ガトゥ・ハロゥ

八犬伝と特撮と山田風太郎をこよなく愛する花夜のブログ。

東京八犬伝②

2009年08月01日 23時31分51秒 | 東京八犬伝
かろうじて飛び込んだ実験棟の窓という窓を急いで閉めて回って、報知器に
マッチの火を近づけて入り口防火シャッターを降ろしたところで、膝が
ガクガクして階段の冷たい手すりにしがみつくようにもたれ掛かった。
これって怖いから俺震えてんのかな。階段を上がってこない啓太の背中を
軽く叩いて環が自らの肩を貸すように腕をとり、小柄な啓太の身体を引っ張る
ようにして階段を駆け上った。

屋上にも黒い塊は居た。
細すぎる窓からの隙間からはさすがに入り込めないらしいが、
シャッターや教室の引き戸の隙間からゲル状態の黒い塊が進入してくる
のもそう遅くはない。
校舎の壁をゲル状の黒い液体が伝い登り始めていた。

「なんか、スライムが大量発生したって感じだな」
「いーやむしろこれってラヴ・クラフトでしょう」
「なにそれ」

窓ガラス越しに壁を眺めていた環と洸輝の会話に啓太が割り込む。

「暗黒の宇宙から悪霊の神様が得体のしれない怪物の姿で地球のあちこちに
現れる話を書いた人」
「現れてどうすんの」
「人間を襲うの。ここは自分達が先に居た場所だからっていろいろ理由をつけて、
とんでもなく残酷な方法で殺したり消し去ったり食べちゃったり」

一息に言うとくたびれるわーと、洸輝には緊迫感のかけらも無い。

「ふーん。正義の味方はいないの? 洸輝さん」
「いなーい。人間はなすがまま」

洸輝は啓太に向かって降参のように両腕を上げ、ホールドアップの姿勢をとる。

「ええっ!?、それじゃ俺たちもアレになすがままっ?」
「いや、少なくともあんなヘンなのに何かされんのヤダから俺は逃げるけど?」
「そうすると、どうやってここから逃げようか」
「そうだねえ・・・校舎の中に木は生えてないし。
 啓太が増えても今はあんまり役には立たないだろうしー」

洸輝の言葉にじとっと環は啓太を見る。

「え!? オレ役に立つよ!?」
「よし、じゃお前分身して『おとり』になれ。洸輝さん、コイツ残して逃げよう。
 啓太なら一人ぐらい逃げ遅れても大丈夫じゃね?」
「ざけんなーっ!! 一人が怪我したら俺自身のみんなが怪我すんだよ!」
「”俺自身のみんな”ってのが啓太語録って感じだよなー。
 判ってるって、冗談に決まってんだろ」

立ち上がった環は啓太を羽交い絞めにして、その硬い髪の毛をばさばさと乱暴に
逆立てる。

「啓太の毛ってヤギみたいだよな。柔らかそうでがびがびしてて」
「ヤギってなんだヤギって! 環の言ってることはワカンネことだらけだ」
「まぁ、ヤギって悪魔の化身みたいなとこあるしー。肉はうまいけどな。
臭いから食べてみないと判らないトコロがまた何とも言えないっていうか」

【D.Gray-man】と【妖星伝】は似ている

2009年08月01日 01時30分33秒 | 自己カルト的
どこがって聞かれたら何とも答えにくいけど物語の流れとかが。

【Gray-man】は千年伯爵と彼が生み出す”アクマ”と戦う「黒の教団」に
属するエクソシスト達の物語。”イノセンス”という”超”能力を宿した
武器やら肉体やらを駆使して戦い、その頂点となるイノセンスを探し求める。

【妖星伝】は、「人間は殺しあう生き物であり滅びを望んでいる」為
「人間に不幸をもたらすのが正しい使命である」という信念を持って、
戦乱や殺戮を歴史の裏から表から操ってきた超能力集団の”鬼道衆”が主軸。
彼らの使命は伝説の不死身の統率者「外道皇帝」の出現、そして「黄金城」を探すこと。

その背景の中、殺人鬼の青年・光之介に地球外の意識体”補陀洛(ポータラカ)
人”が憑依し不死となる。そしてもう一人同じく不死の少年・小太郎が現れて。
同時に出現した二人の”外道皇帝”に沸き立つ鬼道衆達だったが・・・。
両者の戦いを見つめる役割のような僧二人・日円、青円。
漫画でいう枠外キャラのような感じ。様々な意味を問答してくれる。

ネタバレしてしまうと、光之介は”外道皇帝”を滅ぼす為に生まれてきた敵
であり対である天道尼と一体化し、鬼道衆達を巻き込み”霊船”となってどこか
へと旅立つ。地球が「殺戮で活性化した生命の溢れる妖星」となったのは
遠い昔に地球に遭難した”外道皇帝”が目印とする為。ラストで一気に未来世界
のお話となり超能力者達の戦いとなり地球は滅亡へと向かっている。
青年僧だった日円は地球に戻され転生してそのリーダーとなってそれをくい止
めようとする。

ポータラカ=極楽で、地球=ナラカ=地獄。

私が生まれた頃に1~6巻までが刊行されて、読んだのが中学生時。
大学卒業するくらいのときに最終巻が刊行されたり。とにかく濃い内容の
「SF伝奇ロマン禅問答」というかなんというか6巻までは一気に読める。
6巻のラストエピソード【diminuendo】(ディミヌエンド)はタイトルも
内容も好き。いきなりイタリア語の音楽用語。意味は”だんだん弱く”。
多分、この濃くてSFでエロで殺戮な物語の中で一番好きなエピかもしれない。
鬼道衆のお幾さんが普通の”愛し愛される女”になりたいと願いつかの間
だけどそれを叶える話。


ブックマンが青円で、ラビがこの日円みたいだなーと思って読んでる。
だとしたら【妖星伝】での外道皇帝候補の一人・小太郎はアレンにあたるのかも。
主人公であるアレン達の”黒の教団”が鬼道衆みたいだなーと。

千年伯爵とノアの一族は”ポータラカ人”みたいなもんじゃないかと。
だから多分、エクソシスト達もアレンの箱舟に乗ってどこかへ皆行って
しまうんですよ。そして残されるのが多分、記録者であるラビひとり。


「妖星伝」は松本霊士によって漫画化もされていたり。。
お幾さん重視でエロ重視。内容は微妙に変更してあるけれど、物語のノリと
いうか方向性は凄く合ってる。松本キャラ集大成モノである「ニーベルングの
指輪」シリーズが完結したら是非とも続編を描いて欲しい作品。