(文春文庫 「へんこつ 下」平岩弓枝 著)
浪路は里江の屋敷の中に囚われる。
新吾は浪路の居場所をつきとめ会いに行くも、奇病の為眠ったままだと
里江の医師=弄花堂=道節と里江によって阻まれる。
里江は浪路に成り代わろうとしていた。
新吾は、浪路の兄で親友でもある京四郎と共に、事件の発端ともいえる
犬連れの美女=里江と、事件の黒幕である板倉屋の関係を探り始める。
弄花堂が殺害され、遺品から新たな手がかりである「不帰島」の存在を
知った新吾は島へと渡る。
夏風邪をこじらせた馬琴は、お忍びで旅立つ新吾に参考になりそうな
書物と、自らが調合した薬を渡し見送る。
一ヶ月をかけて新吾は手前の長崎までたどり着く。島に関わる陰惨な事件。
ひと昔前、難破して島に流れ着いた二人の男がいた。
鼈甲問屋の主人と手代。主人は死んだが、手代は島の女と関係を持ち、
女とその弟と共に島を脱出する。店に戻った手代は、死んだ主人の弟が
問屋の新しい主人となり、手代の女房がその妻になっていることを知る。
その夜、店は炎に包まれ主人夫婦は焼死。大量の金と共に手代は姿を消す。
島での掟。島からは出られない。
旅の男と島の女に関係を持たせ、男が残るように仕向ける。
又は、島を出て行っても男が戻ってくるように女は待つ。
新吾はその掟を受け入れることができず、島を統べる三女神家の女・
美保に行方不明となっているいいなずけの少女を探していることを話す。
島から脱走した女は三女神家の娘だった。弟は父親違いで、小柄な女性
のようだった。
里江は新吾の為に本物の女になろうとしたが薬の副作用で身体が腫れ、
長崎に向かいシーボルトの治療により一命を取り止める。島から戻る
新吾を亡き者にしようと板倉屋達は待ち伏せる中、駆けつけた里江の
助けで新吾は脱出。左母次郎達は追う。
犬の八房と、里江の乳母・お篠が先に追いつき、薬を届ける。
土砂崩れにより追手は左母次郎以外全滅。
左母次郎はお篠を里江の拳銃で撃って逃亡。その衝撃で二度目の
土砂崩れが起き、左母次郎は生き埋めとなる。
里江は自らの身体の秘密を打ち明ける。
姉と共に島から逃げ出した男は道節だった。
里江に女性化の薬を飲ませ、新吾と里江の逃亡を手助けし、
過去の事件の真相を元に板倉屋を脅す。里江が少年の身体を持つ
女だったように、道節もまた本物の男になりたかったのだ。
道節の裏切りによって板倉屋は危機に陥る。
すべての糸が繋がり、馬琴は新吾の安否を気遣いながらも
行動を起す。
自分の手でできること。事実を絵空事として書き下ろす。
「今様狐狸狐狸譚」は馬琴の久々の新作ということもあり、
板垣屋をモデルとしたと評判となったそれはついには大奥までたどり着く。
新吾が江戸に戻り、京四郎、馬琴と合流し、大捕物が開始された。
後は、読んでください。
里江のキャラクターがスゴイわマジに。
これがBL系小説だったら多分ハッピーエンドなんだろうけど。
道節のキャラも凄いけど。里江との倒錯した叔父甥関係もグロい。
先月までの日本経済新聞連載の「私の履歴書」は平岩弓枝氏。
時代劇小説の優等生っぽい方っていうイメージはいい意味でガラガラ崩(笑
直木賞の知らせを聞いたときの服装がミッキーマウスの柄もようのブラウスで
慌てて、師匠の奥さんの着物一式借りたってエピソードには笑った。