私たち一行は1275年5月、フビライ・ハンの夏の都、上都
(大都、現北京の北西90キロ)に到達した。
ベネチアを出てから、早4年の歳月が流れていた。
宿で旅の垢を落とし、一張羅に着替える。
「よいか、大ハンの前では、跪いて挨拶するのだぞ。」
翌朝、使者と共に宮殿に向かう。
宮殿は、平原の中に長大な城壁に囲まれ、そびえていた。
美しい大理石でできた宮殿に入る。
「ここで控えておれ。」
大きな部屋に通された。
壁には一面に金箔が貼られ、美しい細密画で装飾されている。
その部屋の奥から、宮殿の背後の景色が見えた。
遠くまで広がる、草原を模した庭園だ。
川や泉、森があり、鹿や小動物が離されているとのこと。
大ハンが鷹や豹を使った狩を行うのだと、従者が話してくれた。
世界の1/3を支配する大ハンにこれから会うのだと思うと、身体が震えた。
教皇からの信書を持つ、父の手も小刻みに震えている。
「フビライ・ハン様の御成!」
参考図: 「完訳 東方見聞録」、マルコ・ポーロ、平凡社、2000
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