先日から、ツイッターでのあるつぶやきを皮切りに、ウィンブルドンの使用済みのテニスボールをカヤネズミの巣の代わりにして保護活動をするという話題が出回っています。
これは別に新しい話題ではなく、20年ほど前に実施されたもので、その後いろいろな媒体で紹介されています(上記のツイートには根拠となる記事が示されていませんが、2001年のBBCの記事もしくはその後追いの記事を見てつぶやかれたもののようです)。
私自身は、当時この話を取材した方から「あんまり効果がなかったようだ」と聞いていたのですが、イギリスのハル・シティの生物多様性アクションプランにも、カヤネズミはテニスボールの巣をほとんど使わなかったと書かれています(そりゃそうでしょうね)。
しかしネットで拡散されている記事にはこうした経緯が省かれていて、「いい話」「かわいい」「日本でもやってほしい」「田んぼの周りにテニスボールを刺してほしい」などというつぶやきとともに、ツイッターだけでなくフェイスブックにも飛び火して、ネットのまとめサイトなどでも後追い記事が書かれ、どんどん広まっています。
これから、カヤネズミの繁殖シーズンに入るにあたり、この状況は非常にまずいと思っています。
そもそも、環境のキャパがないところに、テニスボールをおいてもカヤネズミは守れません。
主にイネ科やカヤツリグサ科の草を割いて編んで巣を作る習性があり、営巣場所にはそうした草本類が十分にあることが必要です。
草刈や稲刈りで、巣が丸見えになったら、その巣を放棄してしまいます。
テニスボールを刺しておけば問題ない、というわけにはいきません。
カヤネットのホームページでは、テニスボールを使った保護活動は効果がなく、かえって敵に所在を目立たせやすくなるため、安易に行わないように呼びかけています。
Q:テレビでやっていた、イギリスでのテニスボールを巣にしたカヤネズミの保護活動、日本でも効果はある?
知り合いの方がもし話題にされていたら、「テニスボールではカヤネズミを守れないよ」とぜひ教えてあげて下さい。
誤解に基づいた知識で、誤った判断がされないよう、どうぞよろしくお願いします。
それにしても、実質的でない、目先だけの保全活動が「かわいい」というだけでぱーっと広まってしまうのは、なんなんでしょうね。
20年間、地道にカヤネズミの生息地保全に取り組んできた身としては、なんともいえず、つらい気持ちになります。
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