老いの坂道(パピー)

楽しい心で歳を取り、働きたいけど休み、喋りたいけど黙る。
そんな気持ちで送る趣味を中心に日々の一端を書き留めています。

読書日記『エンデュアランス号漂流記』 アーネスト・シャクルトン著

2013-06-03 | 読書日記

 この本は、今からおよそ100年前、世界で始めての南極大陸横断を企てたシャクルトンが、

壮途なかば船を氷に砕かれ遭難し、氷海に投げ出され孤立無援となった探検隊を率いて、

彼らを生還させた下記報告書の翻訳だそうです。

SOUTH The Story of Shackleton’s Last Expedition 1914-1917.

By Sir Ernest H.Shackleton C.V.O 1919

 アムンセンとスコットにより1912年に、南の極点が踏まれたあとは、

南極大陸横断が大きな探検目標としてクローズアップされました。

この本の著者シャクルトンはこの目標に挑戦するため、

エンデユアランス号で南極行きを企てたときの物語です。

 エンデュアランス号は、1914年8月1日、本隊を乗せてロンドンを出発、

最後の寄港地南ジョージア島を12月に出航。

南極大陸に接近しようとしたが、ウエッデル海の魔の浮氷に閉鎖されてしまいます。

そして壮絶な氷との戦いに敗れ、船は粉砕され沈み、探検隊一行は、

風のままに、一片の氷にのって運を天にまかせながら漂います。

この場面の描写も実体験者ならではの実にリアルに表現されています。

読み手のボクはぐんぐんと物語の中に引き込まれていくのが実に愉快でした。

 さらに、

この風まかせの浮氷からエレファント島への大きな危険を冒しての全員の上陸作戦の遂行過程。

なんとか無事に上陸した島での越冬生活の言葉に尽くせない困窮生活等々。。。

探検隊の所期の目標は不成功におわったものの、

氷の海と隊員との死闘の記録は実に読み応えのある内容でした。

 また、

本書にみられる探検隊長シャクルトンとその同僚のかたい団結心、

生死の境にあってなお失われることのなかったふかい友情と信義、

隊員たちの不撓不屈の精神は、

イギリス国民を鼓舞し、イギリスでも今に至るまで長く読み継がれている物語だそうです。

 終章ではエレファント島に隊員を残して、

これが救出のために隊長自ら数名の隊員と共に一片のボートで、

救助を求めてあの800マイルの荒海に乗り出すとき、

島に残しておいてはまずいと思う隊員を、敢えてボートの隊員に加えます。

これもシャクルトンのリーダーとしての有能さを感じさせる一端を感じました。

それは、滅入りやすい一徹な隊員を残しておいたら、

残留隊員の統一がどうなることか、隊長には一抹の危惧の念があったのです。

隊員の性格まで充分につかんでいる隊長の姿が見られました。

 物語全編を通して場面は氷に閉ざされた南極ですから、

これからの暑い夏には少しは涼感もオマケで得られるかも知れない感動の一巻ですね。

 お勧め作品です。

 

《付録》 後楽園の白いウツギの花

※ 今日も訪問ありがとうございます。素敵な一週間を!

 


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4 コメント

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Unknown (zuzu)
2013-06-04 08:01:44
シャクルトンは名前だけ知っていたけど、南極探検にこんな壮絶なドラマがあったなんて知りませんでした。

南極といえば思い出すのが「タロ・ジロ」の実話を元にした映画「南極物語」。
小学生の時、テレビで観て号泣しました。
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Unknown (末摘花)
2013-06-04 09:22:53
まだ帆船の時代だったのですねぇ
大海を渡るのだって大変なのに 南極を目指し氷の海を航海するというのは凄いですね
南極観測船宗谷が 氷の海に閉じ込められ ソ連船でしたかしら 助けられたことを思い出しました
探検・冒険に危険はつきものですが 無事生還されてよかったです
まさに『事実は小説より奇なり』ですね 
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Unknown (パピー)
2013-06-04 12:20:02
ZUZUさん、こんにちは。

あったですね。ボクも見ましたよ。
涙なしでは見られない映画だったね。

これも、実話で映画化もされてるそうですよ、
かなり古い作品だから、今頃になって読むって
ちょっぴり時代遅れですね。

zuzuさんの読書量にはとても及ばないけど
頑張って読もう!

コメントありがとう
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Unknown (パピー)
2013-06-04 18:44:27
末摘花さん、こんばんは。

いや~実は僕もこの写真見て驚いたのです。
でも、帆と機関の併用のようですよ。

宗谷、そんなことがありましたね。オンボロ砕氷船
でしたね。懐かしい!

現在までこうして語り継がれたのも、全員生還の
偉業があったからでしょうね。

隊長シャクルトンのリーダーシップが今の世の中
のリーダーシップにも必要性が認められている
のでしょうね。社会人のリーダー教育教材に使われる
ことがあるそうですよ。

こういったドキュメンタリー小説も時には面白いもの
だな、と改めて認識しました。

コメントありがとう
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