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第2話(4)

 現地残留(4)

 ルカナ中佐はジャカルタ地区の人民治安軍の幹部だった。
イギリス軍の撤退が迫る中、再びの植民地支配を狙うオランダは軍を増強させており、独立派との間は一指触発の状態だった。

 「ラフマット・北村、君、哨戒艇、ベストにする。」
「乗務員、訓練する。」

 哨戒艇を漁船らしく見せるため、塗装をし直し、漁具を仕入れた。
船倉を広げ、銃座を隠蔽した。
接岸航法のやり方、夜間に隠密行動をする方法など、北村も手探りの状況で、7人の乗組員と協力して訓練に励んだ。

 乗組員は近くの若者で、出身は漁師、農民、失業者、学生等、雑多な集団だった。
目新しいことには熱心だが、非常に飽きっぽいのが玉に傷だ。

 燃料の重油が不足してきたので、調達しに行くことになった。
夜、漁村の桟橋を離れ、岸に沿って進む。
ジャカルタの街明かりが美しい。
海上の警備は、まだゆるい。

 昼頃、スマトラ島の濃い緑のジャングルが見えてきた。
乗組員のリーダー格のスカルディが話しかけてきた。

 「インドネシア、僕の国、豊か」
「ムルデカ・アタウ・マティ(独立か死か)」
「ジェプン、カワン(日本人、友達)」
スカルディの熱い気持ちが伝わってきて、北村の気持ちも高ぶってきた。

 夜、ムシ河をさかのぼる。

 製油所の明かりが見える。
再建の工事が進んでいるのだろう。
河岸の監視塔からのサーチライトが川面を照らす。

 無事に通り抜けた。
マングローブの林の縁に船を止める。
スマトラの独立派の仲間が、小舟で重油のドラム缶を運んできた。

     
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