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第2話(2)

 “エイラート”被弾(2)

 浸水が始まり、“エイラート”は左側へ傾斜しだした。
薄暗闇の中、あちこちに生じた炎は、ハンマーで叩きのめされたような艦の姿を映し出した。

 負傷者の上げる悲痛な叫びが、闇を引き裂く。

 艦長は動ける乗務員全員を艦首部へ集合させ、総員退艦の際の要領を説明した。
「負傷者は一カ所に集めよ。」
「救命筏は負傷者用に使う。空の燃料缶やマットレスなど、水に浮かぶ物をデッキに集めておけ。」

 艦は立っていられない程、傾斜が増してきた。
「総員退艦!」

 重傷者は救命筏に移され、動ける者は救命胴衣を付け、海中に次々と飛び込んだ。
中尉も沈んでいく艦から離れようと、必死に泳いだ。

 「ミサイル!」
海中から叫び声が上がる。
振り返ると、火の玉が艦に向かって突入するのが見えた。

 海中に潜り、再び海面に顔を出したときには、艦の姿は消えていた。

 幸い、エジプト軍は出撃してこなかったので、漂流者は味方の魚雷艇やヘリコプターにより救助された。
しかし、イスラエルは主力艦の喪失と乗務員202名中47名が戦死、91名が負傷するという損害を被った。

 「我々の艦は海戦史上初めて、ミサイルにより沈められた艦という不名誉をもらった。」
「しかし、我々の犠牲により、イスラエルは多くのものを得ることができた。」
「その一つが、諸君らのミサイル艇隊だ。」

 「もし、戦いになった場合、諸君らは必ずや我々の仇を討ってくれるものと信ずる。」
「そのためには、敵の倍の訓練が必要だ。」
「今日流す汗の一滴は、明日流す血の一滴を節約する。」

     
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