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第1話(2)

 海防艦第69号(2

 早朝、ムシ河河口で5千トン級のタンカーと合流した。
明日の明け方、シンガポールに着く予定だ。

 タンカーの斜め前を駆潜艇が、斜め後を本艦が進む。
バンカ海峡を抜け、開けた海に出た。
敵潜の攻撃が予想される危険海域だ。
なるべく、スマトラ島寄りの針路をとる。

 北村は14倍双眼鏡を目に押し当て、周辺海面を警戒する。
強い光が海面に反射し、1時間もすると目が充血し、痛くなる。
目やにを何回も拭き取る。

 「右30度、潜望鏡らしきもの!」
戦闘ブザーが鳴り響き、艦は速力を上げ、激しく振動する。

 数分で目標海面に達する。
「深度30、投射用意!」
「撃て!」


 5個の爆雷が弧を描いて、海面に飛ぶ。

 海中に稲妻が走り、大音響と共に海面が盛り上がり、激しい振動が船体をふるわす。
艦は速力を緩め、ゆっくりと泡立つ海面を回る。

 パッシブ・ソナーで敵潜をさがす。
アクティブ・ソナーも装備しているが、性能は今ひとつだ。
油も浮遊物も浮いてこない。

 空振りに終わったようだ。 急ぎ、タンカーを追う。

 「右前方に雷跡!」
背骨に電流が走る。
前方を行くタンカーに火柱が上がり、船体がオレンジ色の火の玉に包まれた。

 「やられた!」
ブリッジにいる全員が同時に叫んだ。

 「仇を討て!」
見えない敵への恐怖に駆られ、当てずっぽうに爆雷を投げ込む。
敵は狼群戦法をとり、3~4隻の潜水艦が協力して、攻撃してきていた。

 “ドカン!!”
激しい衝撃で、北村は近くの甲板に叩きつけられた。

 急激に左舷側に傾斜が増し、床を転げ落ちる。
艦の後方から黒い煙が押し寄せてきた。
あっという間に、海面が盛り上がってくる。
夢中で床を蹴って、泡の中に飛び込む。

     
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