そのさきへ -Deep Sky Blue version-

このブログは引っ越しています

さよなら昭和の経営

2005-03-05 00:10:58 | マネー&ポリティックス
西武グループ、もっと正確に言うならばコクド、の経営の基本は土地と建物、つまり不動産です。
そこから生み出す資金を使ってさらに土地を買ったり借りたりしてリゾート施設を作り、そこから生まれた
資産を使ってまたリゾート開発をする、ホテルを建設する、その一方で土地を担保に銀行から資金を借りる、
そういう形で一大帝国を築くことができたのでしょう。

しかしそれは右肩上がりの経済だった頃の話。もっと言ってしまえば元号が昭和時代の話。平成に入り、
まず不動産バブルが弾け、続いてリゾート業も成長を望むことができなくなりだします。そこで経営の基本が
「カリスマ」という実体のないものへ完全に移行したのも無理はありません。オーナーの、言ってしまえば
実績と感性のみで、平成が明けて以降の経営を曲がりなりにも支えていきました(1970年代の終わりに、
オーナーが「コクドが組織(恐らく自分の意思のこと)で動くようになるにはあと10年掛かる」と語ったとされています)。
その間、従業員はオーナーに対して、半ばイエスマン同様に育てられ、いわばオーナーの言動に馴れ合って
いかざるを得ませんでした。この時期にはオーナーに真っ向切って逆らえる人はもういなかったのでしょう。

しかし、それも20世紀までの話。21世紀になると、担保にできるのは土地だけでなく、いや土地よりも知的財産へ、
資金繰りも銀行から証券市場へ、そして内輪だけの馴れ合い経営から透明性を持った法令順守の経営へと
時代が移っていったのです。残念ながら、西武グループはその流れに乗り遅れたというよりは、オーナーの
一言によって抵抗し続かざるを得ず、それが不祥事、オーナー逮捕、市場からの退場という形で跳ね返ってきました。
つまり、西武グループは2度も時代の流れを読みきることができなかったのだと思います。

「そごう」同様、不動産に頼った「昭和の経営」というものは西武グループの一件で1つの区切りが付いたと
言ってもいいでしょう。ただこのオーナーのように時代を読み間違える「カリスマ」経営者は今後も出てくる可能性は
十二分にあります。「ドンキホーテ」の火事が相次いだときにも言ったように、どの経営手法にも王道はありません。
リーダーシップとしての強い信念も当然必要ですが、むしろ時代の流れをいかにして読むか、
万が一読みきれなかった場合にはどれだけ早く修正することができるのかが、これからの経営には求められるでしょう。

それにしても、このオーナーが留置所へ移送されたのと入れ替わるかのように、アメリカでは「カリスマ主婦」と呼ばれる
マーサ・スチュアートがインサイダー取引などの罪で懲役に服していた拘置所から出てきたのも、
何だか皮肉に思えてきます。おもしろいことに、スチュアートにはTVシリーズ"Apprentice"の次回シリーズの
メイン司会の座が与えられるのではないか、とかホワイトハウスが世界銀行入りを薦めている、などと言った、
新たな「カリスマへの道」が開けようとしています(まだ老け込みほどの歳ではないからだろうけれども)。

しかし、西武グループの「カリスマ」オーナーは例え懲役に服してから一般社会に戻ってきても、
帰ってくるべきポジションはないでしょう。もしかしたら西麻布の豪邸すらない可能性もあります。

最新の画像もっと見る