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第3話(3)

メコン・デルタ(3)

 銃弾が空気を切り裂いた。
「狙撃だ!」
PBRは増速し、2、300m先に行ったところで急旋回し、戻る。

 「あの小屋の付近だ、撃て!」
3本の火線が河岸の草むらに吸い込まれる。
艇の前後に水煙が立った。

 「やつらは塹壕から撃っているんだ、擲弾筒で吹き飛ばせ!」
“ボン”という音と共に飛び出した榴弾が小屋の近くで爆発し、黄色い火の玉となる。
河と平行に突進し、またターンして銃撃を繰り返す。

 中尉が無線でドンタンにある砲兵陣地に支援を要請する。
数分後、155ミリか175ミリの重砲弾が十数発、続けざまに炸裂する。
あたり一面が黒い煙に包まれた。
敵はさっさと退避しているだろう。

 翌日は午前のパトロールだ。
5時起床、パン、ジュース、コーヒーの朝食をとる。
慌しく、燃料、弾薬、食糧などを積み込み、エンジンや武器のチェックをする。

 夜明け前、2隻で1チームを組み、出発する。
レーダーや目視による監視を行いながら、ベントレ河を下る。

 レーダースコープには多数の輝点が映っている。
ベントレの町には大きなマーケットがあり、付近の農民や漁民が収穫物を運んだり、仕入れたりするため、サンパンに乗って集まってくるのだ。

 疑わしいサンパンやジャンクを停めて、調べる。
乗っているのは老人と女、子供だけだ。
若者は政府軍かベトコンに否応無く徴兵されている。

 サンパンのベトナム人の大半は敵対心を示さない。
煙草やCレーションを野菜や果物と交換する。
「PBR sailors No.1、you give me candy?」

 本心はわからない。
何隻かはベトコンに協力しているはずだ。

     
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