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第1話(2)

旅立ち(2)

 アジアとヨーロッパを結ぶ東西交易路は、7世紀以来、イスラーム勢力により完全に押さえられていた。

 13世紀、そこに突如として天山山脈の麓の草原から、チンギス・ハン率いるモンゴル帝国が出現した。
蒼き狼、チンギス・ハンは東の西夏、西のホラズム帝国を滅ぼし、ロシア平原を席巻した。

 次の大ハン―オゴタイ・ハンは東の金帝国を滅ぼし、中国北部を支配下に置いた。
続いて西へ遠征軍を送り、ロシアを征服、ヨーロッパに迫った。
第4代のモンケ・ハンの時はイスラーム世界の征服に向かい、ペルシャを占領した。

 こうしてイスラーム勢力は駆逐され、東西交易路の大部分はモンゴル帝国の支配下に入ったのである。


 マルコの父と叔父は、ローマ教皇の信書を受け取り、すぐにフビライ・ハンの元に戻ろうとしたが、折悪しく教皇がなくなられたため、新教皇の選出を待たねばならなかった。

 私は父に、東への旅に私を連れて行くよう、懇願した。
「道は限りなく遠い。ここでは考えられないような広い砂漠や山岳地帯を通らなければならない。」
「街道はモンゴル帝国の支配下にあるとは言え、いつ戦乱や盗賊に会うやもしれぬ。」

 「ここにいても、いつジェノバやイスラームとの闘いで死ぬかもしれない。この目で光り輝く別世界を見たいんだ。」
「それに、東方の物産を交易する手がかりが得られれば、大金持ちになれるかもしれない。」
若い力が必要になるかもしれぬ、と感じた父も折れ、私を連れて行くことに同意した。

 父と叔父が旅の途中で得た宝石などを売り払い、準備資金とした。
私はベネチア中を駆け回り、上等な靴やバックを手に入れた。
身の回り品、薬、水筒、交易やお土産に使う小物をそろえる。
アラビア語は話せたので、必要になると思われるトルコ語、モンゴル語を旅人から、教わった。

 結局、新教皇が選出されるまで2年間かかった。
そして今、新教皇からの信書と大ハンへの貢ぎ物を受け取り、2人の宣教師と一緒にエルサレム近くの地中海沿岸の街、アッカに居るのである。

参考図:「大航海時代」、森村宗冬、新紀元社、2003
     
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