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[短評]農薬入りひき肉料理に見える皮肉

2008-02-02 01:31:46 | マネー&ポリティックス
中国製ギョーザで10人中毒症状 農薬検出 千葉・兵庫(朝日新聞) - goo ニュース

今週、話題をさらったものといえば、ダントツで餃子でしょう。そんな最中、金曜日の日経新聞夕刊の
1面に載った、防衛大学校の校長・五百旗頭 真氏のコラムのタイトルが「春を迎える日中関係」というのは
何とも皮肉そのものでした。中国では、春どころか大雪で生活がマヒしているのに、「春を迎える」とは
皮肉そのものでした。そして、少なくとも政治上では雪解けが進みつつある日中関係が、餃子ひとつで
冬に逆戻りしそうになっているのもまた、皮肉そのものでしょう。

故意か過失かはわからないけど、餃子に限らず人が口にするものに農薬を混ぜ込んだのであれば、
バガげていることであるのは言うまでもありません。しかし、船場吉兆や赤福のときと同じくらいに
騒ぎまくっているメディアと市民を見ていても、バカげているなと思います。今回の一件でわかったこと、
それは、日本人は中国人によって「食べさせてもらっている」ことじゃないでしょうか。それは今回の
冷凍餃子のような「工業品」を輸入していることもそうだし、例えば、この工場で働く従業員が
(どれくらいの給料をもらっているかはともかく)日本製品を買ったり、中国での経済活動から
生まれる経済効果によって、日本の企業が潤い、日本経済がある程度保たれてきたということも意味します。
人々はこれを否定したいのだろうけど、これが現実です。

今回の事件は、食中毒が起こったということで一気に火がつきました。一方で、日本は穀物にしろ、
冷凍食品のような加工品にしろ、食を輸入に頼らなければ生きていけません。そのことを観念してか、
もしくはだれも食中毒にならないからか、日本の食料自給率が4割を下回ったと報道されても、
騒ぐ人はごくごくわずかです。「もう輸入食品には頼らない!日本を守り、自給率を高めるため、
サラリーマンを辞めて農業をやるぞ!」なんていう人はもっと少ない、いや皆無です。もしかしたら、
今回の一家は自給率4割の犠牲者と言えるかもしれません。もう少し自給率が高ければ、こんな農薬入り
冷凍食品に手を出さなかったかも知れません。

じゃあ自給率の低さを埋めるべく、どんどん食糧を輸入しようとしても、そうは簡単に問屋は卸しません。
穀物はバイオ燃料に使われ価格が高騰し、マグロは「買い負け」という憂き目に遭い、鯨を獲れば船が
襲われる、そして冷凍品には農薬が混じり、国内の製品は賞味期限の偽装です。

こうやって見ると、今ほど、自給率の向上と共に「食の安全保障」が重要視されている時代はありません。
ところが、例えば民主党が考えるところには、農家への補助金という自給率を高めることよりも、
党の人気を高めるようなことしか口にできません。与党はどうかといえば、2007年だけで農相が
3人も変わるというところを見ても、「食の安全保障」という言葉が頭の中にあるのかどうかも
疑わしい状況です。日本人は、田んぼの跡地にできた工場で生産される遺伝子組み換え大豆製の
豆腐を食べたり、クローン牛製の牛肉を食べれば良いともで思っているのでしょうか。

今回の一件は、短期的には原因の究明と善後策が必要でしょうが、中長期的に考えた場合、飛躍的な
自給率の向上と、日本国内での食品の超フル生産が見込めない以上、どうしても中国や海外で
作られた加工品を食べざるを得ません。吉兆や赤福の問題はしょせん国内問題ですが、これからは、
どのように食の安全を守るのかを、農産品だけではなく、加工品、完成品についても、国を超えて
考えるべきでしょう。例えば、アジア諸国の間だけでもいいので、何らかの食の安全を担保できる
国家間の取極が必要なのではと思います。

なかのひと


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