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第1話(5)

シェイハン石油出荷基地(5)

 11時過ぎに起きると、船は既にスエズ運河の入口、ポートサイドについていた。
周りには多くの船が停泊している。
スエズ運河は一方通行で、10隻から15隻でコンボイを組み、通過する。
白っぽい町並みを見ながらの待機となる。

 運河管理局のパイロットが乗り込んできた。 出発だ。
スエズ運河は全長163Kmで、深さ24m、幅200mに掘削されている。
“武蔵丸はコンボイの最後尾だ。”

 7ノット、航海速力の半分でゆっくり進む。
前の船との間隔は2キロほどだ。
エジプト側は町や村、畑、黄褐色の砂漠が続く。木立も見られる。
シナイ半島側は、一面の黄白色の砂漠が広がっている。

 運河は一直線だが、幅が狭いため、手動操舵だ。
ブリッヂ内は緊張している。
操船ミスで座礁でもしたら、大事になる。
運河通行料、千数百万円の何倍の損害賠償金を取られるか、見当もつかない。

 昼当直が終わり、海図室で事務処理をしていると、船長が入ってきた。
「どうだ、岡部君も少しは慣れたかね。」
「はい、少しは全体を見渡せるようになりました。」
「入社2年目だったな。」
「はい、入社して2ヶ月、鹿児島の基地で訓練を受け、すぐ本船に乗りました。」

 「昔は、乗組員は皆日本人で、乗船してからも自然と勉強できたが、今はそうはいかん。」
「明日、船長職を命じられても良いように、他の乗組員の仕事も積極的に覚えるようにしてくれ。」
「わかりました。肝に銘じます。」
気の弱いところがある自分に船長職が勤まるだろうか、という思いが一瞬頭をよぎる。

 運河途中にあるグレートビター湖で、紅海から地中海に向かうコンボイとすれ違う。
12時間かけて運河の出口、スエズに着いた。

     
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