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第2話(4)

 掃討作戦開始(4)

 暗灰色の海底に黒い球状の機雷が半ば埋もれている。
斜め上につきでた触角(信管部分)が不気味だ。
もし、機雷が生きていれば、触角に衝撃を与えたら、一巻の終わりだ。

 海底に這いつくばり、機雷に接近する。
水温は海面近くより低いはずなのに、ウエットスーツの中は汗まみれだ。
中村に身体を保持してもらい、携帯した2Kgの時限式プラスチック爆薬を、機雷に取り付ける。

 接近するときより、退避するときの方が危険だ。
早く離れたい気持ちを抑え、ゆっくりと距離をとる。
途中で休みを入れながら、ゆっくりと浮上する。
ゴムボートに引き上げられ、艇に戻る。

 “ドーン!”
大音響と共に巨大な真っ白な水柱が吹き上がり、艇が大きく揺れた。
乗員の歓声が上がる。

 「よくやった!」
泊艇長や上田掃海長らに背中をたたかれる。
泊艇長は防衛大学校出で、大塚と同年代だ。
何かと規則を持ち出す泊艇長とは、しっくりいっていなかった大塚だが、命がけの掃討戦を行ううち、互いのやり方がわかり、信頼感が生まれてきていた。

 こうして、それぞれの掃海艇は、見えざる敵を1ケ1ケ処分していった。

 ある日の夕刻、1日の掃討戦を終え、皆、ホッとした気持ちで安全海域に引き上げる途中のことだった。
船首で見張りをしていた谷村海曹長が叫んだ。
「右20度前方、浮遊物!」

 薄暗くなった海面をすかしてみると、波間に黒い点が見える。
「確認する。戦闘配置に付け!」
触雷に備え、装備を点検する。
砲員は配置に付いた。

 ゆっくりと近づくと、黒坊主、浮遊機雷だった。
他の掃海部隊がワイヤーを切断後、撃ちもらしたものか、何らかの原因でワイヤーが切れた係維機雷だ。

 数百メートル離れたところから、20ミリ機関砲が火を吐く。
赤い曳光弾の矢が伸び、海面が機関砲弾の水柱で覆われた。
一呼吸置いて、目もくらむような閃光が走り、赤い火の玉が生じた。

 参考図:「写真集・湾岸の夜明け作戦全記録」、神崎宏他、朝雲新聞社、1991
        
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