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第5話(2)

 タンカー戦争(2)

 “シーワイズ・ジャイアント”の船尾デッキ上で、2等航海士のタンは、ミサイルが自分の方に飛んでくるのを、凍り付いた表情で見つめていた。
“ドカン!”

 ミサイルは船体中央舷側に激突、爆発した。
たちまち、煙と炎が吹き出す。
タンはよろよろと立ち上がると、乗務員を集め、消火班を結成した。

 周りには煙が立ちこめ、10m先が見えない。
防煙マスクを付け、数mに立ち上がる炎の元に放水する。
幸い、重油はガソリンのように爆発燃焼はしない。

 1等航海士を捉まえた。
「状況はどうですか?」
「船体に数mの穴が開き、原油が流れ出し始めている。」

 「しかし、原油は粘度が高いので、ミサイルの爆発力を弱めたらしい。」
「本船の17区画のうち、損傷を受けたのは2から3区画だ。大丈夫、沈むことはない。」

 “サバラン”から見ると、タンカー全体が煙に包まれ、今にも爆発炎上するかのようだ。

 艦長と副長が話をしている。
「乗組員を救助しましょうか?」
「いや、待て。消火は順調に進んでいる、と連絡が入った。しばらく様子を見よう。」

 “シーワイズ・ジャイアント”の火災は下火になったが、浸水は止まらず、カーグ島に引き返すことになった。

 煙と油の帯を引きずりながらカーグ島近くまで来たとき、船長が決断を下す。
「このまま着桟して不測の事態になれば、大惨事になる。」
「この近くの浅瀬に着底しよう。」

 こうして“シーワイズ・ジャイアント”は、ペルシャ湾で被害を受けた最も大きな船になった。

 同船はイラン・イラク戦争終結後の1988年、サルベージされた。
その後、“ハッピー・ジャイアント”と改名され、現役復帰した。

     
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