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[第46回スーパーボウル]Is legacy hurt?

2012-02-08 22:19:51 | NFL
Brady's performance in Super Bowl adds a lot to his legacy. Really(SI.com)
By Smallest of Margins, a Patriots Legacy Is Being Redefined (New York Times)


ニューイングランド・ペイトリオッツのトム・ブレイディにとって5回目の出場となる、第46回スーパーボウルは味方選手がいないところへのパスで始まり、多くの選手がエンドゾーン内に密集するところへ逆転を願うパスを投げて終わった、といっても過言ではありません。最後のパスがジャイアンツのケビン・フィリップスに叩かれボールが地面に落ちた瞬間から、スーパーボウルで2回連続して同じ相手に敗戦を喫したことは、ペイトリオッツとブレイディの功績に傷が付くのか、という議論が始まりました。中には、21世紀に入ってからペイトリオッツはいわゆる「スパイゲート」以前にはスーパーボウルに3回出場し3勝しながらも、「スパイゲート」発覚以降の2回はいずれも敗戦していることを引き合いに出し、これは一体どういうことなのか、ということも囁かれ始めました。

確かにこのスーパーボウルでのブレイディとペイトリオッツは、シーズン中やプレイオフでの戦い方とは違ったものでした。ブレイディはジャイアンツのプレッシャーに負けサックを受け、無理やり投げたパスはインターセプトされ、絶対的なWRウェス・ウェルカーがフリーであることがわかりパスを投げたら、やや無理な体制ではあったにしろ、ウェルカーがパスを落とす(その姿は1986年ワールドシリーズ第6戦、有名なビル・バックナーのトンネルを思い出したボストン市民も多かったはず)。ペイトリオッツは欲しい場面で「らしさ」を出すことをできずに敗退した、そういった印象を残しました。

一方で、前半最後のドライブでのブレイディ率いるペイトリオッツのオフェンスは「らしさ」を見せつけました。6点のビハインド、自陣4ヤードからの攻撃、前半残り時間4分3秒という場面から、ブレイディはその時間を目一杯に使いきり逆転TDを成し遂げました。この96ヤードドライブはスーパーボウル史上最長のドライブでしたが、それを限られた時間で成し遂げられたのはブレイディのクォーターバッキングのレベルの高さゆえでしょう。ニューヨーク・タイムズはこのドライブを「ブレイディはまるで2ミニッツ・ドリルをスローモーションで行ってるかのように沈着冷静だった」と書いています。後半最初のドライブでも、ブレイディは次々とパスを通し、15本連続パス成功というスーパーボウル記録を残し、更に点差を広げるTDを奪いました。少なくとも、ブレイディは少なくともこの試合でスーパーボウルの記録を残すことはできました。


それでも、ブレイディは第46回スーパーボウルの勝利QBとして記録されることはありませんでした。しかしそれが過去3回スーパーボウルに勝利したことに響かなかればならないのでしょうか。最初のパス失敗からのセーフティやアーロン・ヘルナンデスへのパスがインターセプトされたことが、過去のMVPとしての活躍に影を落とさなければならないのでしょうか。もちろん本人にとっては数々の記録を残したことより敗戦に対して悔しい思いをしているに決まってますし、この試合においてはペイトリオッツはジャイアンツを試合を通じて上回れなかったことも事実ですが、だからといって21世紀最初の10年間で王朝を築いたほどの過去をすべて忘れるほど否定する必要はありません。

スーパーボウルはNFLにおいて最も重要な試合です。例えシーズン中に7敗してもスーパーボウルまで駒を進めてそこで勝利することができれば優勝として記録されます。一方で開幕からカンファレンスチャンピオンシップまで全勝してもスーパーボウルで敗戦すれば何も残りません。しかしそれが、今回で言えばブレイディの功績に傷が付くかどうかという議論自体が不毛な印象を受けます。別にこの敗戦でブレイディは全てを失ったわけではないのです。世間には「アンチ・ペイトリオッツ」が多く存在するのも事実だし、そういったところからブレイディとペイトリオッツへの批判をする人たちがいるのだと思います。敗戦という心の傷を背負うことはあっても、過去を洗い流すほどのものではないというべきでしょう。

同時に、ブレイディ及びペイトリオッツの議論を見ていると、スーパーボウルに4年連続で進出しながらも1回も勝利することができなかったバッファロー・ビルズとマーク・リーヴィHC、QBのジム・ケリーの功績をどう判断するのか、という過去の議論が頭をよぎりました。4回も出場して4回とも敗戦したことを重視するか、4年連続でスーパーボウルに出場したことを重視するか、というものです。確かにこれをどう見るかはかなり意見が別れても仕方ないと思いますが、ブレイディの議論はそれにわざわざ準えている感がします。3回スーパーボウルに勝ったことが重要なのか、2回スーパーボウルで同じ相手に負けたことが重要なのか、ということです。スーパーボウルで勝利することは重要ですが、スーパーボウルだけが全てなのでしょうか。

選手生涯で1度だけ出場することができた選手と違い、ブレイディは5回もNFLのシーズン最後の試合に出場し、失敗と成功の両方ともを経験しました。あれだけ目立つ舞台での敗戦は、他のどんな試合での失敗の何倍も目立つのは仕方ないことです。でも、マイケル・ローゼンバーグが結論で書いているように、ブレイディの偉大さを議論することは結構なことだけど、今回のスーパーボウルでブレイディの全てを判断することは間違っているというべきでしょう。


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