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第4話(3)

 祖国回復の願い(3)

 私はモニカ、10歳、ワルシャワに住んでいるの。

 家族は父、母と姉のバルバラの4人です。
お父さんは鉄道技師で、ポーランド全体に鉄道を引くんだ、と張り切っているわ。
だけど、上司のロシア人局長が、すべてにロシア式を押しつけてくる、といって怒っています。

 私は女子だけの私塾に通っているんだけど、ある日こんなことがあったわ。

 学校ではポーランド語の使用が禁止され、ロシア語で授業が行われます。
だけど、ある勇気ある先生が、内緒で、ポーランド語でポーランドの歴史を教えてくれていたの。
もし見つかったら、先生はシベリアに送られてしまうかもしれないし、私たちにもどんな罰が下されるかわからないことよ。

 「私たちはポーランド人です。祖国のことを勉強しましょう。」
皆、身を乗り出し、食い入るように先生のお話を聞いたわ。

 ”ジリジリジリッ”

 廊下のベルの音。
さあ大変、私たちはポーランド語の教科書とノートをかき集め、当番の生徒がそれらを秘密の場所に隠したわ。

 実は、学校を監督するロシア政府の視学官が来ると、ベルを鳴らして知らせることになっていたの。
私たちが裁縫の授業を受けていると、でっぷり太ったロシア人の視学官がお供を引き連れ、教室に入ってきたわ。

 「さあ、皆さんの机のふたを開けてごらん。」
お供が、念入りに全員の机の中を調べる。
それが終わると、視学官は咳払いをして、皆を見回したわ。

 「エカテリーナ2世以来の、我が神聖なるロシア皇帝の名前を挙げなさい。」
先生は、クラスで1番優秀なマリアに答えるように言ったわ。
マリアは流ちょうなロシア語で間違いなく答えたの。

 続いて視学官が尋ねたわ。
「我々を統治するお方は?」
「偉大なる皇帝、アレクサンドル2世陛下です。」
マリアは震える声で答えたわ。


 このマリアが、後にパリに勉強に行き、私にはよくわからない、放射能の研究に取り組みました。
そして36歳の時、夫ピエール・キュリーと一緒にポロニウム(祖国ポーランドにちなんで名前を付けた)とラジウムの発見でノーベル物理学賞を受けました。

 彼女は、私たちポーランド人の誇りです。

 参考図:Wikipedia:「マリ・キュリー」
     
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