カヤ日記

活動する研究者、かやちゅ。@カヤニストの行動記録
カヤネズミの研究&保護活動や野生生物の保全に関する話題をつれづれに

鴨川のヌートリア

2013-05-18 | 外来種問題

「ヌートリア」対策で対立 京都府と京都市(京都新聞 2013/5/17)

しばらくブログをさぼっていましたが、昨日の生態学勉強会でこの話題がでたので、ちょっと書いてみます。

記事によれば、

河川管理者の府は早期の捕獲を目指したいが、市は「市民の反発が予想される」として農業被害が出るまでは静観する姿勢

とのことですが、農業被害が大きくなる以前に、生態系への影響が心配です。
ヌートリアは本来草食性ですが、記事にあるように、淀川では川底に二枚貝の貝殻が大量に見つかっていて、ヌートリアが食べた可能性が高いと言われています。
二枚貝はタナゴ類が産卵に利用するため、繁殖に影響がでるのではと懸念されています。
また、昨日の勉強会の参加者の方から聞いた話ですが、先日、ヌートリアが魚を捕まえて食べていたのを目撃したということです。
もし見間違いでなければ、積極的に動物質のエサを取っているということだと思います。

桂川でもヌートリアをよく見かけますが、食欲は旺盛で、泳ぎながらずーっと口をもぐもぐさせて水草を食べています。
ヨシやマコモの新芽もバリバリ食べるので、在来植物への被害も心配です。
カヤネズミや水鳥の仲間にとっては、営巣場所の質を低下させる、間接的な天敵になります。

生態系への影響は、はっきりと目に見える頃には取り返しの付かない状態になります。
外来種問題は、素早い対策が必要ですし、効果も高いです。
避妊手術をして放すという対策は、ヌートリアの繁殖力を考えると焼け石に水だと思います。
桂川や淀川でも、捕獲が追いついていない状況ですから・・・。

ただ、外来生物法では、「野外へ放つ、植える及びまくこと」は禁止されていますが、エサやりは禁止されていません。
エサやりが違法で無い限り、エサをやらないでという「お願い」にならざるを得ません。
このことは、外来種対策への取り組みを遅らせ、今回のような、府と市で認識が異なるといったような、問題をややこしくさせている一因だと思います。

ヌートリアに罪はありませんが、対策の遅れは生物多様性の保全にはマイナスになります。
ぜひ、市民への啓発を含め、しっかりとした対策をとっていただけることを期待します。


上川河川敷でアレチウリ増殖

2013-03-08 | 外来種問題

上川アレチウリ増殖 生態系への影響懸念(長野日報、2013/3/4)

特定外来生物のアレチウリが諏訪湖流入河川の上川で分布を拡大中。
河川敷のヨシを駆逐する勢いに、上川に生息するカヤネズミの生息が脅かされることが懸念されている。

長野県といえば、天竜川でのアレチウリの熱心な駆除活動がぱっと思い浮かぶ。
上川でもそうかと思いきや、ヒシとオオハンゴンソウの駆除で手が回らないとか。
年数回の抜き取りを行うための予算(人手)も厳しそうだ。

京都の桂川でも、ここ数年の間にあちこちでみかけるようになった。
10年前にもセイタカアワダチソウは多かったが、今はそれにクズ・カナムグラ・ノイバラ・ネザサ・ウォーターレタス、さらにミズヒマワリにアレチウリが加わって、何から手を付けていいのかわからない状況。


緑川のセイバンモロコシ畑

2012-10-14 | 外来種問題

昨日の記事でも書いたが、研修会で熊本を訪れた際、市内の路肩や道路法面や中央分離帯など、あちこちでセイバンモロコシ(*1)が自生しているのを目にした。

関西では見慣れない光景で、不思議に思っていたのだが、研修会を終えて熊本駅へ向かう途中、緑川河川敷を通りかかった時に思わず「何これ!?」と声が出てしまった。
河川敷一面、セイバンモロコシの赤い穂がびっしり。
よく見ると、株がきれいに列を作っていて、自生ではなく栽培されている様子。
しかも場所によっては1/3くらいの面積がトラクターで刈り取られて、パッキングされた固まりがいくつも作られ、まさに収穫の真っ最中という様子だった。

それでか!と、朝に見た街中のセイバンモロコシの大増殖の原因に思い当たった。
緑川河川敷(確認しただけでも数カ所あった)のセイバンモロコシ畑が種子供給源になって、市内のあちこちに広がっているに違いない。
セイバンモロコシは繁殖力が強く、オギやススキと競合する。
オギやススキに比べて花期が長く(6-10月)、刈り取りにも強い。
栽培品種のSorghm属とも交雑しやすいため、強害雑草とされている。

広い河川敷に一面の真っ赤なセイバンモロコシの穂。オギは川岸にへばりつくように生えていただけ。
いま思い返しても、あの光景はちょっとぞっとしない。
あのような状況を放置するのは、河川の生物多様性保全の観点から、非常にまずいと思う。
国交省でも防除の対象になっているはずだが(*2)、河川敷で栽培するのに規制はないのだろうか?

*1. セイバンモロコシ(Sorghum halepense):地中海原産の多年生の大型イネ科植物で、トウモロコシの雄花のような特徴的な赤い穂をつける。

*2. 四国地整管内の河川における外来植物のポケットブック(国土交通省四国地方整備局)にセイバンモロコシの防除法が掲載されている。また、自然植生中における外来植物の防除マニュアル(暫定版)((独)農業環境技術研究所)にもセイバンモロコシが掲載されている。


黄色い侵略者

2011-05-15 | 外来種問題

天気が良いので、買い物の途中、ちょっとフィールドへ寄り道。

先日の大雨で増水した、桂川の様子が気になっていた。
河川敷に降りると、川からあふれ出た水に押し流されたと思われる流木や枯れ草が、そこかしこにまとまって残っていた。

とはいえ、この程度の冠水なら、カヤネズミは無事だろう。
ある程度水に浸かった方が、クズなどの生育は抑えられる。

草丈は全体的にまだ低く、ネズミムギが優占していた。営巣開始には、まだ少し早い様子。
念のため、ざっとチェックしたが、やはり巣は見つからなかった。

そこからさらに上流で、キショウブ(Iris pseudacorus)開花。
昨年よりも、一回り群落がでかくなっているように見える(→営巣報告2010)。

本種は、繁殖力の強さから、要注意外来種に指定される。
花が美しいことから、ビオトープの材料として用いられることもあるようだ。
しかし、河川に逸出すれば、水辺の植物と競合することになる。
ここ数年、桂川では勢力を拡大中で、群落を見かけるポイントが確実に増えている。

このポイントについては、見過ごせないレベルになってきたが、個人ではどうにもならない。
ボランティアベースではなく、国交省に対応して欲しいところだが、要注意外来種クラスでは動いてくれないのが現状。
費用対効果の面でも、初期にたたくのが一番いいのだが・・・。

参考:キショウブ(Iris pseudoacorus)に関する情報(環境省)



すみれ September love

2011-04-26 | 外来種問題

コンクリートの隙間から生育した、ど根性スミレ(@京大キャンパス)。

スミレは春の代表的な野草。
注意して見れば、意外に街中でも自生しています。
大抵は小さな株ですが、写真のような、たくさんの花をつけたものも。

スミレの仲間は多く、なおかつ、よく似た外見をもつ近縁種も多い。
フィールドで見かけたら写真を撮って、ちょっとずつ知識を増やしていますが、なかなか難しい。
写真のスミレは、いわゆるオーソドックスなスミレ(Viola mandshurica)でOK・・・なはず。

なお、路傍に生えるスミレには、外来種も多いようです。
そのひとつがビオラ・ソロリア(V. sororia)。都市部だけでなく、山林でも見つかっています。
花がきれいだからと、こっそりタネをまく人もいるようですが、やめましょう。
スミレの仲間は交雑しやすく、生態系を乱す恐れがあります。
また、河川や山林では、土地管理者の許可を得ないでタネをまくと、法律違反で罰せられる場合があります。

余談。
スミレがタイトルに入った曲はたくさんありますが、私が思い浮かべるのは「すみれ September love」。
春の花なのに、Septemberという不思議。
ちなみに、SHAZNAのカバーバージョンよりも、一風堂のオリジナルが好きです。