gooブログはじめました!

第3話(2)

 ムルデカ・アタウ・マティ(2)

 脱出してきた兵士の中に、元日本兵の吉田がいた。

 「吉田さんは、どうして共和国軍へ?」
「郷土防衛義勇軍の教官をしていてね。教え子に乞われたのさ。」
「実は、スラバヤに現地人の妻子が居るんだ。」

 吉田らの部隊は、スラバヤに通ずる街道の峠に陣取っていた。
部隊と行っても、日本軍から奪った小銃が2人に1丁、あとは槍や刀だ。
頼りになるのは、吉田が訓練用にと兵器庫から持ち出した山砲1門だ。

 朝靄を付いてオランダ軍の装甲車列が街道を進んでくる。

 ヒューン  ドカン

迫撃砲の砲撃が始まった。

 兵士達の顔が引きつる。
元大学生だという若い隊長が叫ぶ。
「頭を上げるな、近づくまで撃ってはならん!」

 装甲車が動き始めた。
ドドドドッ
装甲車の重機関銃が制圧射撃を始める。
数人の兵士が、たまらず後方に逃げていく。

 山砲の照準を先頭車両に合わせる。
「撃て!」
弾は敵の頭上を飛び越え、爆発した。
2発目。道路上に突き刺さる、不発だ。

 敵の銃弾が砲の周りに集中する。
3発目。
命中! 
装甲車は飛び上がり、燃えだした。

 「場所を変えるぞ!」
山砲を移動させようとしていた、そのとき、迫撃砲弾が命中、砲に取り付いていた3人の兵士が吹き飛んだ。

 浮き足立った兵士達は、隊長の命令を待たず、我先に坂を駆け下り、密林に逃げ込む。

 吉田は、隊長と一緒に四散した兵士を集め、海岸に向かった。

 近くの村の村民に、友軍との連絡を頼んだ。
村民は戦線を抜け、無線電話を持っている部隊と接触することができた。

 それで、今回脱出することができた、とのことだった。

     
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「大西洋」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事