友達は、消えてしまった。
励ましてくれた父は、連れ去られた。
ネビュラグレイを破壊しろと言い残して。
大切なものが次々と奪われていく。
取り戻したい。
そして、いつものように、みんなと。
「熱斗くん」
翡翠の瞳に映った自分の顔はひどいものだった。
もうずっと眠ってない。
眠れない。
「大丈夫」
もうこれ以上大切なものをうしないたくない。
取り戻さなくちゃいけないんだから。
だから、もっともっと強く、ならなくちゃいけないんだ。
「…うん」
いつからか、熱斗は人前では泣かなくなった。
涙を流すのは。
ただひとり。
「…熱斗くんをお願い」
この少年が傍らにいる時だけ。
悔しいけれど。
自分が出来るのはここまでで。
「ああ」
良かったね、熱斗くん。
胸に走った痛みをごまかすように微笑むと。
青いナビは静かに姿を消した。
「熱斗」
懐かしい人の気配に俯いていた顔を上げる。
青い瞳に浮かぶ優しい光に、涙が零れそうになって。
慌ててその胸に顔をうずめた。
「炎山…みんないなくなっちゃったんだ…ロックマンも、お前も、世界も…このまま消えちゃうのかなぁ?」
言葉にしたら本当になってしまう気がして。
ずっとずっと言えなかったけど。
胸に巣食う不安は、もうどうしようもなくて。
「世界は、消えない」
とくり。
自信に満ちたその声に。
揺らぐことない瞳の光に。
心臓が大きく脈打った。
「お前がうしなうものは、もう、何もない」
伝わる鼓動に合わせて、ぽんぽんと背中を叩く手。
そのあたたかさに導かれるように。
とろり、と熱斗の意識が溶けていく。
「取り戻しにいこうな」
張り詰めていた気が緩んだのか。
すっかり眠り込んでしまった熱斗の、茶色の髪を梳きながら。
炎山は自分の手を握って離さない、その手の甲にそっと口付けを落とした。
まだしばらくは、このままで。
◇映画の話です。祐一郎が連れ去られた後、ということで。この時の熱斗は友達が消えたり、父親が変な親父に拉致られたり、踏んだり蹴ったりでしたね。しかしこの話のロックはかわいそうな…気が…。いやいやきっともう片方の手にはPETが握られてるんですよ!って誰に弁解しているのか(笑)ブルースが出てなくてすみませんです。ブルロクも書いてみたいんだけどなぁ。
励ましてくれた父は、連れ去られた。
ネビュラグレイを破壊しろと言い残して。
大切なものが次々と奪われていく。
取り戻したい。
そして、いつものように、みんなと。
「熱斗くん」
翡翠の瞳に映った自分の顔はひどいものだった。
もうずっと眠ってない。
眠れない。
「大丈夫」
もうこれ以上大切なものをうしないたくない。
取り戻さなくちゃいけないんだから。
だから、もっともっと強く、ならなくちゃいけないんだ。
「…うん」
いつからか、熱斗は人前では泣かなくなった。
涙を流すのは。
ただひとり。
「…熱斗くんをお願い」
この少年が傍らにいる時だけ。
悔しいけれど。
自分が出来るのはここまでで。
「ああ」
良かったね、熱斗くん。
胸に走った痛みをごまかすように微笑むと。
青いナビは静かに姿を消した。
「熱斗」
懐かしい人の気配に俯いていた顔を上げる。
青い瞳に浮かぶ優しい光に、涙が零れそうになって。
慌ててその胸に顔をうずめた。
「炎山…みんないなくなっちゃったんだ…ロックマンも、お前も、世界も…このまま消えちゃうのかなぁ?」
言葉にしたら本当になってしまう気がして。
ずっとずっと言えなかったけど。
胸に巣食う不安は、もうどうしようもなくて。
「世界は、消えない」
とくり。
自信に満ちたその声に。
揺らぐことない瞳の光に。
心臓が大きく脈打った。
「お前がうしなうものは、もう、何もない」
伝わる鼓動に合わせて、ぽんぽんと背中を叩く手。
そのあたたかさに導かれるように。
とろり、と熱斗の意識が溶けていく。
「取り戻しにいこうな」
張り詰めていた気が緩んだのか。
すっかり眠り込んでしまった熱斗の、茶色の髪を梳きながら。
炎山は自分の手を握って離さない、その手の甲にそっと口付けを落とした。
まだしばらくは、このままで。
◇映画の話です。祐一郎が連れ去られた後、ということで。この時の熱斗は友達が消えたり、父親が変な親父に拉致られたり、踏んだり蹴ったりでしたね。しかしこの話のロックはかわいそうな…気が…。いやいやきっともう片方の手にはPETが握られてるんですよ!って誰に弁解しているのか(笑)ブルースが出てなくてすみませんです。ブルロクも書いてみたいんだけどなぁ。