8月14日 伊豆日日新聞掲載
古里のアユ
土用を過ぎ、8月に入って一年で一番暑い時期になりました。川の中のコケ(珪藻)は腐り、鮎が餌を食べ
る場所も変わってきます。
鮎は尾ビレの前の腹側のサカビレが、雄は細長く雌は丸みを帯びてきます。雄、雌がはっきりと分かれ非
常に釣りにくくなり、釣り人はこの頃を「土用がくれ」と呼んで、どうやったら釣れるのか頭を悩ませるのです。
この難しい鮎を釣るにはまずこの時期の鮎の生態を知ることです。鮎は人間によく似ています。人間は成
人になり、男女が一緒にいると恋をします。鮎は土用を過ぎると成魚です。雄雌が一緒にいるため恋をする
時期です。
恋をすると人間はどういうところに行きますか?鮎も同じで、人目につきにくい場所に行きます。白泡の中
や深い淵の中など比較的コケの腐らない場所に入ります。そこを釣れば良いのです。
次に恋をした鮎は子を持ち始めます。この時期が8月の後半です。ちょうどこの頃、昔は、稲穂もつき始
め、「穂ばらみ」の時期になります。現在はコシヒカリが多いため時期が早くなっています。
昔の人は穂ばらみの時期だから鮎も子を持ち始めたなと言い、釣り方を変えていたようです。鮎は子を持
つと苦しくなるため、穏やかな流れの場所で体力を維持します。そして出産に備えるのです。
狩野川漁業協同組合 組合長 植田正光