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第4話(4)

 山西残留(4)

(国分元兵曹の話 その2)

 我々は太原で最後の戦いを迎えた。

 重砲弾が次々と撃ち込まれ、耳を聾する大音響が響く。
各所に火災が発生し、黒煙が空の覆い、昼なのに薄暗い。

 太原を取り囲む城壁に砲撃が集中しだした。

 崩れた城壁に、鮮やかな色をした大きな紅旗を先頭に、共産軍の無数の兵士が押し寄せる。
守備側の拠点から、機銃や零距離射撃の野砲が火を噴くが、たちまち制圧されてしまう。

 短時間の内に、我々の拠点の左右に紅旗が林立しだした。
「ダメだ、とても防ぎきれない。城内に後退しよう。」

 後退というより、バラバラになって城内に逃げ込んだ。
あちこちに火災が発生している中、呆然とした兵士があてどもなくさまよっている。
半壊した煉瓦造りの建屋で、出入り口が崩れている地下室に隠れた。


 砲撃が途絶え、敗残兵をかり集める騒音が聞こえる。
ときどき起こる激しい銃声。

 夜、数人のグループに別れて外に出た。
銃声が鳴り響く中、避難民に紛れて、城内から脱出した。


 その後、国民党軍の敗残部隊に合流、共産軍の進撃に追われながら大陸を横断、上海にたどり着いた。

 「上海でアメリカの艦船に乗り、台湾の基隆についた、というわけさ。」
「こちらで軍を離れ、結婚して子供もでき、生活は安定している。日本に帰る気はないね。」

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 毛沢東率いる共産軍(人民解放軍)は土地改革を掲げて農民を味方に付け、軍閥の寄せ集めの国民党軍(中華民国軍)を圧倒した。
1949年、毛沢東は大陸を統一し、中華人民共和国を樹立した。
一方、台湾に撤退した蒋介石は軍備を整え、解放軍の台湾侵出に備えていた。

 参考図:「日本軍“山西残留”」、米濱泰英、オーラルヒストリー企画、2008
     
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