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第2話(3)

フジモリ大統領誕生(3)

 コスタは海岸沿い、せいぜい50Kmで、背後には大アンデス山脈が延々と連なっている。
タマネギの種を求めて、1週間ほどの予定で、山麓地帯の村々を回ることにする。

 バンに燃料、食料、お金代わりの米袋を積み込み、出発する。
同乗者はカウンター・パートナーのサンチャゴと助手のマルコだ。
ガイドを兼ねるカルロスが運転する。

 カルロスの横には、黒く光るライフル銃が置いてある。
「タケダは撃ったことあるか?」
「いいや。」
「やり方だけでも覚えておけ、役に立たなければラッキーだ。」

 褐色の山が果てしなく続く。
山肌にへばりつくように、段々畑に囲まれた2,30戸の村に入る。
子供たちが集まってきた。
大人は姿を見せない。

 村長に挨拶し、こちらの主旨を説明する。
サンチャゴはなかなか雄弁だ。手振り身振りで熱弁をふるう。
たいていの国では、弁が立たないと、人の上には立てない。

 渋い顔をしていた村長も、米袋を差し出すと、顔が緩んだ。
使用人に何か言うと、男は奥から貯蔵してあった小さなタマネギを数個持ってきた。

 「Gracias、サンチャゴ!」
「De nada」
夜は町の安宿に泊まる。
交代で車の見張りをする。銃を持って。

 南に下がるに従い、村人の対応が変わってきた。
敵意とまでは行かなくても、関わりたくないと思っていることは明白だった。
サンチャゴがいくら熱弁をふるっても、米袋を見せても、首を縦には振らなかった。

 ある村で、老人がその理由を話してくれた。
「この付近にもセンデロのゲリラが姿を見せるんじゃ。」
「奴らは政府や外国の人間には絶対協力するな、協力者は殺す、といっている。」
「山向こうの村では、村長と地主を人民裁判にかけて殺した、ということだ。」
「あんたらも気をつけな。」

 4人は顔を見合わせた。
ゲリラに襲われたら、ライフル1丁では、どうしようもない。
急遽、引き返すことにした。
     
     
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