ウラニボルク天文台は一つのお城だった。
周囲を低い城壁に囲まれ、円形の観測塔がいくつも立ち並んでいる。
城の外れには、観測装置を製作する工房があり、職人達が忙しく立ち働いていた。
ハンスのグループ長、インゲマンはいかにも口うるさそうな30歳代の男だった。
「これは天の姿を記録する仕事だ。間違いは許されない。」
「まず、今夜の観測の準備として、装置の点検・保守を行え。」
先輩のヨハンに連れられ、一つの観測塔に入る。
全てが整然としており、ちり一つない。
「すごいな、別世界だ。」
「ああ、ここはデンマーク国王陛下が誇る、ヨーロッハ一の天文台だからな。」
どっしりした台座に支えられたピカピカの弓矢のような器械の側に来た。
「これが星の位置を計る方位角四分儀だ。」
「これで観測する星の方位角と高度を計るんだ。」
2人は装置が水平になるよう、何カ所もの部品の微調整を繰り返した。
作業後、簡単な夕食をとる。
“さあ、今夜から神様と対話できるんだ!”
ハンスはパンの固さもスープの冷たさも気にならなかった。
参考図:「ティコ・ブラーエの観測装置」、
http://mail2.nara-edu.ac.jp/~asait/Kuiper_belt
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