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第1話(1)

大学紛争(1)

 「理事長は使途不明金について、全学生に説明しろ!」
「学生自治会を認めろ!」
「大学当局は団体交渉に応じろ!」
「学友諸君、闘争に決起せよ!」
校内のいたるところに立て看が、建物の壁にはビラが。

 校舎の出入口は机などでバリケード封鎖されている。
内部は学生が占拠し、教職員は締め出された。
ヘルメットをかぶり、棒を持った学生行動隊が、大学職員や体育会系学生によるスト破りに備え、巡回している。

 校内のあちこちでは、学生同士が集まり、興奮顔で話している。
あたり一面にウワーンとした熱気が。

 秋山は同級生の阿久津と、理工学部第4校舎の3階の窓から、ぼんやりと下を眺めていた。
「何か変わるのかな?」
「さあね、井戸の中で蛙が騒いでいる感じがするよ。」
「まあ、つまらない授業を聞いているよりましか。」
2人共、名簿順でクラスから自治会委員として押し出され、そして今、占拠要員として、この校舎にいるのだった。

 秋本は熊本から上京して1年間、友人の下宿に転がり込み、必死に働いて学費を稼いだ。
そして車のエンジニアを目指し、希望に胸を膨らませてこの大学に入学したのだ。
しかし、それはすぐに失望に変わった。

 300人も入る鮨詰めの大教室での授業、実技なし、ノートを見ながら黒板に書くだけの教師-大体、定員の3倍もの学生を入れているのだ。

 紛争は、秋山が2学年になった直後に始まった。
大学の20億円もの使途不明金が発覚したのだ。
大学当局は学生に十分な説明をしなかったため、学生たちの抗議集会が開かれ、2千人規模のデモにまで発展した。

 団交要求の全学決起集会が開かれたが、そこに右翼学生が突っ込み、警察の機動隊が出動する騒ぎになった。
そしてとうとう、今回の全学バリケード・ストになったのだった。

     
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