この感染症を起こす微小なもの(以下、ウイルスと呼ぶ)は細菌と違い、実験室の培地では培養できなかった。
アメリカのロックフェラー研究所の化学者、ウェンデル・スタンリーは、扱いの難しい動物に感染症を起こすウイルスではなく、植物に感染症を起こすウイルスに目を付けた。
タバコの葉に、モザイク病を起こすウイルスだ。
モザイク病にかかったタバコの葉からジュースをつくり、ウイルスだけをとりだす。
3年間の気の遠くなるような実験を経て、スタンリーはタバコモザイク病ウイルスの結晶化に成功する。(1935年)
そして、化学分析の結果、このウイルスは、
〇主として不活性タンパク質で構成されている。
〇従って、細菌のような生命体ではない。
と結論づけた。
スタンリーは1946年、
「ウイルスのタンパク質を純粋な形で抽出した功績」
により、ノーベル化学賞を受けた。
しかし、スタンリーは重要な構成要素の存在を見逃していた。
イギリスの生化学者、フレデリック・ボーデンとノーマン・ピリーはタバコモザイク病ウイルスの中に、微量のRNA(リボ核酸)‐ウイルス全体の6%、が含まれていることを発見する。
【RNA:タンパク質の生合成に関与する酸で、遺伝情報の保存、複製を行う。】
〇ウイルスは何らかの形で、自己を再生産できる。
〇生命体ではないが、上記の特性から、物質でもない。
ウイルスは自己の複製を、自力では作れない。
では、どうやって、ウイルスは増殖しているのか?
参考図:「ウイルスって何だろう?」、武村政春監修、PHP研究所、2020
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