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カザークの誕生(2)

 カザークの誕生(2)

 ジーリンの話は続く。

 「その後、領主の重い税金や賦役に耐えかねたロシアの農民が、この辺境地帯に逃れてきたのだよ。それが俺たちの祖先だ。」

 「俺たちの祖先は、タタールの襲撃や領主の追っ手から身を守るため、自分たちの軍事組織をつくって戦ったんだ。」

 ワシーリェフは村の広場で見たドン・カザーク軍団騎馬隊の勇壮な姿を思い浮かべた。

 「また、自分たちの団結を守るため、全員参加の合議制で物事を決める仕組みを作ったのだよ。」

「アタマン(首領)も皆の推薦で選び、その任期は1年とする習慣もできた。」

 

 片腕のないルカーシカが自慢話を始めた。

「河むこうにはクリミア汗国のタタールがいる。」

「奴らは時々河を越え、ロシアの村々を襲撃し、あらいざらい略奪し、ロシア人を連れ去り、奴隷として売っているんだ。」

 「昨年の冬、百人程のタタールが近くの村を襲撃してきた。」

「俺たちは仲間のカザークを集め、奴らの帰路を襲ったんだ。」

 「奴らは騎乗しての短弓がうまい。俺たちは馬とともに窪地に身を隠し、近距離から奴らに襲い掛かった。」

「槍やサーベルでタタールどもを切り刻んでやったのさ。」

 「その時、俺の片腕を奴らにくれてやったんだ。」

ワシーリェフはルカーシカの片方の腕の盛り上がった筋肉を頼もしげに見た。

 

 参考図:「コサック軍シベリアをゆく」、バルドス・ヘップナー、岩波書店、1973

     

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