日本は津波による大きな被害を受けるだろう UFOアガルタのシャンバラ

エーテル界の人類の源郷か?神の国か?天上のエルサレムか?
チャネラーとコンタクティの情報を集めています。森羅万象も!

バチカンは国家だが、多くの専門家が世界最大の情報組織であるという。それは13億のカトリック教徒がある意味、情報員で兵士だからだ。(6)

2024-08-17 10:45:02 | 森羅万象

 

影響力を強めるモサド

・そして、モサドにはモットーとしている聖書の一節がある。

賢明な方向性がないなら、人は倒れる。だが助言者たちがいればそこには安全がある

 国家としてどのように国民を導くのか、また、どのように国民の生命と財産を守るのか。政策を立案したり、国家の方向性を決定するには、物事の本質を知るためのインテリジェンスが欠かせないのである。それが世界の常識である。

 

徴兵制とリクルート

・イスラエル軍の人事部門は、すべての若者を入隊前にスクリ―ニングして、チェックする。その際に、秀でた才能のある人材は青田買いをして、軍が学費を負担して専門的な分野で学ばせる。徴兵の時期を変更するようなケースもある。

 そんなかたちで毎年1000人ほどの高校生が選抜されて、軍に入る前に軍の意向で大学などに送られている。

 

徹底した秘密主義

・「モサドを裏切って二重スパイになるという話はあまり聞かない。MI6やCIAなどではそういう事件もあるのだが、モサドのエージェントは忠誠心が強いということだろう」

 

他者の評価は気にしない

・当然ながら、他の機関と同様に、スパイであることはモサドの職員も他言できない。ただ少し前から、モサドOBは、自分が元スパイだったことを話しても許されるようになってきているようだ。

 

サイバーインテリジェンスをリードする中国

・現在、国際的スパイ活動も過渡期にある。デジタル技術の普及により、従来のスパイ工作もかたちを変えつつあるからだ。リスクを伴う尾行といった手段も、サイバー攻撃やハッキングなら相手にばれることなくできてしまう。

 

・中国のMSSは、イギリスで言うなら、国外担当のMI6と、国内担当のMI5、そしてシギント相当のGCHQが一つになった組織である。アメリカなら、CIAと国内を担当するFBI、シギントを担当するNSAとが一緒になったようなものである。

 

手玉に取られるトランプ

・習近平国家主席は、2015年に国家安全法を制定し、国内の統制を強めたが、そこで実働部隊となるのがこのMSSといった機関ということになっている。政府の機関はすべてMSSに協力することが求められている。

 

世界に浸透する中国スパイ

・さらにここ最近も、中国のスパイ工作が世界中で取り沙汰されている。2018年にはMSSのスパイが、ベルギーで米航空会社から機密情報を盗もうとして逮捕され、アメリカに送致されて起訴されている。

 

2010年ごろから、中国いるCIAの協力者たちが次々と拘束または処刑されていることが問題視されつつある。その背景には、中国側に機密情報を渡していた元CIAの職員がいたことや、CIAが協力者たちとの連絡に使っていた通信システムがハッキングされた件があるという。これにより、CIAの中国における諜報活動が大打撃を受けたとされる。

 

大手メーカーの家電に盗聴器が内蔵

・MSSには外部の協力者も多数いると見られ、その規模など、実態は判明していない。

 MSSはさらに、中国の大手企業とも密な関係を持っているとされる。そんなことから、中国が誇る国際企業を、アメリカ政府は次々と「ブラックリスト」に加えてアメリカや同盟国とビジネスをできないように動いている。その背景にあるのも、中国が民間企業を使ってスパイ行為をしているとの懸念だ。

 

米中スパイ戦争が本格化

・2015年までに、中国のサイバー分野を中心的に担っていた人民解放軍のサイバー部門で、組織の再編がはじまった。政府は人民解放軍戦略支援部隊(SSF)を創設し、サイバースパイ工作から対外プロパガンダ、破壊工作まで、中国のサイバー戦略を包括的に取りまとめることになっている。その組織の規模は数百万人に及ぶともされる。当然、MSSなどとも密に関与していると見られている。

 とてつもなく大きな組織を構築し、中国はさらに機能的に諜報活動やサイバー工作を繰り広げている。しして、そのレベルはMI6やCIAすらも凌駕するものになる懸念がある。

 

日本を襲うデジタル時代のサイバーインテリジェンス

天気予報アプリで機密情報を送信

・ライクルは、週に一度、CIAに情報を送信していたという。驚くのは、その送信方法だった。

 このスパイは、自分のパソコンに暗号化できるプログラムをわからないように入れていた。そして天気予報のアプリを起動し、ニューヨークの天候を検索すると、その暗号化プログラムが起動して、データを送信できるようになっていたという。その対価として、2年間で数回オーストリアに赴いて9万5000ドルの現金を受け取っていた。

 

すべての生活情報がデータ化

・「すべての諜報機関がインターネットを駆使し、サイバー攻撃などを自在に扱いながら、情報活動を行っている。情報収集には非常に効果的な道具だ。情報を集めたり、ターゲットとして監視したり、行動を妨害するなど、すべてがサイバー空間でできる時代になっているからだ」

 

ウェラブルデバイスの罠

・だが、すべてが接続される便利な世界には、当然のように危険性もついてくる。そうしたデータが悪用されるリスクだ。強盗も、空き巣をするよりも、デジタルデバイスにハッキングしたり、サイバー攻撃を仕掛けるほうがリスクは低いし、効率がいいということになる。タンスよりも、スマホにカネはある。

 そしてそうした情報を使いたいのは、犯罪者だけではない。諜報機関も同じだ

 

・世界がデジタル化・ネットワーク化されることで、スパイの活動の幅が広がっている。以前よりスパイ活動が摘発されるリスクは減るが、一方で、デジタルツールで監視される危険が増している。つまり、スパイ活動は新たな次元に入っているのである。

 

標的はアメリカ、日本、台湾

・「諜報機関にとって、サイバー工作やサイバー攻撃は、ターゲットに対する情報収集やスパイ行為、監視など、最高度に重要な要素となりつつある。

 とくに中国はここ3年で、日本の当局の動きや、国の政策などに非常に興味を持って動いている。それだけではない。交通やエネルギー、テクノロジー、工場など、そうしたインフラの情報を手にしようと激しい諜報活動を仕掛けている。ビジネスや金融、通商情報をも手に入れようとしており、ローカルな地方の中小零細企業にもその手を伸ばしている。日本企業は中国から常に狙われている。この認識は、欧米の諜報機関はみな共有していることだ」

 

・情報機関がサイバースパイ勢力として最注目しているのは、中国のスパイ活動だ。そのサイバー攻撃で中心的な役割を担っているのが、人民解放軍戦略支援部隊(SSF)に属するサイバー・コー(サイバー攻撃部隊)である。彼らは、国家安全部(MSS)ともつながっている

 

・「日本は今、中国からの攻撃では、世界でもトップに入るターゲット国です。非常にリスクの高い国と見ています。しっかりとそれを認識しておく必要がありますね」

 

・「2020年の東京五輪は、中国にとっても重要なイベントとなるでしょう。そこでもおそらく、日本の失態を促すような動きをする可能性が高いと見ていいです。国としての日本の信用度を落とすまたとない機会ですから

 

「中国はハッキングさせるためのインフラをかなり十分に、国に仕えるハッカーらに与えている。人も育成している。だからこそ、彼らのサイバー攻撃能力は高くなっており、サイバー空間での情報戦をよく理解している。私から見れば、中国は今、世界でもトップクラスのサイバー・ウォーフェア(戦争)能力を持つ国だ。彼らはアメリカとも渡り歩いている」

 

韓国系アプリの罠

実は、韓国も同様の攻撃を日本に仕掛けていることはあまり知られていない。日韓関係が今のように悪化する前から、韓国系ハッカーらによる、日本企業を狙ったサイバー工作は起きていた。

 

・「韓国がらみのハッカーが日本の化粧品会社をターゲットにしている。日本の化粧品はアジアを中心に高い人気を誇っており、その製造方法などを盗みだすなどして模倣し、安価に別ブランドにして売るのだ。これは未確認だが、中国のハッカーも日本の美容業界をターゲットにしているとの話も聞く」

 

・もうひとつ不穏な動きは、韓国政府や、韓国の情報機関である国家情報院の関係者たちが、スマートフォンで使われる韓国系アプリなどを使っている日本人や企業の情報をかなりつかんでいるとうそぶいていることだ。

 

キャッシュレス決済に潜む謀略

・最近あまりにメッセージングアプリなどが普及し、私たちの生活に深く入り込んでいるために、そこを狙う人がいるのは想像に難くない。

 

・日本ではコンビニ最大手セブンーイレブンが、モバイル決済サービスを開始してすぐにサイバー攻撃を受け、あっという間に撤退を発表することになったが、こうした金融取引に絡んだ個人情報が集まるサービスは、どうしてもサイバー工作の対象になりやすいと欧米では見られている

 

・事実、日本のキャッシュレス決済サービスのアプリなどが、中国系のハッカーに狙われているとの情報も筆者には入っている。しかもそれは、犯罪者がカネや商品を騙し取ろうとする行為ではなく、日本のキャッシュレス決済の信用度に傷をつけるためのスパイ工作だというのである。

 

東京五輪を狙っているのはどの国か

・さらに注視すべき国がもう一つある。北朝鮮だ。国連によれば、北朝鮮のハッカーたちはここ3年間で最大20億ドルを、世界各地の金融機関や仮想通貨交換所から違法に盗み出している。

 

・北朝鮮のスパイ工作は金銭的な動機が背景にあることが多い。前出の英語圏の元ハッカーは、北朝鮮の次の大きなターゲットのひとつに東京五輪があると指摘する。東京五輪を狙っているのは中国だけではないということだ。

 

あろうことか、とあるクレジットカードのサービスなどを提供する日本企業では、サービスに使われるプログラムのソースコードが北朝鮮系ハッカーにまるまる盗まれてしまっていることも指摘されている。このように、サイバー空間では、スパイ工作から破壊工作、産業スパイ行為などが繰り広げられているのである。

 

・東京五輪といえば、こんな懸念もある。ロシアの諜報機関であるSVRやGRUが世界でサイバースパイ工作を繰り広げているのはすでに説明した。彼らはスポーツの国際的なイベントでもサイバー工作を実施していることが確認されており、2018年の韓国・平昌冬季五輪ではロシアはドーピング問題で国として出場できなかったことの報復として、五輪の公式サイトやアプリにサイバー工作を実施し、チケット発給やWi-Fi設備などに不具合を起こした。また、五輪でITシステムを担当した企業にも、大会前からサイバー工作が行われていたという。

 

・ロシアのスパイ機関が報復として東京五輪に対する工作を実施する可能性は高くなっている。いや、攻撃されることを前提に警戒すべきところまで事態はひっ迫しているのである。

 

消防車を持たない消防庁

日本には対外情報機関がないばかりか、国内外で情報活動をできるサイバー工作組織も存在しない。今、日本では、内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)がサイバーセキュリティ対策を仕切っている。ただこの組織には実働部隊がなく、省庁間や業界団体にサイバーセキュリティ関連の情報を提供することが主な業務であり、専門家の中には、「消防車を持たない消防庁」と揶揄する向きもある。

 

結局、民間企業や個人は自分たちで、中国のように巧妙な国家的サイバー攻撃を仕掛けてくる国家に、対応しなければいけないという状況にある。警察当局はといえば、サイバー攻撃を受ければ捜査はしてくれるが、守ってはくれない。

 

・日本の在日米空軍横田基地で働いていたスノーデンが、日本のインフラにマルウェア(悪意ある不正プログラム)を埋め込んだと暴露しているように、アメリカは日本相手でも、有事に備えてサイバー攻撃の準備をしているのである。

 

これからの国際諜報戦におけるサイバー工作の重要度は、世界中でさらに増していくことだろう。中国のMSSにつながるSSF、アメリカのCIAと凄腕ハッカーを抱えるNSA、イギリスのMI6とGCHQ、イスラエルのモサドと軍の8200部隊、そしてロシアのSVRとFSB、GRU、こうした組織が、世界の裏側で暗躍し、諜報工作やサイバー攻撃を繰り広げている。

 

・選挙だろうがテロだろうが、世界的なスポーツイベントだろうが、各国はサイバー工作を駆使しながら、自分たちの利害を追求している。それこそが、現在の、もう一つの世界情勢の姿である。

 対外情報機関も、国境を越えて動けるサイバー部隊も持たない日本は、これからの時代に本当に世界と伍していけるのだろうか。一刻も早く、その問いについて真剣に検討し、何をすべきかを議論すべきなのである。性善説は通用しない。

 

・「MI6の職員が共有する、ゼロトラストという考え方がある。つまり、すべて疑ってかかり、誰も信用しないということだ。それが国際情勢の裏にある世界の常識なのだ

 

 

 

『核拡散時代に日本が生き延びる道』

独自の核抑止力の必要性

元陸将補 矢野義昭    勉誠出版   2020/3/31

 

 

 

日米などが配備しているMD(ミサイル防衛)システムも万全ではなくなってきている

核保有は最も安く確実な抑止力

反日中朝の核脅威は高まり、米国の核の傘は破れ傘になった。

祈りや願いだけでは独裁国に屈するしかない。独裁に屈すれば、悲惨なウイグルの二の舞になる。日本には核保有能力が十分ある。核に代替手段はなく、米国も黙認するだろう。

護るか、屈するか、決めるのは国民だ!

 

・最終的に日本独自の核抑止力の必要性と可能性、その保有のあり方について論じている。

 

核恫喝の脅威

核恫喝は何度も使われてきた

・国際司法裁判所は、1996年に「核兵器による威嚇または使用の合法性に関する勧告的意見」において、「核兵器の威嚇または使用は武力紛争に適用される国際法の規則(中略)に一般的には違反するであろう」としながらも、「国家の存亡そのものが危険にさらされるような、自衛の極端な状況における、核兵器の威嚇または使用が合法であるか違法であるかについて裁判所は最終的な結論を下すことができない」としている。

 

・しかし現実には、以下のような、核恫喝が使用されてきた歴史的な事例がある。その意味では、核兵器は使い道のない兵器ではない。相手国にギリギリの対決の場で、政治的要求を受け入れさせるための効果的な手段として活用されてきたことは、史実が立証している。

 

①  米国のトルーマン大統領は朝鮮戦争中に記者会見で、「何か特別な物を注意深く扱う」と表明し、核使用を示唆して恫喝を加えている。

 

②  米国は1954年、ベトナムのディエンビエンフーでの戦いで敗れた仏軍の撤退を掩護するため、ベトミン軍に対し、核恫喝を加えようとした。

 

③  米国のアイゼンハワー大統領とダレス国務長官は、1955年の台湾海峡危機に際して、金門・馬祖を奪取するために上陸作戦を準備していた中国に対し警告するため、戦術核兵器の使用について議論し、「言葉の上でのあいまいな威嚇を加える」ことを決定した。

 

④  ソ連は、1969年の中ソ国境紛争時、中国に休戦交渉を強要するために、核恫喝を加えた。この時には、中ソの核戦争を恐れ、米国が仲介に動いた。

 

⑤  イスラエルは、1973年の第4次中東戦争時に、エジプト軍によるイスラエル国内への奇襲侵攻を許し、国家存亡の危機に直面した。その際に、イスラエル国防相は、進出したエジプト軍により国家の存続が危うくなることがあれば、いつでも指定された目標に核兵器を使用できるように、核爆弾を搭載した戦闘機と核弾頭を搭載したジェリコ・ミサイルを準備せよとの命令を発したと、外国の報道機関により報じられている。ただし、イスラエルは公式には、核兵器を保有しているとも、保有していないとも表明しない、あいまいな戦略をとっている。

 

⑥  中国は、1995~96年の台湾海峡危機時に、96年の中華民国総統選挙での李登輝選出阻止のために、台湾と与那国島の近海に弾道ミサイルを打込み、軍事的威嚇を加えた。

 

⑦  パキスタンは、1999年の印パ間のカーギルでの紛争時に、インド軍の侵攻を阻止するために、パキスタン陸軍のパルヴェーズ・ムシャラフ陸軍参謀総長兼統合参謀本部議長がシビリアンの指導者にほとんど知らせることもなく、核兵器使用の計画を進めていた。

 

⑧  ロシアは、ジョージアとの紛争、クリミア半島併合やウクライナ危機時にNATO軍を牽制するために、長射程の空対艦核巡航ミサイルを搭載可能な爆撃機や地対地弾道ミサイルの活動を活発化させ、あるいは近傍に進出させるなど、核威嚇を加えている。

 

・以上の史実から見ても、今後も核恫喝が行われる可能性は高い。恫喝に屈することなく国益を守り抜くためには、信頼のできる核抑止力を保持しておかなければならないことは明らかである。

 日本の場合は、自ら相手国に侵攻することは考えられないので、敵対的な核保有国による恫喝を受ける可能性が高い。特に核大国となった中国の挑発や攻撃的行動には注意が必要である。また今後は、北朝鮮や統一朝鮮から核恫喝を受ける可能性にも備えておかねばならないであろう。

 その場合、日米安保体制下では、米国の本格的な軍事介入前に、日本に対して、すでに達成された侵略目的を既成事実として受け入れさせ、日本に対する政治的要求を強要するために、核恫喝が使用される可能性が高い。

 

核恫喝に屈すればどうなるか?――チベットの事例

・核恫喝に屈すれば、相手国の政治的要求(戦争目的)をそのまま受け入れざるを得なくなる。恫喝を加える側から見れば、まさに、『孫子』の言う「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり」を地で行くように、最も効率良く、無傷で勝利を得ることになる。

 中国共産党の恫喝に屈して戦争目的あるいは政治目的を達成されるとどうなるかについては、例えば、いまチベット、新疆ウイグル、香港などで起きている事例から推察できる。

 

・結局、約120万人のチベット人が虐殺されたことを、国際司法裁判所は認めており、中国も反論していない。

 

核恫喝に屈すればどうなるか? ――ウィグルの事例

・ウイグルでは、ウイグル人の実数は約2千万人と見積もられるが、中国は2015年には1130万人と発表していた。しかし、3年後の2018年には6~7百万人と発表している。その減少した人口4百万人のうち3百万人は強制収容されたとみられる。

 

日本が核恫喝に屈すればどうなるか?

・ひとたび、主権と独立を失い、独裁に屈すれば、警察権さらには軍事権まで失われることになる。

 

・力で反抗を抑圧されれば、結局は、孫子に至るまで主権も独立も民主主義も取り戻すことはできなくなる。固有の文化や伝統、一般住民の権利も失われ、数世代経つと民族としてのアイデンティティは亡くなり同化されるであろう。それが歴史と現在の世界の情勢が示している教訓である。

 

・核を保有した独裁体制の隣国による核恫喝に屈しないためには、確実な核抑止力の保持が必要不可欠である。

 

迫られる日本の自力防衛

・この間、日本は自ら独力で地上戦を数カ月、最小限1カ月半程度は戦い抜かねばならないことになる。このような状況下で、中朝から核恫喝を受けた場合に、上記の米国の核の傘の信頼性低下を踏まえるならば、日本は自らの核抑止力を持たなければ、恫喝に屈するしかなくなる。

 また、核恫喝に屈することが無くても、数カ月に及ぶ長期の国土の地上戦を戦わねばならないとすれば、それに耐えられるマンパワーと装備、それを支える予備役制度が必要不可欠なことも明白である

 そのためには、早期に憲法を改正し、国民に防衛協力義務を課し、世界標準並みの防衛費を配分して、長期持久戦に耐える国防体制を構築しなければならない。それとともに、日本自らの核抑止力保有が必要不可欠になる。

 核抑止力と自力で日本有事を戦い抜く戦力、特に残存力と継戦能力のいずれがなくても、日本の防衛は全うできない。

 

外国人による日本核保有賛成論

・北朝鮮は国際制裁や米軍の軍事圧力にもかかわらず、核ミサイルの開発を続けている。

 

・もともと核の傘など存在しないとみるリアリストは、欧米には広く存在する。「自国を守るため以外に、核ミサイルの応酬を決断する指導者はいない」、まして、核戦力バランスが不利な場合は、同盟国のために核報復をすることはありえないと、彼らはみている。

 

日本核保有賛成論――アーサー・ウォロドロンの主張

・日韓の核保有については、欧米の識者からも賛成論が日本国内で報道されるようになった。

 オバマ政権時代から、米国内では日本の核保有については、その是非を巡り議論が出ていた。

 日本の核武装に拒否反応を見せるのは、CSIS(米戦略国際問題研究所)のジェナ・サントロ氏らが主張する「日韓は速やかに核武装する科学的能力を持つ。日韓両国が核武装した場合は同盟を破棄すべき」との強硬論である。もとよりこのような主張は米民主党に多い。

 

・一方、米国では伝統的に、日本の核武装を「奨励」する声も少なくない。ジョン・ボルトン元国連大使や国際政治学者のケネス・ウォリツ氏らは、「国際秩序安定のために日本は核武装すべきだ」と説く。

 

・米国の最も古い同盟国であり、米国を最もよく知る英国とフランスもこうした考え方を共有している。いずれも核攻撃を受けた際に米国が守ってくれるとは考えていない。

 

・その問題に対する答えは困難だが、極めて明確だ。中国は脅威であり、米国が抑止力を提供するというのは神話で、ミサイル防衛システムだけでは十分でない。日本が安全を守りたいのであれば、英国やフランス、その他の国が保有するような最小限の核抑止力を含む包括的かつ独立した軍事力を開発すべきだ。

 

・以上が、ウォルドロンの主張である。その要点は、中朝の核戦力が高まり、米国が核報復を受ける恐れがあるときに、米国が他国のために核兵器を使うという約束は当てにできないという点にある。

 すでに述べた、現実の核戦力バランスの変化を踏まえるならば、このウォルドロンの主張は、合理的な判断に基づく、日本の立場に立った誠実な勧告ととるべきだろう。

 

日本核保有賛成論――パット・ブキャナンの主張

・「日本と韓国は北朝鮮に対する核抑止力を確保するため、独自に核武装をすることを検討すべきだと主張した」と報じている。

 

・交渉の結果、在韓米軍が削減されるような事態となった場合に備え、日本と韓国は北朝鮮の短・中距離ミサイルの脅威に各自で対抗するため「自前の核抑止力(の整備)を検討すべきだ」と語っている。

 

日本核保有賛成論――エマニュエル・トッドの主張

・「日本は核を持つべきだ」との論文。

「米国はエリートとトランプを支持している大衆に分断され、その影響力は低下している。米朝は互いを信用しておらず交渉は茶番劇であり、米国の核の傘は存在しない」。

「東アジアでも、南シナ海にみられるように米国の影響力は後退している。核の不均衡はそれ自体が国際関係の不安定化を招く」。

「このままいけば、東アジアにおいて、既存の核保有国である中国に加えて、北朝鮮までが核保有国になってしまう。これはあまりにもおかしい」。

「日本の核は東アジア世界に、均衡と平和と安定をもたらすのではないか」。

「こう考えると、もはや日本が核保有を検討しないと言うことはあり得ない」。

核とは戦争の終わりであり、戦争を不可能にするものなのであり、日本を鎖国時代のあり方に近づける」。

 

・このように、トッドは欧州の立場から、米国の国益を離れて客観的に日本が核保有すべき理由を示している。特に「核は例外的な兵器で、これを使用する場合のリスクは極大」であり、ゆえに、「自国防衛以外の目的で使うことはあり得ない。中国や北朝鮮に米国本土を攻撃する能力があるかぎりは、米国が、自国の核を使って日本を護ることは絶対にあり得ない」と断言している点は注目される。

 

・その主張の要点は、核は使用のリスクがあまりに高いため、自国の自衛にしか使えない、核の傘には実体はなく、独自の核抑止力を持つべきだという点にある。

 言い換えれば、生存という死活的国益を守り抜くために、能力があるのなら、どのような国も核保有を目指そうとするのは当然であるという立場を、率直に表明したものと言える。現在の核不拡散を建前とするNPT体制そのものを核保有国の識者自らが否定した発言ともいえる。

 

日本核保有賛成論者の共通点と日本への教訓

・以上の日本核保有賛成論に共通しているのは、以下の諸点である。①米国の力が低下しており、日本に提供しているとされてきた核の傘の信頼性がなくなってきていること、②他方で米国は、北朝鮮や中国の核戦力の向上に対し力により放棄させたり阻止することができなくなっており、交渉では日本に対する北朝鮮や中国の核脅威は解消できないこと、③そうであれば、日本は中朝の核脅威に対し独立を守り地域の安定化をもたらすために、独自の核抑止力を持つべきであるとする、戦略的に合理的な対応策を提唱している点である。

 日本の核保有については、日本人だけの問題ではなく、東アジア引いては世界全体の安定化のためにも、必要とされる状況になっている。日本は既存のNPTの枠組みにとらわれて思考停止するのではなく、どのような核保有のあり方が望ましいかを真剣に考えるべき時に来ている。

 

日本の核保有は可能か?

『成功していた日本の原爆実験』の出版

・その内容の概要は、以下の通りである。

日本は第2次大戦末の1945年8月12日に、北朝鮮の興南沖合の小島において、原爆実験に成功していた

 

・米国のジャーナリスト、ロバート・K・ウイルコックスが40年間追求した成果であり、2006年以降、米政府内の機密文書が元CIAや元空軍の分析官によりウイルコックスにもたらされた。

 

・関係者へのインタビュー、日本軍機密暗号電報解読文書など米政府の機密情報に基づき検証した史実を、1次資料の情報源とともに実証的に記述している。

 

・理化学研究所の仁科芳雄を中心とする日本陸軍のニ計画の成果は、京都帝国大学の荒勝文策を中心とする日本海軍のF計画に継承され終戦まで継続された。

 

大陸を含め約1億円の資金が投入され、海軍は大和級戦艦2隻分の資材を投入した

 

・北朝鮮と満州には豊富なウラン鉱石と電力源があった。北朝鮮の興南には野口遵の大規模な産業基盤が戦前から所在し、核爆弾製造に必要なインフラは終戦直前の興南にはあった。

 

・日本は濃縮ウラン製造用熱拡散分離塔、遠心分離機などの製造に成功していた。

(細部については、ロバート・K・ウィルコックス著、矢野義昭訳『成功していた日本の原爆実験』勉誠出版、2019年を参照)

 

・上記のウイルコックスの書に記された、1945年8月12日の北朝鮮興南沖合の小島で日本が原爆実験に成功していたという事実の信ぴょう性は、本書で立証されているように、極めて高い。もし日本が原爆実験に成功していたのであれば、NPT(核兵器不拡散条約)の規定に基づき、日本は同条約で規定する「核兵器国」としての資格を有することになる。

 すなわち、日本は「1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国」となり、日本は核保有をしても、NPT違反を理由とする国際非難や制裁を受ける国際法上の根拠はなくなるということを意味している。

 

・また、以下の事実も機密資料に基づき立証されている。

 ソ連は大戦末に日本の興南を占領し、日本の各インフラと科学者を奪い核開発を早めた。また、中共の朝鮮戦争介入の目的も興南の核インフラ奪取にあった。北朝鮮の核インフラも人材を含め日本が戦時中に基盤を創った。蒋介石は1946年から日本人科学者を雇い秘密裏に核開発を始めていた。

 特に史実であることを裏付ける決定的事実は、米軍が朝鮮戦争中、興南に数週間留まっていたことである。米軍はその間に、徹底した現地調査を行い、日本が核爆弾を最終的に組み立てたとする興南の北の山中、古土里の洞窟とその周辺施設を確認している。その調査結果は、本書に記されている。

 その調査の間に、米国は興南沖合の小島とされる爆心地の残留放射能などの確実な核実験の証拠を直接確認できたはずである。その米政府のCIA、米軍の秘密資料に基づき検証された結論が、この書に明記されている。

 例えば、日本の原爆がトリウムとプルトニウムの「混合殻」を使った可能性に言及している。このような、戦後も長らく機密とされてきた特殊な核爆弾の構造にまで言及しているということは、何らかの確証を米側が持っていることを示唆している。

 

現在の日本の核兵器保有能力

・技術的には、米専門家は、現在の日本なら数日で核爆弾の製造が可能と評価している。また、日本の専門家も、技術的には数週から数カ月で可能とみている。その理由については、「費用対効果の面から見た検討」で分析したとおりだが、さらに付言すれば、以下の通り。

①  日本は特に世界で唯一、NPT加盟国の非核国でウラン濃縮とプルトニウム抽出を認められている国であり、濃縮ウランもプルトニウム239も一定量を国内に保有している。

②  核実験なしでもコンピューター・シミュレーションにより核爆弾の設計が可能なコンピューター技術を保有している。

③  核爆弾の原理は周知の知識であり、概念設計はできており、日本の技術力を前提とすれば、詳細設計を行えば部品構造から組み立てまで数週から数カ月で可能とみられる。

④  弾道ミサイルについては、HⅡ-A、HⅡ-Bロケットの補助ブースターをICBMに転用可能であり、核弾頭を搭載し投射する能力もある。

⑤  ミサイルの誘導技術、弾頭の再突入技術は「はやぶさ」などで実証済み。

⑥  通常動力型潜水艦の水準は世界一であり、原潜用小型原子炉の国産技術も保有している。SSBNは、数年で建造できる。

⑦  日本の中小企業を含めた生産技術は世界一であり、設計通りの部品を製造するのは容易。

これらの諸要因を考慮すれば、日本なら数日でもできるとの米国の専門家の見方は、過大評価とは言えず、遅くとも数週間から数カ月以内には、核爆弾の製造は可能とみられる。

 


バチカンは国家だが、多くの専門家が世界最大の情報組織であるという。それは13億のカトリック教徒がある意味、情報員で兵士だからだ。(5)

2024-08-17 10:44:10 | 森羅万象

 

<37 2006/12/14首長の多選禁止 「公益性の理由」で制約は可能である 「職業選択の自由」には抵触しない! >

・多選の問題を指摘する声も強い。総務省も何度か知事の多選禁止を盛り込んだ公職選挙法改正に動いたが、憲法で保障された「職業選択の自由」などに抵触するという声などに阻まれてきた。

 

(そして今は…)(条例での「努力目標」ではダメだ!);

・2006年は、官製談合事件による知事逮捕の“当たり年”だった。

 

・日本国内では2007年10月に神奈川県が知事の在任期間を3期12年までとする多選禁止条例を全国で初めて制定した。ただし、多選禁止条例には法的な拘束力はない。地方自治法や公職選挙法に多選禁止規定がないからだ。

 

<38 2005/6/30国家の主権とは何か 「靖国」「歴史認識」「領土問題」……どんな内政干渉も絶対許してはならない >

 

(そして今は…)(中曽根総理の「参拝中止」が失敗だった);

 

<39 2005/11/17靖国の原点 中国が捏造する「靖国参拝の紳士協定」 われわれはもっと毅然とした国家たれ!

 

(そして今は…)(中国が騒いでも無視し続ければいいのだ);

 

<40 2006/8/24 A級戦犯合祀の空騒ぎ 靖国参拝がなぜ「国際正義への挑戦」? 政治的スキを見せ外交問題にさせるな! >

 

◉(そして今は…)(「分祀問題」は神社の判断! 政治不介入だ);

 

日本外交はどうあるべきか

<41 2006/10/19北朝鮮の脅威 核保有国で「テロ流用の危機」 国際的孤立に追い込み金政権を打倒せよ >

 

(そして今は…)(日米同盟強化して「ウラン型保有」阻止へ);

 

<42 2007/2/15 拉致問題の再検討 もはやアメリカは「頼りにならない」 日本の外務省は楽観的すぎる! >

 

(そして今は…)(「6カ国協議」自体が曲がり角にきている);

 

<43 2008/7/17拉致解決の秘策 日本単独の制裁では解決できない! 最後は「日朝トップ会議」で前進を図れ >

 

(そして今は…)(「横田夫妻とお孫さん面会」を突破口に!);

 

<44 2009/4/9米国の北朝鮮外交の不安点  北朝鮮ミサイルの脅威に及び腰 日本の外交は今まさに正念場にある

 

<45 2010/8/7韓国への弱腰外交の大疑問 「異例の金賢姫招聘」の国際的非常識 「竹島の不法占拠」では腰砕け不見識 >

 

(そして今は…)(「国際テロリストVIP待遇」の笑止千万);

 

<46 2004/3/10卑屈な外交に終止符を 韓国の「竹島切手発行」の歴史的汚点 対抗措置も取らない姿勢は国益を損なう >

 

(そして今は…)(なぜ「竹島の日」を国で制定しないのか);

 

<47 2004/4/7国家主権を忘れた弱腰外交の醜態 尖閣、北方領土、竹島、沖ノ鳥島………「ポチ外交」を続ければすべて危うい!

 

(そして今は…)(「及び腰」「柳腰」ではナメられるばかり);

 

<48 2004/9/29岐路に立つ国連の意義 ニッポンの国連経費負担金は世界2位 それでも「常任理事国入りは無理」のなぜ? >

 

(そして今は…)(国連分担金を減額する強い姿勢で臨め);

 

<49 2005/6/2尊大な中国に対峙する 中国政府は歴史を改竄する独裁国家 媚びを売らず毅然として主張せよ! 」>

 

◉(そして今は…)(尖閣の中国漁船長釈放は「大きな禍根」);

 

<50 2006/2/2外国情報機関のスパイ工作 「上海総領事館員の自殺事件」の教訓 わが国独自の「情報機関」の設置が急務 >

・ライブドア騒動で影が薄くなった重要問題がいくつかある。そのひとつが日本の上海総領事館員が中国公安当局の女性を使った工作にはまり、2004年5月に自殺に追い込まれた事件だ。

 

・今回の事件で、われわれはまたもや日本外交の悲しむべき現実が知らされた。

 まず第1に、中国などとはもめ事を起こさずに穏便に処理しようとする弱腰体質だ。

 

第2の教訓は外国情報機関による工作活動への無策ぶりだ。中国などが駐在外交官などに工作活動を仕掛けているのは世界の常識だ。現在でも執拗に行われているだろう。すでに外国機関の協力者になっている者もいるのかもしれない。

 しかし、外務省はそうした工作活動への対処が極めて不十分だ。英国などは、自国の外交官や情報機関員に尾行をつけたり、定期的にウソ発見器にかけたり、銀行口座を調べたりもする。

 そして、自国の在外公館職員に工作活動が仕掛けられた場合には、不利益に扱わないことを前提に詳細に報告させ、それを手がかりに相手方の欲している情報などを調べ、偽情報を相手につかませることもする。

 

日本の最大の問題は、外国では当然の情報機関が存在しないことだ。その結果、生じるのは外国からの工作活動に有効な手を打てないだけではない。独自の情報を入手することもほとんどできず、すべて外国頼みといってよい。

 国内では警察などがさまざまなやり方で情報収集を行っているが、同じ情報収集活動を海外でも行う必要があるのではないか。情報はギブ・アンド・テークだ。日本はギブ情報がほとんどない。

 加えて、情報の管理もまったくできておらず、いつ漏洩してもおかしくない状態だ。こんな中で、外国が命をかけて入手した情報を簡単に日本にくれるはずがない。

 拉致問題の折衝も、本来は相手だけに外務省の表向きの交渉とは別に情報機関がやるべき仕事だと思う。情報機関の設置やスパイ防止法の制定こそ急務ではないか。

 

◉(そして今は…)(政治家への諜報工作対策を実施すべきだ);

・諸外国は国益のために、あらゆる手段を駆使して相手国の情報を取ったり、あるいは自国に有利な取り扱いをしてくれるように働き掛けたりしている。そこには法は存在しない。ハニートラップ(甘い罠)をかけたり、電話を盗聴したりすることは日常茶飯事だ。

 こうした外国の働き掛けに対し今まで日本は、あまりにも無警戒すぎた。

 この領事館員の自殺事件は、今なお水面下で激しい情報戦や工作活動が行われていることを明らかにしたと言える。同時に外務官僚の保身や責任回避、さらには中国への弱腰体質なども明らかになった。

 

ハニートラップなどの工作対象になるのは外交官だけではない。過去には日本の政治家の中にも「ハニートラップにかかっているのではないか」と指摘された人物が何人かいた。

 そこで政治家の場合も、ハニートラップを仕掛けられたりした場合は、早期に正直に告白してもらう、その代わり原則として不利益には扱わない、としたらどうか。そうすれば国益へのダメージを最小限に食い止めることが出来るし、相手側に対する牽制にもなるからだ。

 

<51 2008/8/14中国の毒ギョウーザ事件の暗部  中国側の対応は不思議のオンパレード 官邸対応の疑問と情報操作を糺す必要あり  >

 

◉(そして今は…)(すべての捜査は北京五輪後に本格化した);

 

<52 2010/10/2外交の敗北、司法の自殺 外交に失敗は絶対に許されない! 船長釈放事件「検察独自の判断」はありえない >

 

(そして今は…)(政府は尖閣の実効支配を強化せよ!);

 

<53 2011/3/5日本外交の危機 日本の国益は日々失われている! 民主党政権では「日本はダメになる」 >

 

(そして今は…)(「自民党は一日も早く政権復帰し……」);

・民主党政権は、まずは日米関係をガタガタにしてしまった。鳩山由紀夫首相(当時)は、米国を軽視するような「日米中正3角形論」や「東アジア共同体構想」などを提唱し、米国の不信感を買った。普天間基地の移設問題でも迷走に迷走を続けた。そのうえ対テロ作戦の一環であるインド洋における給油活動を中止したことも米側の神経を逆なでした。世界各国が対テロ作戦に協力している中で、日本だけが撤退したのだから米側が不満に思うのは当然だろう。

 

<54 2011/4/30国難のリーダー失格 「竹島の実効支配」を許す ご機嫌取り「対韓外交」の失政 >

 

(そして今は…)(韓国のご機嫌取り、リーダー失格」);

 

<55 2011/8/19韓国政府のあきれた対応 鬱陵島「入国拒否」の異常事態 これは世界に例をみない愚挙である

 

 ◉(そして今は…)(韓国は非民主的な国家なのか……);

 

 

 

 

(2021/2/19)

 

 

『世界のスパイから喰いモノにされる日本』

あなたの生活データを奪うのはこいつらだ!

MI6、CIAの厳秘インテリジェンス

山田敏弘    講談社    2020/1/21

 

 

 

あまりに脆弱な日本のインテリジェンス――なぜ日本にMI6が必要なのか

ロシアは北方領土にファーウェイを

・「国際的に活動するテロリストの動向は、もちろんMI6も注視している。日本での破壊活動がその視野に入ってくることもある。ただ、それ以上に私たちが危惧するのは、中国からのスパイ工作やサイバー攻撃が常に日本を狙っていることだ。さまざまなレベルや広範囲な分野で、中国は欧米や日本と対抗しようとしている

 

・ロシアとも北方領土の問題はくすぶり続けていて、その面当てとしてか、ロシア側はアメリカが同盟国の日本などに排除を申し入れている中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」のインタ―ネットの通信インフラを、わざと北方領土に設置しているとされる。

 このように日本の周辺には、日本国民の生命と財産を脅かす、安全保障の懸案がいくつも存在している。信頼できる対外情報機関がないことで日本が世界から遅れをとっているだけでなく、インテリジェンスによって自国を守るのには弱い体制にあることがわかるだろう。

 

他国は「日本のために」助けてはくれない

・生き馬の目を抜く世界情勢の中で「自国第一主義」が当たり前の各国が、他国から惑わされないように、基本的には独自にリスクを背負って情報を集め、分析しているのである。他力本願では、相手の思うように情報操作されるのが関の山だ。

 

・とはいっても、CIAやMI6といった機関はどれほどのインテリジェンスを持っているというのか。CIAなどは、そこまでいろいろとわかっているのなら、世界中でアメリカの関係するテロ事件があちらこちらで起きているのはなぜなのか。

 率直な筆者のそんな問いに、この元スパイは、「計画を阻止」「テロリストを事前に拘束」といった事実は表に出てこないのがほとんどだと言う。要は食い止めているものが多い、と。

 

歴史的警戒とMI6との親和性

・2016年には、安倍首相の提唱で始まった外交・安全保障の情報機能強化を目指す政府の「情報機能強化検討会議」で「対外情報庁」(日本版CIA)設立案が浮上するも、立ち消えになっている。

 

ところで、日本版CIAの設立が謳われてきた歴史の中で、これまで提案者たちが設立の参考にすべきだと名指ししてきたのは、MI6だった。これまで日本で対外諜報機関を作る志を抱いていた人たちは、なぜMI6を目指そうとしたのか。

 最大の理由は、日本とイギリスにある類似性だ。どちらも島国で皇室(イギリスでは王室)があり、政府のシステム的にも、アメリカのような大統領制よりも、日本と同じ議院内閣制であるイギリスの体制がなじみやすいと考えられているからだ。

 

外務省と警察の綱引き

・ちなみにこうしたインテリジェンスをめぐる日本の動きには、中国や韓国が異常な関心を示す。MI6やCIAを参考にした対外諜報機関の設立を目指していた自民党のインテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチームの座長だった町村信孝が、講演で対外のスパイ機関の必要性を主張した際も、中国のメディアは極めて敏感に反応している。

 

コンサバで公務員的なスパイたち

・MI6では、9時~5時という仕事のスタイルは存在しない。24時間、任務にあるという感覚だ。

 何があろうが関係ない。プロジェクトを担当しているときは、家に帰ってどうこうって時間はないと言っていい。そのプロジェクトが終わるまで、任務を続けなければならない。休むことはない。日本の情報機関は、思想的にも、守りに入っている感じがする。考え方自体が、公務員的、コンサバティブ。もう一度言うが、それは別に悪いことではない。文化の違いだろう。

 ポジティブな面では、日本国内における情報収集のスキルは高い。それは間違いない。

 

・「本当に国として自立していくのに、諜報機関は不可欠ではないか。本当の使命とは何かということから考えたほうがいいかもしれない

 

・「対外諜報機関がなければ国を守れない。それをしっかりと認識して、CIAのように国民は監視しない、といった法規制を作ればいい。イギリスは、7つの海を制覇し、インテリジェンスで植民地統治をこなしていた。日本もそろそろ自立を考えるべきでしょう。日本が独自のインテリジェンスを駆使できるために、ぜひ日本版MI6を実現してほしい」

 

MI6と日本の交わりと、日本での活動と実態

サイバー嫌がらせにはサイバー嫌がらせ

・国家に何らかの悪影響を与えるものは見逃さない。それがMI6の流儀だ。

「MI6の関係者などに危害を加えるような動きは潰されてしまうだろう。あまりにたちが悪い場合は、『消してしまう』ことだってある。MI6とはそういう組織だ」

 そう、ことによって脅威を物理的に「消し去る」のである。

 

人命軽視のCIA、一見穏やかなMI6

・内調の元関係者は、「私たちはCIAをアメリカの『A』、MI6をブリテンの『B』と呼んで、情報のやりとりをしている。Aは人命を軽く見ている印象です。Bの関係者は日本にはあまりいないと思いますが、いい人が多いですね」と話す。

 

韓国の内情に深く食い込む米英

・「CIAなどもまさにそうだろうが、いろいろな重要情報を日本の情報当局と共有しているというのはあり得ない。北朝鮮、韓国、ロシア、中国、こうした国で起きていることを、CIAはほとんどすべて把握していると言える。それらを日本と情報共有するのは考えられないし、していないだろう」

 

たしかに存在する協力者

・「イギリスは、インテリジェンス活動という意味でアメリカやロシアと競合しており、これらの国ではMI6が超えるインプラントやモール(スパイ)の数は数百人規模になる。MI6が利害を鑑みて、重点的に注意をはらっている国だからだ。

 

ゼロトラスト(けっして信用しない)

・「MI6は外国人にレベル1の信用を与えることはない。レベル1のクリアランス(機密情報にアクセスできる権限)は、外国人には与えられないので、どれだけ頑張ってもレベル2だ。つまり、システム的にも、限られた情報しか外国人には提供しないし、できないことになっている」

 MI6の任務においては、このゼロトラスト・モデルが鍵になっているようだ

 

中朝韓への諜報活動

・喫緊の問題が日本との間にはないからと言って、MI6が日本について情報収集をしないわけではない。この元スパイがいたころは、「香港を拠点にしているスタッフも、中国の政府関係者らや、東京の政府関係者などの会話も傍受していた」という。

 中国やロシア、北朝鮮と韓国など東アジアとその周辺は、世界情勢に影響を及ぼしかねない地域である。そんなことから、MI6も日本を含むこの地域で強い関心を持って情報収集をしている。

 

・最近では日韓関係の情報取集を強化する。東アジアにおいては、北朝鮮という世界を揺さぶる可能性がある国を中心に、隣の韓国国内の動向も注視している。

 

反日傾向が強まる中でスパイ活動が活発に

MI6はさらに、韓国が日本の軍事産業などにかかわる民間企業などに、サイバー攻撃を仕掛けていることもわかっているという。

 

・MI6の元スパイのもとにも、日韓関係については、MI6から最新情報がもたらされていた。

「最近は、日本にいる在日韓国人が、韓国にいろいろな情報をまるでスパイのように送っていることを把握している。以前も多少はあったが、今のようなレベルではなかったと分析されており、最近、日韓関係の悪化にともなって、そうしたスパイのような行為が増えているようだ」

 

・「レーダー照射の事件後、日本の軍事関連の大手企業にはサイバー攻撃がとくに増えている。私たちは、その中に、韓国からの攻撃も含まれていることを把握している」

 

あふれる中国の民間スパイ

・「中国は、旧正月には毎年、年に一度のスパイキャンペーンを行う。旧正月が近くなると、中国の当局者や政府につながっている人たちが、日本など国外に暮らす中国人ビジネスパーソンなどに『帰国の手助けをします』と接触する。旅費を援助するなどと誘惑し、それで国に帰国させたら慎重に情報機関に協力するよう話を持ちかける。国外でのビジネスもうまくいくようにしてやるから、と金銭的にも協力する。しかも悪びれることもなく、大々的にやっている」

 

世界最古の諜報機関

・MI6による日本での活動は歴史的にも記録に残されている。

 そもそも、MI6が設立されたのは1909年。世界で最も古い諜報機関は、ドイツ帝国の台頭という脅威から生まれた。

 

大戦時の日本とのせめぎ合い

・戦時中は、日本の進撃により、香港やシンガポールが陥落した。その際、日本軍はSIS(秘密情報部)のスパイたちも拘禁している。

 一方でこの時期は、日本も国外でのスパイ工作を実施している。

 

対ソ諜報から独自の世界的インテリジェンスに

・戦後は冷戦構造の中、敵はドイツからソ連や東側陣営にシフトして、MI6はそうした国々にからむ情報を集めた。その後MI6はソ連のアフガニスタン侵攻、フォークランド紛争などでも暗躍。経済規模が大きくなっていく日本に対しても、MI6の経済部門が日本の産業界についての情報も収集するようになっていった。

 

知られざるMI6の実力と秘密の掟

敵国スパイを「消した」とき

・「もちろん人を殺めることもある。それはエージェンシー(MI6)でも明確な権利として定められている。国を守るためであれば、自分の命を犠牲にしたり、誰かの命を奪ったりということは仕方のないことだ。インテリジェンス・コミュニティでは、そんなことは常識だと言える

 

・MI6スパイには情報機関法に基づいて、国家の利害のためには「違法な活動」が許されているとし、それには「殺傷」も含まれると認めている。

 

イギリス情報局の組織図

・設立から100年以上、歴史の裏舞台で暗躍し、現代でも活躍する最古の諜報機関であるMI6は、いったいどんな組織なのか。基本的にMI6の活動は機密であり、その内情を簡単に知ることはできない。だが内部にいた元スパイなどの証言から、その実像を窺い知ることはできるはずだ。

 

潰された民間スパイ会社

・その転機になった問題のひとつが、2009年に起きたカリブ海に浮かぶイギリス領ケイマン諸島での事件だ。この話は公には知られていないものである。

 当時、MI6のスパイが何人も組織を離れて独立した。しかも3人が中心となって、一緒にケイマン諸島で、民間の諜報組織を作るという。ケイマン諸島といえばタックスヘイブンで知られ、不透明な資金が流入することが国際的にも問題視されている。元スパイたちには、外国の情報機関から多額の資金が提供されており、しかも世界の名だたる諜報機関からも何人もが、その会社に合流していた。

 

・結局、その企業はMI6によって「潰される」という結末になった。超えてはいけないラインを越えて、ビジネスを展開していたからだ。

 

「007」はトップスパイではなかった

・そもそも、MI6ではどれほどの人が働いているのか。MI6には現在、2500人以上が勤務している。

 

相互監視と現地協力者

・特筆すべきは、エージェントの権力が絶大だということだ。彼らはエリザベス女王にもアクセスできる。工作のためなら資金も使い放題だという。

 

・ただ、MI6には、独特のシステムである「ツー・アイド・シーイング」という仕組みがある。エージェントを中心に工作チームを編成する場合、サポートするスタッフの中に必ずエージェントの動きを監視する「ツー・アイド・シーイング」という役割のスタッフが、密かに任命される。「ツー・アイド・シーイング」によって、エージェントの「暴走」や「不穏な動き」を察知しようというのだ。

 

・現地では、インプラント(協力者)がいて、それぞれいろいろなかたちで私たちをサポートしてくれる。

 

恋人との旅行は消されるもとに

・「常に私たちの活動の基盤にあるのは、MI6の職員が共有する、ゼロトラストという考え方だ。つまり、すべて疑ってかかり、誰も信用しないということだ。それが国際情勢の裏にある世界の常識なのだ。インプラントも信用しないし、同僚も信用しないし、そのほかの職員も信用しない。信用はゼロ。それが原則の姿勢だ

 

・でも実態は妻も子供もダメ、特定の恋人も作ってはいけないということになっている。

 

・それでもどうしても結婚したいスパイがいる。ただ、結婚をすれば、エージェントの仕事からは外され、サポートスタッフに回ることになるのだが、その後にエージェントに復帰することは決してない。定義されていないが、そんな原則が存在しているのである。

 

その謎めいたリクルーティング

・エージェントになったとしても、なぜこんな仕事をしているのか、と冷静に自分を見つめなおしてしまう人もいる。そうなると、あっさり辞めてしまうこともある。最初は国のために働く、エキサイティングだと感じていても、しばらくするとそうでもなくなってくる……それはどんな仕事にも当てはまるかもしれないが。

 

なりすましのトレーニング

・「映画などでは、みんなでMI6の美しいオフィスに集まっているというシーンなどがあるが、ありえない。私がいたころは、イギリス国内だけでも100近い『アジト』があった。表向きは大工の店舗だったり、旅行会社のオフィスということもある」

 

・もっともいくらMI6のスパイが優秀であっても、そんなに簡単には、肩書から経歴までも別の人間になりすますことはできないものである。準備不足なら、すぐにボロが出てしまい、工作どころではなくなってしまう。

 そんな間抜けなことが起きないよう、スパイたちは何ヵ月もかけて訓練を行う。

 

ただひたすら待つ

・以前筆者が取材をしたCIAの元幹部も、CIA局員の仕事は、リポートや書類の作成といった作業がかなりのウェイトを占めると述べていた。情報は集めるだけでは意味がない。それを集約して、インテリジェンスとしてまとめてはじめて、価値を持つ。

 リサーチもそうだが、スパイの仕事には忍耐力が必要になると、この元スパイは主張する。

この仕事は忍耐が重要だ。待つことも多いし、監視で、ターゲットを根気よく見ていることも多い。我慢が必要だ

 

サイバー・ウォーフェア

・1996年には、MI6がフランスの高度な原子力潜水艦追跡技術を盗んだことが、1998年には過去10年以上にわたり、ドイツ連邦銀行の幹部をスパイとして運用し、コードネーム「ジェットストリーム」という工作で、ドイツの金融政策から欧州経済の動向を探っていたことが表面化した。

 身辺調査などをする場合でも、平均すると少なくとも2~4ヵ月、長いと2年もかかってしまうこともあるという。

 

ハニートラップ

・GCHQ(政府通信本部)の関連組織はMI6とも協力しながら、インターネットのデート系サイトなどを駆使してターゲットと「性的な接触」をし、その後にゆすりや脅しをかけていたという。または「性的な接触」をチラつかせながら、ターゲットの男性を陥れるというケースが多く使われている。いわゆる、「ハニートラップ」である。

 

・ハニートラップとは、女性のスパイなどが色仕掛けで諜報や工作活動を行うことを指す。有名なところでは、イスラエルが進めていた核兵器開発について1986年にイギリスの新聞に暴露した、核技術者のモルデハイ・バヌヌのケースがある。バヌヌは、イギリスでモサド(イスラエル諜報特務庁)の女性工作員によるハニートラップに引っかかり、イタリアのローマで逢瀬するという女性の誘いに乗り、同地で拉致された。まさかその女性がモサドの工作員だったとは思いもよらなかったことだろう。結局、イスラエルに送られ、裁判の末に反逆罪で有罪となって独房に投獄された。

 おそらく、いまだに判明していないだけで、日本でもイギリスでも数多くのハニートラップのケースがあると考えられる。事実、ライバル国のハニートラップに引っかかり、今もその国に好意的な発言を繰り返している日本人の要人も存在している。

MI6も、そうした色仕掛けの工作は行っている

 

親友の非業の死

・ここまで、MI6の実態を見てきたが、彼らの業務内容は人を相手にした諜報活動であり、いわゆる「ヒューミント」である。

 

退職後の待遇と誘惑

・「CIAなら、辞めた翌日から民間企業で働くことができる。局に報告さえすれば自分が勤めていたことも公にもできるし、履歴書にも自信をもって書くことが可能だ。だがMI6ではそういうわけにはいかない。もちろん履歴書にも、諜報機関にいたことは書いてはいけないことになっている」

 

実在する「Q」

・「Q」は、技術テクノロジー部門のトップのことで、「007」にもよく登場する。このトップは、実際にQと呼ばれているという。

 

世界には多くの諜報機関が存在する。ほぼすべての国が、国外の脅威から自国を守るために、諜報機関を保持している

 

CIAの力と脆さ

年間800億ドルを費やす

・「朝の5時に目を覚ました大統領が新聞・テレビで流れる重要な情報を知らされていないということがないように、と意識しながら情報をまとめている」

 

アメリカには、CIAをはじめ17のインテリジェンス機関が存在する。これらの機関が少なくとも年間800億ドルの予算で、国内外で情報活動を行い、大統領などの政策決定に判断材料を提供する。

 

隠された予算と巨大利権

・CIAの予算額や職員の数は、機密事項として公開されてはいない。ただ、元CIAの職員だった内部告発者のスノーデンは、2013年当時のCIAの予算を機密文書から明らかにしている。それによれば、年間の予算は約150億ドルで、職員数は約2万1500人だ。

 

国民の監視が暴走を防ぐ

・「一度この世界に入ったら、けっして後戻りはできない極秘の世界であり、非常に閉鎖された世界だ。そして、一度足を踏み入れたら、まったく違う視点で世界を見ることになる」

 

・CIAのようなスパイ機関は、情報を集め工作を実施するのが任務である。それゆえに、その能力は諸刃の剣でもあり、自国内で「暴走」しかねない。民主主義システムは、その暴走を止める役割を担っているとする。

 

本当の敵は内部監査という矛盾

・「閉鎖された秘密主義の世界での活動とはいえ、欧米の情報機関では、すべてはルールと規制によって管理されている」

 

・「私にとっては敵との闘いではなかったですね。それよりも、内部監査とのやりとりが大変でした。いつも監査部とはやりあっていたのでね。彼らはいろいろと守るべきチェック項目などをこちらに求めてくる」

 

虚々実々の駆け引き

・「表向き、メディアなどでは、アメリカとイギリスはいい関係で、ファイブ・アイズで情報をいつも交換していて仲がいい、と言われている。だが、実態を明かせば、それは完全に嘘だ。諜報機関にはルールがある。非常にシンプルなルールだ」

 

・「それでも基本的にCIAなどにこちらの大事な機密情報を与えることはなかった。CIAももちろん、私たちに対して同じことをしている。情報は共有しない」

 

MI6の痛恨事

・そこでイギリスが送り込んだのが、MI6のエースで「目もくらむばかりの功績を上げて勲章ももらった情報活動の英雄」のフィルビーというわけだが、その彼がソ連の二重スパイだったのである。アメリカ側のMI6に対する不信感が高まったのは当然だ。

 

・アメリカとイギリスの間ですら、こうした微妙な関係性が横たわる世界のインテリジェンス・コミュニティの中で、日本がどんな位置付けにあるのか。

ギブ・アンド・テイク」が常識であるインテリジェンスの世界で、日本のようにこちらから提供できる情報が少ない国には、国外の諜報機関からはいったいどんな有益な情報が提供されるのか、はなはだ疑問ではある。

 

暗躍する恐るべき国際スパイ――モサドそして中露へ

強くなる以外選択肢がなかった

・「モサドは、軍事的なインテリジェンスが得意だ。現場からのインテリジェンスを入手するのが非常にうまい。現場に強い。ベストな諜報組織のひとつと認めてもいいだろう」

 

・「強くなる以外、私たちには選択肢がなかった。それに尽きる。壁際に追い詰められ、何らかの対処をしなければならない。そういう状況下では、クリエイティブになって、解決策を見つける必要がある」

 モサドという組織は、わかりやすいほどに目的がはっきりしており、自国の利害のために妥協なく活動してきたスパイ集団だと言える

 


バチカンは国家だが、多くの専門家が世界最大の情報組織であるという。それは13億のカトリック教徒がある意味、情報員で兵士だからだ。(4)

2024-08-17 10:42:35 | 森羅万象


フレデリック・マルテルは、フランス在住の作家、ジャーナリスト、社会学者で、「オープンなゲイ」である。アメリカに長期間滞在した経験があり、アメリカ文化やLGBTに関する著書がある。

<そもそも日本では、欧米に比べてバチカンに関する情報が少ない>
<同性愛という現象は人類の歴史でそれほど珍しいものではない>
・同性愛という現象は人類の歴史でそれほど珍しいものではない。とくに男性においては、年長者と年少者、師と弟子、保護する者と保護される者とのあいだで、同性愛的な関係が結ばれることがある。古代ギリシャ古代ローマ少年愛は有名だし、日本でも武士や僧侶の世界で同じような現象が見られた。多くの社会で、同性愛はおおっぴらとまではいかなくても、少なくともある程度は黙認されていた。しかしキリスト教ではいつのころからか、同性愛を「罪」とみなすようになった。教義と自らの性向のあいだでなんとか折り合いをつけようとした結果が、「ホモフィリア」という性行為にとらわれない関係、別の言葉で言えば禁欲的な同性愛なのである。
 禁欲できない人はどうしたらよいのだろうか? その場合、同性愛は念入りに隠されていることになる。表向きは厳格な教義を説きながら、プライベートでは同性愛を実践している。これがいわゆる「二重生活」であり、それを支えているのが教会の「秘密を守る文化」なのだ。未成年者への性的虐待が長年隠されてきた背景にも、こうした秘密主義がある。異性愛も含めてすべてがオープンになれば、つまり聖職者の独身制を廃止し、同性愛者の存在が認められるようになれば、偽善的な「二重生活」を送る必要もないし、性犯罪が隠蔽されることもなくなるはずだ、と著者は主張する。

・ヨーロッパ以外から初めて選ばれた教皇としてフランシスコがさっそうと登場したのは、2013年のことである。それまでに、バチカンの評判はさんざんなものになっていた。未成年者に対する性的虐待、金融スキャンダル、教義をめぐるかたくなな姿勢(妊娠中絶やコンドームの禁止など)、歯止めのきかないカトリック離れ………。信者でなくてもバチカンカトリック教会はどうなってしまうのかと心配になるが、日本人にとってはしょせん対岸の火事である。キリスト教と縁のない日本では、フランシスコの改革もそれほど話題にならない。2019年秋に来日したとき私たちが最も注目したのは、核兵器の廃絶に向けて教皇がどんなメッセージを発するかであった。

 

 

 

 

 

(2021/12/15)

 

 

『もう黙っていられない!』

いまこそ「国家の危機」を救う55の憤怒直言

平沢勝栄  徳間書店  2011/9/17

 

 

 

この国難にもう失敗は許されない!

 

東日本大震災

・東日本大震災・東電福島第一原発事故が起きた2011年3月11日から半年以上が過ぎた。

 

・日本の世界における存在感そして信用は年々低下している。日本はここでもう一度、原点に帰って国家を新しく作り直していく必要があるのではないか。まず憲法改正が必要だ。1年ごとに総理が変っていては強力なリーダーシップを発揮することはできない。総理の選出方法も含め制度や法律を見直し、総理大臣は一定期間、例えば4~5年間は安定的に政権を担当できるようにすべきではないか。

 手始めに衆参2院制を統合して1院制に変えることを検討すべきだろう。

 

選挙制度については今の小選挙区制を中選挙区制に戻すべきと思う。

 

・これだけ首相が変わるようだと、外国からすれば「日本の首相と人間関係を作っても約束事をしても、すぐ交代するので意味がない」となり、日本は無視されてしまうことになる。

 

・この本は『夕刊フジ』に2004年1月から2011年8月までの約7年間、ほぼ毎月1回ずつ掲載されたコラム『永田町新潮流 俺がやらねば』をまとめたものである。

 

・今は変化の速い時代である。このため「特に前半部分のコラムは現状を反映してないのでは」と思われるかもしれない。しかし、コラムの文章はあえてそのまま収録した。なぜか。

 各コラムで訴えた課題の中には今でも未解決のまま残っているものも少なくないからだ。その代表例が北朝鮮による日本人拉致問題である。

 また、政治的な危機およびその解決の方向性に対する私の主張は、今でも十分に通用すると自負しているからでもある。

 

迷走する民主党政権

<01 2011/4/2 政府の無能無策 「原発不安」でいま政治不信の嵐 「人災」で被害拡大した愚策を指導! 

・今回の大震災は、被害のほとんどが津波によるものだった。テレビ画面に映す出される被害に世界中が息をのみ、「想定外」という言葉が何度も使われた。原発事故では、政府の連日の記者会見でも国民の不安は一向に解消せず、今や保安院は不安院といわれる。

 千年に1回といわれる今回の大災害は、菅政権が末期症状を呈している時に起こった。

 

◉(そして今は…)(「大災害を政権の浮揚に使うな!」);

・2011年3月11日に東日本一帯を襲った巨大地震と大津波で、死者は1万5689人、行方不明者は4744人に達した。東京電力福島第一原発の事故も依然として収束しておらず、避難民は合計して約8万7000人に及んでいる。いずれも地震発生から5カ月が過ぎた8月11日現在の数字だ。

 大災害が起きた時の政治の最大の使命は、国民の生命・財産を守ることだ。

 

<02 参院議長の爆弾発言 三権の長が「首相失格」の烙印 官邸は責任逃れの小者ばかりである! >

 

「(そして今は…)(彼の延命こそ最大の不幸だ」);

 

<03 国益より私益の愚 「裸の王様」菅首相の資質 「国政・外交の停滞」は前代未聞だ! >  

 

◉(そして今は…)(「居座り続ける菅首相」――内閣不信任案否決);

 

<04 菅直人総理の闇  極左勢力へ「闇献金」のズブズブ関係 「亡国政権」へ、いまこそレッドカード! >

 

(そして今は…)(首相を取り巻く極左の人物);

 

政権交代とは何だったのか

<05 民主党の正体 民主党の政権交代とは 政権“後退”で“欠カン”内閣だった >

 

◉(そして今は…)(2011年を日本再生の元年にすべし!);

 

<06 大失態の真相 国家観なき民主党政権 「柳田法相」の舌禍事件は愚の骨頂だ  >

 

◉(そして今は…)(大臣たる者「哲学と信念」を持て);

 

<07 政治家の信義 与謝野馨氏の「変説入閣」に物申す! 「有権者に対する重大な裏切りである」 >

 

◉(そして今は…)(与謝野馨氏に改革ができるのか);

 

<08 小沢問題の本質 「政治とカネ」の社会認識を改めよ! 「小沢事件」で広がった「失望と絶望」 >

 

◉(そして今は…)(一兵卒に振り回される醜悪の極み);

 

<09 国益とは何か マニフェストの呪縛で右往左往 「思いつき政治」では国民が不幸になる! >

 

◉(そして今は…)(この迷走は国民への「壮大なる詐欺」だ);

 

<10 事業仕分けの核心 不明朗な仕分け基準が混乱を招く 「議員特権」「国会手当」ムダはまだある  >

 

◉(そして今は…)(2016年「1院制の国会創設」の提言);

 

<11 軽率発言が多発する元凶 「優柔不断と曖昧」だらけの統治能力 民主党はいつから「非民主党」になったか >

 

◉(そして今は…)(世界の恥さらし「トラスト・ミー」の教訓);

 

<12 2010/2/27正しい政治継承とは 「自民党政権の全否定」政策に明日はない 露骨な予算の私物化が始まっている! >

 

◉(そして今は…)(政権交代で「政治が悪くなる」稀有なニッポン!);

 

<13 2010/3/27バラマキ政策の欠陥 子ども手当はまさに「選挙手当」だった 「財源なきバラマキ」を今すぐ撤回せよ! >

 

◉(そして今は…)(「児童手当」の手直しをなぜしなかったのか);

 

<14 2010/5/22首相の大罪  歴史に汚点を残す「無節操な首相」 「今の政治はメチャクチャである!」 >

・このまま進むと普天間問題は第2の成田にもなりかねず、日米の信頼関係も大きく揺らぎかねない。3月に渡米したとき、国務省高官は私に「ポスト鳩山は誰か」と聞いてきたが、鳩山政権は信頼できないということだろう。

 

(そして今は…)(「鳩山由紀夫」は稀代のワル総理大臣だった);

・辞めたことは当然としても、鳩山氏は国会にひとつの悪霊を残した。

 

・辞任の際、鳩山氏は「次の選挙にはもう出ない」という趣旨の発言をした。ところが、その舌の根も乾かないうちに「また出る」と言い出した。無責任極まりない話だ。日米関係に大きなヒビを入れたのも鳩山氏で、こんな無節操な人物を日本国民は首相として仰いでいたわけだ。

結局のところ鳩山氏は功罪のうち「功」はほとんどなく「罪」だけを残した稀代のワル総理大臣と言っていいだろう。

 

自民党のあるべき姿とは

<15 2005/8/25小泉劇場の裏側 あの「9.11革命元年」の政治ドラマは 日本の政治風土に何をもたらしたのか >

 

◉(そして今は…)(「テレビ政治」の異常な熱狂劇だった)

郵政法案は2005年7月5日の衆院本会議で可決されたものの、8月8日の参院本会議で否決された。当コラムは衆院が解散された後に書いたものだ。

 

私は元々、郵政改革法案に必ずしも賛成ではなかった。選挙の際、郵政関連団体から支援をうけていたこともあるが、それ以上に民営化すれば、地方の不採算の郵便局が閉鎖されかねないという問題点があったからだ。他方で地元の支持者からは「自民党を離れることだけは絶対に止めてくれ」と強く釘をさされていた。したがって内心では賛否いずれにするかで迷っていた。

 

・選挙戦で自民党は分裂選挙を強いられたものの、その後、「刺客騒動」が大々的にテレビに取り上げられたこともあり、結果として自民党は圧勝した。国民は、法案の中身ではなく、小泉劇場に酔って投票したと言える。

 解散・総選挙の前の段階では私は「多数の造反議員を抱えての分裂選挙で(自民党が)勝つことはあり得ない」と思っていた。しかし、「分裂選挙になる」というところまでは正しかったものの、勝敗に関する見通しは完全に誤ってしまった。

 なぜ誤ったか。それはテレビの力を見誤ったということだ。

 

・ちなみに菅氏は、私も出たテレビ番組で郵政選挙について一億総白痴化の結果と言っていた。

 

・要するに、民主党が勝った時の国民は賢明だったが、自民党が勝った時の国民は白痴だった、と言っているのだ。

 

<16 2005/10/6政治の情と理 もしも「後藤田正晴政権」だったら 「この国」はどう変わっていたか……… >

 

◉(そして今は…)(「尖閣ビデオ」はすぐに公開されていた)

・後藤田さんが亡くなったのは2005年で6年以上が過ぎた。今、言えることは「後藤田さんが今、政界にいたら、今の政治は大きく変わっていただろう」ということだ。

 今の政治の不幸は、後藤田さんのような政治家がいなくなったことに尽きる。

 

・官房長官は内閣の要だ。官房長官を誰にするかで政権の安定性や方向に違いが出てくる。

 

<17 2007/5/17 天下分け目の参院選  選挙の成否を決する「応援演説」 政治家の危機感と記憶に残るメッセージ>

・さて、政局の焦点は終盤国会と参院選に移った。統一地方選と同様、私も応援のため全国を飛び回ることになる。私は歩き回っているせいか、健康には自信があるが、目の回るようなスケジュールになりそうだ。応援依頼が多いか否かは、政治家にとって実力・人気のバロメーターともいわれ、応援依頼が多いことはありがたい話だ。

 

・ところで、応援スピーチで留意しなければならない点がいくつかある。読者のみなさんは、以下の視点を持って街頭演説などをお聞きになれば、ひと味違った発見ができると思う。

 一つは候補者の名前を絶対に間違えないこと。

 

・二つ目はあらかじめ準備するのではなくその場の雰囲気にフィットした臨機応変の応援演説をすること。

 聴衆は次々に登場する弁士の話を聞くのだから、同じ話では飽き飽きするだろう。当意即妙でユーモアあふれる簡潔な応援演説が歓迎される。「この人の話は面白い」と思わせて魅きつけ、最後に「情勢は厳しい。あと一歩」といって危機感をあおることができれば上出来だ。

 三つ目はその場の雰囲気で自在に演説時間を調整すること。次の弁士が到着するまでのつなぎだったり、聴衆が飽きている場合もある。2分などということもあるが、相手の記憶に残るメッセージが一つでも二つでも与えられれば成功だ。

 最後に、参院選は自民党にとって大変厳しい選挙になるだろう。ただ民主党の小沢代表は「政界の不動産屋」といわれ、国会の本会議も欠席が多い。自民党は氏にどれだけ助けられていることか。

 

 ◉(そして今は…)(政治家にとってスピーチは命)

日本の政治家の中に「これは」と思わせるようなスピーチの名手は極めて少ないと思う。スピーチを行う場合、会場や聴衆の空気・表情を見ながら、当意即妙、ユーモアにあふれるフレーズを披露できれば万々歳だが、これがなかなか難しい。

 

・「(食事については)腹八分目が体にいいように、スピーチも(指定された時間の)8割ぐらいでやめるとちょうどいい」という趣旨のことを書いていた。「聴衆がもう少し聞きたい」と思っているぐらいの時に、余韻を残してやめれば、そのスピーチは成功ということらしい。

 

・中には指定された時間を大幅に超えて話す人もいる。ある政治家は、結婚式で乾杯の音頭を依頼され、30分間の挨拶をやったそうだ。その政治家は次の選挙で落選したとか。「腹八分に医者いらず」という諺があるが、スピーチも同じということだろう。

 

<18 2007/8/9歴史的大敗の意味  「怠慢とおごり」の政権運営に断! 切磋琢磨することの意義は大きい >

 

◉(そして今は…)(これからの「政権交代のあり方」を考える)

普通、先進国で政権交代が行われれば、政治は確実に良くなる。前政権の悪いところはやめ、良いところは引き継いでいくからだ。

 ところが民主党政権は、自民党のどこを引き継ぎ、どこを取り止めるかという「政策の仕分け」はやらないまま「ザ・自民党」の政策のオール否定で走ってしまった。

 

<19 2007/9/6戦後初のねじれ国会 日本の政治が抱えた「混迷政治」の原点 この厳しい国会運営の現実を直視せよ! >

 

(そして今は…)(「安倍政権」の失敗に何を学ぶか);

 

<20 2007/12/27政府の責任とは「責任逃れ」に終始するリーダーは論外 国民目線に立った改革こそ再生への道だ > 

 

◉(そして今は…)(「大連立構想」と緊張感を欠く政治運営);

 

<21 2008/5/22自民党の未来図 「政治家であることが恥ずかしい」時代に 大胆な改革を実行して「日本再生」を図れ!

 

<22 2008/6/19民意を読めない政党 自民党は「謙虚さを失くしてしまった」民主党は「政権能力がないことがわかった」 >

 

(そして今は…)(名官房長官が名首相になれなかった理由);

 

<23 2008/9/11国家リーダーの新条件 トップが「乳母日傘」育ちではひ弱すぎる 「日本丸の船長」にふさわしい「信念と志」を >

 

◉(そして今は…)(短命政権では「国際社会」に相手にされない!);

 

<24 2008/12/4総選挙のタイミング 安倍、福田、麻生の「政権たらい回し」 「世界金融危機」に戦略出せず閉塞感が! >

 

◉(そして今は…)(「勇気と決断力」なきリーダーは失格だ);

 

<25 2009/1/8 自民党の失敗 裁判員、後期高齢者医療、定額給付金……首相の約束で「進むも地獄、退くも地獄」

 

◉(そして今は…)(混乱の中から、政治空白が生まれただけ);

 

<26 2009/2/5自民復活への道 「衆参議員定数の半減」で国会議員大改革だ 政治家が自らを厳しく律する覚悟が必要! >

 

◉(そして今は…)(「首相経験者」は“外交”を);

 

<27 2009/6/18大転換時代の適応力 「指揮権発動」を提案する与党のメチャクチャ 「捜査と司法」からは独立しなければならない >

 

◉(そして今は…)(あきれた「指揮権発動」をめぐる二枚舌釈明);

 

<28 2009/7/18自民凋落の最大の要因 「生活者の視点」を忘れた党の体質改善 国民の汗と涙に応える真の政策立案を急げ!

 

 ◉(そして今は…)「都議選は国政の先行指標」として連動する);

 

<2009/8/15 マニフェスト選挙の功罪 小選挙区制の選挙は「党VS党」の戦い 「実行できぬ政権公約」を排し建設的論争を >

 

(そして今は…)(実感は「高い授業料を払ってしまったな」!);

・第45回衆院総選挙は2009年7月21日に解散され、8月18日に公示された。投開票日は8月30日。当コラムは公示の3日前に掲載された。

 厳しい選挙戦だった。

 

・「今度だけは自民党の応援は勘弁してくれ」と、わざわざ言いにくる有権者が何人いたことか。麻生首相がテレビ画面に出ると、チャンネルを変えるという人も多かった。石原伸晃氏は駅頭でツバを吐きかけられ、鴨下一郎は駅頭で「死ね」と言われたそうだ。

党の幹部に「大変厳しい」と伝えても、中には「勝てる」と楽観的な見通しを言う人もいた。まさに太平洋戦争の時の大本営で、現場の空気を知らないこと実におびただしかった。

 そういう人たちは街宣車の上に乗っての演説はしたのかもしれない。しかし、それでは有権者の本当の気持ちは分からないだろう。街宣車から降り、有権者と同じ高さの目線で接してこそ初めて国民の空気が分かるというものだ。

 

<30 2009/10/3今こそ党益を捨てよ! 自民党を再生させる真の新総理は誰か いでよ!何事も恐れない「革命的リーダー」 >

・今、自民党内には首相経験者が4人もいて、人事などで大きな影響力をもっている。もし、民間会社で、経営責任をとって辞めた社長が引き続き経営に介入していたら、その会社は倒産だろう。ちなみに、今回の街頭演説でもっとも拍手が大きかったのは、首相経験者は政界を引退せよと言った時だった。

 

。今の自民党に必要なことは何事も恐れない強力なリーダーのもと革命的に党の体質を改革することだ。同時に政党としての新たな目標を定め、健全野党、そして責任野党として国会内外で建設的な論戦をすることだ。

 

◉(そして今は…)(党改革の本丸は「人を変えよ」!);

・それには抜本的な党改革が必要だ。「党名を変えよう」と言う人がいるが、名前を変えても中身(人と体質)が同じままであれば無意味だ。

 党改革については前述したが、それに加えて自民党は一人一人の議員と支持者が作っているのだから、人を大幅に変えてみたらどうか。具体的には私を含めて現職議員を含む全選挙区支部長を選び直すぐらいの荒療治をしたらどうかと思う。

 公認候補者を決める際、予備選挙を全選挙区で行うことにする。選挙区支部長と公募組を戦わせ、党員が無記名の投票で1人に絞り込むわけだ。その結果、公認からはずれる現職が出てくるかもしれない。しかし、これぐらいのことをやらないと「自民党は本当に変わった」とは言えないのではないか。

 

日本が抱える内政問題

<31 2004/2/11日本の治安危機 もはや「世界一安全な国」ではない! 治安回復に「警察モンロー主義」を見直せ >

 

(そして今は…)(欧米型の捜査と懸賞制度が成果を上げる);

いま日本の治安は危機水域にある。刑法犯認知件数は戦後最多、街頭犯罪や侵入犯罪の急増、来日外国人犯罪の凶悪化、組織化、戦後最低の20%近くまで低下した検挙率。国民は今や景気より犯罪に大きな不安を感じている。

 どうしたら良いのか。私は日本の治安回復は「警察モンロー主義の見直しから」とみている。

 日本の警察はよくやっているが、警察独力で治安回復しようという考えが問題なのだ。かつて日本は「世界で一番安全な国」といわれた。この警察の成功体験が、幅広い社会参加を得て、治安回復を図る国民的システムの構築を妨げているのではないか。

私は治安回復の抜本案として、次の4点を提案したい。

第一は、外部参加だ、警察官は全国で24万人だが、消防団は90万人、ガードマンも40万人、タクシー運転手も40万人いる。パトロールの警察官は見かけないが、タクシーの運転手はどこでも見かける。早朝から働く新聞配達人もいる。郵便屋さんもいる。これらの人々に不審者の通報などで協力してもらい、成果が出ればそれなりの懸賞金を払うシステムを作ったらどうか。

 

・第二は、治安関係機関相互の密接な協力だ。

 

・第三は、おとり捜査や潜入捜査、司法取引などの捜査手法を認める。同時に法制度の見直しで軽すぎる量刑を改め、犯罪を厳しく罰することだ。

 

・第四は、警察モンロー主義からの脱却。むろん警察は治安の中枢機関だが、警察独力で治安を維持する時代は終わった。自衛隊に任せようとした原子力発電所の警備を、警察が1000丁の軽機関銃を購入し、多数の警察官を投入して担当している。こんなヒマがあったら、街のパトロールをしたらどうか。ドイツでは原発警備のガードマンに拳銃を持たせている。

 構造改革が求められているのは郵政や道路公団だけではない。治安についても思い切った構造改革が必要ではないか

 

<32 2004/6/9少年法の考察 増加する「触法少年事件」への大疑問 警察に事実解明の権限を与えるべきだ >

・長崎県佐世保市の小6女児同級生殺害事件は、日本人列島に衝撃を与えた。

 15年前、私は警察庁の少年課長だったが、当時では考えられなかった事件だ。日本の少年犯罪も凶悪化や年少化などで米英並みになった。米英ではそうした現実を踏まえて、少年犯罪に厳正かつ迅速に取り組む態勢ができている。

 ところが、日本では今回のような14歳未満の触法少年事案は、少年法の保護主義が強く作用して、証拠物の押収や司法解剖、事情聴取など、事実解明には不可欠な強制力を伴う権限が警察に与えられていない。あくまで任意なのである。

 

(そして今は…)(「取調の可視化」と「権限付与」の一体改革);

・現在、検察庁や警察庁も取り調べの一部についてだけの可視化を試行中だが、可視化には問題点が全くないわけではない。

 そもそも欧米諸国の取調べは基本的に容疑者の言い分を聞くために行われるが、日本の場合は事件の真相究明にために行われる。その日本でもし全面可視化が実施されれば、供述を得ることが難しくなり、事件の解決が難しくなるだろう。

 もし可視化を導入するなら、それに代わって欧米諸国のように取り調べ当局に権限を与えるべきだ。例えば英国の場合は黙秘権の一部制限が行われている。その他、多くの国で潜入捜査やおとり捜査、司法取引、刑事免責の他、通信・会話傍受やDNAのデータベース化など幅広い権限が捜査当局に認められている。

 要するに冤罪は絶対に阻止しなければならないが、同時に事案の真相解明と犯人検挙も行わなければならないのである。その双方を同時に実現するにはいどうしたらいいか。権限付与とセットで可視化を考えるべきだろう。

 

<33 2004/10/30危機管理の要諦 災害は「必ず起こる」が大前提 危機こそ、強い、リーダーシップが肝要だ >

・今回のような直下型地震はいつどこで起きるか予測するのは不可能に近い。もし、インフラやライフラインが集中して、地盤が脆弱な首都・東京、特に下町などで起こったら被害は甚大だ。

「必ず起こる」という前提に立ち、全国の活断層の徹底調査、災害に強いインフラやライフライン構築、防災都市づくりに、政治が強いリーダーシップを発揮しなければならない。

 

(そして今は…)(疑問だらけの北朝鮮「延坪島砲撃」への対応);

・砲撃事件自体は日本に直接波及することはなかった。しかし、結果はそうであっても最悪の事態を想定して最大限の備えをするのが危機管理の要諦である。担当閣僚の迅速な当庁と指揮は、現場に直ちに伝わり、緊張感が走るのである。

 菅直人内閣は危機をコントロールできない「管理危機」に陥っていた。そうした内閣に国民は自分たちの生命・財産の安全を委ねていたのである。

 

<34 2005/3/2犯罪者の親の責任 家庭問題抜きに凶悪事件の解決は無理だ 加害者の人権偏重では治安は悪化する!

・奈良女児誘拐殺人事件、安城市乳児刺殺事件、寝屋川市教師殺傷事件など異常な事件が相次いでいる。日本の社会自体が大きく構造変化したことをうかがわせ、かつてはまれだった幼児性愛者や心に深い闇をかかえた犯罪予備軍がどこにも潜伏する社会……。それが残念ながら今の日本社会の現状だ。この社会の変化にもかかわらず、関係省庁は今日まで、犯罪者の人権や社会復帰のみを考え抜本的対策を怠ってきた。

 奈良の事件では容疑者は2回の前歴があったが警察は一切把握していなかった。刑務所内での矯正教育もほとんど行われていなかった。再犯率に関する基本的なデータすら集めていなかった。加害者の人権も必要だが、社会を犯罪から守るシステムの構築も考えていく必要があろう。

 

 ◉(そして今は…)(「親の責任の法制化」やむなしか);

・「少年犯罪について親の責任をとう」というのは欧米諸国では当たり前のことだ。犬が人に噛みついた時に飼い主の責任が問われるのと同じである。翻って日本では子供が問題を起こしても、特に学校内では親の責任が追及されることは稀だった。

 最近になって子供が学校のガラスを故意に割った場合、修理代を親に請求するなどの自治体が日本でも出てきたが、当然のことがやっと行われ始めたと言える。

 当コラムの中で指摘したように、親がもっと責任感を持って、真剣に家庭教育をするためにも、「親の責任の法定化」はやむを得ないのではないか。

 

<35 2006/6/1子どもの虐待 欧米では子どもの命が最優先される 「子は親のもの」とする考えを改めよ! >

・子供が被害者となる痛ましい事件や事故が続発している。かつては「渡る世間に鬼はなし」、今や「渡る世間は鬼ばかり」と子供たちに教えなければならない時代だ。家庭内虐待も増えつつある。

 こうした事件や事故の中には、事前に防止できたケースもあったのではないか。国によって差異はあるが、欧米では子供が一定の年齢に達するまで、親には安全保護の義務がある。子供だけで留守番させることも、遊びに出かけることも許されず、誰かが付き添わなければならない。登下校もスクールバスに乗るか親と一緒に通学するかだ。

 

(そして今は…)(虐待者の親権を一定期間停止する法整備);

・かつての日本で家庭内暴力と言えば、子供が親に暴力を振るうことを意味した。ところが今はそれが逆になり、親が子供を虐待するようになっている。

 欧米諸国では養子縁組や子連れ再婚が多いこともあり、こうした児童虐待が昔からよく起きていたが、日本ではほとんど見られなかった。ところが日本でも最近は急増しているが、なぜか。それは欧米諸国と同じように、日本でも離婚や再婚が増えたことなどから、実子ではない子供を育てるケースが多くなったことも背景にあるのではないか。

 

・こうした反省に立って児童相談所に虐待家庭への強制立ち入り検査権限を付与するなど法制度の見直しが進められている。最近、虐待者の親権を最長2年間停止できる民法などの改正も行われた。

 日本の親子関係が“欧米化”していることを考え合わせると、さらに抜本的な対策が必要となるかもしれない

 

<36 2007/6/14年金記録漏れと自治労の傍若無人 犯罪的な労組の暗躍を許してきた 社保庁、厚労省、政府の責任は重い >

・国会は終盤に入ってから大荒れ。年金記録漏れ問題や松岡前農水相の自殺問題などが安倍内閣を直撃しているからだ。

 とりわけ年金問題では、厚労省キャリア出身の社会保険庁幹部は全くのお飾りに過ぎないことを知った。同時に、自治労加盟労組が組織を私物化し傍若無人にふるまっていたこともわかった。社保庁は労組との間で、合理化反対やオンライン化反対などに関して100件以上の覚書を交わしてきた。その中には窓口装置の1日1人のキータッチは平均5000以内とする(人事院規則は4万件、民間は無制限。ちなみに5000タッチは通常30分以内で終わる)、窓口装置の1人1日の操作時間は180分以内とするなどの非常識極まる内容も多い。

 

・ところで、全日本自治団体労働組合・国費評議会作成の資料「社会保険職場の国一元化は許さない」には、組合員が覚書を印籠よろしくふりかざし、社保庁幹部が平身低頭している絵がある。まさに噴飯モノといえないだろうか。

 

(そして今は…)(社保庁における自治労問題の本質);

・当コラムでは、年金記録を「宙に浮かせた」として批判の矢面に立たされた社会保険庁(現在は日本年金機構)にからんで、同庁と自治労の問題点や責任などを指摘した。

 まず自治労で問題なのは、ある意味で労組自体が特権階級になっていることだ。それは自治労に限らない。他の行政関係の労組にも言えることだ。憲法で守られていることをいいことに傍若無人に振る舞い、逆差別さえ招いている労組も多い。

 

・ところが民主党の場合は特定の労組だけから応援をもらって国会に出て来ている議員が多い。それらの議員は労組からの働きかけを無視することはできないだろう。例えば民主主義党が国民に約束した国家公務員の人件費の2割削減は労組が反対している以上、実現はまず不可能と思う。

 労組問題は自民党政権時代からあった。しかし、労組は大きな力を持っているので自民党は見て見ぬふりをしてきたところがある。そうした労組の積年の弊害が象徴的に出たのが、社保庁における自治労問題だったともいえるわけで、自民党も謙虚に反省しなければならない。

 ともかく民主党はもっと労組問題に切り込まないとダメだ。しかし、労組に切り込んで改革することが果たして今の民主党にできるかどうか

 


バチカンは国家だが、多くの専門家が世界最大の情報組織であるという。それは13億のカトリック教徒がある意味、情報員で兵士だからだ。(3)

2024-08-17 10:41:39 | 森羅万象

 

ムサシ機関=小金井機関

・阿尾の著書でムサシ機関長(別班長)だったことを暴露され、(多くのマスコミから電話や手紙による取材攻勢を受け、その対応に苦慮した)平城弘通は、別班の元トップとして(いまさら当時の情報活動のことを機密にしても、かえって誤った事実が歴史に残るのではないか)と考え、2010年9月に『日米秘密情報機関「影の軍隊」ムサシ機関長の告白』を出版した。

 同署には阿尾への強烈な批判も含まれているが、さすがに元トップが著した内容は、別班の創設の経緯や当時の組織構成、所属要員、経理処理、自身の別班長就任のいきさつなどが詳細に書かれており、ここまで紹介してきた他の刊行物に比べても、史料的価値は高い。

 

別班と米軍の関係

そもそも、旧帝国陸軍の“負の遺伝子”を引き継ぐ別班は戦後、なぜ“復活”したのか――。一連の告白本が刊行されるまで、その誕生の経緯は長い間、謎とされてきた。

 しかし、元別班長の平城によれば、1954年ごろ、在日米軍の大規模な撤退後の情報収集活動に危機感を抱いた米軍極東軍司令官のジョン・ハル大将が、自衛隊による秘密情報工作員養成の必要性を訴える書簡を、当時の吉田茂首相に送ったのが、別班設立の発端だという。

 その後、日米間で軍事情報特別訓練(MIST)の協定が締結され、1956年から朝霞の米軍キャンプ・ドレイクで訓練を開始。1961年、日米の合同工作に関する新協定が締結されると、「MIST」から日米合同機関「ムサシ機関」となり、秘密情報員養成訓練から、情報収集組織に生まれ変わった。

 

・ムサシ機関の情報収集活動のターゲットは、おもに共産圏のソ連(当時)、中国、北朝鮮、ベトナムなどで、当時はタイ、インドネシアも対象となっていた。平城によると(その後、初歩的活動から逐次、活動を深化させていったが、活動は内地に限定され、国外に直接活動を拡大することはできなかった)という。

 それでは、いつから海外へ展開するようになったのだろうか。

 

<ヒューミント部隊一元化>

・幹部経験者の話をもとに取材を進めていくと、情報本部の動きが徐々に掴めてきた。そもそも、情報本部が陸海空3自衛隊のヒューミント活動を見直す契機となったのは、政府が2015年に「国際テロ情報収集ユニット」を発足させたことだった。同ユニットは首相官邸が司令塔となり、テロを未然に防ぐべく情報を集約することを目的としていた。防衛省も要員を出向させているが、活動の実体は情報収集のプロである警察庁と在外公館を抱える外務省が主導する。

 

 

 

しっているようで、知らなかった『自衛隊の今がわかる本』  

菊池雅之  ウェッジ   2018/11/17

 

 

 

怖かった体験 硫黄島取材

・ゴキブリと怖い話が大の苦手。そんな私が、世にも奇妙な体験をした時のことを書いてみよう。部隊は、小笠原諸島の南端に位置する硫黄島。

 行政区分上は、東京都内ではあるが、都庁から約1200㎞も離れている南海の孤島だ。東西8㎞、南北4㎞しかないこの島を巡り、第2次世界大戦末期には熾烈を極める戦いが繰り広げられた。日本軍の死者は当時島にいた守備隊の96%にあたる約2万129名にもなった。まさに玉砕。一方の米側も死者約6821名、けが人2万1865名と被害は大きかった。

 

・現在、毎年3月中旬に日米両英霊の死を弔うために、硫黄島で慰霊祭が行われている。

 

・慰霊祭は午後からだったので、米軍の艦砲射撃により山肌がえぐれた摺鉢山にも登った。

 硫黄島には、海上自衛隊と航空自衛隊の基地が置かれている。以前ここに勤務していた海自幹部の方から「硫黄島は幽霊が出るよ。ここに勤務すると、誰もが一度は出会う。ただ英霊であり、怖がるのも失礼なので、ただ『ご苦労様でした』と頭を下げると、スッと消える。あと、浜辺の砂を持ち帰ってはいけない。まだまだその下には遺骨がたくさん残っているからついてくるよ」と、聞いた。

 

・慰霊祭は無事終わり、夜、嘉手納基地へと戻ってきた。那覇市内のホテルに到着したのは夜10時を回っていた。さすがにヘトヘトに疲れ果て、靴も脱がずにそのままベッドに倒れ込み寝てしまった。

 それからしばらくして、寝苦しさに目が覚めた。だが、体が動かない。金縛りだ。汗がどっと吹き出してきた。すると窓側に白い影のようなものがふわふわ浮かび、時折、壁にぶつかるのか、ドンドンという音が室内に響く。「ま、まさか……」。頭では分かっていても体が動かない。とにかく教えられた通り、「ご苦労様でした! ご苦労様でした!」と念仏のように繰り返し唱えた。すると急に体が動いてベッドからずり落ちた。

 訳が分からないまま、汗ばんだ上着を脱ぎ、靴を脱ぐと、中から砂がザーと落ちてきた。ソール(靴底)の部分が破けていて、そこに大量の砂が入っていた……。

 

<自衛隊の歴史「これまで」と「これから」>

・もはや従来型の部隊配備や装備では、脅威に太刀打ちできない。現在、日本は、東西冷戦当時に匹敵する、いやそれ以上の危機に瀕している。

 

<指揮系統を抜本的に見直す陸自>

・陸上自衛隊は、これまでも部隊の改編や新設は行ってきたが、抜本的に着手する。それが「陸上総隊」の創設だった。空自は「航空総隊」、海自は「自衛艦隊」と、それぞれ総司令部を有していたが、陸自だけが欠落していた。

 

・陸上総隊にはその他、これまで防衛大臣直轄部隊であった、システム通信団、中央情報隊も移籍してきた。

 システム通信団は、防衛省内に置かれている通信部隊で、陸自通信部隊の中で最大規模の部隊だ。情報流出を防ぐセキュリティ全般を担当する通信保全監査隊、サイバーテロを防ぐシステム防護隊などが内包されている。中央情報隊は、陸自を代表する情報・偵察(内偵)機関だ。基礎情報隊、地理情報隊、情報処理隊、現地情報隊(ヒューミント部隊)などが内包されている。

 

<海自は増強、空自はF-35Aを配備>

<ミサイル防衛強化へ>

・‘23年を目標として新たに配備を計画しているのが「イージス・アシュア」だ。陸上設置型イージスともいう。こうして、“陸海イージス”により日本列島をしっかりとガードしていくこととなる。

 

<人材の確保が急務>

このように陸海空自衛隊は、最新装備を揃えている一方で、深刻な問題に直面している。少子高齢化に伴い、自衛官のなり手不足に頭を悩ませているのだ。2018年3月、防衛省は4年連続で定員割れしていることを明らかにした。いかに高性能な兵器であっても、それを運用する人員がいなければ動かせない。そこで、苦肉の策として、27歳までとしていた入隊条件を32歳に引き上げた。また、体重制限もBMI28までという制限をBMI30とし“ぽっちゃり”程度の肥満であれば受け入れることとした。

 東西冷戦以来の危機的状況に面している日本にとって、優秀な人材をいかに獲得していくかが、最も重要な任務となっている現状がある。

 

<周辺諸国との比較{実力編}>

<戦力は世界トップ10に入る実力。ただ、予算&隊員数は……>

・日本国民の生命と財産を守る自衛隊は、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊という3本柱で編成されている。

 一番人数が多いのが陸上自衛隊だ。その数13万7477人。

 

・2018年8月、‘19年度のお金の使い道となる「平成31年度概算要求の概要」が発表された。防衛予算の総額は5兆2986億円。

 

・そこで一例としてアメリカの状況を見てみよう。‘19年度会計における国防予算は約78兆円。日本の仮想敵国となった中国の’18年の国防予算は約18兆4000億円。ただし、これにはからくりがあり、軍事研究にかかる費用などは別枠であったりと、正確な国防予算は公表していない。北朝鮮や中国などに囲まれ、日本と同じような安全保障環境に置かれているお隣、韓国は、‘19年の国防予算が約4兆7000億円。韓国も過去最大規模の概算要求額となっている。

 

・話が飛躍したので、現在の自衛隊に戻ろう。実は防衛予算のうち、2兆2000億円近くを人件・糧食費が占める。自衛隊の根幹をなすのは人間力であり、これを不必要に減らすわけにはいかない。

 

このように、人数、お金、その使い道を見てみると、自衛隊は世界でも有数の軍隊である。

 

<周辺諸国との比較{人員編}>

<2正面作戦を乗り切るには自衛隊員数は足りない ⁉>

・陸海空自衛官及び事務官等職員の総数は24万4893人。この内、陸上自衛隊の数は約14万人。作戦基本単位となる師団・旅団の総数は15個。

 

・まず中国。中国軍の兵員数の総計は98万人。すでに100万人を超えているとの報道もある。さすがに大国だけあり、この数には圧倒される。さらに海兵隊1万5000人を有する。

 

・北朝鮮の兵員数の総計は110万人。すごいのはその内の40万人が特殊部隊や工作員である点だ。

 

・韓国の兵員数は、40万人。作戦基本単位となる師団等は54個もあり、2万9000人の海兵隊も有している。日本と韓国に共通しているのは、国内に米軍を駐留させている点だ。在日米軍の兵員数は2万1000人。在韓米軍の兵員数は1万5000人。なお、駐留米軍の兵員数には、空軍や海軍は含まれていない。

 日本と同じく中国の脅威にさらされている台湾。台湾軍の兵員数の総計は13万人。これに約1万人の海兵隊がいる。作戦基本単位となる師団等は15個。数や編成を考えると、日本と台湾は非常によく似ている。

 

<周辺諸国との比較 {装備編}>

<~各国とも兵器の増強、近代化が進む~>

・東アジア全体を見てみると、各国とも保有する兵器の近代化・ハイテク化が進んでいる。

 まず中国。艦艇約750隻(トータル178.7万!)、作戦機2850機を保有。

 

・極東ロシア軍の動きも活発だ。東西冷戦当時のソ連軍は、艦艇800隻、作戦機約2200機を配備していた。当時に比べると、現在は艦艇260隻(64万t)、作戦機400機と、かなり縮小して見える。

 

<各国軍との共同訓練>

<米国を中心に、諸国と行う数多くの訓練、その意味>

・本来共同訓練とは、指揮系統・装備体系が異なる国同士が一緒に訓練することで、これまでとは違う方法を学び、自分たちの問題点や訓練方法を洗い出し、練度向上を目指すことに目的がある。これに最近は示威的な要素も加わってきたのである。

 

 

 
『ソドム』
バチカン教皇庁最大の秘密
フレデリック・マルテル 河出書房新社   2020/4/22



バチカンは私の見るところ、「ゲイ」が支配する組織である。>
・教会は構造的に同性愛化する性質がある。性的虐待を個人的、制度的に隠蔽するシステムになっている……。本書を公にするのは教会のためだとかたく信じている。
 私以前にこの重大なテーマを扱った者はいなかった。この半世紀で最も重大な秘密のひとつを明らかにすることは、これまで一度も試みられたことはなかった。

・本書が50か国以上でかつてない反響を呼んだことは、本書の出版が時宜にかなっていたことを示している。『ソドム』はすでに、およそ20の言語で翻訳され、無数の記事や論争、コメントで取り上げられている。

・いつのまにか、ソドムといえば「男色」ということにされてしまった。いずれにせよ、バチカンはソドムのようなところだというのだから、本書を読んだ世界数十か国の人々はびっくり仰天した。そうではないかと薄々気づいていた人はかなりの事情通だが、まさかここまでとは思っていなかったようだ。本書が世界に与えた衝撃は大きかった。

<スイス軍の法規>
・私が話をきいた弁護士たちによれば、結婚を禁じるだけでもスイスでは差別になるだけでなく、結婚を奨励し、それ以外の性的関係を禁じている教会の原則にも反している。
 こうした法的な問題点について、この弁護士を通してスイス衛兵の責任者たちにドイツ語で質問してみたが、彼らの答えは意味深長である。彼らは差別であるとする考えを否定する。軍事的な理由から、いくつかのルールを課さざるをえないからである(しかしながら、新兵の年齢や身体的条件に関して、軍の特殊性を考慮して定められたスイス軍の法規にも違反している)同性愛については、彼らは書面で以下のように伝えてきた。「ゲイであることは募集においては問題とはならない。ただし、あまりに『オープンなゲイ』であったり、目立ちすぎたり、女性的すぎる場合は別である」。さらに、研修中に口頭で伝えられるルールや行動規範にも、差別や労働法に関して違反があるし、ハラスメントを受けても黙っていなければならないのは大きな問題である。
 スイスやイタリアの法律、さらにEUの法律の観点からいって、法的に問題があるだけでなく、道徳的にも問題がある。バチカンというきわめて特殊な国家が勝手に特権を行使していることを、それは雄弁に物語っている。

<ゲイに対する十字軍>
ヨハネ・パウロ2世マルシアル・マシエルを守り、彼の側近の一部がスイス衛兵をナンパして色欲にふけっていたちょうど同じ時期に、バチカンは同性愛者に対する大きな戦いを開始した。
 こうした戦いは新しいものでも何でもない、熱狂的な反ソドミーは中世から存在した。それでも、特別な性癖をもつと疑われる教皇は何十人もいる。ピオ12世とヨハネ23世もそのなかに含まれる――外では厳しく批判しながら内ではきわめて寛容というのがお定まりであった。教会は常に、聖職者の行動よりもその言葉においてホモフォビアであった。

・しかしながら、同性愛をめぐるカトリシズムの公的な言説は、1970年代末に一段と厳しさを増した。教会は風俗革命に不意をつかれたが、自ら先手を打つこともなければ、それを理解しようともしなかった。パウロ6世は、この問題に理解がなく、1975年にはもう、有名な声明「ペルソナ・フマナ」で反撃し、それはダイナミックな回勅「フマナ・ヴィテ」に踏襲された。聖職者の独身制が確認され、貞潔に高い価値が与えられ、婚前交渉は禁じられ、同性愛はきっぱりと否定された。

ヨハネ・パウロ2世の在位期間(1978-2005)は、教義の点で、この一連の動きにおおむね沿ったものである。だが、しだいにホモフォビアの色を濃くする言説によってそれを悪化させるとともに、彼の取り巻きたちはゲイに対する新たな十字軍に乗り出した。
 選出されたその年から、教皇は論争を硬直化させた。1979年10月5日、シカゴにおいて全米の司教向けにスピーチを行い、いわゆる「自然に反する」行為を罪とするよう促したのである。「憐れみに満ちた牧者として、あなたがこう言ったのは正しかった。『同性愛の行為は、同性愛の傾向とは異なり、道徳的によくないことです』と。この明らかなる道理により、あなたがたは、キリストの真の慈悲とはいかなるものかを示しました。同性愛ゆえに、耐えがたい道徳的問題に直面している人々を、あなたがたは裏切りませんでした。もし、思いやりと憐れみの名において、あるいはまったく別の理由から、あなたがたの兄弟や姉妹に誤った希望を与えていたら、あなたがたは彼らを裏切ることになったでしょう」
 ヨハネ・パウロ2世はなぜ、これほど早い時期に、教会史上最もホモフォビア教皇のひとりになる道を選んだのだろうか?ローマ在住の米国人バチカニスタ、ロバート・カール・ミケンズによると、そこにはおもにふたつの要因がある。
「彼は民主主義を経験したことのない教皇だった。だから、ひとりで決定を下した。彼の天才的な直感によって、また、同性愛に関するものも含め、ポーランドカトリックがもっていた古くさい偏見によって。第二に、彼のモドゥス・オペランディ(仕事の流儀)、在位期間を通じての方針は、教会の統一だった。分裂した教会は弱い教会であると、彼は考えていた。教会の統一を守るために、徹底した厳格さを課した。そして、教皇不謬性の理論が最後の仕上げをした」

ヨハネ・パウロ2世が民主主義の文化に馴染みがなかったことは、クラクフでもローマでも、彼をよく知る人々によってたびたび指摘されている。彼が女嫌いのホモフォビアであったことも。しかしながら、側近に同性愛者がたくさんいるということには、非常に寛容だった。大臣やアシスタントのなかにも、実践的な同性愛者がたくさんいたから、教皇が彼らの生活様式や「傾向」を知らないはずがない。

・私がクシシュトフ・ハラムサの話を初めてきいたのは、eメール、つまり彼自身を通してだった。彼が私と接触したのは、まだ教理省で働いていたときだった。ポーランド人司祭は私の本『グローバル・ゲイ』が好きだと書いており、カミングアウトしようとしており、秘密を守るという条件で私に話したのである。そのときはまだ、彼が主張するような有力な高位聖職者なのか、それともペテン師なのかわからなかったので、彼の経歴を確認するため、イタリア人の友人で『ラ・レプブリカ』の記者であるパスクアーレ・クアランタにきいてみた。
 証言の正しさが確認されたことから、私はMgrハラムサと何度かe
メールをやりとりし、数人のジャーナリストを推薦した。そして2015年10月、家庭に関する世界代表司教会議が始まる直前に、彼のカミングアウトがメディアに流れて紙面を賑わせるとともに、世界をかけめぐった。
 それから数か月後、バルセロナでクシシュトフ・ハラムサと会った。バチカンを免職になって以来、彼はバルセロナで亡命生活を送っていた。

<ハラムサはバチカンホモフォビアの戦う組織の中枢にいた>
・教理省は長いあいだ「検邪聖省」と呼ばれていた。嘆かわしい事例の数々で有名になった異端審問や、検閲本や発禁本のリストである禁書目録を担当していたが、この「検邪聖省」である。バチカンの「検邪聖省」は現在も、その名が示すように、教義を定め、善いことと悪いことを定義しつづけている。ヨハネ・パウロ2世のもとで国務省につぐ地位にあったこの戦略的司法機関は、ヨーゼフ・ラツィンガー枢機卿に率いられていた。同性愛に対する文書の大半を考えては公布し、教会における性的虐待の書類の大半を調べたのは、彼である。
 クシシュトフ・ハラムサはその教理省で、国際神学委員会の顧問兼副書記として働いていた。

・一般に、「異端審問の訴訟」(こんにちなら「教義の論点」と言うだろう)はそれぞれ、職員によって検証され、つぎに専門家や顧問たちによって議論され、さらにさらに枢機卿会議にかけられて承認を得る。

・それは偽善に好都合な土壌でもある。現在、教理省の組織のなかにいる20人の枢機卿のうち、12人ほどがホモフィルないしは実践的同性愛者であると思われる。少なくともボーイフレンドと暮らし、3人はたびたび男娼を利用している。
 従って教理省は、興味深い臨床例であり、バチカンの偽善の中心である。ハラムサの話をきいてみよう。「大半が同性愛の聖職者たちが、同性愛嫌悪を課している。それはつまり自己嫌悪であり、絶望したマゾヒストの行動と言ってよい」
 クシシュトフ・ハラムサらの内部の証言によれば、同性愛の問題はラツィンガー長官のもとで、まさに病的な強迫観念となった。そこでは、旧約聖書のソドムのくだりが何度も読み直された。ダビデヨナタンの関係がたえず解釈し直された。「肉にささった棘」をもつ苦しみを告白した新約聖書パウロの文章も同様だった(パウロはそうして自らが同性愛であることをほのめかしているのかもしれない)。そして突然、この完全なる精神的孤独に恐怖をおぼえ、カトリシズムはそのような希望の光すらない存在を見放したのだと悟る。そのとき彼らは心のなかで泣き出しただろうか?

・教理省のゲイフォビアの有識者たちは、SWAG――Secretely We Are Gay【私たちは隠れゲイ】――という独自の暗号をもっている。彼らのあいだで、「イエスの愛した弟子」ヨハネ、「誰よりも愛されたヨハネ」、「イエスは彼を見て愛した」などと、夢のように美しい隠語を使いながら使徒ヨハネについて語るとき、自分たちが何を言おうとしているのかよく知っている。そして、百人隊長に「重んじられていた」若い部下をイエスが治癒した場面について語るとき、ルカによる福音書がほのめかすところに従えば、それが何を意味するか、彼らには一目瞭然であった。彼らは自分たちが呪われた種族――そして選ばれた種族――に属していることを知っている。

バチカンは、同性愛者が排除されることを正当化した(それによって聖職者のなり手が減少するとは思いもせずに)、軍隊から同性愛者が排除されることを正当化した(アメリカ合衆国が「質問するな、口外するな」の規則を停止する決定を下した)。同性愛者が仕事で差別を受ける可能性のあることを、神学的に正当化しようとした。当然ながら、同性間のパートナーシップや結婚は罪だった。
 2000年7月8日にローマでワールド・ゲイ・プライドが行われた翌日、ヨハネ・パウロ2世はいつもの正午の祈りの最中に発言し、「よくご存じのデモ」を強く非難するとともに、「2000年の大聖年が侮辱されたことは痛恨の極み」であると述べた。だが、ローマの通りを行進した20万人のゲイ・フレンドリーな人々に比べて、その週末にバチカンを訪れた信者の数は少なかった。

・カミングアウトで騒ぎを起こした、あるいはカミングアウトが遅すぎたとして、クシシュトフ・ハラムサはこんにち、教皇庁とイタリアのゲイ団体の双方から攻撃されている。内面化されたホモフォビアからドラマクイーンへと一足飛びに変身した高位聖職者は、人々を混乱させている。そのため教理省では、彼が辞任したのは思ったほど出世できなかったからだとささやかれている。彼が同性愛であることはとっくにわかっていたと、ある公式な情報源は指摘する。彼は何年も前からボーイフレンドと一緒に暮らしていたからである。
 
・ここでわれわれは、バチカンの近年の歴史で最も暗い1ページに入っていく。たっぷり時間をとって語らなければならないが、これはそれほど驚愕すべき事例なのである。
 アルフォンソ・ロペス・トルヒーリョとはどんな人物なのだろうか? この恥知らずな男は1935年、コロンビアのトリマ県にあるビヤエルモサに生まれた。25歳のときにボコタで司祭の叙階を受け、10年後に同じくボコタの代理司教となり、その後メデジンに赴任して、43歳でメデジン大司教に昇格した。良家に生まれ、金に不自由したことのない聖職者としては、よくあるコースである。

・「当時、司教の大多数は保守派でした。しかしロペス・トルヒーリョはただの保守ではなく、極右でした。あからさまに、大資本と貧者を搾取する側に立っていました。教会の教義よりも資本主義を擁護したのです。彼には冷笑的な傾向がありました。プエブラのCELAM(ラテンアメリカ司教会議)総会で、ある枢機卿に平手打ちをくらわすことまでしたのです」

・アルフォンソ・ロペス・トルヒーリョはたいそう献身的かつ熱意をもって、メデジン、ボコタ、そしてまもなくラテンアメリカ全域で、解放の神学の潮流を根こそぎにする仕事に取りかかった。『エコノミスト』誌の記者は、枢機卿の小さな赤い帽子はチェ・ゲバラのベレー帽の裏返しであると、皮肉を込めて書いている。

教皇のほうでも、1980年代から90年代にかけて、ラテンアメリカに右派と極右の司教を大量に任命する。

・10年足らずのうちに、CELAMの司教の大半が右に寝返った。1990年代には、解放の神学の潮流は下火となり、アルゼンチンのホルン・ベルゴリオに体現される穏健な新しい潮流が姿を現すには、2007年にブラジルのアパレシーダで開かれる第5回CELAM総会まで待たなければならなかった。それはすなわち反ロペス・トルヒーリョ路線である。

・「私は当時、メデジンで、ロペス・トルヒーリョ大司教と一緒に働いていた。彼は豪勢な暮らしをしており、外出するときは王というより、まさに『女王』のようだった。司教訪問のさいには、高級車で乗りつけ、赤絨毯を敷くように要求する。車から降りるときは、最初は片方の踝しか見せない。おもむろに片足を出してから、まるで英国女王でもあるかのように、絨毯を踏みしめるのだ。すべての者が彼の指輪に口づけせねばならず、彼の行くところどこでも、あたりに香をまかなければならなかった。こうした贅沢、ショー、香、絨毯に、私たちはただただ驚くばかりだった」

・1980年代に、メデジンはまさしく世界的な犯罪都市となった。麻薬密売業者たち、とりわけ有名なパブロ・エスコバルメデジン・カルテル――当時、米国向けのコカイン市場の80%を握っていたと見られている――が、町を支配していた。激しい暴力――麻薬戦争、ゲリラの勢力拡大、ライバルのカルテル同士の抗争が同時に起こっていた――に対して、コロンビア政府は非常事態を宣言した。だが、政府が無力なのは明らかであり、1991年だけで6千件以上の殺人がメデジンで発生している。

・ロペス・トルヒーリョの人生はこうした時代背景のなかで考えなければならない。メデジン大司教について調べたジャーナリストたち――とりわけエルナンド・サラサール・パラシオが著書『ロペス・トルヒーリョ枢機卿の戦争』、グスタボ・サラサール・ピネダが『マフィアの腹心の告白』において――、そして、エマヌエル・ネイサが私のために同国で行った調査によると、この高位聖職者は麻薬密売業者に近いいくつかの民兵組織とつながっていた。そうしたグループから――おそらく熱心なカトリック信徒を自称するパブロ・エスコバルから直接――資金援助を受け、メデジンの教会における左派急進主義者の行動に関する情報を得ていたと見られる。

・こんにち、ロペス・トルヒーリョは直接的であれ、間接的であれ、進歩派と共謀したとして排除された司教や数十人の司祭の死に責任があるとみなされている。

メデジン大司教の新たな生活がローマで始まった。コロンビアの極右に肩入れして成果をあげたのち、彼はいまや、風俗と家庭に対するヨハネ・パウロ2世の保守的な強硬路線に具体的な形を与えようとしていた。

・家庭「省」のトップとなり、そこを「作戦本部室」としたロペス・トルヒーリョは、かつてないエネルギーを傾注して、堕落に有罪を宣告し、結婚を擁護し、同性愛を糾弾した。すべての証人によれば、極度の女嫌いであった彼は、ジャンダー・セオリーと戦おうとした。複数の情報源によれば「ワーカホリック」であり、世界中の数え切れないほどの論壇で発言しては、婚前交渉やゲイの権利を強く非難した。こうしたフォーラムで、「妊娠を妨害する」科学者たちは目盛りのついた試験管で犯罪を行っている、白衣を着たおぞましい医者たちは婚前の禁欲を説く代わりに避妊具の使用を勧めていると口を極めてののしったため、彼の名がしだいに知られるようになった。
 そのころから世界中で猛威を振るうようになったエイズは、ロペス・トルヒーリョの新たな強迫観念となり、彼の頑迷さがそこで遺憾なく発揮された。「コンドームは解決策ではない」と彼は枢機卿の権威を振りかざしながら、アフリカで繰り返し述べている。それは「性的な雑居常態」を助長することにしかならず、貞潔と結婚こそが、エイズの大流行に対する真の解決策なのである。
 アフリカやアジア、そしてもちろんラテン・アメリカと、彼は行く先々で、現地の政府や国連機関に、「嘘」に身を委ねないよう説いて回り、人々にコンドームを使わせないにようにした。

・歴史はアルフォンソ・ロペス・トルヒーリョに厳しい判断を下すだろう。だがコンドームと戦った英雄はローマで、ヨハネ・パウロ2世ベネディクト16世によって模範とされ、国務長官のアンジェロ・ソダーノ枢機卿とタルチジオ・ベルート枢機卿によって滑稽なほど称えられた。

・「ロペス・トルヒーリョはマルクス主義と解放の神学に反対だった。そのことが彼を突き動かしていたのです」。

・この物語は「ハッピーエンド」なくして完結しない。物語を本当のフィナーレへ導くために、もう一度メデジン、正確に言えばメデジン大司教館のある地区に話を戻そう。ロペス・トルヒーリョの元儀典長アルバロ・レオンは、私と調査員のエマヌエル・ネイサを、大聖堂を取り囲む露地へと案内した。メデジン中心部の新市街と呼ばれる地区である。
 それにしても奇妙な地区である。ボリバル公園と50番街にはさまれた、55、56、57番街と呼ばれる通りに、カトリックの品々や僧服を売る数十軒の宗教関係の店と、派手な化粧をしてヒールの高い靴をはいたトランスセクシュアルが店先にたむろするゲイ・バーが、文字どおり対になって並んでいる。天上と異教のふたつの世界、まがいもののキリスト十字架像と安価なサウナ、聖職者と男娼が、コロンビアに特有のやや祝祭的な、なごやかな雰囲気のなかで同居している。フェルナンド・ボテロの彫刻に似たふくよかなトランスセクシュアルが、ひどくなれなれしい様子で寄ってくる。
彼女の周囲にいる男娼や女装家は、もっと弱々しく、もっとやせ細っている。フォークロアのイメージとはほど遠く、フェリー風で芸術的である。
それは貧困と搾取のシンボルである。

・私たちはすぐ近くにある、聖職者と神学生が中心になって設立されたLGBTセンター、「メデジン・ディベルサ・コモ・ボス(あなたのように多様なメデジン)」を訪ねた。責任者のひとり、グロリア・ロンドーニョが私たちを出迎えた。
「ここは戦略的な場所です。メデジンのゲイ・ライフはすべて、大聖堂の周辺で営まれているからです。男娼、トランスセクシュアル、女装家は、非常に弱い人々です。彼らの権利について知らせることで、彼らを助けているのです。コンドームも配っています」。ロンドーニョは説明した。
 センターをあとにした私たちは、57番通りで、ボーイフレンドを連れた司祭とすれ違った。彼らと顔見知りのアルバロ・レオンがそっと私に合図した。私たちはカトリック・ゲイ地区の探訪を続けた。55番街とも呼ばれるボリビア通りの美しい建物の前に来たところで、突然、足が止まった。アルバロ・レオンが2階のアパートを指さした。
「あそこですべてが起こった。ロペス・トルヒーリョはあそこに秘密の部屋をもっていて、神学生や若い男や男娼を連れ込んでいたのだ」
 アルフォンソ・ロペス・トルヒーリョ枢機卿が同性愛であることは公然の秘密であり、数十人の証人がそのことを私に話ししていたし、何人かの枢機卿もそれを認めている。彼の辞書の見出し語を再び借りれば、彼の「汎セクシュアリズム」はメデジン、ボコダ、マドリードそしてローマでも有名だった。

ベネズエラ人の大学教授ラファエル・ルシアーニによると、アルフォンソ・ロペス・トルヒーリョの病的な同性愛は「ラテンアメリカ司教会上層部とCELAMの一部の責任者に知られていた」。さらに、何人かの司祭の連名で、ロペス・トルヒーリョの二重生活と性暴力に関する本が出版されようとしている。ロペス・トルヒーリョのアシスタントのひとりだった神学生のモルガンも、彼の勧誘員と愛人の名をいくつか教えてくれた。彼らの多くは、仕事ができなくなるのを恐れて、大司教の欲望を満たさざるをえなかったのである。

・というのも、この「いかがわしい人物」の逸脱行為は、もちろん、コロンビアの国境でとまらなかったからだ。このシステムはローマでも存続し、ほどなくして世界各地に広まり、反ゲイの説教師にして金回りのいい客という輝かしいキャリアを築くことになった。
 教皇庁のために、反コンドームの宣伝部長として絶えず旅をしながら、
ロペス・トルヒーリョは聖座の名による出張を利用して、少年を探した(少なくともふたりの教皇大使の証言による)。枢機卿は百か国以上訪れたが、お気に入りの旅行先はアジアだった。とりわけバンコクとマニラの性的魅力を発見してからは、たびたびアジアを訪れた。コロンビアやローマほど顔が知られていない世界の反対側へ何度も旅するあいだ、通りをうろつくのが好きな枢機卿セミナーやミサをたびたび抜け出しては、「タクシー・ボーイ」や「マネー・ボーイ」探しにいそしんだ。
 開かれた都市ローマがどうして出てこないのかと思うだろう。改めて言うが、ナルシシスティックな倒錯者たちは偽装生活をしており、ローマでは聖人に見せかけているのである。怪物マルシアル・マシエルと同様に、
ロペス・トルヒーリョも、信じられないほど巧妙に自分の生活を偽装していた――そのことは、バチカンではすべての者、あるいはほとんどすべての者が知っていた。

・この物語を終えるにあたり、最後にもうひとつ、私がまだ答えることができずにいる問題、多くの人々の心にひっかかっているであろう問題がある。何でも金で買える、暴力行為もサドマゾ行為も金で買えると考えていたロペス・トルヒーリョは、コンドームなしの挿入を買ったのだろうか?
「公式にはロペス・トルヒーリョは糖尿病で死んだとされているが、エイズで死んだという根強い噂が繰り返し流れている」。ラテンアメリカカトリック教会をよく知る第一線の専門家のひとりは言う。

・ロペス・トルヒーリョがエイズで死んだかどうかはともかくとして、カトリックの聖職者がこの病気で死亡することは、決して珍しいことではない。バチカンとイタリア司教協議会で入手した10件ほどの証言によると、1980年代から90年代にかけて聖座とイタリア司教団ではエイズが猛威をふるっていた。これは長いあいだ伏せられていた秘密だ。

カトリック上層部でエイズにかかる人の割合が高いことは、カトリック司祭の死亡証明書をもとにアメリカで行われた統計調査によって裏づけられている。エイズウイルスによる死亡率は一般人の少なくとも4倍にのぼると、その研究は結論づけている。1990年代初頭に行われたローマの神学生65人の匿名検査にもとづく別の研究では、その38%がエイズ抗体陽性であることが判明した。

ヨハネ・パウロ2世は1978年から2005年まで教皇だった。エイズは1981年、彼の在位期間の初期に現れ、以後数十年にわたり、3500万人以上の人々を死に至らしめた。世界中で3700万人の人々が、HIVに感染しながらも生存している。



バチカンは国家だが、多くの専門家が世界最大の情報組織であるという。それは13億のカトリック教徒がある意味、情報員で兵士だからだ。(2)

2024-08-17 10:40:36 | 森羅万象

 

イタリア 対外情報保安庁/国内情報保安庁

盗聴事件後に一新された新しい情報組織

ローマ文明を生み出した偉大なる国イタリア。近代のイタリアは文化の国としてのイメージが強いが、古代より続く軍事国家としての伝統も消えてはいない。

 

防諜能力の低いイタリアの情報組織

・戦後、1965年になってイタリアは国防情報庁を設立し、近代的情報組織を手に入れた。

 

大規模盗聴事件を受けて情報部を大改革

・2006年、イタリア政府を震撼させる大事件が発生した。

 イタリア国内最大手の通信会社テレコム・イタリアの複数の幹部が、社内に数百人の盗聴担当者を設けて盗聴をおこなっていたというのである。

 

・この事件を受けて、イタリア政府は翌2007年、情報組織の改革案を提出。12年に組織の大改革をおこなった。

 

・イタリアの情報機関は、敵国やテロ組織のみならず、マフィア対策もその職掌として大きなボリュームを持っているが、特に「ンドランゲタ(カラブリア地方のマフィア組織)」対策には力を入れているという。しかし、改革以前には、情報機関の人間がマフィアと癒着していたという話もある。第2次大戦で情報が漏れまくっていたイタリアの、その根底に流れている気質は、変わっていないのかもしれない。

 

オランダ 総合情報保安局>

屈辱の中から立ち上がった情報機関

オランダの歴史は苦難の道である。だからこそ、積極的に国連の平和維持活動に参加している。それを支えるのが総合情報保安局なのである。>

 

土地も狭く人口も少ないが世界有数の豊かさのオランダ

・軍隊はというと、陸海空3軍および国家憲兵隊の4軍で、約3万3千6百名。

 15世紀まではスペインの領土であったが、独立戦争を勝ち抜き1648年に独立を果たす。

 

・今もカリブ海などに海外領土を持ち、経済力も2023年のGDPでは世界17位と高いレベルにある。

 

国連軍として屈辱を味わい情報組織を一変させた

・第2次大戦が終了すると、すぐに情報機関は動き出した。当初は、ナチスへの協力者や残党狩りをしていたが、間もなく対ソ防諜の必要性から、国家保安局が結成される。その後、対外防諜を目的とする対外情報局も立ち上げられ、CIAとの協力のもと、対ソ防諜に当たることになる。

 

・そのとき、オランダは、バルカン半島のボスニア・ヘルツェゴビナに国連軍として部隊を派遣していた。700名いた部隊は一部撤退し400名ほどになっていた。補給も滞って物資が不足していたとき、セルビア人部隊に包囲され、スレブレニツァという街で、守るべきボシュニャク人の住民8000人以上が虐殺されてしまう。決定的失敗である。

 事前に情報活動ができていればもう少し対処の仕方があったとの反省から、2002年に情報部隊の改編を行い、BVDは総合情報保安局(AIVD)へと改組された。

 

教皇 バチカン市国

世界で最も小さく最も影響力のある国家

バチカンは国家だが、多くの専門家が世界最大の情報組織であるという。それは13億のカトリック教徒がある意味、情報員で兵士だからだ。>

常に戦争と外交の中に存在した血なまぐさい宗教団体

・バチカンの規模は極めて小さく、国家予算も日本円にして300億円程度である。

 

・財源は宗教関係図書の出版、美術品製作、市内観光の観覧料、信徒からの募金でまかなわれている。しかし、この金額はあくまで国としての表向きの予算であり、宗教団体としての予算は別である。国家運営とは別に、バチカンは多額の宗教資金を投資運用している。この金の動きは外部からはうかがい知ることができないが、こちらは兆を超えると噂されている。

 

ローマ帝国時代から今日まで、常に法王庁は政治と戦争の中にあり続けた。

 第2次世界大戦では、ヒトラー率いるナチス・ドイツと深い交流を持ち、イタリアのファシスト党への協力もおこなっていた。

 

・戦争末期には、多くのナチ党員の国外脱出を手伝い、枢軸側の敗戦が確定的になると、多数の司祭が各国に政治亡命を果たしている。

 

戦国時代から続くカトリックの情報収集

・バチカンに情報をもたらす者は、各国に散っている司祭たちである。

 日本の戦国時代に、イエズス会などの宣教師たちが本国に詳細な報告書を送っていたことはよく知られているが、その伝統は今も脈々と息づいている。

 

・バチカンの人口は2019年度で825人。東京の代々木公園よりもわずかに狭い広さのこの国が、179もの国と地域に大使または外交使節を派遣しているのである。

 バチカンは人口825人の国ではなく、実質は信者13億4000万人から構成されている巨大な国なのだ。そしてその力の源泉に、世界中の外交使節、司祭や信者からもたらされるさまざまな情報がある。まさに、バチカンこそが世界最大の情報組織と呼べる存在である

 

カナダ 安全情報局

国境警備隊を起源とする諜報機関

カナダの安全保障に関する国内外の情報収集と分析を行い、政策立案や軍の戦略策定、テロリズム対策などに資する国家機関。>

 

国際テロ対策や対スパイ活動、サイバー攻撃に対抗する

・カナダの安全保障に関する国内外の情報収集と分析を行い、政府に報告をしながら政策立案や軍の戦略策定、テロリズム対策などに資する国家機関が、カナダ安全情報局(CSIS)である。

 

・CSISの広報官は2012年9月、カナダのメディアの取材に答える形で、カナダの多くの大手企業幹部が中国のハッカーに狙われている実態を警告している。

 

中国の動きに警戒を強める局長自らがチャイナ批判

・局長によれば、「一部の外国政府」は無料で高官を招待し、これを利用して自身のスポークスマンになるように仕立てるといい、これこそが中国のロビー活動における常套手段だと警告している。

 

オーストラリア 保安情報機構

テロリズム、スパイ対策が主任務の諜報機関

MISやCIAなど連合国のノウハウを得て戦後発足した豪州インテリジェンス機関。独自のスパイ衛星の獲得を目指して米国との情報共有を開始。

 

ユダヤ系豪州人が謎の自殺  正体はモサドのエージェント

・オーストラリア保安情報機構(ASIO)は、豪州国内の情報収集・分析を行う専門機関とされているが、実際にはテロ、スパイ対策を目的に、国外での情報対策や防諜も主任務のひとつである。

 

アラブ系諜報員の獲得が課題 独自のスパイ衛星獲得を模索

・近年におけるASIOの悩みのひとつが、豪州国内に1000人以上いると言われる中国人スパイと、国際テロ組織と関係しているムスリム過激派の存在である。

 

イスラエル 諜報特務庁

CIAを超える世界最強のインテリジェンス機関

諜報能力と作戦遂行能力は世界トップ。アラブ諸国のあらゆる政府機関に入り込み、アラブ社会でイスラエルに見えていない物はひとつも無い。 >

首相直轄の最強組織 アラブの極秘会議も筒抜けに

・世界最強の諜報機関は、米CIAでもロシアFSBでもイギリスMI6でもなく、イスラエルのモサドやシャバックであるというのは、多くの専門家の一致した意見である。

 

活動根拠となる法律や憲法が存在しないため、厳密には法的に存在しない組織ということになる。そして、このモサドとシャバックの他に、法的に定められたアマンという国防参謀本部の下にある国防軍情報部がある。このアマンから選ばれたメンバーがモサドやシャバックに移っていく

 

・諜報ネットワークを世界中の隅々まで張り巡らしているイスラエルの諜報機関は、アメリカやロシアでさえまったく摑んでない情報を、どこよりも早く獲得していることが多い。

 

海外潜伏の元SSを拉致  恐るべき作戦実行能力 >

・イスラエルの諜報機関のなかでも、特にモサドが世界にその実力を最初に示したのは、1960年の「アイヒマン捕獲作戦」の成功だ。

 

日本のスパイ組織

CIRO 内閣情報調査室

「日本版CIA」と呼ばれる内閣情報調査室は、日本の情報組織の頂点であり、国内のインテリジェンス・コミュニティのまとめ役である。>

 

インテリジェンスにも影を落とす縦割り行政の悪弊

・内調は内閣官房に所属し、本来的には他のインテリジェンスを統括する立場にある。

 

国際テロ対策や対スパイ活動、サイバー攻撃に対抗する

・内閣情報調査室には、各省庁のインテリジェンス活動の連絡と統括、情報の一元化という役割が付与されている。

 

DIH 防衛省情報本部

国内の情報組織としてもっとも実戦的な機関

防衛省情報本部は、日本の情報組織としてはもっともレベルが高い。教育機関を持ち、合衆国との連携も視野に入れた実践的組織である。>

 

防衛省直轄の自衛隊運用のための情報組織

・また、米軍の陸・海・空・海兵隊の4軍にそれぞれ情報機関があるように、陸自、海自、空自にもそれぞれ情報部隊が設置されている。

 

高い通信傍受能力はアメリカからも期待されている

・防衛省は小平駐屯地に養成機関を設置している。

 

・しかし、自衛隊法は他国の軍法よりは規定が甘く、防衛機密の漏えいに関しても厳罰に処することができない。

 

MIC 陸上自衛隊中央情報隊

陸上自衛隊を支える戦術レベルの情報組織

陸上自衛隊の部隊運用のため、戦術レベルの情報を収集することを目的に新設された中央情報隊。自衛隊の先導役として大いに期待される。>

 

海外派遣での情報収集のため新設された陸上自衛隊独自の組織

・中央情報隊は、自衛隊が海外派遣されるに際し、現地での情報収集能力の強化を狙ったもので、対人情報工作を担当するいわゆるヒューミント要因も含む部隊である。

 

他国頼みだった海外派遣での情報収集

・面白いのは中央情報隊のシンボルマークである。欧米諸国の情報機関のシンボルマークには鳥を用いているケースが多いが、CIAは、エジプト神話のホルス(太陽神ラーの息子で、天空神・隼の神)である

 

・中央情報隊では、同じ鳥であるが、こちらは3本足の八咫烏をモチーフとしている。

 

PSIA・FAID 公安調査庁・警察庁外事情報部

日本の治安維持のための情報組織

国内の治安維持のために存在する二つの組織。敵対する外国勢力や、国内の破壊的組織、テロリストを監視し、テロ行為を未然に防ぐ!

 

国内の破壊活動を防ぐ公安調査庁

・調査対象は、テロリストや暴力的宗教団体、革命主義者、極右、極左などであり、まさに国内の治安維持の根幹ともいえる存在である。

 

巨大な警察組織を背景とする警察庁の情報組織、外事情報部

・公安調査庁とライバル関係ともいえる存在が、警察庁のインテリジェンス部門である外事情報部である。

 

陸軍中野学校

戦前にあった日本のスパイ養成所

東京中野に、日本陸軍の極度に実際的なスパイ養成機関が存在した。それが、世に名高い陸軍中野学校である

 

諜報などの秘密戦に特化した旧日本陸軍の、実在した学校

・日本には戦前、スパイ養成所ともいえる秘密の訓練学校が存在していた。

 

・創設当初は純粋なスパイ養成機関であったが、太平洋戦争の開戦と共に実質的にゲリラ戦学校に移行する。

 学生は陸軍の関係学校に移行する。学生は陸軍の関係学校出身者などから選抜されたが、実際には民間大学からの転向が多数を占めている。

 

・これらは将来的には民間人に混じって情報戦に従事することが予測されたため、いわゆる「軍人らしさ」を排除する目的で行われたのである。

 

・求められる信条は「地位や名誉を求めず日本の捨て石となって朽ち果てること」であり、軍隊が重視する栄誉とは異質である。

 また、捕虜となっても生き延びて二重スパイとして任務を遂行せよ、と実に徹底した信念を持って教育がなされていた。 

 

東南アジアで花開いた中野学校で花開いた>

・開戦初期、陸軍の攻略目標はマレー半島であった。開戦に当たり出身者で構成されたF機関が現地に侵入し、住民の慰撫工作、英軍の大半を占めるインド人兵士に投降を呼びかけた。

 

・卒業者は戦後も学校の精神を貴び、日本国内外で連合軍に対してゲリラ戦を実施し、結果的にアジアの独立運動に関与した。

 

スパイ事件簿

1963年 ケネディ大統領暗殺事件

大統領はCIAに殺されたのか

46歳の若き大統領が遊説先のダラスで暗殺された。踏んではいけない虎の尾を踏んだケネディには、CIAやマフィア、産軍複合体など多くの敵が存在していた。>

 

事件の概要

・第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが1963年11月22日金曜日、テキサス州ダラスで暗殺された。

 

・その中で信憑性が高いのが、CIA説、マフィア説、産軍複合体説など。事件から50年が経過した今も謎に包まれている。

 

ことごとく対立していたケネディとCIA

弾は曲がって飛んだ ⁉ 「魔法の弾道」に隠された謎

・しかし、これには多くのジャーナリストや研究者が異論を唱えた。狙撃された車内におけるケネディと知事の位置関係から考察すると、弾道のつじつまが合わないのである。

 

真相が明らかになるのはいつの日か?

銃声は3発ではなく5発 犯人は3人以上いたのか

・最近になって新たな証拠も出てきている。一つは、ウォーレン委員会が報告した「銃弾3発説」を否定するものだ。

 

犯人はケネディ憎しのCIAか今も囁かれる巨大な陰謀説

・いずれにせよ、ケネディの死については、事件から60年経った今も多くが謎のままだ。

 

・こうして謎の死を遂げた事件関係者は32人にも及ぶ。アメリカでは、今もケネディ暗殺事件の真相を解明しようと動くのは危険だとさえ言われているのだ。

 

1970年~現在 北朝鮮の日本人拉致事件

ある日、国民が突然拉致されてしまう恐怖

北朝鮮による日本人拉致は、政府認定の12件17名だけではなく、その数倍以上が拉致されたと推測されている。拉致事件は、今後も追及すべき政府の最重要課題のひとつである。

 

事件の概要

・1970年頃から80年頃にかけて、北朝鮮による日本人拉致が多発した。現在、17名が政府によって拉致被害者として認定されているが、それ以外にも多数の拉致被害者が存在すると推測される。

 2002年9月、北朝鮮は日本人拉致を認め、同年10月には5人の被害者が帰国しているが、他の被害者については、未だ北朝鮮から納得のいく説明はない。

 

・近年になり、脱北した元北朝鮮情報部員より、海難事故に見せかけての拉致が多数行われていたという証言があった。日本人拉致事件の闇は、まだまだ深い。

 

・日本に限らず、海外でも、韓国やアメリカ、ヨーロッパ諸国など14ヶ国からの拉致が報告され、国際的には北朝鮮拉致問題と呼ばれている。

 

今も北朝鮮は戦争継続中

日本人を拉致することで北朝鮮の情報部には各国での自由な行動という、大きなメリットが発生する

・朝鮮戦争は、1953年に休戦しているが、公的には現在もまだ終結していない。つまり、今も北朝鮮と韓国とは、戦争中ということになる。

 

・一方日本国内での年間行方不明者は8万人に及ぶ。理由は犯罪被害、失踪、孤独死、など多数に上る。原因を一概には断定できないが、北朝鮮関与と考えられる事件が主に日本海沿岸で起こっており、同時期に不審船の活動が見られるなどの共通点もあった。

 

・1988年、国家公安委員長が「北朝鮮の拉致の疑いが十分濃厚」との見方を示し、さらに北朝鮮亡命工作員により金日成主席から指示が出ていたとの証言が得られた。

 

帰国した者以外の拉致被害者たち

・それまで、事件そのものがなかったと主張していた北朝鮮当局が、全員ではないにしろ、5人の拉致被害者の日本への一時帰国を認め、それが実現した。

 

闇に埋もれた多くの拉致事件

近年では日本のホームレスから国籍を買って日本人になりすましている

・また、近年では、北朝鮮を脱出した北朝鮮の情報部員が、漁船などを襲い、使えそうな船員を拉致して、それ以外は船ごと海に沈めるという作戦が頻繁に行われていたと証言している。

 

・近年では、拉致はせず、ホームレスから戸籍そのものを買い取ったり、養子縁組などを多用してパスポートや戸籍を作成したりと、手口そのものが大きく変化していると研究者は警告している。

 

・また、日本人拉致であれば問題となるが、本人の意志とは無関係な形で、在日朝鮮人が拉致されてしまうケースもあったと推測されている。

 

 

 

 

『自衛隊の闇組織』 秘密情報部隊「別班」の正体

石井暁   講談社   2018/10/17

 

 

 

自衛隊の“陽”と“陰”

・度重なる災害派遣での献身的ともいえる活動などにより、東日本大震災翌年の内閣府の世論調査で自衛隊に対する好感は91.7パーセントに達し、調査を始めた1969年以来最高となった。(中略)しかし、災害派遣は自衛隊の一面に過ぎず、その本質があくまでも軍事組織にあることは論を俟たない。さらに言うと、非公然の秘密情報部隊「別班」は、首相、防衛相にも知らせずに海外展開し情報収集活動を行うという、帝国陸軍の“負の遺伝子”を受け継いでいる武力組織なのだ自衛隊には災害派遣に象徴される“陽”の面と、「別班」に象徴される“陰”の面があることを、私たちは忘れてはいけないと思う。

 

おもな任務はスパイ活動

・別班は、中国やヨーロッパなどにダミーの民会会社をつくって別班員を民間人として派遣し、ヒューミントをさせている。有り体に言えば、スパイ活動だ。

 日本国内でも、在日朝鮮人を買収して抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせるいっぽう、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)にも情報提供者をつくり、内部で工作活動をさせているという。また、米軍の情報部隊や米中央情報局(CIA)とは、頻繁に情報交換するなど緊密な関係を築き、自ら収集、交換して得た情報は、陸上自衛隊のトップの陸上幕僚長と、防衛省の情報本部長(情報収集・分析分野の責任者)に上げている。

 ではいったい、どのような人物が別班の仕事に従事しているのかというと――陸上自衛隊の調査部(現・指揮通信システム・情報部)や調査隊(現・情報保全隊)、中央地理隊(現・中央情報隊地理情報隊)、中央資料隊(現・中央情報隊基礎情報隊)など情報部門の関係者の中で、突然、連絡が取れなくなる者がいる――それが別班員だというのだ。

 

・「はじめに」でも紹介したように、別班員になると、一切の公的な場には行かないように指示される。表の部分からすべて身を引く事が強制されるわけだ。さらには「年賀状を出すな」「防衛大学校の同期会に行くな」「自宅に表札を出すな」「通勤ルートは毎日変えろ」などと細かく指示される。

 ただし、活動資金は豊富だ。陸上幕僚監部の運用支援・情報部長の指揮下の部隊だが、一切の支出には決裁が不必要。「領収書を要求されたことはない」という。情報提供名目で1回300万円までは自由に使え、資金が不足した場合は、情報本部から提供してもらう。「カネが余ったら、自分たちで飲み食いもした。天国だった」という。

 シビリアン・コントロールとは無縁な存在ともいえる「別班」のメンバーは、前述の通り、全員が陸上自衛隊小平学校の心理戦防護課程の修了者。同課程の同級生は、数人から十数人おり、その首席修了者だけが別班員になれるということを聞いて、すとんと胸に落ちるものがあった(後から、首席でも一定の基準に達していないと採用されないも聞いた)。

 同課程こそ、旧陸軍中野学校の流れをくむ、“スパイ養成所”だからである。

 

中野学校の亡霊

・中野学校は1938年7月、旧陸軍の「後方勤務要員養成所」として、東京・九段の愛国婦人会別棟に開校した。謀略、諜報、防諜、宣伝といった、いわゆる「秘密戦」の教育訓練機関として、日露戦争を勝利に導いたとされる伝説の情報将校・明石元二郎大佐の工作活動を目標に“秘密戦士”の養成が行われた。1940年8月に中野学校と正式に改称し、1945年の敗戦で閉校するまでに約2000人の卒業生を輩出したとされる。

 

影の軍隊

・<私は嘘と偽の充満した自衛隊の内幕を報告して先生の力で政治的に解決して頂きたいのでこの手紙を書きます>との書き出しで始まり、<自衛隊にJCIA(筆者註・CIAの日本版)はないと内局の者供がいっていますが、それは嘘です。陸幕二部別班はJCIAです>と暴露。さらに<内島二佐が別班長で、私達24名がその部下になっています。私達はアメリカの陸軍500部隊(情報部隊)と一緒に座間キャンプの中で仕事をしています。全員私服で仕事をしています。仕事の内容は、共産圏諸国の情報を取ること、共産党を始め野党の情報をとることの2つです>という内容だった。

 共産党機関紙「赤旗」はこの手紙の情報に基づき、チームを組んで取材を開始。その連載はのちに『影の軍隊「日本の黒幕」自衛隊秘密グループの巻』としてまとめられた。同書によると、手紙には次のような文章も記されていたという。

<外国の情報は旅行者や外国からの来日者に近づいて金で買収します。日本からの旅行者には事前に金を渡して写真やききたい事を頼みます。(中略)一部は500部隊からも貰います>

 二部班員は官舎にも入れて貰えず、進級や特昇も他の者より不利です。仕事の内容は家族にも言えず毎日が暗い日々です。私達の本部は座間ですが、仕事の事務所は、東京に6ヵ所、大阪に3ヵ所、札幌2ヵ所、福岡1ヵ所です。興信所や法律事務所などの看板を出しています>

<金大中事件の元自衛官達も私達と一緒に仕事をしていた連中です>

<私達が国民の税金を多額に使って、国民にかくれてコソコソと仕事をしているのに高級幹部はヤンキーとパーティーで騒いでいます。本当に腹が立ちます。自衛隊を粛清して下さい。私達がここで仕事をしていることは一般の自衛官は幹部でも知りません。長官も陸幕長も知らないと思います。代々の二部長がやっている事でしょう>

 

謎の興信所

・「赤旗」がその存在を炙り出した「影の軍隊」は、いまも存続しているのか。さらには、海外展開と情報収集活動について追及したい――こうした思いを私と共有してくれたのが、勤務する共同通信社会部の防衛庁(当時)担当の後任記者・中村毅だった。

 

・端緒の情報を入手直後、その中村と最初に向かったのが、前述の金大中事件に関与したとされる元3等陸佐・坪山晃三の事務所だった。JR東京駅の八重洲口にほど近い、古びた雑居ビルの一室が、元3等陸佐が所長を務める興信所「ミリオン資料サービスだ」。

 

・取材の準備作業としては完璧だったが、結果的には完敗だった。「さすが元別班員。一筋縄ではいかない」と思った。2時間以上におよぶ長時間インタビューの間、元3等陸佐・坪山はずっと温厚そうな表情を保って冷静に話してくれたが、私たちが本当に聞きたいこと、さらには記事にできそうなことは一切話さなかった。それはそうだろう。初対面の新聞記者の取材にベラベラ口を開くようでは、別班員になれるはずもなかったし、もしなれたとしても途中でクビになってしまうだろう――中村と二人でそう納得するしかなかった。

 

キャンプ座間の看板と小平学校の石碑

・さらに、赤旗取材班が迫った元別班長で元2等陸佐・内島洋が週に5日も通勤していたという米陸軍キャンプ座間の第500部隊について調べると、部隊はその後、米ハワイ州に移駐し、隷下部隊の第441軍事情報部隊が座間に駐留している、とのことだった。

 ところが、2013年3月26日、陸上自衛隊中央即応集団が朝霞駐屯地から、キャンプ座間に移転した際の取材で、新たな発見があった。キャンプ座間内をバスで見学した際、敷地内に「500 MI BRIGADE(第500軍事情報旅団)」と入口に掲げたビルを見つけた。第500部隊の後継部隊が、在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間に今も存在していたのだ。それは、米軍と自衛隊の情報をめぐる極めて密接な関係を示していた。

 

・また、陸上自衛隊調査学校(現・小平学校)の対心理情報課程(現・心理戦防護課程)修了者たちのグループで、非常事態に招集され、ゲリラ戦、遊撃戦を戦うことが使命とされる「青桐グループ」について、新たに確認できたことがあった。前述したように、別班とは兄弟のような同じ“影の軍隊”だが、防衛庁(防衛省)は一貫して、その存在を否定してきた。

 しかし、私が新聞記事として出稿する直前の2013年春、小平学校関係者に依頼して同校敷地内に「青桐」と書かれた同グループの象徴的な石碑が現存していることを確認、写真撮影してもらった。

 

別班と三島由紀夫の接点

・別班と青桐グループは、金大中事件の約3年前に起きた「三島事件」にも大きく関わっていた。1970年11月25日午前11時ごろ、当時ノーベル文学賞の有力候補とも言われていた三島由紀夫が、民間防衛を目的とした私兵組織「盾の会」の森田必勝らメンバー4人と市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部に車で乗り付け、総監の益田兼利に面会後拘束し、幕僚らを斬りつけた上で、三島がバルコニーで演説。自衛官にクーデターを呼びかけた後、三島と森田は割腹自殺した。

 

・三島が1967年4月に初めて自衛隊に体験入隊し、翌年10月には「盾の会」メンバーらとともに再び体験入隊してさまざまな訓練を受けていたことは、一部で知られていた。体験入隊先は陸上自衛隊の幹部候補生学校、富士学校、第1空挺団、航空自衛隊の百里基地などで、精神教育、服務、基本教育、武器訓練、野外勤務、戦術、通信、体育などの一般的な教育訓練を受けた。

 

・しかし実は、三島らは訓練を通じて自衛隊の“最も深い影の部分”も垣間見ていた。前述の旧陸軍中野学校教官から陸上自衛隊に入隊し、当時陸上自衛隊調査学校情報教育課長を務めていた山本舜勝(後に調査学校副校長)は、中野学校元教官で調査学校長などを歴任した藤原岩市の紹介で、三島と面会。山本は調査学校の対心理情報課程と同じような諜報、防諜、謀略の教育訓練を指導するなど、三島と「盾の会」にとって、“主任教官”と言える存在になっていったのだ。

 訓練は、きわめて実戦的な内容だった。有名作家だと誰にもバレないように変装して東京都台東区の山谷地区に潜行する訓練、厳戒態勢の陸上自衛隊東部方面総監部への潜入訓練、チームプレーによる尾行訓練……。調査学校対心理情報課程学生との対抗訓練では、一定の時間内に相手部隊の規模、装備の状況、周辺の環境などを把握する競争をしており、三島および「盾の会」と、別班、青桐グループとの深い関係がうかがえる。

 

・山本は2001年6月に著した『自衛隊「影の部隊」三島由紀夫を殺した事実の告白』の中で、青桐グループについてこう評価している。

<私は、「青桐グループ」であれ、三島の「盾の会」であれ、世界の主要な国家が自らを守り、世界平和を実現するために持っているような不正規軍として確立され、十分にその役割を果たすことになったとしたら、それはむしろ望ましいことであり、日本という国家に安寧をもたらすものであると考えている>

<正規軍に対して、情報活動を担い、暗黙裡の活動をも行うこの部隊が、仮に「影の部隊」と呼ばれたとしても、私はそのことに格別抵抗を感じはしない。今はその状態にはほど遠いが、「いずれそうなるだろう」と言われることを悪いこととは思わない>

 

・三島と「盾の会」の訓練を指導したことについては、次のように書いている。

<三島はある時期から私の指導の下での訓練を受けた。私は三島の考えを知ったときから、その考えに共感し、できればその実現に手を貸したい、と言うより、ともにやっていきたいと考えていた>

<祖国防衛軍の構想が不正規軍の考え方に基づいている以上、私は三島らに調査学校対心理情報課程の学生に対するのと同じ訓練を課さねばならなかった>

 

・別班、青桐グループと同じ内容の教育訓練を受け、民間防衛組織、不正規軍として憲法改正を目指す自衛隊のクーデターに参加することを夢見た三島は、1969年10月21日の「10・21」ベトナム戦争反対国際反戦デーに治安出動が発令され、それを契機に自衛隊がクーデターを起こすことを念願していた。しかし、最後まで治安出動が命令されなかったことに深い絶望を感じた三島は、「三島事件」への道を走り始めていった。

 

非公然組織になった経緯

・「秘密は墓場まで持って行く」ことが、自衛隊情報幹部の鉄則と仄聞していたが、山本舜勝が『自衛隊「影の部隊」』を著して以降、別班の関係者たちが、堰を切ったように次々と自らの経験を語り始めた。

 2008年10月、陸上幕僚監部第2部長(情報部長)で“朝鮮半島問題のエキスパート”と称された塚本勝一は、在ソウル日本大使館で初代の防衛駐在官を務めていた時に発生した「よど号事件」について、自著『自衛隊の情報戦 陸幕第二部長の回想』でその内幕を詳述している。

 

・<調査学校で情報の基本を学び、この分野に興味を示した十数名の要員を陸幕二部の統制下にある部隊に臨時の派遣勤務とし、盲点となっていた情報の穴を埋める業務の訓練にあたらせることとなった。(中略)陸幕第二部は直接、情報資料の収集には当たらないが、情報のサイクルの第三段階、情報資料の処理、その評価と判定をするためには、それに必要な情報資料の収集も行なう。陸幕第二部の要員が部外の人と付き合って話を聞いても、職務から逸脱したことにならない>

<後ろめたいこともなく、ごく当然な施策なのだから、部外の人を相手にする部署を陸幕第二部の正規の班の一つとするべきだったと思う。しかし、教育訓練の一環ということで、予算措置の面から陸幕内の班にできなかったようである。私が陸幕第二部長であったときも、このヒューミントは教育訓練費によっていた。そのためもあり、都内を歩く交通費にもこと欠くありさまであった>(筆者註:私が直接取材した元別班員たちの証言によれば「活動資金は潤沢だった」とのことだが、草創期資金難だったようだ)

 

・松本は著書の中で調査学校の対心理情報課程の創設について次のように説明している。

<調査学校の研究員として情報部隊の構築と教育体系を組み立てていた時代に、同僚の池田二郎は調査学校のカリキュラムの一つに「対心理課程」という名称をつけた。「対心理課程」というのは、実は米軍のグリーンベレーに相当する特殊部隊を育成することを想定した教育課程だった。初期の私たちのイメージでは、自衛隊の中でも精鋭を集めたレンジャー部隊の中から選別し、さらに独立した部隊として、情報収集から特殊工作活動を行うこともできる特殊部隊を養成しようという目的だった>

<彼らは知的ゲームのような「心理戦」を期待していたが、実際に山野や市中に入り込むような特殊部隊の訓練に戸惑っていた>

 


バチカンは国家だが、多くの専門家が世界最大の情報組織であるという。それは13億のカトリック教徒がある意味、情報員で兵士だからだ。(1)

2024-08-17 10:37:49 | 森羅万象

 

(2024/8/17)

 

 

『図解 自衛隊の秘密組織 「別班」の真実』

時任兼作 宝島社  2023/12/15

 

 

 

・ドラマ「VIVANT」で描かれた「別班」。はたして実在するのか。自衛隊の高官たちは存在を否定するが、その真実に、防諜組織に詳しいジャーナリストが迫る。

 

まえがき

「別班」の存在と、スパイ組織

・2023年のドラマで大きな話題になったのがTBSドラマ「VIVANT」だ。その主人公は自衛隊の秘密組織「別班」のメンバーであるという設定だった。そして、その「別班」を取り上げた講談社現代新書『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(石井暁著)も18年発行の本だが、ベストセラーに名を連ねた。

 本書では、これらの話題を受けて、本当に別班は存在するのか。その歴史と最新情報をビジュアルと共に解説する。

 

世界各国で古代からスパイは存在していた

・古代からスパイは存在した。『旧約聖書』にはさまざまな間諜(スパイ)の話があり、それはすでに創世記に登場する。当時、エジプト国境では間諜の出入りを警戒していたことがそこには書かれている。

 紅海を渡り、出エジプトを果たしたモーセは、カナンの地を目指す。その遠征を始める前に、モーセは先々の情報を得るために12人の密偵を放っている。彼らは後にイスラエルの12部族の長となるのだが、つまりは情報を得ることがいかに大切かということを、その時代から彼らは理解していたということだ。

 中国の春秋戦国時代にも、スパイは多用されていた。

 

ヨーロッパで生まれた近代的情報組織

・古代からスパイ活動は常に政治と戦争の場で重視されていたが、中世ヨーロッパでは特にそれが顕著で、そのスパイ活動の伝統が、近代スパイを生み出すことになる。

 

現代社会では、敵国だけではなくテロ行為を行う個人も調査対象に

・確かに、侵略行為をするためにも情報は使えるし、侵略のために戦争をするということもないわけではない。それでも、やはり戦争の本質は自己保存という消極的なものなのだ。

 

・世の中が情報であふれているような現代では、スパイ活動もその雑多な情報の多くを解析しなくてはならず、大変である。

 

・また、以前であれば、敵国や周辺国のみを調べていればよかったのだが、現在ではテロ活動が横行し、庶民の中に敵が混ざり込んでいるため、情報組織の仕事は非常に困難になりつつある。

 

2023年の最高のドラマ

ドラマ『VIVANT』と「別班」

日本にも、法を逸脱してまで、国を守る組織が存在していた。それが「別班」だ。はたして、その存在は必要なのか、否なのか。本書を通じて考えて欲しい課題だと思う。>

 

「別班」という存在に惹きつけられる日本人

・その面白さを作り出したのが、やはり「別班」という存在だ。日本のなかで、シビリアンコントロールから逸脱したスパイ組織が存在するという、それ自体が驚きであった。

 

日本を守る存在がやっぱりいた!

・ノベライズ化された文庫のなかで、この作品の監督の福澤は「平和ボケしたって散々言われているけど、やっぱり日本をちゃんと守ってくれる人たちはいるんだ」と述べている。

 

・はたして、「別班」の存在を私たちは、どう捉えるべきなのか。スパイと聞くとワクワクしてしまう日本人。だからこそ、本書を通じてより深く、その存在を考えて欲しい。

 

自衛隊の秘密組織「別班」の歴史と最新情報

別班は本当に存在するのか? その真相に迫る!

「日本のスパイ組織」の栄光と挫折

第2次世界大戦の敗北によって、壊滅した日本のスパイ組織。いまだに、戦前のレベルに戻っていないという。>

 

原爆投下を察知していた日本のスパイ網

・こうしたなか、海軍は米国の外交暗号「グレイ・コード」はもちろん、より高度な「ブラウン・コード」も解読できるようになっていた。

また、陸軍は「ストリップ暗号」と呼ばれた最も難解な暗号の解読にも成功した。これらの背景には、米国の大使館などに侵入し、コードブックなどに関する情報を盗み出すといった工作があったともいう。

 

海軍は米国のより高度な暗号も解読できた

米国で活躍した海軍と外務省のスパイ

・諜報体制すなわちヒューミントも充実していた。「戦後、諜報活動から一切、手を引いてしまった日本からすると、信じがたいほどの活躍ぶりと言える。陸海軍はもちろん、外務省も積極的に行っていたし、それぞれが連携もしていた」

 

防諜が起こした悲劇「宮澤・レーン事件」

・一方、世界各国に大使館を備え、グローバルなネットワークで諜報活動を行っていた外務省も負けてはいない。

 

・日本国内に目を転じると、特別高等警察が防諜機関としての役割を果たしていたという。

 

・「こうした諜報体制のもと、開戦前もその後も日本は奮闘した。奇襲攻撃に成功した真珠湾の背景には、日本人スパイの活躍があったし、意外と知られていないが、空襲警報もそうだ。警報は米軍の通信を傍受し、いつ爆撃があるか察知した上で発していた

 

日本料亭から米太平洋艦隊をウォッチ

映画のような防諜戦が繰り広げられた真珠湾

・真珠湾では、まるで映画のような諜報戦が展開されていたという。

 

ダブルエージェントに翻弄された日本海軍

・しかし、米国はもちろん負けてはいない。日米間では熾烈な諜報戦が展開された。

「真珠湾攻撃は米国のミスが幸いしただけで、日本の暗号自体は破られていたのは周知の事実だ。しかも、ここに至るまでの過程では諜報員、組織に関する情報も漏れ、米国での摘発まで始まっていた。米国の放ったダブルエージェントに見事やられてしまった結果だ」

 

・ともあれ、ラトランドの英国召喚によって日本海軍の諜報網は大打撃を受けたばかりか、のちに明らかになるラトランドの背信による情報将校の相次ぐ逮捕によって機能不全に陥ってしまったのである。

 

マンハッタン計画を打電していた海軍

通信傍受も最後の最後まで行っていた

・また、外務省は1941年12月末、『東機関』なる諜報組織を設立。中立国スペインを利用して諜報活動を行うべく、ユダヤ系スペイン人を中心にスパイをリクルートし、翌年6月までには、ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコといった主要都市を網羅するスパイ網を作り上げた。

 

・「腕力の前にまずは知力。しっかりしたインテリジェンス機関なり組織を整え、正確な情報を日本独自で得ることこそ、真にいま求められていることだ

「実際には起こるかどうかわかりもしない戦争に備えて軍備に多額のカネを使うよりもよほどリーズナブルであるし、的確な情報を得てから軍備を整えても間に合うのだから」

 いまの日本には国のために十全に機能する「スパイ組織」がない――。

外事関係者は、そう指弾すると同時に、新たなる組織の創設を訴えかけたわけである。

 

自衛隊に二つあった「別班」

人気ドラマ『VIVANT』の「別班」とは別に、もうひとつの非公然組織の「別班」が存在していた。その組織とは何か。>

 

日米の密約で作られた公然の「別班」

・かつて自衛隊には実は二つの「別班」があった。

 いずれも米国の都合で作られたようなものであるが、そのひとつが人気ドラマ『VIVANT』に登場し、注目を集めた自衛隊の秘密情報部隊たる「別班」。正式名称は「陸上幕僚監部第二部情報一班特別勤務班」だ。米軍の情報部隊と連携して非公然活動を行っていたのは事実ながら、法の枠を超えるようなことはなかったという

 

ドラマでは、自衛隊員の精鋭が集められ、国家の危機を未然に防ぐため、法の枠を超えて行動するような描かれ方をしていたが、そんなことはない

 

シギントを行う非公然組織

・そして、もうひとつが「二別」と呼ばれた「別班」。やはり陸上幕僚監部に設置されたもので、「第二部別室」というのが正式な部署名だ。

『別室』すなわち『二別』は通信傍受などシギントを行う非公然組織

 

・「「別班」にしろ「二別」にしろ、もはや、その名称はなくなっている」と言い、フィクションの世界との違いを強調したのだった

 

驚異的なメール・ハッキングソフト

・このシステムを開発したのは、パランティア・テクノロジーズなる企業。

 

・2011年5月、CIAが血眼になって探していたイスラム過激派『アルカイダ』のトップで、米同時多発テロの首謀者と目されたオサマ・ビンラディンがパキスタンにおいて発見され、射殺されたのも、このシステムがあったおかげだという。

 

太刀洗通信所にあるインターネット防諜組織

米国のために米国が提供したシステム

・パランティア社は、これを機に情報機関の御用達になった。CIAを筆頭にNSA、FBI、さらにはDIAなどが顧客となったのである。

 

・こうなると、各者と密接な関係にある電波部は米国のために動かざるを得ない。米国から提供されたシステムを米国のために日本で使っているというのが現状だ。

 

「別班」の誕生

「別班」は米国の要請に基づいて日本の赤化を防ぐために作られた。そして、米軍と連携し、対共産圏を視野に数々の情報工作を展開することになった。

 

朝鮮戦争が生み出した「別班」

・終戦からほどなくして「別班」は産声を上げた。「朝鮮戦争が誕生の背景に色濃く見て取れる」と自衛隊関係者は語る。

 

共産系組織にも潜入工作

・また、「ムサシ」の呼称は、その後、消えるが、ここで養成された20数名の陸自隊員は2等陸佐の班長のもと、世に知られることなく非公然のベールを被ったまま米軍と連携し、対共産圏を視野に数々の情報工作を展開することになったとされている。

 

さらなる国会質問

「しんぶん赤旗」報道のあと、40年の時を経て共同通信が報道した「別班員」。それを巡って質問主意書が提出された。対する政府の回答は……。

陸幕監部が独断で行った諜報活動

・「別班」の存在が明るみに出たきっかけは「しんぶん赤旗」で幕が上がった国会質問だったが、それから40年程を経て、再び国会で取り上げられることになった。今度は「共同通信」がきっかけであった。

 

「『別班』は存在しない」が政府の回答

・「別班」が存在しない以上、海外における活動もないし、調査もしないという木で鼻をくくったようなそっけない答弁であった。

 

「別班」のいま

「別班」を巡る国会質問の数年後、「別班」は名前を変え、米軍とは切り離され、規模も縮小され、もともとの機能はなくなり、現在に至っているという……。

 

陸幕監部指揮通信システム・情報部地域情報班

・「こうした状況下、海外に拠点を置いて活動するようなことはない。ありえない。米軍と袂を分かって以降やってきた海外情報の間接的な収集を細々と続けているだけだ」

 

「特機」なる非公然組織

・その点を踏まえれば、「別班」は「二別」よりもはるかに暗い闇の中で名実ともに続いていると言うべきなのかもしれない。

 

「日本のスパイ」の活動と非公然組織

非公然組織のスパイ活動とは、どのようなものなのだろうか。秘密部隊について、関係者に取材した。>

 

警察庁警備課にあった「サクラ」

・「日本のスパイ」網の主軸とされる公安警察の秘密部隊のことである。

 

公安の秘密部隊の歴史は戦前の内務省の第4係に遡る

精鋭部隊は全国から集められた百数十人

・半ば公然化しているという公安警察の秘密組織だが、非合法活動をも辞さない構成メンバーについては秘匿が堅持されているという。

 

別人に成りすまし、潜入工作

大使館員のウォッチ 米軍基地からの密航

・この工作は24時間体制で行われることが多いため、メンバーは役所に出ず、直行直帰というのが原則。

 

・「どちらの工作にも欠かせないのは、身元を明らかにしない、すなわち秘匿すること。そのために、彼らは別人になりすます。言うなれば、“背乗り”だ」

 

潤沢な資金、年収1000万円超え

・また、それぞれ特殊な任務柄、潤沢な資金措置もあるとした。

 

潜入先企業からの給与と警察のダブルインカム

警察以外の「スパイ組織」

・公安警察の秘密部隊は本格的な「スパイ組織」と言えよう。

 

・「穏やかな情報収集活動だ。場合によっては、新聞や雑誌、インターネットを検索し、それらをまとめたり、分析したりといった活動もある。この世界流に言えばオシントということになる

 

外務省にある「国際情報統括官組織」

内閣調査室は定期的にCIAからブリーフィング

・「もうひとつ付け加えると、内閣情報調査室はCIAから定期的にブリーフィングを受けるなどしている」

 

・外務省にも「スパイ組織」らしきものがある。「国際情報統括官組織」のことだ。

 

・「あくまでも在外公館からの公電などの情報をベースに活動しているに過ぎない。」

 

世界の主要国のスパイ組織と日本との関係

米国  CIA、NSA、DIA

世界最強ともいえるスパイ組織を持つアメリカ。その核がCIAだ。そのCIAを中心に解説する。>

 

CIA(中央情報部)

・「2万人以上の要員を擁する巨大組織ながら、機動力に優れている。ここ数年においても、世界情勢の変化に即応すべく、柔軟に組織改編を行ってきている」

 

・作戦総局は、いわゆるスパイ活動を行うケース・オフィサーなどの集まりだ。

 

・情報総局は分析部門。

 

・科学技術総局はスパイ向けの装備の開発や民間技術の活用を行う部門。

 

・支援総局は人事や経理などを担当する間接部門である。

 

・デジタルイノベーション総局はCIAの最新の総局であり、CIA全体のイノベーションを加速しています。

 

・ミッションセンターは、国家安全保障上の課題に対処するため、すべての政府機関の構成員と緊密に連携します。

 

NSA(国家安全保障局)

・CIAはヒューミントを主としているが、こちらはシギント組織。国防総省傘下にあり、本部に4万人、海外の傍受施設にも2万人以上という最大規模の人員を誇るものの、秘密が多い。

 

DIA(国防情報局)

・NSAと同じく国防総省傘下にあるスパイ組織だが、こちらは軍事にかかわる情報の収集や工作などを行っており、ヒューミント色が強い。人員は1万数千にもおよぶ。海外駐在武官は、この管轄下にある。

 

・他方、軍事の観点からMASINTにもかかわっている。電磁波、放射線、金融反応、赤外線、地震波、音響、大気や地層成分などの物理・化学的指標を測定して分析するというものだ。

 

日本との関係性

・以上が米国の主なスパイ組織だが、CIAが日本と関係が深いのは周知の事実だ。

 そもそも、戦後、自民党に活動資金を提供することなどを通じて親米化工作を主導したのがCIAであり、今日の政府も、この延長線上にある。

 

・「ここ数年、CIA本部のアジア担当の幹部から連絡が入ることが増えてきている。より正確には情報提供の“要請”と言うべきか……」

 

・「防衛省情報本部の大刀洗通信所で運用されている驚異的なハッキング・システムを提供したのはNSAで、これによって得られる情報は、もちろん吸い上げている」

 

・「そもそも情報本部がDIAに倣って創設されたわけだし、さらに遡れば、その前身たる『二別』も、それから軍事情報にかかわるヒューミントを展開する『別班』もDIAのもとに統合された陸軍の情報部隊の要請で作られたもの。こうなるのは自明と言えよう」

 

英国 MI6、MI5、GCHQ

007のジェームズ・ボンドを生み出した英国のスパイ組織は第2次世界大戦の軍事情報部から生み出された。>

 

MI6(秘密情報部)

・主な任務は英国の国益に資するべく、安全保障、経済分野、地域紛争、国際テロリズム、大量破壊兵器拡散、国際犯罪等の分野にかかわる情報を、海外における諜報活動によって収集してくることだ。事前の許可を得ていれば、非合法活動(暗殺等)も可能であるとされる。スタッフは2000人程度。

 

MI5(保安局)

・英国内の防諜を一手に引き受けている機関で、日本の公安・外事警察のような存在ながら、司法警察権を有さないスパイ組織として設立された経緯があり、外国のスパイやテロリストの逮捕はロンドン警視庁が担当している。

 

GCHQ(政府通信本部)

・MI6、MI5がヒューミント機関であるのに対し、こちらはシギント機関。職員数は1万人強。

 

日本との関係性

・日本との関係で言うと、SISとの公安当局とのつながりが深い。

 

韓国 国家情報院

金大中拉致事件を引き起こしたKCIAが母体。その後、2度の名前の変更を受けて現在の国家情報院となった。その権限は非常に大きい。>

 

1999年に国家情報院に

・もともとは1961年に創設された中央情報部で、1981年に国家安全企画部に改称されたのち、1999年以降、国家情報院となった。人員は1万人程度。

 

ほかのスパイ組織とは違い、捜査権を有しており、権限が大きい。また、秘密保持を徹底しており、身元を明かすことは親族らに対しても許されず、嘘発見器による検査なども定期的に行われるほか、外国人との結婚は認められない。

 

・「金大中拉致事件もそうだが、それから数年後の1979年10月にはKCIAの金載圭部長がソウル市内にある秘密施設で朴大統領を射殺している」

 

日本との関係性

・「日本の政府職員や外交官に対し、乱暴な諜報工作をしかけているのは、つとに有名だ。その結果、不審死を遂げた者もある。また、慰安婦問題など、日韓で争点となっていることに対する熾烈な工作も目立つ。日本国内での非合法活動をも辞さない。『友好国だ』などと安閑としている場合ではない」

 

中国 国家安全部、公安部など6組織

スパイ組織の能力と規模を飛躍的に増大させている中国、その6つの組織を解説する。

 

国家安全部

・国内だけでなく、国外でもヒューミントやシギントを展開する総合スパイ組織。

 

・「諜報員以外の協力者の獲得にも力を入れており、海外に赴く研究者、ビジネスマン、留学生、果ては旅行者まで範囲を広げてエージェントを募り、非合法活動も辞さない情報活動を行わせている」

 

公安部

・治安維持およびそのための情報収集活動や摘発といった外事・公安部門のほか、刑事警察部門、交通警察部門なども擁しているが、外事・公安部門に比重が置かれている。

 

・「かつて上海総領事館員が公安部の仕掛けたハニートラップにかかって、最終的には自死を遂げてしまうという悲劇があったが、ここ最近、日中を行き来する人物や在中の企業人らの逮捕が目立つ。いずれも公安部が関係している

 

元総参謀部第二部(聯合参謀部情報局に再編)

・ヒューミント機関であり、軍事的な偵察部門のほか、海外で情報収集や工作を行う駐在武官を管理する部門などがある。

 

・「日本にも経済商務部や教育部、文化部などに文官を偽装して数多く配置されている。それらが先端技術の窃取や企業買収、政治工作など各種工作にも手を染めている」

 

元総参謀部第三部(聯合参謀部戦場環境支援局に再編) >

・シギント機関であり、12の局と3つの研究所を持ち、通信の傍受や暗号の解読、偵察衛星による情報収集などを行っている。

 

・「偵察衛星のセクションでは画像分析が行われているが、リアルタイムの全天候型の情報収集が可能となり、解析能力も著しく向上しており、欧米との格差は縮まりつつある」

 

・ちなみに、北京電子兵器廠、海鷗電子設備廠、第56研究所などがよく知られており、また、通信傍受のための語学教育の場としては洛陽外国語学院が有名だという。

 

元参謀部第四部(聯合参謀部ネットワーク電子局に再編)

・中国に対する通信傍受の防護なども行っているが、電子諜報戦部隊というのが実態。旅団や連隊を有し、サイバー戦を展開している。ハッキングも含まれる。そのための教育機関もあり、電子工程学院がよく知られている。

 

統一戦線工作部

・中国のために国内外を問わずともに戦おうという思想のもと、とりわけ在外華僑を利用し、秘密裏に諜報活動や盗聴・通信傍受などを行っている。

 

・「活動している者の数は全世界で5000万人に達し、日本では70万人を超えている。また、その多くが営んでいる中華料理店は往々にして情報担当官とエージェントの接触場所として利用されている。もっとも、エージェントは居住国の接触場所には現れない。通常、第三国の中華料理店が用いられる」

 

ロシア FSB,SVR、GRU

KGBを擁し、冷戦時代はアメリカと諜報合戦を繰り広げたロシア。その力がまた復活しつつある。>

 

FSB(ロシア連邦保安庁)

・KGBは国内部門と国外部門に分けられたが、その国内部門。

 

SVR(ロシア対外情報庁)

・旧KGBの国外部門。

 

GRU(連邦軍参謀本部情報総局)

・ソ連崩壊後も存続し続けている軍のスパイ組織。ヒューミントと同時に、偵察衛星等を用いたシギントも行っている。また、特殊部隊スぺツナズの運用も管轄しており、破壊工作も辞さない。活動範囲は広く、組織は巨大である。

 

日本への工作

・「日本に駐在し、工作活動を行っているのはSVRとGRU。それぞれの大使館のスタッフに偽装していることが多い。

 最近も通商代表部の職員に偽装したSVRの要員が携帯電話の職員に接触し、機密情報を得ていたとして事件化したが、この要員は科学技術に特化した情報を収集する『ラインX』という部署の一員」

 

北朝鮮 朝鮮人民軍偵察総局など

北朝鮮を支配する金正恩。北朝鮮には通称「3号庁」舎と呼ばれるスパイの巣窟があるという。その中心が朝鮮人民軍偵察総局だ。>

 

朝鮮人民軍偵察総局(偵察総局)

・諜報に加えて拉致や暗殺、破壊工作をも辞さないスパイ組織。サイバー攻撃なども担当している。また、経済的に困窮する北朝鮮の事情を背景に、密売・密輸による外貨獲得活動なども行う。

 

国家保衛省

・スパイや反体制派の摘発を主任務とする防諜・治安機関だが、朝鮮民族や脱北者の多い中国の東北地方、香港、マカオ等でも活動しているとされる。

 

朝鮮労働党統一戦線部

・中国と同様、韓国や日本などに居住している同胞をネットワーク化し、情報収集や宣伝・破壊工作などを行っている。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)はその有力ネットワークのひとつである。

 

日本への工作

・「統一戦線部には日本人拉致の実行役を務めた在日の秘密組織『洛東江』をはじめ、在日朝鮮人らで構成される秘密組織がいくつもある。その組織は偵察総局と同じく、非合法活動を辞さない組織だ。

 

スパイになろう!

高学歴でないとなれない ⁉

裏の世界に生き、国家を支える孤独でニヒルな職業。それがスパイである……というのは戦前までのこと。今やスパイはエリートが独占する高級官僚である。>

 

スパイを職業とする人々は日本にもかなり存在している。>

・日本でも、トータルするとおおむね1万人前後は情報組織の人間ということになる。

 

防衛省情報本部に入るには二つのルートが存在する

・さて、それでは本命の防衛省情報本部である。ルートは二つ。語学系の職員として入るか、技術系職員として入るか。

 

・警察庁等も同様で、日本のスパイは、何よりも高学歴なエリートでなくてはならないのだ。CIAなども、ハーバードなどの学閥が問題視されているようであるが、スパイも今や厳然たる官僚ということなのだ。世の中、結局はお勉強ができないとだめということだ。

 

世界各国のスパイ組織

フランス 対外治安総局

小粒でも働きのある効率的な情報機関

フランスの対外治安総局は、小規模ながら素晴らしい働きぶりを見せ、中小国の情報組織の良い手本となっている

 

13世紀から続くフランスの情報組織の伝統

・フランスの情報組織の歴史は古く、ブルボン王朝のルイ13世の時代にまで遡る。

 

・ルイ15世の時代には、「国王の秘密情報部」と呼ばれる組織が設立されている。

 

・ナポレオンの時代になると、さらに情報組織は重視され組織が強化された。第1次世界大戦でも彼らは大いに活躍する。第1次大戦でのフランスの勝利は、彼ら情報部の働きによるものとの見方もある

 

国防省が管轄する小さくも機能的な情報機関

・対外情報機関として根幹に位置付けられているのは、国防省が管轄している対外治安総局(DGSE)である。

 

・同局は、人的インテリジェンスのヒューミントや、電子情報収集のシギントなど、アメリカなどではそれぞれ別組織が担当している活動をひとつの組織で行っている。

 

ドイツ 連邦情報局

参謀本部の伝統を受け継ぐ防諜組織

第2次大戦後のドイツは、分割され、東西冷戦の最前線に立たされた。 そのため、ドイツ連邦情報局は、対ソ防諜を主任務として成立した。 >

 

ドイツの情報機関の中心 歴史ある連邦情報局

・各国同様、ドイツの情報機関も複数存在する。首相府が管轄する連邦情報局、内務省が管轄する連邦憲法擁護局、国防省管轄の軍事保安局の3つの機関が主たるもので、ほかに連邦電子情報保安局、連邦国防軍管轄の軍事保安局の3つの機関が主たるもので、ほかに連邦電子情報保安局、連邦国防軍情報センター、連邦刑事局などが存在し、業務を補完している。

 

・連邦情報局は、ドイツ帝政時代の参謀本部第二部が源流であり、その流れを受け継いで存在している。

 普仏戦争の勝利など、輝かしき歴史を持つドイツ参謀本部であったが、いつしか肥大化した参謀本部は政治力を行使し始めてしまう。結果、外交的に回避可能であった第1次世界大戦に突入

 

・ナチス・ドイツの時代においては、情報組織は親衛隊の情報部門のSD、国防軍の情報部門であるアプヴェーア、秘密警察のゲシュタポを生み、1939年には国家保安本部を設立させ、ナチスによる独裁体制に情報組織は用いられた。

 

旧参謀本部のゲーレンが対ソ防諜を目的に設立

・旧参謀本部のラインハルト・ゲーレンは、敗戦後は米ソの対立が政治の主たるテーマになると予想し、ソ連に関する資料を隠匿してアメリカ軍に投降。戦後になると、アメリカ軍と情報部の後押しを受け、対ソ連防諜組織「ゲーレン機関」を設立。東西ドイツが分裂した後は、冷戦の最前線で諜報活動を行った。

 

・しかし、連邦情報局には英米仏露などの情報機関と比べると圧倒的に立ち遅れている点が指摘されている。それは、連邦情報局は、いわゆる工作・諜報活動を一切行わないということだ。