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第5話(1)

 科学革命(1)

 三十年戦争中、南ドイツではカトリックが優位に立っていた。
ハンスは仲間と森に隠れ住み、時々盗品を売ったり、村人からの寄進で命をつないでいた。

 そんなある日、ケプラーがリンツに戻っている、という噂を聞きつけ、矢も楯もたまらず、こっそり会いに行った。

 「やあ、ハンス君、無事だったか!」
ケプラーの頭髪は白くなり、昔のようなピリピリした雰囲気は消えていた。
「今、ティコの観測データに基づいて、惑星の位置を予測する計算をしている。」
「君のように万事心得た助手がいないので、中々はかどらないよ。」

 ハンスはケプラーの独白を、子供のように聞き入った。

 「神の創造されたこの宇宙が、美しい調和に満ちていることを、僅かでも知ることができた私は幸せ者だ。」
「過去の考えにとらわれず、自然をよく観察し、そこに秩序を見いだそうとする姿勢が何より肝要なのだ。」

 外の石畳を歩く足音が聞こえてきた。

 「この愚かな戦いも、長くは続かない。この混乱の後に、新しい時代が来ることを祈ろう。」
ケプラーはハンスの手を握りしめ、銀貨の入った小袋を渡した。

 ケプラーは、その後「ルドルフ表」を完成させた。
そして、ケプラー説の教科書となった「コペルニクス天文学の概要」を出版させた後、60歳でこの世を去った。


 ハンスはケプラーからもらった銀貨で衣類を仕入れ、村々を回って売る行商を始めた。
しかし、戦乱で各地に拡散したペストにかかり、ケプラーの他界した翌年に死んだ。
それは、三十年戦争が終結する7年前のことだった。

 参考図:Wikipedia 、「ルドルフ表」
     
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