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第3話(3)

 ムルデカ・アタウ・マティ(3)


 都市部から撤退した共和国軍は、農村や山岳地帯でゲリラ戦を続けた。

 北村らは、スラバヤ湾へのゲリラ攻撃を企画した。
夜間、漁船を装って湾内に侵入し、潜水夫を使って敵の輸送船、できればタンカーの船底に旧日本軍の破甲爆雷を取り付け、爆破する、というものだ。

 オランダ軍に追い立てられていた司令部は、一も二もなく、これを承認した。
スカルディが、漁村を回って潜水の達者な漁夫を見つける。
吉田は司令部と掛け合って、3個の破甲爆雷を手に入れた。
時限装置を改造し、爆破までの時間を長くする。
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 満天の星だ。
湾内には十数隻の貨物船が停泊していた。
完全に油断していると見え、船は灯火を付けたままだ。

 ゆっくりと湾内に入る。
満載状態のタンカーを見つけた。2,3千トンはある。
スマトラかボルネオの製油所から来たのだろう。

 2,300メートル離れたところで、潜水夫を乗せた小舟を降ろし、停泊場所を捜すかのように湾内を回る。

 時間のたつのが遅い。
ようやく小舟がタンカー船尾の影から出てきた。

 北村らは漁船を近づけ、潜水夫らを引き上げる。
タンカーのデッキ上に2、3の人間が集まり、こちらを見ている。

 “ズン、ズズン、ズン”

 タンカー周りの海面が盛り上がり、白濁した泡が吹き出した。
「やった、やったぞ!」

 湾内の灯火が一斉に消えた。
タンカー上を人が右往左往している。

 タンカーはゆっくりと右に傾き、黒い油をはき出し始めた。

     
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