零れ落ちるのは。
あれは。

「今、ここで連れ帰ったら、今よりもっともっと辛い目に遭わせるの、わかってるんだ」

驚く自分の顔を、その潤みきった茶色の瞳に映して。
物の怪の、白い体を抱き上げた昌浩の、腕は。その、拘束は。
痛い、くらいに。

「だけどさ、俺、我が侭だからさ…だから…」

じい様と、俺と。
ふたりの主を持てば、別れもふたつ…哀しみも、倍になる。
他の神将達は、これからの俺を見て、つくかつかないか自分の意思で決めるだろう。

でも紅蓮はもう、選べないんだ。

「あのさ、痛い時は痛いって言ってよ。俺が、絶対きいてやる、だから」

信じていた人に裏切られた俺を見て、優しいお前が出てこないわけがない。
本当はじい様の思惑にだって、気づいていたのに。
誰かに必要とされたかったお前の心に、俺は卑怯にもつけこんだ。

「だから帰ろう…一緒に」

ああきっと、差し伸べたこの手は拒まれることはない。
それが嬉しくて…少しだけ、かなしかった。


◇9話の、もっくんが昌浩に抱き上げられて、そのままお持ち帰りじゃなくて、こう「だめだ、俺はここにいなくちゃいけないんだ!」ってな葛藤がですね、こうなんかきたので(訳わからん)じい様の思惑っていうのを少し補完すると、自分は寿命があって、昌浩の行く末を見届けることが出来ないので、その任を紅蓮に託したってことなんですけどね。うーん、その辺は今はうまくまとまらないので、出来れば別話で書きたいです。

私信です。

わかばさん
先日はお返事をありがとうございました!さっそく1126企画記事にリンクはらせて頂きましたー。クラトスとゼロスとロイドのほのぼの、見ていて楽しかったですv温泉話に感想もありがとうございます!あの4人の親子話は結構好きなので、楽しんで頂けた様で嬉しいですv是非是非おまけも書きたいですね!

拍手ぽちぽち押して下さる方、ありがとうございます!励みになります!

酒と風呂は百薬の長

2006-11-26 | 他ジャンル小説
◇アニメ版しか観てない方には、ちょっとネタバレかもしれないです。ご注意。


「あーの、昌浩さん?」
「なに、もっくん」

その頭にはらはらと散りつもるのは、この瞳と同じあか。
ぱしゃん、と湯を跳ね上げると、晴明の末孫にして、ただひとりの後継は不機嫌そうに振り向いた。
「お、お湯加減はいかがでしょうか…」
「最悪」
にっこりきっぱり一刀両断、な物言いをされた物の怪は、は、と小さなため息をついた。
つかこーゆートコ、本当こいつ若菜の孫だよな…。
「あーのーな。さすがにそろそろ帰らないと、心配するだろ」
「んー…」
誰が、とは言わない。
それでもこういう言い方をすれば、昌浩はすぐ腰を上げる…。
「ま、いいや」
…はずだったのだが。

これはやはり調伏の際、勢い余って御神酒を頭からかぶったのが原因だろうか。
安陪家の系統は晴明を筆頭に酒豪が多いというのに…。
「ん?なにもっくんその顔!俺、酔ってなんかいないからね!」
あー、あのな?酔っ払いはみんなそう言うんだぞ、昌浩。
大体いくら泥だらけになったとはいえ、素面ならこんな場所で湯浴みをしたいなどと言える筈がないだろう…!
『ほう、神の住処をこんな場所とは…言ってくれるな、神将騰蛇よ』
出た。
「あー、鷹女将の神だぁ…」
『漢字変換が違っているぞ、人の子よ』
いや、結構言い得て妙って気もするがな…って、突っ込みどころはそこなのか?俺!
『まあ、よい。神将よ』
「…なんだ」
『そこで丑の刻参りをしている人間に主の肌を見られたくないなら、早々に立ち去ることだ』
すい、と伸ばされたその手の先には。

「あ、敏次ど…」
「天誅----!」

哀れ、物の怪の蹴りをまともに食らって昏倒した陰陽生トップはそのまま夜の貴船に放置決定となった。
「もっくん、すごいねー」
昌浩はそれに異を唱えることもなく、にこにこと幼子のように無邪気に笑って手を叩いている。
これは願ってもないチャンスかもしれない。今なら自分の言うことも素直に聞いてくれるかも…。
「ほら、昌浩。帰るぞ」
「やー」
嫌、じゃないだろ…。
「だってまだ全然体があったまんないもん…なんか、ぬるいし…あ、そうだ」
がくー、と肩を落とす物の怪をがしっと掴むと、昌浩はその白い体を思いっきり湯に沈めた。
思いがけず訪れた命の危機に、物の怪…もとい、紅蓮は瞬く間に本性に戻る。
「あ、あったかくなった」
あまりといえばあまりな仕打ちに、怒ろうと思ったのだ、思ったのだけれど。
自分の胸に頭をあずけたこどもにあんなに幸せそうにふわりと微笑まれては、それもかなわず。
(まぁもう少しなら…いいか…)
己の主を爺馬鹿と、そう呼んではいたけれど。
小さな昌浩がその紅葉のような手で、自分の髪を握り。
誰もが恐れるこの金色の瞳を、じっと見つめたが最後、その願いを拒めた試しはないのだ。

「紅蓮…」

その紅唇が紡ぐのは、唯一無二の至宝。
月明かりに浮かび上がる白い肌を彩るように、ひとつ、またひとつ、紅葉が舞う。
「…なんだ、昌浩」
艶やかな黒髪を優しく梳けば、愛し子はくすぐったそうに身を竦めた。
「俺、着替え持ってない」
「…」
確かに。
泥だらけになった狩衣は、酔った昌浩にせがまれ、慣れぬ手つきで洗ったとはいえとても着られる状態ではない。
せっかく冷えた体を温めたというのに、これでは屋敷に帰る前に風邪を引いてしまう。
「誰か来てくれないかなー、青龍とか」
一番厄介な相手を召還してどうする、とか、あいつが来ても事態はますます悪化するばかりだ、とか。
突っ込みたいのは山々だが、酔っ払いにむやみに正論を進言するのは避けといた方が無難だ…今までの経験上。
しっかしこの状況を『視て』いるんだろうに。爺馬鹿晴明なら何か策を講じてそうなもんだが…。
と、徒然と思っていると。

「「「孫ー!」」」

聞き覚えのある声と共に、それが『降って』来た。
太陰の風で運んでもらったのだろうか、荒っぽい着地を余儀なくされた雑鬼たちはふらふらになりながらも、ひとつの包みを差し出す。
なんだこれは、伽羅の、香り…?

「お姫がよ、どーしてもお前にってよ!」
「綺麗な指を傷だらけにして、縫ってたぞ!」

ぼんやりと空を漂っていた昌浩の瞳が段々と正気の光を取り戻す。
「あきこ、が…?」
それを、望んでいたはずなのに、どこか悔しいと感じるのは。
まだ心のどこかで思っちまってんだろうな。
この子のすべてが、自分の、ものだと。
「うん、…帰らなきゃ、ね…」

ああほら夢は、終わりだ。
その体に纏りつく湯煙が、消えて、しまうように。

「似合う…かな?」
愛しい少女の縫った衣を着た昌浩は、どこかくすぐったそうに笑う。
「まー、いいんじゃね?『まごにもいしょう』って言うしなー」
「孫、言うな!」

いつものやり取りに夕焼け色の瞳を細め。
物の怪は、けらけらと声を上げて笑った。

この、醜い、心に。

気づかぬように。
気づかれぬ、ように。


◇あれ?おかしいな、ギャグのまま終わるはずだったのに(汗)ええと、この話の舞台の温泉は貴船のどっか水たまりを紅蓮が沸かしてたってことでひとつ(笑)
お酒と温泉の取り合わせはいいですよね…。

唯一無二の

2006-11-21 | 他ジャンル小説
よく、わからない。

そう答えたら、目の前の物の怪はその夕焼け色の瞳を見開いて。
どこか諦めたように、ふっと笑った。

だって。
自分のために泣けとか、自分のために怒れ、とか。
そんなの。

「ずっと、俺は、自分の…、俺だけの、ために」

勝手なまでに、自由に。
みんなに迷惑をかけて、生きてきたのに。

それをお前は赦すという。
じい様を喪うかもしれない、恐怖で。
誰でもいいから、縋りつきたいという甘えを。

ゆるすと、いう。

「もっくんは、いつも、俺の欲しい言葉をくれるんだね」

首に巻きついてくる、穢れなきしろ。
我が侭なのか、と思う。

『じい様がいなくなったら、俺は、この世でたったひとり』

まるで空から舞い降りてくる雪のように。
この心を、包み隠して欲しいと思うのは。

『ひとりになるのが、嫌だから。だから生きていて欲しいと願っている』

怖い、よ。
天狐の血を引く最後の人間となるのは、怖い。

そうして、人の世から。
弾き出される、くらいなら。

「ずっとずっと一緒にいてね」

唯一無二の存在をうしなって。
いつか俺が。

人の心を、手放してしまったとしても。


◇多分天狐編の辺り。昌浩が晴明に死んで欲しくないのは、色んな意味がこめられてるのかなあと。相変わらずよくわからない走り書きですみません。

ちょっとこの頃、漫画本の整理をしているからか、色んなところに気が散って困ります。昨日は闇の末裔を読んで、あああれも十二神将が出てきたなあとか懐かしく思いました。1126企画も進めなきゃいけないのになあ…あ、このカンジはテスト前の焦りに似てますな。不甲斐ないというかなんというか。でも一時期は書く興味も薄れかけてたので、まだ書けるだけいいのかなあ…。

願いをこめて

2006-11-20 | 他ジャンル小説
思い起こせば。
元服してからこの方、俺は、まともに名前を呼ばれたことがない。

「そうかぁ?結構呼ばれてるだろ、ほらあの藤原の姫様とかー」
「あっ…彰子は、その…関係ないだろ!」
「両親だろ、彰子に、行成に…晴明にだって呼ばれてる。それのどこが不満だ?」

心底不思議そうな顔で首を傾げる物の怪にはわからないだろう。
『晴明の孫』という言葉が、どれだけ自分を縛ってきたか。

「まあ、あれはお前を護るためにわざと…な気もなきにしもあらずってなー」

意味ありげに瞬く、夕焼け色の瞳。
護るって、じい様が?
何から?

「名前は一番短い『呪』」

だからこそ、軽々しく教えるものではないと、物の怪は言った。
そしてまだ彼の人を無条件に信じていた幼い日にも、それは。

『昌浩や。名前は大事なものだよ。だからなあ…』

呼んで、もらうなら。
自分が好きになった、人に。
ほんとうに、本当に呼んで欲しい人に。

『ただ一度、呼んでもらえたら、それだけで充分だと思うんだがなぁ…』

厚い雲から零れる、光の階。
袂をぎゅっと握ってないと、ひょい、とそこに上ってしまいそうで。
自分の、前から。
いなくなって、しまいそうで----。

だから。

「…じい様の名前だけは、呼ばないからな」

ずっとずっと、なんて。
叶わないことは、わかっていても。

『どうか俺が、一人前になるまで、ここに』

そうそんな、願いをこめて。

「…」

物の怪は、ふわりとその白い尾を振るだけで、何も言わなかった。
その、願いは。
彼とて、同じだったから。


◇というわけで少年陰陽師、名前についての走り書きです。
名前は、本当に自分を見ていてくれる人に呼んで欲しいものですね。
このお話読んで、平安ものって結構好きだったなあ、と思い出しました。小説では瀬川貴次さんの暗夜鬼譚シリーズとか。漫画だときらきら馨るとか少年魔法士とか…後者は違うかな?

韋駄天翔小説お品書き

2006-10-19 | 他ジャンル小説
◇基本的に親子、兄弟ものです。

連載

◇今は見えない、未来の果てに◇(更新停滞)
*途中まででもいいわ!という心の広い方向き。未完になる可能性大です*

「今は見えない、未来の果てに(壱)」(2006-9-29)
少年は父と走るという夢を叶えた。そしてその代償は。
   「じゃ、行って来るな」

「今は見えない、未来の果てに(弐)」(2006-10-02)
あゆむの胸に芽生えた不安。ただその願いを信じて、いたかった。
   「なんて顔してんだよ、大丈夫だって」

1話完結もの

「それは手のひらから零れ落ちる、砂のように」(2006-09-22)
ホースケ=かつて王の怨念を封印した英雄というとんでも捏造設定。しかも死にネタです。ご注意!
   「んじゃ、ちょっと行って来るから…後は頼むな」

「想い出は、いまは遠く」(2006-09-26)
44話の翔の叫びからの妄想話。どんなにつよいお兄ちゃんだって、泣きたい時があります。
   「泣いてたの?おにいちゃん…」

「その手に高く、灯火をかかげ」(2006-10-01)
ED後捏造。この世界に残ってくれた息子になにがしてやれるのかと、悩む父さんの話。
   「大分、煮詰まっとるようじゃの」

「その羽、手折るなかれ」(2006-10-19)
猛→翔。ちょっと危ないパパの独り言。

その羽、手折るなかれ

2006-10-19 | 他ジャンル小説
私の息子には羽がある。
誰よりも、何よりも、強く、どこまでも飛べる羽が。

けれどあの子はひとりでは決して飛ぼうとしない。
仲間という足枷を断ち切ってしまえば、私と同じ、空を翔ることが出来るのに。

その羽は、きっと主の心のように、しろくおおきいのだろう。
だが、彼の者の本来の姿を見たものは、誰もいない。

空を翔ることを禁じている息子が、それをひろげることは、ないからだ。

いつもいつも、それは仲間を護るために、包み込む、ために。
たたまれて、いるから。

だから、私はその羽根を、ひとつひとつ、抜いてやろう。
その真っ白きこころに、絶望という名の楔を、打ち込んでやろう。
お前が飛べるように、いつか私の元に来られるように。

だから。
だから、それまでは。

その羽根、手折るなかれ。


◇とっても短い電波文でごめんなさい。韋駄天の猛→翔なつもりで書いたんですけど、TOSのクラトス→ロイドでもいけるような…。

あ、私信というか。
ご無沙汰しております。OPの白羽根は翔ですよね!そして余計なお世話かもですが、一応書いときますと、TOSの世界の名前はゼロスのいる方がテセアラ、ロイド達の方がシルヴァラントですよー。TOEみたいに対になってないから覚えにくいですよね…。そういえば韋駄天といえばダイジェスト版は無料で、本編はあにてれシアターで4話パック336円で有料配信されてますよ。今は25話までですが…ご存知だったらすみません…。連載も単発話も楽しみにしてます!これからも頑張って下さいね!

うう、ウチも連載そろそろ続きを書かないと…(汗)

今は見えない、未来の果てに(弐)

2006-10-02 | 他ジャンル小説
◇これは先日最終回を迎えた韋駄天翔の捏造最終回もどきになる予定の話でした。
そういうのが苦手な方はご注意を。
今は見えない、未来の果てに(壱) を未読の方はそちらから読んだ方がよろしいかと。

それではどうぞ。

それは、なんでもないジャンプのはずだった。
本当に小さな小川を飛び越えるだけ、だったのに。
「…あれ?」
くらり、と目眩がしたかと思うと、バランスを崩した翔は水面に顔から突っ込んだ。
あーあ、服から何からびしょ濡れだ…今日はいい天気だから、直に乾くだろうけど。
「おにいちゃん!どうしたの、大丈夫?」
「平気平気…ってこら!あゆむ!」
涙目ですっ飛んで来た弟が、小川にそのままダイブしようとするのに、翔は鋭い制止の声を投げかけた。
「…お前まで濡れちゃうだろ?」
びくっと立ち止まるあゆむに、にこりと笑いかけると、今そっちに行くから、とやさしい声をかけ、立ち上がろうとして。
それに、気づいた。

ああ。
結構、はやかった、な。

「立てるか…?翔」
あゆむから自分を隠すように、さりげなく猛はふたりの間に入る。
差し出される大きな手を掴むと、翔は座り込んだまま、じっと相手の目を見つめ。
そして。
「あはは、父さん、ごめん。ちょっとドジっちゃった」
水面に流れるは、赤い、糸のような。
鋭い石で切ったのだろう、翔の足からは後から後から血が流れていた。
それは落下した時の傷ではないと、一部始終を見ていた猛には、わかっていたけれど。
「…今日は暑いからな」
それを咎めることもなく、ごく自然に息子の体を抱き上げる。
そのあたたかさに張り詰めていた気が緩んだのだろうか、途端にどっと襲ってくる倦怠感に、翔の口から、は、と小さなため息が零れた。
「おにいちゃん…」
「なんて顔してんだよ、大丈夫だって」
くしゃくしゃと頭を撫でられ、不安に強張っていたあゆむの顔が緩む。
大丈夫、おにいちゃんは、決して嘘を言わない。
だから。
「うん!」
翔が大丈夫と言うなら、大丈夫なのだ。

また一緒に元の世界で走れる。
今度はお父さんも一緒に。
お母さんにお弁当作ってもらって。
一日中走って、泥だらけになって、お風呂に入って。
そんな当たり前の幸せの日が、来るのだ。

本当に…?

「待っててね、今フレイムカイザー取って来るから!」
「あ、あゆむ…濡れるって!」
ほら、眩しい太陽はまだ、そこに在る。
まるで白い紙に一滴落ちたインクのように、その疑問は消えずに心の中に在ったけれど。
「おにいちゃん…」
そんなことがあるはずない、とあゆむはその考えを無理やり打ち消した。

だって、信じていたかったのだ。
そしてその願いは、叶う、はずだった。

兄の口から、その言葉をきくまでは。


◇なんだか長くなりそうな、そして翔がかわいそうなことになりそうな予感…。でも神官マントを着た翔が書きたいので、そこまでは頑張りたいと思います!
関係ないですが、ディープインパクトの凱旋門賞ドキュメントを見ると「風のシルフィード」が読みたくなりますです…。

ぱちぱち(拍手)はこちらになります。続きを書く原動力となりますので、気に入った方はよろしければぽちっと押してやって下さい。→おにいちゃん、なにか隠してるんじゃないかな?心配だよ…。
ただいまの拍手御礼文は、スパラダのイグハンお試し版「もらいものにはご用心」1種のみです。今回激しく女性向なので、ご注意を。

拍手して下さった方、ありがとうございました!とっても励みになりますv
(コメント下さる方は、コメントが複数に分かれる場合は1>~2>~のように番号を振って頂くか、何か共通のマークをいれて頂けるとありがたいです。)

拍手レスはこちらになります。(以前のものはこちら→その1(~3/18)/その2(~5/31)/その3(~9/14))