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「スペンドシフト」を読んだ所感

2012年08月09日 23時55分51秒 | 読書


スペンド・シフト
― <希望>をもたらす消費 ―

プレジデント社
定価(1800円+税)
2011/7/20
377ページ

社会貢献でメシを食う。」の著者、竹井善昭氏が、
松阪で行った「エシカルセミナー」の中でオススメしていた本です。

セミナーが開かれたのが5月なわけですから、
相当時間が経ってしまいましたが、昨日読み終えました。


印象的だった文章に貼った大量のふせん。

イメージ的には日本のベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」の
アメリカ版といった感じです。

ただ、大きな違いは、「日本でいちばん」の方は、
「こんな企業ほんまにあるんかよ!?」と心に訴える本ですが、
「スペンドシフト」はそういう点も含みつつ、もうちょっとビジネスライクに書かれた本かなと思います。
なんというか竹井さん的だなという感じ。
つまりそこに経済性やマーケティング的要素がちりばめられているのです。
それは言い方を変えれば、効果測定とも具体性とも、説得力ともいえると思います。


スペンドシフトとは、英語の「SPEND SHIFT」です。

「SPEND」は、お金や時間などを「費やす、使うこと」を意味します。
つまり、スペンドシフトとは、消費のパラダイム(物の見方や捉え方)がシフトするという意味です。

本の中では、消費行動がどのように変わってきたのか、
その事例をアンケート調査をふまえながら紹介し、
アメリカ各地の中小企業からフォード、ウォールマートのような大企業の事例までを紹介していきます。

その中に多く出てくる要素として、「ソーシャルメディア」の存在があります。
このあたりは「ソーシャルメディア進化論」を読んでいた僕としては、
すぐに胆に落とすことができました。


モノがない時代から、大量消費社会へと移り、
その後、大不況が訪れた。

必然的にこれまでの生活を続けられない。
ウォンツ(欲求)よりもニーズ(必要性)を考えるようになる。
「モノをたくさんもっているからといって幸せとは限らない」という気付きがあり、
「何かが間違っている」という本能的な直感に突き動かされて、よりよい方向を理解しつつある。

不況の中、希少性が増す一方のお金を、
より良い経験や社会、それだけにとどまらず、より良い世界を買うために使うようになった

モノがない時代があって、大量消費社会となり、大不況となってスペンドシフト。
これは今となって考えれば当たり前の流れなのかもしれない。


現実味のない「社会貢献」や「CSR」という分野に、
もうちょっとお金や現実的なこれからを考えられる本かなって思いました。

また、実際自分の身の回りでも、
このスペンドシフトを活用して商売をしている人がいるように思います。


以下は、勝田が特に印象的だった文章を引用しておきます。



「支出行動をとおしてパワーを発揮できる」という気づきををもとに理念を表明し、
自分たちのパワーを活かして環境保護、反企業救済ほか、
自分の主義主張にぴたりと合った企業を応援している。
いわば、一ドル札は一票に等しく、商品やサービスを提供する企業が日々、
選挙の洗礼を受けているようなものだ。


BAV(国際的マーケティング企業)の調査では「地域社会に貢献する企業には上乗せ価格を払ってもよい」とする回答が
全体の73%に達しているのである。


29歳のジョーンズは、一生を捧げたいと思える仕事と愛着を持って暮らせる土地を見つけたと強く語る。
実際、彼は仕事とそれ以外―土地への思い、友人、家族、楽しみなど―を分けて考えておらず、
これらすべてが「幸福とは何か」というテーマとかかわっているのだ。


買おうとする品物とその由来について知りたいと思うのは、
人間として自然なことじゃないかな


信頼をめぐる従来のルールのものでは、企業は何年ものあいだ
信頼に足る立派な行いを続けていれば、一定の立場や権威を得られました。
ところが、たった一度でも不始末があれば、信頼は全て吹き飛び、顧客から背を向けられる。
こうした仕組みの問題点は、企業があたかも親であるかのようにふるまい、
消費者は子供のような位置づけになっていたことだ。
組織といえども個人と同じく欠点がある。
だから、親が子供をがっかりさせるのと同様に、消費者を失望させないともかぎらない。


わたしたちは消費しない社会に向かっているわけではなく、
消費のもたらす変化をとおして社会を良い方向へ導こうとしている。


借金の時代はモノが主役だったが、貯蓄の時代となったいま、世の中を動かすのは意味である。
わたしたちはモノやサービスではなく人や経験に対してお金を払う傾向を強めるだろう。
わたしたちがお金を払うのは商品に対してではない。意味に対してである。



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