11月6日 伊豆日日新聞掲載
古里のアユ
11月に入り朝晩の気温がかなり下がってきました。こうなりますと狩野川の鮎(あゆ)は本格的に
下り始めます。そのため今月は「流下仔魚(しぎょ)」=ふ化したばかりの状態で川の流れに乗って海
に下る魚=の量が一番多くなります。
流下仔魚が海に下り生存するための条件は何か、それは海水温と海でのプランクトン(餌料)量で
決まります。
昭和から平成の初めにかけては、海の水温が20度を超えていると流下仔魚は死んでしまうといわ
れていましたが、近年の温暖化現象により仔魚はその温度に順応しています。現在、水温20度以上
でも生存するようになってきているようです。
しかしそれでも次年度の遡上(遡上)量に毎年、多い少ないがあります。それ海の魚、特にコノシロ
やイワシなどいわゆる青物と呼ばれる魚が多い時には遡上量が少なくなり、その代わり遡上した鮎
は大きくなります。逆に青物が少なく遡上量が多くなると鮎は小さくなります。
狩野川における最も良い遡上量というのは、どのくらいでしょうか。昔と現在ではだいぶ変わってき
ています。理由は河川環境が変わったからです。特に下流部における上流からの土砂の流入による
餌場の減少が大きく関わっています。
現在、狩野川の餌場は昔に比べ3分の2程度になっています。このことを考えると遡上量も昔の3
分の2程度でいいと思います。そのことからすると遡上が多い年より少ないほうが良いように思いま
す。量で何キロ遡上しているかはっきりした数字は分かりませんが、むやみに多いのは良くないよう
です。
狩野川漁業協同組合 組合長 植田正光