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第5話(3)

崩壊(3)

 夜明け前に出発する。
空が白み始めた。
ズン、ズン、ズズン
弾着音だ。それは段々激しくなる。

 急ぎ高台に登ると、オルモック湾が見えた。

 何と数十隻の艦船で、湾が埋め尽くされている。
海岸沿いを駆逐艦や砲艦が動き、艦砲射撃をしている。
海岸付近は爆煙で何も見えない。
上空は敵機の乱舞だ。

 空気がビリビリと震える。
「何ということだ。補給基地を奪われたら終わりだ。」
30分の猛砲撃の後、上陸用舟艇が岸に向かって進みだした。

 次から次へと上陸用舟艇が上陸軍を運ぶ。
戦車揚陸艦が戦車や車両を吐き出す。
皆、圧倒され、呆然とスペクタクルを眺める。

 2時間ほどした時、上空の敵機の動きが異常になった。
セブ島方向から10数個の黒い点が迫ってくる。
ピケットラインの駆逐艦群が全対空砲火を撃ち上げる。
空が黒いしみで一杯になる。

 敵戦闘機が日本機の編隊に襲い掛かった。
2つの火の玉が、スーと海に向かって落ちる。
2機が駆逐艦にダイブ、1機は撃ち落されたが、1機は艦に突入した。
艦の中央から、大きなオレンジ色の火の玉が生じる。

 「やった、やった ------ 」
初めて見る、特別攻撃隊の体当たり攻撃に、身体が震えた。
炎上する艦、墜落する飛行機、すさまじい対空砲火、
立ち上がる黒煙、白く泡立つ海面、絶え間ない轟音 --------- 。

 12月7日、アメリカ軍第77師団はレイテ島の日本軍の補給基地、オルモックに上陸した。日本軍は攻撃準備の隙をつかれ、ほとんど抵抗できなかった。
そして、これはレイテ戦にとり、致命的な一撃になった。

     
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