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[短評]日本はブータンではない!

2011-11-27 19:46:21 | マネー&ポリティックス

日本のGNH(国民総幸福度)を高めるには?

この記事についての意見:




ブータン王国が国民総幸福を全面にした国づくりをすることには何も批判しません。ただしそれはブータン王国だからこそできることではないかと思います。

山中の小国であるブータンは、インドと中国という何千年前からの大国に挟まれながらも、強固な王制を敷いて半ば鎖国状態で国を運営し、世界の近代化から一線を隠してきました。仮にブータンが西洋を見た政策の下で所得倍増計画を打ち出すような国家であったら、野心の強いインドと中国双方から領土略奪あるいは国土分割の脅威にさらされ続けてきたことでしょう。ブータンは地政学的には緩衝地帯としての役割に徹し、同時に国家と王政存続のためにも、国民総幸福という制度の下で国民を守ろうとしたのだと考えます。それはブータンのあまりにも特殊すぎる事情の産物であることも考慮すべきです。

逆に日本はブータンとほぼ同様に鎖国を敷いた後、近代化へと走りだし今に至っています。明治維新によって、日本は独自の政策ではなく世界との競争を選んだのです(ちなみに、日本が世界史の教科書に載せる価値があるほどの「独自の」外交政策を行ったのはたったの2回しかありません。鎖国と国際連盟の脱退です)。それによって日本は(第二次大戦を除き)軍事的にも経済的にも拡大をし続け、そのことを通じて日本人は幸福だと感じ続けてきました。

現実問題として、日本は中国と北朝鮮から軍事的かつ顕著な脅威を見せられている上、経済では日本だけの理由ではないとはいえ、もはやGDP1位を狙える位置にはありません(ブータンも国交のない中国から道路建設による越境行為を受けていますが、軍事的もしくはそれに近い形での脅威はありません)。今の日本でブータンの政策がもてはやされているのは、これまでの拡大の動きが頭打ちになったことに対する逃げ道を見つけたかのような印象を受けます。

結局のところ「日本の国民総幸福を高めるには」(そもそも日本においてそんな設問が成り立つはずもないと思いますが)、経済力と軍事力というハードパワーを高めていく、これしかありません(ハードパワーなき状態でのソフトパワーの強化なんてもってのほか!)。それは日本だけでなく大方の国家にとっても同じことであり、ブータンは例外だからこそ、その主張が注目されているのです。世界と競争をしつつ、あるいは強いられつつ、ブータン王国が唱えるようなことをしても絶対にできません。日本が自ら世界的な競争から離脱してでも(一部の世界から弱腰と見られながらも)総幸福を追求するのであれば、それでも構いませんが。

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幸福立国ブータン 小さな国際国家の大きな挑戦

大橋 照枝
白水社


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