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デラシネ魂

ジャンルよろずな二次小説サイトです。
ネタバレ満載、ご注意を。

ささえるもの

2005-11-28 | ロックマンエグゼ小説
友達は、消えてしまった。
励ましてくれた父は、連れ去られた。
ネビュラグレイを破壊しろと言い残して。

大切なものが次々と奪われていく。
取り戻したい。
そして、いつものように、みんなと。

「熱斗くん」

翡翠の瞳に映った自分の顔はひどいものだった。
もうずっと眠ってない。
眠れない。

「大丈夫」

もうこれ以上大切なものをうしないたくない。
取り戻さなくちゃいけないんだから。
だから、もっともっと強く、ならなくちゃいけないんだ。

「…うん」

いつからか、熱斗は人前では泣かなくなった。
涙を流すのは。
ただひとり。

「…熱斗くんをお願い」

この少年が傍らにいる時だけ。
悔しいけれど。
自分が出来るのはここまでで。

「ああ」

良かったね、熱斗くん。
胸に走った痛みをごまかすように微笑むと。
青いナビは静かに姿を消した。

「熱斗」

懐かしい人の気配に俯いていた顔を上げる。
青い瞳に浮かぶ優しい光に、涙が零れそうになって。
慌ててその胸に顔をうずめた。

「炎山…みんないなくなっちゃったんだ…ロックマンも、お前も、世界も…このまま消えちゃうのかなぁ?」

言葉にしたら本当になってしまう気がして。
ずっとずっと言えなかったけど。
胸に巣食う不安は、もうどうしようもなくて。

「世界は、消えない」

とくり。

自信に満ちたその声に。
揺らぐことない瞳の光に。
心臓が大きく脈打った。

「お前がうしなうものは、もう、何もない」

伝わる鼓動に合わせて、ぽんぽんと背中を叩く手。
そのあたたかさに導かれるように。
とろり、と熱斗の意識が溶けていく。

「取り戻しにいこうな」

張り詰めていた気が緩んだのか。
すっかり眠り込んでしまった熱斗の、茶色の髪を梳きながら。
炎山は自分の手を握って離さない、その手の甲にそっと口付けを落とした。

まだしばらくは、このままで。


◇映画の話です。祐一郎が連れ去られた後、ということで。この時の熱斗は友達が消えたり、父親が変な親父に拉致られたり、踏んだり蹴ったりでしたね。しかしこの話のロックはかわいそうな…気が…。いやいやきっともう片方の手にはPETが握られてるんですよ!って誰に弁解しているのか(笑)ブルースが出てなくてすみませんです。ブルロクも書いてみたいんだけどなぁ。
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それは勘弁してください

2005-11-26 | ロックマンエグゼ小説
◇アニメとかゲームとか色々設定が混じってますのでご注意を。

それではどうぞ。

「ロックマン、俺…夢みたいだぜ…」
「熱斗くん…」
コピーロイドのおかげで、実体化出来るようになったロックマンと熱斗がやって来たのはとある温泉。
今までPETを湯に浮かべたことはあったけれど、実際にこうして一緒に入るのは初めてだ。
「炎山も来れば良かったのになー」
「…うん。でも炎山って…」
こう、外国の映画に出て来るような泡風呂に片足伸ばして入ってるようなイメージが、とロックマンが呟くと、熱斗がにんまりと笑ってアノ言葉を付け加えた。
「アフロで?」
「アフロで」
顔を見合わせたふたりはぷぷーっとふきだす。
アフロで泡風呂に入っている炎山…考えただけで笑い死にしそうだ。
「何を笑っている」
と、二人の背後で不機嫌そうな声が響いた。
「えっ、炎山!どどど、どうしてここに?」
挙動不審な熱斗をちらりと見やると、呆れたようにため息をつく。
「たまにはブルースに息抜きをさせてやろうと思ってな…」
「ありがとうございます、炎山様」
腰にタオルを巻いているオペレーターのその横で。
隣のナビはそれはそれは男らしく仁王立ち…や、それはいいのだが。
「かっ、隠してよ!」
真っ赤な顔で俯くロックマンを心底不思議そうな顔で見たブルースは。
「どこを」
なにを言ってるのか理解不能、と言わんばかりに首を傾げるその仕草は憎らしいくらいにきまっているが。
如何せん、相手が悪かった。
「「下だーっ!」」
光兄弟の大音量の突っ込みをモロに受けたブルースは、しばし行動不能になり。
『まさか君、温泉にその髪で入るとか言わないよねぇ…?』
満面笑顔の(でも目が笑ってない)ロックマンに、背に流れる銀髪を三つ編み、そしておだんごにされて鏡の前で固まっていたそうな。
そして炎山はといえば。
「ほら熱斗くん、ちゃんと肩まで浸からなきゃ」
「うーんでもちょっとのぼせちゃってさ…ロックマンもこっち来いよ」
「ちょっと狭いね…」
「くっつけば大丈夫だって!ほら!」
「もう、熱斗くんったら」
確信犯なロックマンと天然の熱斗に見せつけられてそれはそれは大変だったらしい。
「許せ、ブルース…」
自分たちはどこまでも青コンビに翻弄される運命なのだと、炎山はこの日改めて悟ったとか。
どっとはらい。


◇あれ?おかしいな、もっとらぶらぶになるはずだったのですけれども…(笑)
色々な意味でロックマンは最強だと思います。はい。
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やくそくのであい

2005-11-25 | ロックマンエグゼ小説
◇このお話はロックマンと熱斗が以前に出会っていたという捏造話です。
そういうのが苦手な方は自力での回避をお願い致します。

それではどうぞ。

「おはよう、ロックマン」
ナビである僕の一日は、この言葉で始まる。
眼鏡をかけてにこにこと笑ってる男の人…みんなから『光博士』って言われてるこの人が、僕を、作った。
「おはようございます」
「今日もインターネットを探検するのかい?」
「はい、はやく道を覚えないと…」
僕には他のみんなのように、マップがインプットされていない。
だから色んなところを歩き回って、自分で作ってるんだ。
どうしてこんな面倒なことを?って思うけど、光博士の言うことには。
『次世代ナビである君には、オペレーターと一緒に成長してもらいたいからね』
っていうことなんだって。
正直…よく、わからない。
「行って来ます」
それでも
科学省のHPから一歩踏み出せば、そこから至る所に道はつながっている。
「今日はこっちに行ってみようかな」
秋原町エリアに向かって、僕は一歩を踏み出した。

そして僕は会うことになる。
あの子に。

誰かが泣いている気がして、僕はその画面を覗き込んだ。
するとそこには小さな子供がうずくまっていて。
「…どうしたの?」
おそるおそるかけた僕の声に反応したのか、その子は弾かれたように顔を上げた。
青いバンダナで束ねられた茶色の髪はぼさぼさで、ずっと泣いていたのか目は真っ赤で。
「だぁれ…?」
それでも、大きな茶色の瞳は、とても綺麗だった。
こういう言い方、僕はあまり好きじゃないけど。
ただのプログラムの自分の胸がその時確かにとくり、と音を立てたんだ。
「僕は、ネットナビだよ」
「ねっとのナビ?」
うーん『の』は余計なんだけど…。
「ううん、ネットナビ。お父さんとかお母さんに聞いたことない?」
「おにいちゃん、ぼくのナビなの?」
だめだ…こっちの話なんて聞いてない…。
「だからネットナビだってば…」
少し強く言った途端に、茶色の瞳にみるみる涙が盛り上がる。
いけない、ついいつものクセで突っ込んでしまった。
きっとねっとくんは不安なんだ。
このエリアに不慣れな僕じゃよくわからないけれど、ここは住宅街からは遠く離れているみたいだし。
たった、ひとりでどれだけ心細かったんだろう。
「おにいちゃん…」
きっと本当はこの子だってわかってるんだ、ネットナビのこと。
泣きたくなる気持ちを抑えて…頑張って頑張って。
あんなことを、言ったんだよね?
僕はこの子のナビじゃない。
この子は僕のオペレーターじゃない。
それでも、今は、今だけは。
「…うん」
今やるべきことは、なんでもいい、この目の前の子供の涙をとめてあげることだって思ったから。
嘘はいけないことだけど、でも。

「そうだよ、僕は熱斗くんのナビだ」

その時の笑顔を、僕はきっとデリートされるまで、忘れることはない。
これを見るためなら、まもるためなら。
何でも出来る気がした。
「ちょっと待っててね。助けを呼んでくるから」
光博士にこの場所を伝えれば、きっと助けてくれるよ。
「おにいちゃん、いっちゃうの…?」
大きな茶色の瞳に、大粒の涙が浮かぶ。
「大丈夫。ここにいるよ」
科学省に行きかけた足をとめて、にっこり笑うと。
熱斗くんはようやく涙を引っ込めてほにゃりと笑ってくれた。
どうしても動けなくなったら使いなさいって言われたけど。
すごくすごく心配、かけちゃうと思うけど。

仕方、ないよね。

そしてその後。
ロックマンの発信した『今すぐ助けに来ないと僕デリートされちゃうよ!助けてパパァ!』信号を受信した祐一郎がものすごい勢いで飛んで来て、事の顛末を聞かされ脱力したりもするのだが。

それはまた、別のお話。

「やくそくのしるし」 に続きます。


◇色々突っ込みどころ満載の話ですが、さらっと読み流して頂けると嬉しいです。
や、小さい頃のふたりといったら鷹岬版が一番なんですけれども!違うのも書いてみたくなったのですよ…。そしてそしてゲーム(エグゼ6)をやっておりますと、本当にあの兄弟は…!と萌えどころ満載なのでもう書くべきことがなくて困ります(笑)
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触れない手、振れるココロ/01.ちゃんと聞かせて

2005-11-22 | ロックマンエグゼ小説
灯りの落とされた科学省に熱斗はひとり佇んでいた。
冷たいガラスにそっと額を触れる。
「はやく、起きろよ…」
傷つき眠るロックマンを見ているのは…見ているだけしか出来ないのは、正直、辛い。
自分と、そして、トリルと。
優しいこのひとは。
『おとうと』を護って。
いつも、傷ついて。

「俺、何も、出来ないのかな…?」

自分は、無力だ。
空のPETをなぞる指先が、震えた。

熱斗が祐一郎に呼び出されたのは、ロックマンが目を覚ましてから数日後のことだった。
「あ、ロックマン。炎山にメール、届けてくれよ」
「熱斗くん、別に今じゃなくても…」
珍しく渋るロックマンに、熱斗はにたりと意味ありげな笑みを浮かべた。
「ブルースも心配してたみたいだからさ…元気な顔、見せて来いって!」
「そ、そう…?じゃ、行くけど、何かあったらすぐに呼んでよ!」」
「おー」
心持ち頬を赤く染めたロックマンに、ひらひらを手を振ると。
その姿がPETから消えたのを見計らって、熱斗は祐一郎を見据え、言葉を紡いだ。

「パパ…『大事な話』って、なに?」

前方から歩いてくる赤いナビの姿を捉えた瞬間、翡翠色の瞳が大きく見開かれる。
「元気そうだな」
今は炎山と仕事の時間だろうに、こんなところを歩いているなんて。
「どうしたの?」
「迎えに来ては、いけないのか?」
「ううん、嬉しいよ。でもこれってさ…」
熱斗くんの差し金でしょ?
口調はさらりとしたものだが、ごまかすのは許さないとばかりの強い眼差しに。
ブルースはただ、頷きを返した。
「やっぱりね。もう熱斗くんたら、過保護すぎだよ…」
「逆の立場なら、お前も炎山様に同じことを頼むだろう?」
う、と言葉に詰まる青いナビの頭に、赤いナビはぽんと手を置いた。

そうしてロックマンは難なく熱斗の元へ帰れるはずだった。
科学省への帰り道で、ゾアノロイドに連れ去られそうになっているトリルを見つけなければ。

「お願い、俺を誰もいないところに運んで」

獣化してゾアノロイドを倒したロックマンは暴走を始めた。
何度呼んでも、自分の声は届かない。
あの時と、同じ。
違うのは。

『フォースシンクロチップ?』
『獣化したロックマンと強制的にクロスフュージョン出来るチップだ。ただ、その結果何が起こるかは、正直わからない』
『でも、これを使えば、ロックマンをとめられるかもしれないんだよね?』
『…ああ』

ゆっくりと熱斗はその瞳を閉じた。
大丈夫。
覚悟なんて最初からしている。
あの人を護ろうと決めた、あの時から。

「名人さん…ディメンショナルエリアを…!」

握り締められた一枚のチップ。
使うかどうかは自分の判断に任せると。
祐一郎はそれを手渡してくれた。

ロックマンに、声を届けることの出来る、ちからを。

「フォースシンクロチップ、スロット…イン!」

純粋に破壊を求めていた心に、変化が生じる。
「…?」
それはまるで砂漠の中の一粒の砂のような、ささいなもので。
けれど。

『…ン』

それはとても大切なもののような気がした。
ちゃんと拾い上げてあげなければ。

『…ク、マ…』

お願い。
ちゃんと、聞かせて。

『ロック…ッ!』

その、こえを。


カシャン、と乾いた音がどこかで響いた。
それはPETが地に落ちる音。
「熱斗くん…?」
「…」
返事は、ない。
「なに…これ…」
自分たちの周りは、廃墟と化していた。
まるで強大な力が荒れ狂ったかのように。
「どうして…」
ぞくり、と背に冷たいものが走った。
戦闘中にトリルに抱きつかれて、自分が無事だった例はないのに。
だとしたら。
「熱斗くん…、熱斗くん!返事してよ、熱斗くん!」
まるで疲れて眠ってしまったかのような、その横顔。
けれど。
その呼吸は----。
「お願いだから!起きてよ、熱斗くん、熱斗くん!」
伸ばした手は、届かない。
ロックマンはただ悲痛な声でその名を呼ぶことしか、出来なかった。


02.声が嗄れるくらいに に続きます。

いつから、こんな顔をするようになったのか。
それは、今まで幾度となく身を挺して熱斗を護ってきた。
あの青いナビと、同じ----。



◇というわけで無謀にも連載など始めてみました。しばらくお付き合い頂ければ幸いです。
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たとえ、ふれなくても

2005-11-20 | ロックマンエグゼ小説
◇これはロックマンエグゼBEAST8話後の話です。トリルは眠ってる前提で。

それではどうぞ。

「おやすみ、ロックマン」
久しぶりにPETに戻って来たロックマンに声をかけると。
「…」
返ってくるのは沈黙だけだった。
「ロックマン?」
熱斗は訝しげな顔でPETを覗き込んだ。
いつもなら。
いつもなら打てば響くように、優しい声がすぐに返ってくるのに。
「…熱斗くん」
肩に現れたナビの顔は、かなしそうで。
つきり、と自分の胸を刺す。
「どうしたんだよ」
「ごめん」
問いには答えず。
相手はただ謝罪の言葉を紡ぐだけで。
「ロックは」
その、めったに聞かれない呼称に。
ぴくん、とナビの肩が揺れる。
熱斗は気づいているのだろうか。
自分の今の表情に。
気づいて、いるのだろうか。
「悪いことなんて、何もしてないだろ?」
だから、謝るな、とその瞳が言っている。
すべてを見透かすような綺麗な茶色の瞳を見ていられなくて。
ロックマンは思わずうつむいた。
「心配、かけちゃったし、それに…」

きみのこえに、こたえてあげられなかった。

きっとずっと呼びかけてくれたのだろうに。
何度も泣きそうになって、それでも歯を食いしばって。
僕のことを、信じてくれていたのに。
「『おにいちゃん』」
「…っ?」
その言葉の響きに、ココロが振れた。
君は、知らないはずなのに。
どうして?
「仕方ないだろ?ロックは、トリルの、おにいちゃん、なんだから…」
諦めたような微笑みを浮かべて。
「しょうが、ないんだよ」
まるで自分に言い聞かせるように、淡々と紡がれる言葉。
「トリルは、いいな…」
ぽつり、と零された呟きと透明な雫に、翡翠の瞳が見開かれる。
どんなに。
どんなに願っても、届かない手。
すんでいるせかいが、ちがうのだから、と。
「熱斗くん…っ」

僕は。
君の。

「ごめん、何でも、ない…」
けれど、その言葉は最後まで紡がれることはなく。
「…謝るなって言ってるだろ、ばか…」
そしてふたりは。
痛みを堪えるように、一瞬だけきゅっと目をつぶった。

「おやすみ、ロックマン」
「…うん、熱斗くん、おやすみ」

たとえ今はこの手が触れなくても。その心が振れなくても。
いつか、いつか、と。
翡翠の瞳に想いを映して微笑む『あに』に。
『おとうと』はそっと、手を伸ばした。


◇アイリス(仮名)に対する返答から、熱斗はロックマンに堂々と甘えられるトリルが羨ましいのではないかなあと思って書いた話。ゲーム設定ですが、ロックマンは熱斗が自分が双子の兄の彩斗とは知らない…と思っていて、でも熱斗は知っていてそれを隠している、ということで。熱斗は感情が昂ると無意識にロック呼びするといいなあ。
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触れない手、振れるココロ/前書き

2005-11-20 | ロックマンエグゼ小説
元ネタはコロコロ12月号の別冊付録の漫画とBEAST8話から。
フォースシンクロチップ(名付け適当)で獣化したロックマンと無理やりクロスフュージョンするというとんでも設定。
熱斗の体力が尽きるとクロスフュージョンが解け、ロックマンもトリルも分離します。
普通のクロスフュージョンと違って体を酷使するため、熱斗の体はぼろぼろになっていき、それに心を痛めたロックマンはトリルと距離を置くようになります。
そんなロックマンを前に熱斗は…。

お題はTitle--Melancholy rainy day/冴空柚木さまよりお借りしました。

[ 雰囲気的な5つの詞(ことば):響 ]

01.ちゃんと聞かせて
02.声が嗄れるくらいに
03.どうか君に届きますよう
04.響くは鐘の音
05.「きみがすきだよ」

暗くはしたくないんですけど、どうなるかはわかりません。

興味を持たれた方は

触れない手、振れるココロ/01.ちゃんと聞かせて

大丈夫。
覚悟なんて最初からしている。
あの人を護ろうと決めた、あの時から。


こちらからどうぞ。
ただいま2話までUPしております。
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ご利用は計画的に続き(ロックマン編)

2005-11-02 | ロックマンエグゼ小説
やっぱり、無理にでもとめるべきだった。
大切な人が罠にかかるのをみすみす見ているしか出来ないなんて…。
「ロックマン…もう、立つな」
勝負は、ついた。
淡々と事実を告げるその声に、ロックマンはぎり、と唇を噛み締めた。
完敗だった。
熱斗も善戦したが、徹夜明けの体で長く保つはずもなく。
『くっ、バトルチップッ…うわあぁあ!』
幾度目かの電撃を受けた時、がくり、とその体は崩れ落ち。
意識を失ったまま、今は冷たい床に横たわっている。
「熱斗…」
ずり落ちてしまった青いバンダナを投げ捨てると。
炎山は愛しげにその茶色の髪を梳いた。
「どうして、こんなことするの?」
その幸せそうな、けれどどこか壊れてしまっているような笑みに。
声が震えるのを抑えることが、出来なかった。
それは、怒りかそれとも…恐怖か。
「熱斗くんは君をずっと待ってたのに」
それなのに、理由も知らされないまま、バトルをさせられて。
熱斗の心が傷つかないはずはないのに。
「え…ざ…、ど…して」
耳に届くのは、掠れた声。
魘されているのか。
苦しげに身を捩る熱斗のその瞼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
ネットバトルをするのに、こんな仕掛けを使うなんて正気の沙汰じゃない。
「…お前には、関係のないことだ」
青いナビを冷たく一瞥すると、炎山は熱斗を抱き上げた。
その体をソファに横たえる。
わずかに開くその唇に口づけを落とそうとして…。
「ブルース、ロックマンをどこかへ連れて行け」
「はい、炎山さま」
あくまで事務的にその手を取るブルースに。
「…うん」
ロックマンはにっこりと微笑んだ。
「やっぱり狂犬の躾は迅速に確実に----だよね」
どかばきべきっ。
メットがひしゃげるほどの衝撃を受けてブルースは膝を折り。
「…!」
電撃を受けた炎山は、ぱたりと床に倒れた。
「炎山さま!」
「僕の目の前で熱斗くんに手を出そうだなんていい度胸だね…」
オペレーターの不始末は、そのナビである君が責任取ってよねv
にこやかに、あくまでにこやかに。
ロックバスターを大きく振り上げるロックマンにブルースの顔が引き攣る。
翡翠の瞳がその時確かに、深紅に染まった、気がした。

「ん…」
『おはよう、熱斗くん。よく眠れた?』
「おはよ、ロックマン…あ、そうだ、炎山は?」
『なんかね、仕事関係で無理にお酒飲まされて酔ってたみたい。もう時間だから行かなきゃいけないけど、熱斗くんに謝っておいてくれって』
「そっか…そうだよな、でなきゃ、あんな…」
『さ、バスも直ったみたいだし…行こう!熱斗くん!』
「ああ!眠ったら腹減ってきたな~、今日のごはんはカレーだといいな、ロックマン!」
『そうだね』
ロックマンはふふっと笑うと、小さな声で呟いた。

僕の大事な熱斗を傷つけたら…次はこんなもんじゃすまないよ?

「何か言ったか?」
「ううん、なんでも」

屋敷のからくりに閉じ込められた炎山が救出されたのは、もう日もとっぷり暮れてからだったとさ。
どっとはらい。


◇とりあえず兄さんは最強ということで(笑)あまり細かいことは気にせずさらっと読み流してくれると嬉しいです。
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ハロウィンフリー小説(ロックマンエグゼ)

2005-11-02 | ロックマンエグゼ小説
と、いうわけでこの小説はフリーです。
今度はロックマンエグゼの炎熱。
11/6までお持ち帰り自由ですので、宜しければどうぞv
あ、報告は任意ということでひとつ。
ちなみに題名は「白の誘惑」です。

ハロウィンフリー配布は終了致しました。お持ち帰りして下さった方、ありがとうございました!

「よ、生きてるかー?」
ちょうど仕事が一段落した時に、狙いすましたかのように目の前に現れた少年は。
いつものオレンジ色のベストではなく、真っ白なセーターを。
半ズボンではなく、青のジーンズを履いていた。
そして、その手には。
「なあなあ、今日は何の日か知ってるか?」
「ハロウィンだろう?…俺には、あまり関係ないがな」
きらきらとその茶色の瞳を輝かせながら問う熱斗に、炎山は事も無げに答えた。
IPC社でもイベントの一環として企画が持ち上がっており、資料には目を通したが。
仕事に追われる自分が参加することはない…昔も、そしてこれからも。
棘のある言葉に熱斗は気を悪くするでもなく、ふーん、そっかと呟くと。
「あ、これ、差し入れ」
ニコニコと笑いながら、わずかに歪んだケーキの箱を差し出した。
「…」
「疲れてる時は甘いものっていうだろ」
それは間違ってはいない、間違ってはいないが…。
「熱斗」
「ん、何?」
炎山は箱を開けた途端、目に飛び込んできたケーキの惨状に頭を抱えた。
「どうしてこんなにぐちゃぐちゃなんだ…?」
「え!あ、えーっと、それはぁ…」
いつもの青いバンダナをしていないからか。
額にかかる長めの前髪に隠された茶色の瞳が困ったように細められる。
『だから言ったじゃない。熱斗くん、あんなにぶんぶん振り回したらそうなるのなんて目に見えてるのに』
いくら会えるのが嬉しいからって。
ずっとずーっと我慢してたんだもん、気持ちはわかるけどね。
「わーっ、こら、ロックマン!」
呆れたようなナビの声に、オペレーターの顔は真っ赤に染まった。
『せっかく洋服までわざわざ着替えてきたのに、誰かさんはちーっとも気づいてないみたいだしねー』
翡翠の瞳で画面越しに睨まれ、う、と炎山が言葉につまる。
いつになく大人っぽく見える熱斗に気づかないわけではなかったが。
素直に見とれていたと言えばそれはそれで怒るだろうお前は…。
ひとつため息をつくと、炎山はPETに控えている赤いナビに目配せをした。
『ブルース、頼む』
『あ、ちょっとこら、離してよ!』
ふたりのナビの姿がかき消えると、炎山は目の前に立つ恋人に呼びかけた。
「熱斗」
「ロックマンの言ったことは気にすんなよ…それより、食べようぜ!」
促されるままに一口食べると、それは自分が一番好きなケーキで。
どうしてわかったのだろう?
ちらり、と視線を投げかけると、熱斗はああこれ?とにこっと笑った。
「前、メイルちゃんたちとケーキバイキングに行った時あったろ?」
しかしケーキ獲得に忙しかった熱斗は、自分のそばにいたわけではなく。
自分も表情に出したりはしていないはずだが。
「お前の考えることなんかわかるって」
眼鏡を優しく取り上げながら、熱斗はそっと呟いた。
結構お前単純だしな、とけらけら笑うその顔を覗き込んで。
「つまり」
炎山はにっと意味ありげな笑みを浮かべた。
「それだけお前は俺のことを見てるということか…?」
自分と、同じように。
「え…?」
ぱち、と瞬かれた茶色の瞳。
その意味を悟った途端、熱斗は真っ赤になり俯いた。
「…」
「熱斗?」
こくり、と小さく首を縦に振る恋人を抱きしめながら。

「Trick or Treat」

炎山はその耳元にそっと一日遅れの言葉を囁いた。


◇甘いんだかなんだかな話。
アニメとか観てると公式か?と思うほどに一緒にいるおふたりですが、だからこそ書くのがむずかしいです。そして笑顔でバスターぶっぱなすロックマンとそれを御する熱斗は最強だと思う(笑)
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そのてがあれば

2005-10-31 | ロックマンエグゼ小説
静まり返った副社長室に響くのは。
ペタペタ、と裸足で床を歩く音。
「熱斗…?」
いつもならうるさいくらいに言葉を紡ぐその唇は、きゅっと引き結ばれ。
「…」
こういう時の熱斗はただ、あたたかい手を自分の手に重ね。
じっとこちらを見つめるだけで。

たとえば、それは。

仕事がうまくいかなくて、苛ついている時だったり。
雨が降って、気が沈んでいる時だったり。
子供のように泣いて、なにかに縋りたくなる時だったり。

そんな時は決まってこいつはそばにいてくれるのだ。
忙しくてかまってやれない自分に文句ひとつ、言うこともなく。
ただ、静かに、ここに。

本当に、こいつは人の心に聡くて。
だから。

「大丈夫だ」

言葉だけでは伝えきれない愛しさを伝えるために。
その体をぎゅっと抱きしめれば。

「心配なんかしてねーっての…」

綺麗な茶色の瞳をわずかに細め、ふい、と顔を横に向ける熱斗の。
けれどつないだその手のわずかにこめられた力に。
ほわり、と胸にあたたかい光が、灯る。

「ありがとう」

そのてがあれば。
だれよりも、どこまでも。
つよく、なれるから。


◇炎熱。副社長室で熱斗専用のソファとかあったら萌えるなぁ。かまってもらえないのがさびしくて暴れるのもいいですが、炎山を支える熱斗というのもいいかなあと。
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呼び声

2005-10-30 | ロックマンエグゼ小説
もっと、ずっと。
君がおじいちゃんになるまで、そばに、いたかったけど。

「…っ、ブルース!」

赤いナビを突き飛ばした瞬間、なにかが体を貫いた。
そこからデータは崩壊を始める。
きっと僕はもう、助からない。

でもね。

炎山なら、きっと君と一緒に歩いてくれる。
僕には、かなわないことでも。
同じ世界に生きている彼なら、きっと。

だから泣かないで。
君は大人になって、おじいちゃんになるまで生きて。
そしたら…時々は、僕を思い出してくれると嬉しいな。

「ねっ、と、く、ん」

ああ、良かった。
最後にちゃんと君の名を呼べて。

プログラムでしかない自分に魂なんてあるのか、わからないけど。
例えデリートされても、ずっとそばにいるから。
ありがとう、熱斗くん。

だいすきだよ。


◇ファーストエリア22話のアレです。あの後ロックが笑って手を振るEDが辛くてたまらなかったのはかざるだけではないはず…。「ねっ、と、く、ん」って言った後満足そうに笑うじゃないですか。あれはなんでなのかと考えた答えが今回の話だったり。現実世界で熱斗を支える人間を残せた、という意味なのかなあ…と。うーん、他の方の解釈を知りたいですね。
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