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第3話(2)

 カーグ島へのミサイル攻撃(2)

 1ヶ月ほどしてNIOC(イラン国営石油会社)の幹部、メフェディ氏から話があった。
「イラクはイランの経済に打撃を与えるため、我が方の油田やタンカーへの攻撃を強めている。」

 「我が国の最大の原油積出基地であるカーグ島も爆撃され、被害を受けた。その復旧方法を、現地でご指導願いたい。」
初田らの安全はイラン側に委ねられている。いやとはいえない。

 カーグ島はバンダル・ホメイニから南東180キロ、イラン本土から30キロに位置する、ペルシャ湾に浮かぶ小島だ。
大きさは東西4キロ、南北6キロある。

 イラン本土で採掘された原油は、海底パイプラインを通り、島に送られる。
カーグ島は世界最大級の原油積出港であり、25万トン級の巨大タンカー4隻がT字形桟橋に着桟し、原油積み込みが可能だ。

 対岸のブーシェル港から哨戒艇に乗り、島に向かう。
海は穏やかだ。
海水は、覗き込むと引き込まれそうなほど、透き通っている。

 島の桟橋には、10万トン級のタンカーが1隻、5万トン級が2隻、着桟していた。
埠頭周辺には、多数の対空砲の長い砲身が空を睨んでいる。
破壊された石油積出施設や精製施設を見て回っていると、空襲警報。

 「飛んでくるのは、せいぜい2から3発ですが、ミサイルはどこに着弾するかわかりません。一応、避難しましょう。」
待避壕の壁が僅かに振動する。

 外にでてみると、島の中央部にある石油タンク群から黒煙が天まで昇っている。
運悪く、石油タンクに命中したようだ。

 イラク軍が使っているミサイルは、主にフランス製の対艦ミサイル、エグゾゼ(トビウオ)だ。

 射程は70km、速度はマッハ0.95だ。
目標付近までオートパイロットで飛び、あとは自身のアクティブ・レーダーで目標を捉える。
海面を舐めるように飛行し、16Kgの弾頭で目標物を破壊する。

 翌日は、沖合で着桟待ちをしているタンカーが狙われた。
「あそこだ!」
岸壁でイラン人技術者が指さす方向を見ると、何か海面を影が走っているように見える。
水煙が上がり、オレンジ色の火の玉が生じた。
“ドン”

 「大丈夫、あれは囮の浮き船だ。」
イラン軍は、敵ミサイルのレーダーを欺瞞するため、島周辺にレーダー反射板を付けた4~6m四方の浮き船を多数配置していた。

引用図:「イラン・カーグ島」、朝日百科 世界の地理Vol.10、朝日新聞
     
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