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第6話(3)

アンツィオ橋頭堡(3)

 1943年1月に日系部隊の創設が決定され、第442連隊戦闘団が誕生した。
連隊は特別編成部隊で、すべて志願兵で構成されていた。
連隊より半年前に結成されたハワイ出身者による第100大隊は、9月よりイタリアで実戦に投入されている。

 連隊の主力はアメリカ本土で訓練を受けていた。そして、半年の戦いで大きな損害をだした第100大隊に、連隊は補充兵として約300名を送り出した。

 「カオル・ワタナベです。よろしくお願いします。」
「君は本土出身だそうだが、あちらの様子はどうなんだい?」
「ハワイと違って、日系人は皆、砂漠の強制収容所に入れられています。しかし、皆さんの活躍で、まわりの人々の見方が随分変わりました。僕も参加したいと思ってね。」
「楽じゃないぜ。」

 今夜もパトロールだ。
両軍境界線上の村の偵察に向う。
前方に崩れかけた一軒の農家が見える。

 散開して近づく。
タッタッタッタッ 
一本の火線が、暗闇から飛び出してきた。

 銃弾がいやな音をたてて飛び跳ねる。
「敵さんも1ヶ分隊程度だ、攻撃しよう。」
「タナカ、援護しろ。お前たち、ついて来い。」

 砲撃でできた穴伝いに、建物に迫る。
ドン! ミズキがライフル・グレネードを、機関銃の発光点に向けて撃ち込む。
敵が目蔵滅法に撃ち出したと思ったら、ピタリとやんだ。

 軍曹が手榴弾を投げる。
バン! 「行くぞ!」
軍曹がトミーガンを腰だめにして撃ちながら、突っ込む。その後に続く。
銃弾が耳元を掠める。

 逃げ去る敵影に、ライフルの引き金を引く。
「すぐ、迫撃砲のお返しが来るぞ。逃げ遅れたやつを探し出せ!」
家の床に地下室への入口らしき戸がある。
開いて銃弾を撃ち込むと、
「アミーコ!」
年老いたイタリア人の農夫が、手を上げて出てきた。
「ドイツ兵いるか?」 首をすくめる。

 モリモトが手榴弾のピンを抜こうとすると、ワタナベが押し留める。
「待って!内に民間人がいるかもしれない。」
「その躊躇が命取りになるんだ。モリモト、やれ!」

 迫撃砲弾が中庭で炸裂した。
分隊はイタリア人の農夫を連れて、引き揚げた。

         
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