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第1話(4)

大学紛争(4)

 いったん後退した機動隊は、隊形を整え、じりじりと前進してきた。
学生たちが正面突破しようとしたとき、側面から機動隊の1隊が湧き出してきた。

 秋山はジュラルミンの盾に跳ね飛ばされ、警棒でしたたか腕を打たれた。
激痛が走る。
学生たちは隊形を崩され、ちりぢりになりながら校内に逃げ込んだ。

 赤黒くはれた腕を冷やしながら、秋山は下宿の6畳間の天井を見ていた。
“これからもあくせく働きながらつまらない授業を受け、卒業したからといって何があるんだろう。”
“会社に入り、組織の中で追い立てられながら仕事をし、小さな喜びと給与を得るだけ。”
“家庭を持てば、さらにその生活から抜けられなくなる。”
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もっと自由に生きたい。”
“***ねばならない、***すべきだ、の社会から抜け出したい。”
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 “いっそ、アメリカへでも行って新しい生活を始めるか!”
“少なくとも今までとは違った世界が見られるだろう!”

 同室の加藤に、アメリカに行くことを話す。
加藤は、昼は化学分析の試験所で働き、夜、大学の2部で学んでいる。
「へえー、すげえ。」
半ばホッとした、半ば羨ましそうな顔をする。
ベトナム戦争や黒人暴動、ケネディ暗殺などで陰りが見えたとはいえ、アメリカは多くの日本の若者にとり、輝いていた。

 幸い、未払いの2学年用の授業料が手元にある。
片道切符だが、向うでアルバイトをすれば何とかなるだろう。
言葉は中学生英語でやるさ。
両親には、アメリカにヒッチハイク旅行に行ってくる、とハガキを書いた。
     
     
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