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第6話(2)

 我らの共和国を(2)

 広々とした造船所では、巨大なクレーンが動き回り、建造中の船体の周りで多くの労働者が働いている。

 ヤンコ・ブゥクは、ここグダニスクのレーニン造船所の溶接工だ。

 厚い鉄板同士を、電気溶接でつないでいく。
青白い火花のもと、冬なのに汗がふきでる。
しかし、汗水垂らして働いても、何か未来に希望が持てない。

 ポーランドではゴムウカに変わって、ギエレクが政権についた。
ギエレクは国民生活水準向上に力を入れ、外国からの投資を呼び込んだ。
そのため当初は、賃金は上昇し、生活は良くなった。

 しかし、この頃は、賃金は頭打ちなのに、食料品の大幅値上げが続いている。
6人家族を養うのは、容易ではない。

 工場内での休憩時間中、冗談が言い終わると、すぐ生活の話になる。
「数年前まで、女房の誕生日には家族でレストランに行ったもんだが、今じゃ花1本さ。」
「政府が工業にばかり投資して、農業には金を回さなかった、つけがきたんだよ。」

 「外国から借りた金の返済のために働くなんて、まっぴらごめんだ。」
年長者の愚痴を聞いていた若い溶接工が、声を上げた。
「少なくとも、“食料品値上げ反対”の意思表示はすべきだよ。」
皆、黙って頷く。

 造船所にも労働組合はあったが、官製の御用組合で、上部組織の言葉をそのまま伝えるだけだった。

 1980年、政府は食肉の大幅値上げを発表した。
ただでさえ品薄で、食料品を買うために行列に並ばなければならならない民衆の怒りが爆発した。

 たちまち、各地でデモやストライキが起こった。

 参考図:「世界の国々の歴史・ポーランド」、河合美喜夫、岩崎書店、1991
      
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